世界情景素写
ヨルダンの情景#11

カラク城とアジュルン城

Karak Castle and Ajloun Castle, 2001

アンマンから南へおよそ125km、マダバから南に88km、死海を見下ろす丘の上にカラク(ケラク)の町があります。この丘は標高約1000m、丘の南側には十字軍の城塞が残り、北側には町が広がっています。

カラクは昔から城塞都市として栄えていたようで、モアビテ王国の主要な町の一つ(一時は首都にもなった)として、旧約聖書に名を残していたり、マダバのモザイク画の地図にも描かれています。

現在カラクに残っている城塞は、1136年に十字軍によって建て直されたもので、1188年に勇将サラディーンに占領されるまで、十字軍の拠点としての役割を担っていました。この十字軍時代にカラクは最も発展していたといわれています。

サラディンによってカラク城塞が陥落した以後、時代が変わり、指導者が変わっても、ここは通商ルートに位置し、重要な戦略拠点であったので、城塞都市としての機能は変わる事がありませんでした。

カラクの町は三角形の台地に造られ、南側の先端部分に城が位置しています。城の長さは約220m、幅は町側は125m、南側の先端付近は40mほどです。谷からの高さがあるので、見上げるような城塞という表現がぴったりです。ちょうど城の下に長距離バスターミナルがあり、到着するなり絶望的な高さを身に沁みて感じることでしょう。

現在の城塞は、城壁がきちんと手入れがされているので美しい輪郭をしています。内部は上部の建物の多くは崩れかけていますが、内部は迷路のような通路が地下、地上に幾層にもなっていて見学するのが楽しいです。薄暗いので見学には懐中電灯があったほうがいいです。

城塞の上からは晴れていれば遠くに美しい死海の青い湖面が見えて感動する事でしょう。小さな博物館も付随していて、ケラク出土の陶器類やデボンで発見されたメシャ石碑のレプリカなどが展示されています。

広告

* ヨルダン情景素写 *

バスターミナルとカラク城 カラク城の写真
バスターミナルとカラク城

丘の上に城塞とケラクの町が広がっています。
町側に壕が造られていないのが、少し意外な感じがしました。
(At Karak, 15 Apr. 2001)

崖下から見るカラク城 カラク城の写真
崖下から見るカラク城

アンマンから乗ったバスはカラク城の下で終点。
見上げる高さに、凄いと感じるよりも、
重いバックパックもあるというのにこんな所で下ろされてどうしよう・・・と絶望感を感じました。
幸いなことにすぐにミニバスがやって来て、それで町の上に行くことができました。
(At Karak, 15 Apr. 2001)

上から見たバス乗り場 カラク城の写真
上から見たバス乗り場

上の写真の場所を城壁の上から見たらこんな感じです。
上から見ても絶望感を感じる高さです。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

城塞内へ カラク城の写真
城塞内へ

トンネルのような通路を進んで中に入っていきます。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

東側の城壁 カラク城の写真
東側の城壁

バスターミナル側、東側の城壁です。
法面工事がしてあり、少々違和感を感じますが、
防御塔などが形よく残っています。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

東の城壁の北側 カラク城の写真
東の城壁の北側

一番北側は結構崩れている感じでした。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

西側の城壁 カラク城の写真
西側の城壁

西側、死海方面の城壁です。
こちらは2段になっています。
ちょうど画面の中央あたりに写っている半地下の建物から、地下に行くことができます。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

通路 カラク城の写真
通路

大きな通路です。
厩舎としても利用していたのでしょうか。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

監獄 カラク城の写真
監獄

奥に見える建物は監獄に使われていたとか。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

監獄から見た城塞上部 カラク城の写真
監獄から見た城塞上部

外の城壁がきれいなのに対して内部は少し散らかっています。
これからの修復に期待したいところです。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

城塞と死海方面の眺望 カラク城の写真
城塞と死海方面の眺望

左奥が死海になりますが、空の色と同化してしまいました。
ネボ山よりはこちらのほうがよく見える感じです。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

死海を望んで カラク城の写真
死海を望んで

石車やレリーフが置いてあったので。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

眼下の様子 カラク城の写真
眼下の様子

川が深い谷を形成していました。
(Karak Castle, 15 Apr. 2001)

アジュルン城(カラート・アル・ラバト)

カラク城とは離れていますが、ヨルダンの北部、ジェラッシュから北西20kmにある、アジュルンの町からは少し離れた標高1200mの山の上にアジュルン城があります。

正式名はカラート・アル・ラバト城塞()で、1184年にサラディーンの部下が十字軍に対抗して築いたものです。この城は、後にイスラム建築のサンプルになるほど、当時としては最新の技術が用いられたそうです。

1260年モンゴルの侵入で一部破壊され、オスマン・トルコ時代には軍隊の駐屯地に利用されました。19世紀まで伝書鳩やのろしによる方法で、カイロからバグダット間の情報中継地点として使われたそうです。

ここからの景色の見事さは中東では有名で、晴れていれば死海、ヨルダン渓谷、西岸地区、ガリラヤ湖を見渡すことができるそうです。

アジュルン城の遠景 アジュルン城の写真
アジュルン城の遠景

緑が多い山の中にアジュルン城はあります。
(At Ajloun, 12 Apr. 2001)

アジュルン城の遠景2 アジュルン城の写真
アジュルン城の遠景2

山の斜面にも緑が多いです。
この地方は低い松林があることでも知られています。
(At Ajloun, 12 Apr. 2001)

アジュルン城の城壁 アジュルン城の写真
アジュルン城の城壁

四角く、箱みたいな形をしているのがアラブの城の特徴です。
そこそこ状態は良く、内部も修復されています。
(At Ajloun, 12 Apr. 2001)

* 感想など *

カラク城は城塞真下のバス停に到着したことで、聳えるような城壁を目にしてからの訪問だったので、期待が高まり、とても楽しく見学ができました。城塞内部に通路が多いのも冒険心を掻き立ててくれるし、城塞からの眺めがいいのも良かったです。

アジュルン城は、バスターミナルに着いてから交通手段を聞くものの、タクシーしかなく、一人で乗るには値段がかかるし、既に遺跡を見学した後で足が疲れているし、この時代の城はシリアでたくさん見たし・・・と横着して遠くから見て満足することにしました。

ヨルダンの情景#11
カラク城とアジュルン城
Karak Castle and Ajloun Castle, 2001
-風の旅人- (2020年1月更新)

広告

広告