シリア中部の情景#9 クラック・デ・シュヴァリエ Crac des Chevaliers (Qala'at Al-Hosn), 2001 クラック・デ・シュヴァリエはシリアにある中世の十字軍の城で、フランス語で「騎士の城」という意味です。世界でも美しい城の一つとして知られ、2006年にはラタキア近郊にあるサラディン城とともに世界遺産に登録されました。 クラック・デ・シュヴァリエはホムスとタルトゥースの間の切り立った山の上に建っています。内陸から地中海に抜ける重要な要所となり、1031年にホムスの領主によってアラブの砦が建築されたのが始まりです。 その後、十字軍の聖ヨハネ騎士団が手に入れると、強固な十字軍の城に改修していきました。改修では分厚い外壁を加え、城壁は内壁との2重構造とし、7つの円形の守備塔を配置しました。外壁と内壁との間隔は攻め込んできた攻城兵器が自由に動けないようにわざと狭くしてあります。 内部の建築物もゴシック調に改造されました。ゴシック式回廊、ホール、礼拝堂、そして多くの兵が駐屯できるように長さ120mの食糧貯蔵庫も造られました。巨大な食糧庫で5年間の包囲に耐えられたと言われています。 攻めにくい丘の上という立地と分厚い城壁、2千人の兵が駐屯できて長い籠城にも耐えられと、まさに難攻不落の城塞で、十字軍が所有していた1142年から1271年の間にイスラーム勢力から3度攻撃を受けていますが、いずれも耐え抜いています。 中東から十字軍勢力が掃討された後、城はマムルーク朝の副王の居城となり、城内はイスラム風の改装が施されました。その後、城としては放置され、農民が居住地として手入れしながら使用していたこともあり、きれいな状態で残り続けました。 現在でも保存状態が良く、均整が取れた城は、外から見ても、中を歩いてもどちらでも楽しむことができ、パルミラと並ぶシリアの代表的な遺跡となっています。 ←前の情景 #8 ・シリア中部 Index ・シリアの情景 Menu ・世界情景素写 Top 広告 * シリア情景素写 * 下から見たクラック・デ・シュヴァリエ バスで訪れると、下の集落から歩いて登らなければなりません。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 丘の斜面で 付近の斜面は段々畑となっていて、牛が放牧されていました。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) クラック・デ・シュヴァリエの外観1 隣の丘から城の全景を眺めることができます。円筒形の塔が多く設置されているのが特徴です。ここから写真を撮るのが一般的なので、 この角度の写真が多いです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) クラック・デ・シュヴァリエの外観2 高い丘の上に佇むといった表現がぴったりです。 まるで天空に浮かぶ城・・・。そういった景観から有名なアニメ天空の城ラピュタのモデルになったとか言われていますが、 日本人得意の知ったかぶりです・・・。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 城壁の外の散歩 中を見るだけではなく、周囲を回り、見上げるような城壁の高さを体験するのも楽しいです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 水道橋と城壁 城内へ水を運ぶ為の水道橋が設置されていました。城壁の隙間に草が生えていて、まるで砲撃を受けたように見え、ちょっと面白く感じました。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 円形の城壁 城砦の円形部を下から見た図です。上から熱湯や石などを落とされたら溜まりません。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 入り口付近 入場券売り場のある入り口付近です。ここから興奮するような城内探検が始まります。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 通路と観光客 通路の所々から光が差し込み、とても雰囲気がいいです。ここはパルミラ遺跡とともに観光客が多いです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 内堀 外郭と内郭の間には深い水堀が設けられています。外壁を攻略しても堀とさらに強固な内壁があり、攻め手は大変です。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 内堀と城壁 修復が良くされていて、城壁のエッジが美しいです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 外壁上部の建物 外壁の上部は回廊のような建物が続いています。ここは戦に備えて兵が待機したり、石とか弓をストックしていたのでしょうか。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 外壁の上部 攻城戦のときには、ここに弓隊が一列に並び、塔の上に投石器が置かれたのでしょう。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 外壁の上部から 円形の塔の上から撮った写真です。結構高さがあるので下を見ると怖いです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 水道橋 修復されたのか水道橋がとてもいい状態で残っています。水は城の生命線。近くの山から取水していたのでしょうか。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 内郭部分 中に入っても内郭の城壁が高くそびえています。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 堀と内壁 内側の城壁は外側よりもさらに強固です。二つの城壁に守られている堅牢な城です。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 広い通路 外郭と内郭をつなぐ広い通路だと思っていたのですが、厩舎として利用されていたみたいです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 内郭部分の俯瞰図1 一番高いところから城内を眺めた様子です。城内に色々な建物が残っているのが分かります。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 内郭部分の俯瞰図2 後ろは麓の村です。バスの終点で、ここから歩きました。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 内郭部分の俯瞰図3 場内も一望でき、外の眺めもいいです。地面には地下室の穴が開いています。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 地下室 上から見ると丸い穴が開いていて面白いです。ここは食糧庫とか、倉庫となるのでしょうか。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 城壁と丘陵 周囲には丘陵地帯が広がっています。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 塔 塔の一部。幽閉されたお姫様が顔を出して・・・などと想像すると楽しいです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) クラック・デ・シュヴァリエの内部1 ゲームに出てくる町並みといった雰囲気です。防具と薬草を購入して・・・といった感じです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 壁面の窓と入り口 壁面に窓と入り口が規則的にあり、ちょっと面白い形をしていました。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 探検気分 入り口が沢山あり、あちこち中に入るのが楽しいです。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) ゴシック調の回廊 天井のアーチに美しいゴシック調の装飾が施されています。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 教会の入り口 ゴシック調の装飾が施され、重厚な雰囲気がします。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) モスクの部屋 所有者がマムルーク朝になってから、イスラムの祭壇が取り付けられました。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) らせん階段 雰囲気のいい螺旋階段が取り付けられていました。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 変わった部屋 変わった造りをしていた部屋です。何か特別な用途で使用されていたのでしょう。(Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 大きな通路 天井などに煤が目立つので、台所として使われたのでしょうか。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 通路 アレッポのスークのように天井の採光窓から光が入ってきます。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) トンネルのような通路 狭い通路が続いています。(Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) 何かの集まり 見学を終えて外に出てみると、入り口付近の広場で地元の人が太鼓を叩いていました。 (Crac des Chevaliers, 8 Mar. 2001) * 感想など * 冒険心を持った人間にとってこんなに楽しい場所が他にあるでしょうか。城壁だけではなく、城内の状態もいいので、ゲームの主人公のような冒険気分で内部を見学をすることができます。 きっと訪れた人のほとんどが満足して城を後にしたのではないでしょうか。私も楽しくてなかなか去ることができませんでした。とてもおすすめの世界遺産です。 シリア中部の情景#9クラック・デ・シュヴァリエCrac des Chevaliers (Qala'at Al-Hosn), 2001 -風の旅人- (2019年12月更新)