風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

房総半島最南端初日の出ツーリング
#3 野島崎での初日の出

<2012年1月>

今年の初日の出は房総半島南端の野島崎に一人でバイクに乗って出かけました。(全6ページ)

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5、野島崎での初日の出

「道の駅きょなん」で缶コーヒーを飲みながら一休み。ふぅ~、疲れた。予定外の雨に振り回され、いつもよりも疲労感を感じる。

さてどうしよう。このまま進んで行くべきか。それともここで待機するべきか。そう考えてしまったのは、雨が降ってきそうな気配があったからだ。

少し空が明るくなってきたので、雲の動きが今までよりもはっきりと見えるようになった。これから向かっていく南側を見ると、空一面に黒い雨雲っぽい雲が掛かっている。それもかなり速いスピードで流れているのが分かる。

嫌な感じの雲だな・・・。恐らく雨雲だ。どうせ初日の出は見られないのだから、ここで落ち着くまで待機し、晴れてから野島崎に向かえばいい。濡れるリスクを考えると、それが最善策だ。

そう心の中で思うものの、ここまで来たなら頑張って行きたいという気持ちもある。やっぱり初日の出目的でやって来たのだから、日の出時間にそこにいることが大事な気がする。

どうしよう。時刻は6時過ぎ。あまり迷っていては日の出時間になってしまう。進むなら急いだ方がいい。

地理院の地図
内房の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

ちょっと迷ったものの、やっぱりここまで来たなら進むことにした。待機するという消極的な選択肢ではなく、挑戦して諦めるほうがいい。

幸いなことに少し南にも道の駅がある。何かあればそこに避難しよう。ここで待っていて、やっぱり行けばよかった・・・と思う方が辛い。

今日の俺なら何とかなる。覚悟が違うんだ。とバイクにまたがり、野島崎へ向かって南下を始めるのだが、この前進は吉とはならず、走り出してしばらくすると本降りの雨が降ってきてしまった。

これはまずい。バイクのカウルに体を伏せ、なるべく濡れないように走るものの、今回はなかなか止む気配がない。このままではいずれ雨が服にしみこんでくる。

やっぱり雨雲が取れるまで待機するのが正しい選択肢だったか。どうみてもあれは雨雲だったもんな・・・。

今さら後悔してもしょうがない。それよりも今どうするかを考えなければ。さっきの道の駅に引き返した方がいいのか。それとも先にある道の駅に行く方がいいのか。一番いいのは今すぐに雨宿りをすることだが、周囲に雨宿りをする手頃な場所がない。バイクだとこれが一番困る。

雨雲の状況もよくわからないし、土地にも不案内なので、何をすれば濡れない最善の選択になるのかがわからない。戻っても濡れるなら進んだほうがまだいい。やけくそになりつつ、前に向かって進んだ。

まずいな・・・。どうしよう・・・とやるせない気持ちで走り続けると、道の駅とみうらの看板が見えた。助かった・・・。あと少しだ。頑張れ。

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道の駅に辿り着くと、建物の軒下にバイクを停めて、バイクごと雨宿りした。

すぐにヘルメットを脱ぎ、上着を脱いで確認すると、ジャケットを二枚重ねていたので、びしょびしょなのは一番外側の上着だけで済んでいた。

ズボンの方は、カウル(風よけ)付きのバイクなので、信号で止まりさえしなければあまり濡れない。それにナイロン製のオーバーパンツを履いていたので、結構撥水もしてくれ、中に履いているジーパンが部分的に湿った程度だった。

唯一濡れているのを感じるのが靴の中。ただ靴は走っているときにエンジンの熱風を浴びるので、雨が上がればそのうち乾くだろう。あまり被害がなかったことに安堵した。

それに上着を一枚脱いだ状態でも寒さを感じないほど気温が高いのも不幸中の幸い。今回もなんとかしのいだな。バイク乗りの辛勝・・・、いや引き分けかな。

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さてどうしよう。この雨に降られた状況ではどう動いていいのかわからない。

そうだ携帯で調べてみよう。天気予報を確認すると晴れのマークが・・・。元旦なので天気予報もお休みなのか。

こういうときはスマホがあれば、詳細な雨雲レーダーなどをすぐに調べられるけど、ドコモのiモードだといまいちよくわからない。

ETC同様に便利なものはあまり持っていないのが旅人の誇り・・・、でもないけど、旅人を楽しくする心得、・・・でもないか。

しかしなんだって晴れ予報で雨が降ってくるんだ。まったく。ぶつぶつ・・・と一人で文句を言ってもしょうがないけど、一人なので一人で文句を言って気を紛らわしたくなる。

地理院の地図
九十九里付近の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

もう日の出時間まで間がない。初日の出は諦めるか・・・。くじけては駄目だ。せっかくここまで来たのにな・・・。来ただけでも十分ではないか。やっぱり行こう。

切羽詰まった状況だったので、頭の中は考えがまとまらなく、混乱気味。いろんな思いが頭をグルグルとめぐっていく。

道の駅でどうしたものかと考えていると、雨が小降りとなり、空も明るくなってきた。そろそろ日の出時間になるのかな。南の方の空がかなり明るい。

あれっ・・・・、南の方は雲がないぞ。頭上には分厚い黒い雲が掛かっているが、野島崎の方は空が見える。ってことは野島崎のあたりは雨が降っていないという事か。

頭上を見上げると雲は横に流れているだけ・・・。どうやら帯状に雲がかかっていて、ちょうどこの付近が雨雲の南端となるようだ。

よしっ、今からなら飛ばせば日の出時間にぎりぎり間に合うかも。いや、どうせ日の出時間に太陽は見えないだろうから少々遅れてもかまわない。

とりあえず行こう。ここにいても仕方がない。それに一度濡れたので、今さら少しぐらい濡れても一緒だ。まだ少し小雨が降る中、野島崎を目指して出発した。

早朝の野島崎 房総半島最南端初日の出ツーリング12'
早朝の野島崎

思った通りで、走り出したらすぐに雨は上がり、頭上に雲はなくなった。これでもう安心。快調に飛ばし、野島崎に到着したのはちょうど日の出予想時刻だった。

岬付近はそれなりに車が多く停まっているものの、先ほどまで雨が降っていたのでそんなに混雑していなかった。今日なら車で来ていたとしても駐車には困らなかっただろう。

急いで行っても日の出が見られるわけではないけど、それでもやっぱり早くいきたい。ということで、バイクを停めると、早歩きで岬の先端に向かって行くのだが、そういう私の気持ちとは裏腹に、引き返してくる人達が多いこと。全く違う思いが交錯するので、すれ違う時に目を合わせるとお互いばつが悪かった。

初日の出を待つ人々 野島崎 房総半島最南端初日の出ツーリング12'
初日の出を待つ人々

岬の先の方へ行くと、多くの人が岩場で日の出を待っていた。そして南東の地平線は・・・、絶望的なほど立派な雲に覆われていた。

でも、これはこれで凄いかも。ある意味とても雲が美しく、きれいな光景だった。これなら日の出が見えなくてもまあいいかといった気になる。それぐらい印象的な光景だった。

明るくなった空と人々 野島崎 房総半島最南端初日の出ツーリング12'
明るくなった空と人々

しばらく岩場で人々に交じって日の出を待ってみるものの、まぶしい太陽が見えることはなかった。

10分経っても状況は同じ。さっきよりも少し空は明るくなってきたが、太陽はまだ分厚い雲の中。海面から屏風のように雲が聳えていたら太陽は当分出てこれそうにない。

その後も時々針の先ぐらいの光が雲の間から見え、周囲の人達がざわざわとするものの、一向に太陽が見える気配がなかった。

そして日の出時間から15分ほど経ち、時刻が7時を過ぎてからは、「こりゃ駄目だな」としゃべりながら去っていく人が増えた。この絶望的な状況ではしょうがないというものだろう。

人が少なくなった海岸 野島崎 房総半島最南端初日の出ツーリング12'
人が少なくなった海岸

待つことも楽しい思い出となるかもしれません。

しばらく場所を変えて写真を撮ったりしていたが、どんどんと人が減り、気が付くと岬には数組の人がいるだけとなっていた。

初日の出の写真はやはり多くの人が日の出を待っているといった構図でなければ面白くない。そうでなければ普通の日の出と一緒だ。

というのが私の些細なこだわりなので、人がいなくなってしまった以上ここにいても面白くない。ぼちぼちと戻るか・・・。太陽はまだ昇ってきそうにもないし。

ここまで初日の出を見に来たというのに、一番大事な目的を達成できず仕舞いとなるのが、少し心残りに感じたが、でもそこまで強い未練は感じなかった。

あの雨の中を奮闘しながらバイクでここまでやって来たこと自体が、初日の出を見る以上の価値があったような気がするからだ。

野島崎灯台 房総半島最南端初日の出ツーリング12'
野島崎灯台
浜辺の鳥居 野島崎 房総半島最南端初日の出ツーリング12'
浜辺の鳥居
白浜野島崎の碑 房総半島最南端初日の出ツーリング12'
白浜野島崎の碑

野島崎には何度も来ているけど、せっかくなので灯台付近を散策しながらバイクのところへ戻っていった。

印象的だったのが、朝焼けの中にたたずむ野島崎灯台。八角形の灯台のシルエットが朝焼けの空に浮かび上がり、とても素敵だった。

この野島崎灯台は色々なことで有名な灯台で、まず明治2年に日本で2番目に点灯した灯台となる。とても歴史のある灯台だ。現在のものは関東大震災で倒壊し、立て直されたもの。高さ29mあり、国の有形文化財に登録されている。

そして全国に16しかない「のぼれる灯台」の一つでもある。この塔の上から眺めると、地球が丸く見えて美しい。今登ったら凄くきれいだろうなと思うものの、残念ながら営業は8時半からだった。

房総半島最南端初日の出ツーリング12'
#3 野島崎での初日の出
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