風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

三浦半島コロッケツーリング
#3 鷹取山と磨崖仏

<2011年11月>

今回は少し趣向を変えて、コロッケ店を巡りながら後輩と三浦半島を一周してみました。(全6ページ)

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5、散歩file.1 鷹取山と磨崖仏

さすがにコロッケばかり食べ続けていてはお腹がきつい。冷静になって考えれば、油とジャガイモの組み合わせはポテチと一緒だ。

そう、コロッケの食べ歩きはほのぼのとしているようで、実は結構ヘビーな企画であったりする。

なので、適度に運動を兼ねた観光をするなどして、少しでもカロリーの消費を行い、また消化時間も稼がなければこの食べ歩きはすぐに行き詰まってしまう。

もちろんそれは計画段階でわかっていたので、途中に観光を織り交ぜた計画を立てた。

観光といっても、やはりコロッケの食べ歩きに似合うのは、探検気分というか、童心に戻れるようなB級スポットだ。そのほうが食べ歩きの方も盛り上がるというものだ。

地理院の地図
追浜付近の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

磯子の浜マーケットから国道16号を一気に追浜まで南下し、ここから内陸に入って鷹取山に向かった。

鷹取山は、追浜の西にある海抜139メートルの山で、横須賀市と逗子市との境付近に位置している。

鷹取山の名の由来は、鎌倉時代に大田道灌がしばしば鎌倉から訪れて鷹狩りをしたとか、ここで捕獲し、献上された鷹に満足し「鷹取山」と名づけたといった説があるようだが、はっきりしていない。

現在は山頂付近が鷹取山公園として整備されていて、山頂の展望台からは、晴れていれば富士山や箱根、房総半島などの眺望が楽しめ、休日にはハイキングコースを楽しむ人でにぎわっている。

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その鷹取山へは、鷹取小学校横のトンネル付近にある登山口から登っていた。この鷹取山に登って展望台からの眺めを楽しもう・・・。それではB級スポットにならない。

ここの面白いところは幾つかあるが、まず山自体がちょっとユニークな景観を持っていることだ。山頂付近に垂直に切り立った岩石の景観があり、その景観から別名「湘南妙義」とも呼ばれている。って、それはちょっと、いや、かなりオーバーな感じがする。湘南の鋸山というのが適切だろう。

石切り場跡の写真 鷹取山 三浦半島コロッケツーリング11'
石切り場跡

登山口から少し登ると、貯水池のような施設があり、そのちょっと上から崖の風景を見ることができた。周囲は垂直に切り立った岩肌が露出していて、その間を歩いていくとまるで別の世界に迷い込んでしまったかのように感じる。

この不自然な崖の景観は石切場だった名残りだ。ここはかつて鷹取石の採石場で、明治中期から昭和初期頃まで石が切り出され、東京、横浜に出荷されていた。なんでもここの石は耐火性に優れ、土蔵などの建築用材や家庭用のカマドにも利用されていたとか。

無数のハーネスの穴の写真 鷹取山 三浦半島コロッケツーリング11'
無数のハーネスの穴

関東大震災によってそれまで使用していた鷹取川の水路が使えなくなり、またコンクリートの登場で石の需要が減り、昭和初期に石切り場の役割を終えた。

その後は放置されていたが、垂直に切り立った崖はロッククライミングの練習に最適なようで、一時期ここで盛んにロッククライミングが行われていた。その痕跡として垂直に切り立った崖には無数の穴が開いている。

これらの穴は足場として打ち込まれたハーケンの跡。垂直の壁一面に無数の穴が開いている様子は、ホラー映画並みに背筋が凍り付く。あまりまじまじと見ていると、フジツボびっしり状態で背中がかゆくなってくる。場合によっては過呼吸等になってしまうので要注意だ。

しかしながら、ここの岩はもろく、実際にはロッククライミングにはあまり向かない岩質のようだ。事故も多く起きたことから現在では鷹取山公園での岩登りは原則禁止となっている。もしどうしても岩登りをしたい場合には、鷹取山安全登山協議会への登録などが必要になる。

磨崖仏、弥勒菩薩尊像の写真 鷹取山 三浦半島コロッケツーリング11'
磨崖仏、弥勒菩薩尊像

ここ鷹取山の凄いのは無数のハーケンの跡だけではない。なんと崖を利用して巨大な磨崖仏が彫られているのだ。

石切り場から少し登ると、少し開けた場所があり、そこに磨崖仏、弥勒菩薩尊像がある。

この磨崖仏は、横須賀市在住の彫刻家、藤島茂氏が昭和35年から約1年かけて製作したもので、像高が約8m、横幅が約4.5mある。足の曲げ方をみるとインドっぽさ感じる。

像自体は凄いと感じるのだが、困ったことに周りの風景と全くマッチしていない。何でここにあるの?といった場違いさがB級スポット的な雰囲気を醸し出している。

おまけによく見ると仏像の足にもハーネスを打ち込んだ跡が・・・。菩薩様の膝で横になりたいと登ってしまった不届き者がいたようだ。気持ちはわかる。とても気持ち良さそう。いい夢も見られそう・・・。いや、やっぱりそれはいかんでしょ。

ちなみに釈迦如来像の磨崖仏もあったようだが、すぐそばにある鷹取小学校建設の時に破壊されたとか。何とももったいない・・・。と感じるのはB級スポットファンだけかもしれない。

鷹取山の展望台の写真 三浦半島コロッケツーリング11'
鷹取山の展望台
展望台からの眺望の写真 鷹取山 三浦半島コロッケツーリング11'
展望台からの眺望

磨崖仏からしばらく何もない山道を歩いていくと、トイレなどがある広場にたどり着いた。ここには仰々しいフェンスが設けられていて、何が何でも徒歩の人しか中に入っては駄目といったオーラを放っている。きっと自転車かバイクで何かやらかした人がいるに違いない。

この広場からはもう一頑張り。山頂に設置されている展望台へ向かった。今日はコロッケを燃料としているので足取りが軽い・・・、とはならないが、コロッケを燃やしながらえっちらこっちらと登ると、展望台に到着。

展望台の上に登ると、なかなか眺めがいい。ただ、あいにくと雲が多い天気だったので、この展望台の売りである富士山や房総半島は見えなかった。

そういえば崖と磨崖仏といえば三浦半島の対岸の房総半島にある鋸山が思い浮かぶ。後は地獄のぞきがあればプチ鋸山ってところかな。

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これで目的は達成。いやいや、ここにはまだ面白いものがあるのだ。下りながら訪れたのが、ちょっと怪しいエリアというか、密教っぽいエリア。

ここには崖や石窟の中に壁に彫られた仏像が沢山ある。沢山あるのだが、彫りは浅く、ペンキで塗ったような色付けがされていて、なんじゃこれ!といったものも多い。

石窟と磨崖仏の写真 鷹取山 三浦半島コロッケツーリング11'
石窟と磨崖仏
仏像のインディーズ作品の写真 鷹取山 三浦半島コロッケツーリング11'
仏像のインディーズ作品

これぞ仏像のインディーズ作品というのか。作りが甘い。ちょっと腕試しに彫ったといった感じのものが多い。

そしてその描かれた仏像の前には「壁面に彫刻したり、塗装したりすることを禁しします。横須賀市」の立て看板が立てられている。ってこれは完全に落書き扱いなのか。

宗教の自由といっても近所の公園のトイレの壁に仏像が彫られたらたまらない。町中に若者がペンキで落書きをするのが許されないように、いくらありがたい仏像様でもむやみやたらと彫ったり、描いたりしては駄目なのだ。

禁止の立て札と仏像の写真 鷹取山 三浦半島コロッケツーリング11'
禁止の立て札と仏像

思えば初めて仏様の落書きを見た気がする。でも興味本位で訪れる立場としては、仏様の落書き、いや作品?はなかなか面白い。

このまま百年放置されれば、後世の人に仏像として認められるのだろうか。世界の遺跡や教会などを訪れると、微妙な作品はよくある。ああいったものも始まりはこんな感じだったかもしれない。このインディーズの仏たちの行く末を想像しながらバイクのところへ戻った。

とまあロッククライミング禁止に、マウンテンバイクなど乗り入れ禁止、崖に仏様を掘るのを禁止、絵を書くのも禁止。行政の悪戦苦闘の数々を見ることのできる公園だったなというのが山を下りてからの感想だった。

三浦半島コロッケツーリング11'
#3 鷹取山と磨崖仏
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