風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

九十九里浜、初日の出ツーリング
#5 茂原観光と笠森観音

<2011年1月1日>

今年の初日の出ツーリングは、県外から多くの人が訪れ、イベントも賑やかに行われる九十九里浜へ向かいました。(全6ページ)

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5、茂原観光

玉前神社でのお参りを終え、バイクのところへ戻ってきた。暑い・・・。ちょっと汗ばむ。少し歩いたというのもあるが、太陽が高く昇るにつれて気温も徐々に上がっているようだ。

夜中にバイクで走れるほどしっかりと着込んでいるので、薄手のセーターを一枚脱ぐことにした。一枚脱ぐとモコモコした感じが少し緩和され、気分的にもさっぱりとした。

地理院の地図
九十九里付近の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

さて出発しよう。これからアクアラインを目指して房総半島の横断して行くのだが、ただ横断するだけだと、あっという間にツーリングが終わってしまう。途中下車の旅みたいに、途中で観光しながら西へ進んで行くことにした。

まず最初の目的地に選んだのは、国道126号線を北西へ少し進んだ茂原。ここにはちょっと変わった戦争の遺構がある。防空壕と聞くとありきたりだが、ここにあるのはなんと飛行機用の防空壕なのだ。

正式には掩体壕(えんたいごう)と言い、なんでも空爆してくる敵機から飛行機を隠すために造られたそうだ。格納庫も兼ねていたということなので、何か秘密基地のようなときめきを感じる。訪れるのが楽しみだ。

飛行機用の防空壕(掩体壕) 茂原 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
飛行機用の防空壕(掩体壕)
樹木が塞ぐ防空壕 茂原 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
樹木が塞ぐ防空壕

国道126号線を進み、茂原市の少し北側を訪れた。太平洋戦争の時、ちょうど三井化学工場のある付近に茂原海軍航空基地が造られた。

その名残として今でもこの周辺に掩体壕が幾つか残っている。とはいえ、観光地というわけではないので、道中に案内標識が設置されていなく、少し訪れるのに苦労した。

迷いつつ訪れてみると、付近には岩山がいくつかあった。これが飛行機の防空壕で、面白いことに飛行機型に中がくりぬかれている。いや、コンクリートを固めて、上に土を載せて造ったようだ。

草ぼうぼうの感じがいかにも自然の丘といった感じで、これなら上空から見ても中に飛行機が隠されていると分からないはず。子どもの遊び場としても楽しそう・・・。

こんなガレージがあったらいいな・・・とは本気で思わないが、もし庭にあったなら遊び心があって面白いと思う。きっとバイクの整備をするのにもワクワクするだろう。

ただ入り口部分には大きな木があり、もう飛行機は入れそうにない。戦争から長く月日が経ってしまったことを改めて感じてしまった。

藻原寺の山門と青空市 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
藻原寺の山門と青空市

せっかく茂原に来たので、町の少し西側にある藻原寺にも寄ってみることにした。

藻原寺は1276年に創始した日蓮宗のお寺で、昔は茂原を藻原と書いていたことからも分かるように、茂原を象徴する寺院となる。

訪れてみると、この界隈は寺町となっているようで、お寺が多く、また周囲は墓地だらけといった立地だった。

下から見上げた藻原寺の山門 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
下から見上げた藻原寺の山門
後ろから見た山門 藻原寺 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
横から見た山門

藻原寺の見所は、チベットにありそうなパゴダ的な山門。高さ25メートル、昭和8年に建造されたコンクリート製の多宝塔形式で、茂原市のランドマーク的存在として親しまれているそうだ。

元旦の澄み切った青空に山門がよく映えていて、どことなく標高の高いチベットのような空気感や異国情緒を感じられる。

ちょうど山門前では青空市が行われていて、骨董品などが売られていた。町中の路上バザールといった雰囲気で、これもアジア的なものを連想してしまう。

懐かしいな・・・。この山門を眺めていると、昔、ネパールやシッキムなどチベット文化圏を旅した時のことが頭に浮かんでくる。

藻原寺の本堂 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
藻原寺の本堂

せっかく訪れたので本堂にもお参り。奥の本堂の方へ行ってみると、こちらは普通の日本的な建物だった。

ここで今日二度目のお願い。やっぱり異国情緒あふれるお寺での願いはこれしかない。「また海外へ旅に出たい・・・。」

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結構動き回ったので、もう昼も近いかなと思っていたのだが、時計を見るとまだ9時半過ぎだった。

少々お腹の空き具合が気になってきたけど、まだ10時になっていないので、ファミレスに行ってもモーニングメニューになってしまう。

もう少し頑張って動いてから食事にしよう。それに今回は九十九里で鰯汁などの接待を受けたので、いつもよりも体の中にエネルギーが残っている感じがする。

地理院の地図
茂原付近の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

じゃ、先を急ごう。ってことで、茂原からはさらに国道409号を西進していった。次の目的地は笠森観音。知る人ぞ知る有名なお寺だ。

到着してみると、駐車場は大混雑し、駐車待ちの列が少しできていた。こんなに混雑しているとは・・・、けっこう人気があるようだ。

誘導の係の指示に従って隅っこに停めた。そしてお待ちかねの元旦恒例の登山の始まり。さあ準備体操を始めよう。

「うっ、今年も歩くの!」「今年は歩かないと思っていたのに・・・。」不意を突かれた友人達の驚く顔。これもまた元旦の定番的な風景といえる。

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登山といっても、今までの初日の出ツーリングと比べるとたいした事はなく、ほどほどに汗をかくぐらいで観音堂がある丘の上に到着することができた。

楽ではなかったけど、きつくもなかったといった感じで、友人たちもホッとしていた。

笠森観音の観音堂 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
笠森観音の観音堂

丘の上にそびえているのは独特の姿をしている観音堂。平安時代に後一條天皇の勅願により、飛騨の工匠の一条康頼、堀川友成等によって造営されたと伝わっている。

特徴的なのは土台部分で、その構造は日本唯一の四方懸造りとなっている。人によっては四方向清水寺と表現するのも納得で、国指定重要文化財にも指定されている。

なかなか趣のある建物だ。下から見ると、城の天守閣のよう。圧巻という言葉がぴったりだ。渋々登らされた友人たちも、この建物を見てからは「これを見るためなら登ってくるのもやむなし」と、納得した表情になっていた。

木造の骨組み 笠森観音 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
木造の骨組み

建物も凄いが、行列も凄いことになっていた。外から見ると、上に上がる階段にずらっと人が並んでいた。あれだけ駐車場が混んでいれば当然か。

待てば行列が減るといった感じではなかったので、すぐに行列の最後尾についた。普段100円する入場料が本日は無料。微々たる金額だが、元旦早々ちょっと得した気分。その分賽銭をはずもう。

列の進み具合は、朝一番に訪れた玉前神社とどっこいどっこい。こちらの方が幾分進みが早い気もする。

ただ足場の悪い急な階段なので、バランス感覚を保ちながら進まなければならない。待ち時間に友人と体をひねって話していたりする間も緊張感を保っていないと、段差で足を踏み外し兼ねない。いや、実際に私は踏み外してしまった。

四方懸造りの土台 笠森観音 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
四方懸造りの土台

列に並んでいる途中、階段から四方懸造りの足組がよく見えた。列の進みが悪いので、ゆっくりと観察することができたのだが、木造のシンプルな構造のようで、色々と複雑でもある。このへんは素人にはよくわからない。

ただ、こんなシンプルな木造の支えで、これほど大きな建物を長年支えてきた事にはとても驚く。今でこそ耐震構造や建築材の強度がしっかりと計算されているが、昔は感や経験だけで作っていたはず。

このぐらいの建物を支えるにはこれぐらいの太さの柱や梁が必要というのは大工職人に代々伝わる経験とか感というやつだったのだろうか。コンピュータとかなしに経験だけでこれだけの建物を建ててしまった昔の大工は凄かったのかもしれない。

下から見上げる 笠森観音 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
下から見上げる

しばらく列の流れに従って進んでいくと、最上階にたどり着き、本尊が置かれている部屋に入ることができた。

この中は写真の撮影は禁止となっていて、ご本尊様が祭壇の正面に置かれていた。信仰心のある人が多く訪れているようで、ここは熱心にお祈りしている人が多い。

邪魔にならないように、今年一年事故のないように、健康であるようにと祈願した。周囲の雰囲気で今日一番熱心にお願いしたな・・・。ここまで苦労して登ってきた事を含めて、願いごとが叶いそうな感じ。

お参りが済むと、長居をしていても混雑を冗長するだけ。速やかに下っていった。そして下から改めて建物を見上げてみると、やっぱり凄い。本当によく造ったものだ。

九十九里浜、初日の出ツーリング11'
#5 茂原観光と笠森観音
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