風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

九十九里浜、初日の出ツーリング
#2 王子、狐の行列

<2011年1月1日>

今年の初日の出ツーリングは、県外から多くの人が訪れ、イベントも賑やかに行われる九十九里浜へ向かいました。(全6ページ)

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2、王子、狐の行列

初詣や年越しの準備に追われる町の様子を流し見ながら、北区の王子にやってきた。

時刻は11時半すぎ。狐の行列は日付が変わると同時に始まるということなので、まずまずの時間に到着できた。

王子は巣鴨の北側にある町で、歩いていると少し下町っぽい雰囲気を感じる。それと同時に、新幹線やら高速道路が中心部を横切っているので、現代の交通の要所といった雰囲気もある。見方によって色々と解釈が出来そうな町だ。

さっそく行列が行われる駅前の大通りに行ってみると、もう既に多くの人が行列がやって来るのを待っていた。

結構人気があるんだ・・・。元旦とはいえ、寒い季節の深夜に行われるイベント。駅前という立地からそこそこ人はいるとは思っていたが、こんなに多くの人が開始時間前から待っていることに驚いてしまった。

装束稲荷神社 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
装束稲荷神社

王子で行われている狐の行列は、この地の伝承を基にして始められたイベントとなる。伝説では、大晦日の晩に関東中の狐が大榎の下に集まり、衣服を正して関東総社の王子稲荷に参った、となっている。

安藤広重の浮世絵「名所江戸百景」でもこの様子が描かれていて、浮世絵には「王子装束ゑの木大晦日の狐火」と題名が付けられ、暗い中、大榎の下に多くの狐が集まり、これから神社に参拝しようとしている様子が描かれている。写真で見ると、幻想的でおとぎ話の一場面といった素敵な絵だ。

この狐が集って衣服を正した大榎の下というのは、現在の装束稲荷神社がある場所とされている。

商業地の一画にある小さな神社で、今では昔の面影を感じることは難しいが、社の横に少し大きめの木が植えられているので、頑張って想像力を働かせれば、ちょっとだけ伝説になぞって見ることができるかもしれない。

王子狐ばやしの行列 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
王子狐ばやし

この装束稲荷神社では、伝説になぞって古くから大晦日の晩にかがり火を焚き、狐囃子を行ってきた。

平成5年の大晦日には、地域の有志数十人が浮世絵に倣い、狐の面と袴を着て、手には提灯を持ち、列をなして王子稲荷神社に初詣を行った。

これが現在行われている狐の行列の始まりとなり、それ以降、徐々に地域に根付いた行事となっていき、それとともに行列の規模が大きくなっていった。

そして今ではすっかり町を挙げてのイベントとなり、王子の名物として東京に、いや世界にも名が知られるようになった。

カウントダウンの様子 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
カウントダウンの様子

行列まで時間があったので、装束稲荷神社を訪れてみることにした。しかし、神社のある狭い路地は多くの人でごった返していて、神社に近づけそうにない。狐の面をした人が多いことから、どうやら行列に参加する人の集合場所となっているようだ。

時刻は間もなく、深夜零時。新しい年が始まる。「カウントダウンの準備を行います」とアナウンスしていたので、そのまま路地の隅っこで待機していると、新しい年への祝いと、これからの行列への活を入れるといった感じで、威勢よくカウントダウンが行われた。

凄い熱気と盛り上がりだ。狭い路地で行われたので、多くの人の熱気がもわ~と伝わってきた。きっとこの瞬間からこの付近の気温が2、3度上がったと思う。

王子狐ばやしの囃子連 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
王子狐ばやしの囃子連
籠に乗った稚児・神子狐 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
籠に乗った稚児・神子狐

カウントダウン後は速やかに列の準備が行われ、12時10分頃から狐の行列が始まった。

大通りで群衆に交じって列を待っていると、先頭は大きな幟を持った人と王子狐ばやしの囃子連。獅子舞が沿道の人の頭を噛みながら進んできた。その後ろは袴姿の人たち。狐の面をかぶり、提灯を持っているので、浮世絵に倣った地元の青年団となるだろうか。

袴姿の人たちの後ろは、凝った衣装に身を包んだ人たちや、小さな御輿、籠に乗った稚児・神子狐が続き、ここまでが公式の行列といった感じだった。

その後ろからは揃いの狐装束をまとった婦人会や大きな狐の面が続き、そして色とりどりの衣装で参加している一般の人達が続いていた。

小規模な行列が静かに町を練り歩くと思っていたので、「えっ、まだ列が続くの・・・」と、深夜に多くの人が練り歩いている事に驚き、何よりも寒い中、多くの人が沿道で行列を見守り、盛り上がっていることにビックリした。

狐の大きな面 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
狐の大きな面
白狐様 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
白狐様
赤狐様 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
赤狐様

駅の東口から始まった行進は、線路の下をくぐり西口へ。その後は王子稲荷神社に向けて商店街の細い道を進んでいった。

細い路地だと、参加者と見学者との距離が近くて、イベントへの親密感がわいてくるというもの。ただ、その分混雑は激しくなるわけで、列の進行が停まることも多かった。

でもその間を利用して見学者が狐の衣装をまとった人達と一緒に記念写真を撮ったりすることができ、大通りよりも和やかな雰囲気だった。

神楽殿での獅子舞 王子、狐の行列 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
神楽殿での獅子舞

狐の行列は伝説どおりに王子稲荷神社に参拝して終わる。列とともに神社を訪れてはみたものの、境内は既に初詣の人でごった返していて、ひどい混雑ぶり。身動きが取れないほどだった。

行列は参道の人混みの中を通っていき、拝殿前で終了。関係者はそのまま拝殿に入っていき、それ以外の人は神楽殿の方へ。

神楽殿を訪れてみると、行列で使われた大きな面が神楽殿の柱に掲げられ、王子狐囃子の演奏が多くの観客の前で披露されていた。

その演奏が終わると今度は獅子舞の演舞。観客のテンションが異常に高く、ノリがいい。普通の獅子舞を見ている雰囲気ではなく、中華街の獅子舞のよう。

そして一番盛り上がったクライマックスでは、獅子は口に咥えていた「新年あけましておめでとう」の垂れ幕を下ろした。この瞬間、周囲は歓喜に包まれ、ハイタッチをしながらその場にいるみんなで新年を祝った。

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これ似て行事は終了。楽しかったな・・・。感動したな・・・。と、余韻に浸りながらバイクを停めた場所に戻った。わざわざ見にきて良かったと思えるような狐の行列だった。

さてどうしようか。狐の行列を見たらちょっと手持ちぶさたな状態。時刻は1時すぎ。さすがに今から九十九里へ向かっても早く到着しすぎてしまう。

どうしようか・・・と考えるまでもなく、元旦の深夜には元旦の深夜だけの風景があるはずと、深夜の都内の徘徊を始めた。

最初に訪れたのは2011年バージョンでライトアップされている東京タワー。ただ、最近は事あるごとに様々な色にライトアップされているので、少々色が変わっていてもあまり感動がない・・・。

でもまあせっかく来たことだし、時間は沢山あるしと、近くから、そして少し離れた場所から写真を撮ってみた。

東京タワーのライトアップ 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
東京タワーのライトアップ

この他にも有名な神社や寺などにも寄ってみたものの、明治神宮や浅草などの人が多いところは交通規制や人ごみがひどくて気軽に立ち寄れる感じではなく、人が少ない場所ではもう電気が消えて暗くなっていたり、片づけが始まっていたりと、どうも両極端。

元旦の深夜なので色々と面白いものが見られると思っていたが、思ったよりも面白くないな・・・。明々とネオンが灯り、多くの人が変な盛り上がりをしながら大騒ぎをしていた六本木が強烈に印象に残ったぐらいだった。

九十九里浜、初日の出ツーリング11'
#2 王子、狐の行列
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