風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

九十九里浜、初日の出ツーリング
#3 九十九里での初日の出

<2011年1月1日>

今年の初日の出ツーリングは、県外から多くの人が訪れ、イベントも賑やかに行われる九十九里浜へ向かいました。(全6ページ)

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3、九十九里での初日の出

1時くらいまでは部分的に賑やかだった東京の町も、1時過ぎてからはどんどんと暗くなっていった。

温かい時期なら普段することがない真夜の東京の散策も、好奇心から楽しく感じるのだろうが、寒い時期だと町の明かりが消えていくとともに寒さが身に沁みてくる。都内の徘徊にも飽きてきたな・・・。

寒いとやっぱり楽しい気持ちも縮こまってしまうというもの。それに狐の行列で感動しすぎてしまったのもあって、あまり積極的に見て回ろうといった気分にならない。

予定より少し早いけど九十九里へ向かい、現地で待っていよう。もしかしたら友人たちが早く来るかもしれない。

地理院の地図
千葉付近の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

時間に余裕があるし、下道での移動が大好きなので、のんびりと一般道で向かっていくことにした。

まずは都内を脱出し、湾岸道路へ。そして千葉へ向かって進んでいった。いつもは車が多いこの道も、元旦の夜中とあってほとんど車が走っていない。道は真っすぐ、そして3車線と広々としているので、走っていてなかなか気持ちがいい。

千葉から国道126号を外房に向けて東進。ゆっくりと走っているつもりでも、車がほとんど走っていないので、あっという間に房総半島を横断し、東金まで来てしまった。九十九里まではあと少しだ。

東金を過ぎたぐらいから車の通行量が今までよりも増えた。みんな目的は私と一緒で初日の出に違いない。孤独な旅路なので、同じ方向に向かって進む旅人たちがいると少し安心する。

ただ九十九里は広いので、目的地が同じとは限らない。前の車についていけば到着できるというわけでもないので、ちゃんと地図を確認しながら目的地の片貝海岸に向かった。

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さて、片貝海岸はどこだろう。この付近の土地に明るくないので、暗い海沿いの道を走っていると、どこがどこやら分からない。

ちょっと不安になりながら走っていると、前方に煌々と大きな火柱のようなものが上がっているのが見えた。あれか。近づいていくと、大きなたき火が浜辺で焚かれていた。

ここで間違いない。まるで狼煙というか、旅で言うなら大きな常夜灯といったところか。遠くからいい目印になり、孤独に旅をしている旅人にとって不安を解消してくれる頼もしい存在だった。

浜の焚火 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
浜の焚火

片貝海岸の駐車場に入ってみると、もうすでに満車状態。早い時間から多くの人が訪れているようだ。

ただ車の中で待機している人が多いようで、多くの車の中がテレビなどの画面でほんのり明るかった。

バイクなので適当な場所に停め、浜辺へ向かった。時刻はまだ5時。日の出は6時48分ごろなので、まだまだ時間がある。初日の出にこんなに早く来たのは初めてだな。

寒いので、浜にある焚火に当たりながら、友人に「着いたよ。今どこ?」などとメールを入れてみるものの、返事は返ってこない。まだ寒い中を一生懸命走っている最中のようだ。

大鏡餅 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
大鏡餅

しばらく冷えた体を焚火で温めていたが、十分に温まってくると、ちょっと手持無沙汰な状態。

それにこの暖かさに慣れてしまうと焚火から離れられなくなってしまう・・・。ってことで、辺りを少し散策してみることにした。

片貝海岸にある「ふる里自然公園センター」前の広場が、初日の出イベントのメイン会場となっている。

広場にはテントがいくつも並んでいて、どこもこの後の接待などの準備で忙しそうにしていた。中でも鰯汁のテントではおばさん達が大わらわといった感じだった。

この広場には巨大な鏡餅が供えられていて、訪れる人達の目をひときわ引いていた。

鏡餅の前には鳥居が設置され、臼のような賽銭箱も置かれていることから、ここでは鏡餅様とご神体のような存在なのかな。見ていると記念撮影する人だけではなく、お参りしている人も多くいた。

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時刻は5時半になった。体が冷えてきたので、一旦焚火に戻って当たっていると、広場の方の群衆の様子に変化があり、人の流れやざわめきが起きていた。

なんだろうと行ってみると、鰯汁の配布が始まるようで、行列が出来始めていた。このためにここへ来たと言っても過言ではない。早速列の後ろに並んだ。

鰯汁の配布 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
鰯汁の配布

結構長い列だ。これは時間が掛かかりそう。最低30分は覚悟しておいたほうがいいな・・・。といっても、どうせすることがないし、ちょうどいい時間つぶしになるかも。

そう思いながら列の後ろに付いたのだが、配布が始まると、列は思いのほかずんずんと進んでいった。

テントを見ると、おばちゃんたちの手際がとてもいい。「毎年のことなのよ!」ってな感じで効率よくぱっぱと配っていた。おかげでそんなに待つことなく順番が回ってきた。

鰯汁を手にすると、焚火まで行って食べるのが一番幸せな食べ方だと思って移動しようとしたが、足元の悪い砂浜だし、冷たい手で運んでいるので、途中でこぼしてしまいそう。

新年早々に残念なことになっては縁起が悪い。と思い直し、広場の隅っこで食べることにした。

食べてみると うまい。来年もこのために来てもいいかもと思ってしまうほどうまい。それに温かいので体もホクホクと温まってくる。 鰯と九十九里のおばちゃんたちに感謝だな。

黒潮太鼓の演奏 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
黒潮太鼓の演奏

ふぅ~、うまかった。暇だし、もう一回並んで食べようかな・・・。再び列の方へ向かおうとすると、太鼓の演奏が聞こえてきた。

そういえばさっき大きな鏡餅の横で太鼓を並べていたな。鏡餅のところへ行ってみると、子どもたちが寒い中で太鼓をたたいていた。

寒い中での演奏は手が冷たかろうに。寒い中をバイクに乗って来たので、寒々しく感じ部分に自然と視点がいってしまう。

それにせっかくの演奏だったが、周囲の雰囲気はどちらかというと鰯汁の方に夢中といった感じで、観客が少なかった。ここは写真でも撮って盛り上げようではないか。フラッシュが光ればやる気も出るだろうし。

写真を撮りつつ、太鼓の演奏を見ていると、友人から電話がかかってきた。到着したとのこと。今どこ?と尋ねると、鰯汁の行列に並んでいるとの返事。さすがバイク乗りの嗅覚は凄いな・・・。

さてどこにいるかな。テントの方へ戻ると、列は先ほどよりも随分と長く伸びていた。まあ後ろの方から探せば見つかるだろう。

長蛇の列の中から友人を探し始めると、あっけないほどすぐに見つかった。バイク乗りの格好はかなり目立つ。いや浮いているという方が正しいか・・・。

無事に再会すると「明けましておめでとう。」と、新年の挨拶を済ませた。

焚火の火の粉 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
焚火の火の粉

時刻は6時15分。日の出まではまだまだ時間はあるし、何度も甘酒や鰯汁を食べていたら水っ腹になってしまうというもの。

友人達と日の出時間までたき火で暖をとることにした。待ち時間にこのように暖をとれるのはバイク乗りにとってはとてもありがたい。車だと車内で待機する事ができるが、バイクではそれができないからだ。

だから鰯汁を含めてこういうサービスというか、心遣いは本当にありがたく感じてしまう。

ただ風通しのいい浜なので、時々強く風が吹くのが厄介だった。いきなり風向きが変わったり、燃えている木材が崩れたりすると煙や火の粉に見舞われることも。

熱って感じで済めばいいが、バイク用の防寒ジャケットは表面がビニール製。火の粉が付くと、プチっといった感じで簡単に溶けて穴が開いてしまう。安いものでもないので、要注意だ。

日の出を待つ人々 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
日の出を待つ人々

焚火で友人としゃべりながら温まっていると、東の空がどんどんと明るくなってきた。日の出時間までもう少しだな。

徐々に人々が浜辺の方へ移動していき、波打ち際に人の壁ができてきた。こちらからだと人の姿がきれいな影になるので、その様子が美しく感じる。

天気は晴れ。快晴と言うのがふさわしいほど空に雲がない。ただ肝心の太陽が昇ってくる付近の水平線上に、少し雲が浮かんでいるのが見える。

少し気になるけど、まあ、あれぐらいなら日の出には影響はしないだろう。

旋回する飛行機 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
旋回する飛行機

6時半頃になると私の希望でたき火から離れ、浜の後ろの方に移動した。群衆と日の出といった写真を撮りたいと思ったからだ。

焚火から離れるとやっぱり寒く感じる。早く太陽さん昇ってこないかなと体を揺らしながら待っていると、上空に飛行機がやってきて頭上を旋回していった。

もしかして初日の出フライトというやつなのかな。それとも単に成田から出発していった便なのかな・・・。よくわからないけど飛行機が中途半端に飛行機雲を残して去っていった。

最初はまだきれいな線だったのが、どんどんとふやけていき、これは美しいとは言えない。まったく上流市民のやることは・・・。空に落書きをするな!と言いたいが、下にいる庶民がぼやいたとこでどうにもならない。

九十九里浜でのご来光 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
九十九里浜でのご来光
飛行機雲とご来光 九十九里浜、初日の出ツーリング11'
飛行機雲とご来光

飛行機雲が気になるが、今さら場所を動いても中途半端になりそうなので、この場で待機。

水平線を見ながら待っていると、どんどんと水平線付近が赤くなっていき、6時47分頃、御来光。歓声があちこちから起こっていた。

富士山からの日の出もよかったけど、やっぱり水平線から昇ってくる御来光は雄大だな。多くの人が訪れているのも納得だ。浜辺に並んでいる人々の背中からも感動というものが伝わってくる。

これだけいい日の出が見られると、今年は何かいいことが起こりそうな予感がする。でも・・・、やっぱり空に落書きしていった飛行機が邪魔だったな。

九十九里浜、初日の出ツーリング11'
#3 九十九里での初日の出
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