天狗と深海魚ツーリング
#5 戸田港と深海魚
<2008年4月>
天狗寺と言われる大雄山最乗寺などに寄りながら、西伊豆の戸田へ深海魚料理を食べに行ったバイクツーリング記です。(全6ページ)
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7、深海魚定食を求めて
酒水の滝、金時公園と立ち寄りながら西進し、御殿場近くの道の駅「ふじおやま」に到着した。
ここでようやく御殿場のアウトレットに来ているはずの名古屋の後輩と連絡がついた。さっきから連絡していたのに・・・とブツブツと文句を言ってもしょうがない。
連絡が付いたものの、どうやら寝坊して、さっき到着したばかりのようだ。電話越しに「まだ来たばかりで、もうちょっと居たいのですが・・・」と言っている。
この展開からしたら、「しょうがないな。そっちへ行って昼食を食べよう。」というのが、一番良さそうな妥協案になるだろうか。
だが、今日のツーリングの一番の目的は深海魚を食べること。それを楽しみに遥々やって来たのに、アウトレットで昼食では盛り下がってしまう。やっぱりこの部分は譲れない。
それにもう12時半近い。これ以上遅くなると、昼食ではなく、夕食を食べに行くことになってしまう。
「我々は戸田へ行くけど、アウトレットがいいようだったら、いてかまわないし、好きなようにしてくれ。」と伝えると、「あっ、いや、今すぐ行きます」と、ようやく我々と合流する決意が固まったようだった。どうもバイク乗りは時間にルーズでいかん。
このまま国道246号を南下していき、国道246号と沼津インターの出口付近でバイクを停めて待っていると、高速の出口の方から後輩がやって来て、無事に合流した。
もう1時すぎ。時間も時間だ。先を急ごう。ここからは一気に修善寺まで南下し、そこから戸田へ向かって山を越えていった。
戸田に着くと、お目当ての深海魚が食べられるという魚重食堂へ。深海魚料理の幟が珍しく感じるが、店の外観などは漁港にある普通の食堂といった感じだった。
店内に入ってみると、休日の昼時は混んでいるという話だったが、もう2時だったので他に一組の客がいるだけだった。
好きな席に座ってと店のおばさんに言われ、座敷の席に座った。さて何を食べよう。メニューを眺めると、深海魚の刺身定食や天丼などが目玉となるようで大きく写真入りで載っていた。
とはいえそれはメニューのほんの一部で、一般的な海鮮のメニューの方が豊富だ。メニューの感じからすると、深海魚を好んで食べるのは観光客ぐらいなのだろう。
それにしても腹が減りすぎだ・・・。お腹のすき具合から天丼の重い感じに凄く惹かれるけど、やっぱり純粋に深海魚を味わってみたいので刺身定食の方かな。
本日の深海魚刺身定食(1500円)は「ごそ(ヒウチダイ)」と「めぎす(沖ギス)」。よしっ、これにしよう。
頼んでからそんなに待つことなく、定食がやってきた。ご飯と味噌汁が大盛で、小皿が多いのが、地元密着型の定食屋さんといった感じで、好感が持てる。
肝心の深海魚はごそ(ヒウチダイ)の姿造りがメインとなり、持ってきたときは「お~」と思ったが、目の前に置かれてよく見ると、水分が飛んでげっそりとした姿をしていた。
深海魚は水が抜けやすい体質なのかな・・・。浸透率がどうたらこうたらとか・・・。って、これは単に時間が経ちすぎているようだ。
味の方はヒウチダイは金目鯛に近い種類の魚なので、期待して食べたのだが、いまいちぼやけた味がする。鯛自体淡白な感じなので、まあこれはしょうがないかな。その他の刺身も「これは旨い」というほどではなかった。
全体的には期待が大きかっただけに、失望もでかく感じるといったやつで、思ったほどでもなかったかな・・・というのが正直な感想だ。
もっと深海魚には頑張ってほしいところだが、このへんが深海魚の限界ってやつなのだろう。おいしければ高級食材として引っ張りだこになっているだろうし。
「この値段なら普通の店で刺身定食を食べたほうがよかったかも・・・。」と、アウトレットからせかされてやって来た後輩がぼそっと口にする。
確かに1500円出せばもっとおいしい刺身定食を食べることができるだろう。それには同意だ。でもこの深海魚がここまで来る原動力になってくれたのだから、それを言っちゃいけない。
朝から一緒の後輩は、がっつりと脂っこいものが食べたいと、深海魚天丼を頼んだ。そして「これは美味しい。」「器も大きく豪勢だ。」と、はしゃいで食べていた。
なんだと。そっちにすればよかったのか。深海魚の天ぷらがどっさりとのっていて旨そうだ。
刺身と交換し、一口もらってみるとうまい。淡白な身が天ぷらによく合っているではないか。揚げ方もそんなに悪くないし、これはいいかも。
もらった時はそう思ったものの、後輩がもう少しで完食というところで、再び「食べませんか?」と天ぷらをくれた。
「おっ、いいのか。」遅刻したことの償いかなと思ったら、「飽きてしまいました・・・。」との事。
深海魚がどっさりとのっていて見栄えのいい天丼だったが、実際はどれも似たような味なのだ。例えるならキス(鱚)が山盛りの天丼といった感じだろうか。
せめてシソとか海苔とかの天ぷらをのせた方がいいような・・・とお節介ながら思ってしまった。
8、戸田港と深海魚
戸田といえば、天橋立のような砂州によって囲まれた湾があり、その湾から富士山が見えるといった風光明媚な土地だ。
残念ながら頭上は晴れているものの、富士山方面は雲が多く、湾の向こうに美しい富士山の姿を見ることができなかった。
砂州によって守られている湾内は穏やかで、天然の漁港として漁業も盛んだが、古くから造船が行われてきた事でも知られている。
そのきっかけとなったのはロシア軍艦ディアナ号の沈没で、その艦長や乗組員のロシア人が船の修理のためにここに長く滞在し、ヨーロッパの船の技術をこの地に伝えた。
その経緯や当時の造船技術の資料、ロシア軍艦ディアナ号艦長プチャーチンの遺品や代船建造の記録が展示されているのが戸田造船郷土資料博物館で、砂州部分の先端付近にある。
それに付随して深海に生息する深海魚を300種、1000点展示している深海生物館もあるようなので、食事で満足できなかった分、行ってみる事にした。
砂州部分をバイクで走っていくと、左手に駿河湾。右手に松林と砂浜、道路沿いには駐車場が続いていた。
海はきれいそうだし、雰囲気もいいし、海鮮料理も食べられるし、夏には海水浴客で溢れかえっていそうだ。
先端部分には戸田造船郷土資料博物館の他には諸口神社があった。まずは戸田造船郷土資料博物館に入ろう。
料金の300円を払って博物館に入館すると、館内のロビーにはボランティアのおじさんが待機していて、展示室に向かおうとする我々に「案内しようか」と話しかけてきた。
気軽に深海魚を見に来ただけなので、大そうな解説してもらうほどでもないかな。自分たちのペースで回れなさそうだし。そう思って断ろうとしたのだが、断り切れなかった。
一度は断ったのもの、このおじさんの解説したい!退屈でたまらないんだ~!といった強烈なオーラに負け、二度目の勧誘で陥落。気のない返事で「じゃあ、お願いします」と頼んでしまった。
これが災難の始まりだった。困ったことに話が長い。長すぎるのだ。社会科見学で訪れている訳ではないんだから、もっと簡単でいいよ。目や態度で訴えても自分の世界に入ってしまったようで、延々と説明が続いていった。
おかげで小さな博物館だというのにとんでもなく見学に時間がかかってしまった。いや~疲れた。人の話を聞くのも疲れる。ボランティアを頼んだのに我々がボランティアをしたかのような気分だった・・・。
戸田とロシアとの関係や、戸田の造船について詳しくなって博物館を出た後は、せっかくなので砂州の先端部分を少し散策してみた。
先端部には博物館とともに諸口神社がある。小さいながら周囲を緑に囲まれているので、霊験あらたかな雰囲気がする神社だ。
この神社の鳥居が湾を隔てた戸田の町の方へ向いて、鳥居越しに戸田の町を眺めることができる。なんかいい感じ。それに灯台の代わりに鳥居があるというのも面白く感じる。
散策を終えてバイクのところへ戻った。そうだ記念の写真を撮っておこう。そう思い付いたのだが、ここの駐車場ではいまいち味気ない。
そういえば、さっきの戸田港のところが雰囲気がよかったな。戻って写真を撮ろう。と、再び深海魚を食べた食堂近くの桟橋へ行き、バイクを並べて写真を撮った。
人間も一緒に写そうと思ったが、今日は三脚を持ってきていなかった。周りを探しても台として手ごろな物も見当たらず断念。まあ人間が写っていないほうが、絵的にはきれいかもしれない・・・。
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