風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

天狗と深海魚ツーリング
#2 大雄山最乗寺へ

<2008年4月>

天狗寺と言われる大雄山最乗寺などに寄りながら、西伊豆の戸田へ深海魚料理を食べに行ったバイクツーリング記です。(全6ページ)

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2、二宮尊徳さん

当日の朝、起きてみると、外はどんよりとした曇り空だった。いかにも雨が降ってきそうな感じ・・・。

自宅の東京、途中の神奈川、そして伊豆の天気予報を確認してみると、どこも似たような予報で、曇りのち晴れ。午前中は少し降水確率が高いものの、昼からは完全に晴れの予報となっていた。雨に降られたとしても朝だけで済みそうだ。

地理院の地図
大井町付近の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

集合は大井松田インターを出てすぐのコンビニ。急な雨などで雨宿りしなければならなかったり、渋滞が起きたりするかもしれない。企画者が遅れては・・・と、念のために少し早めに出発したら、30分も早く待ち合わせ場所に着いてしまった。

ちょっと早く着き過ぎてしまったな・・・。東京から国道246号を走ってきたのだが、渋滞もなく、雨も途中でポツポツと降られる程度、予想外に順調な道中だった。

早く着くのはいいのだが、コンビニの駐車場にいてもすることがない。近くで気軽に時間をつぶせる場所はないかな・・・と地図を見ると、二宮尊徳記念館が目に止まった。

二宮尊徳って、この地域の人だったんだ。でも、この時間だと閉まっていそうだな・・・。

でもまあ、暇だし行くだけ行ってみるか。外から何があるのかぐらいは確認できるだろう。興味を引くようなものがあれば、別の機会に改めて訪れればいい。

二宮尊徳生誕の地の写真 天狗と深海魚ツーリング08'
二宮尊徳生誕の地
二宮尊徳の生家の写真 天狗と深海魚ツーリング08'
二宮尊徳の生家
二宮尊徳の生家内部の写真 天狗と深海魚ツーリング08'
二宮尊徳の生家内部

訪れてみると、記念館は閉まっていたものの、二宮尊徳生誕の家がある敷地の方は解放されていた。よかった。中に入れる。

中に入ってみると、茅葺屋根の立派な感じの建物が保存されていた。二宮尊徳生誕の家といっても、まあ普通の古民家。いや昔だったら立派な家になるのかな。

建物の内部も開放されていて、自由に入ることができた。中に入ってみるものの、やっぱり普通の古民家。まあ誰が暮らしていても古民家は古民家といったところだろう。

二宮尊徳の像の写真 天狗と深海魚ツーリング08'
二宮尊徳の像

ここで衝撃を受けたのが、敷地内の目立つ場所に設置されていた二宮尊徳の像。なんと驚くことに、普通のおっさんの姿をしていた。

本を読みながら薪を担いでいるといった少年の姿ばかり見てきたので、薪を担いでいなければ、本も読んでいない。そしてただ立っているおっさんという姿に、もの凄く違和感を感じてしまう。

尊徳君が見事に成長して、尊徳さんになったんだな・・・。まあ現実はそうなんだろうけど・・・、でも何か違うような・・・。なかなか頭の中で整理がつかない。

当然活躍したのは晩年のことなので、郷土の人となっている姿はおっさんとなる。

昔話の主人公がおっさんになってしまったというか、おとぎ話の現実を目の当たりにしてしまったようなガッカリ感を感じながら写真を撮り、約束の時間が迫っているので集合場所に戻った。

3、大雄山最乗寺へ

時間ピッタリに集合場所のコンビニに戻ってきたが、後輩は来ていなかった。やれやれ、また遅刻か・・・。

5分待つものの、来ない。そして10分待っても現れない。やれやれと思いながらメールを入れても連絡がこない。

何分ぐらい遅れるとか連絡してくれれば待つ気にもなるけど、いつまで待たなければわからないとイライラしてくる。

先に行くか・・・、大雄山最乗寺の天狗が早く来いと俺を呼んでいる。何かあれば携帯にかかってくるだろう。無駄に待つのが大嫌いな性分なのだ。

それにじっとしていたら私も尊徳君のようにあっという間に尊徳さんになってしまう。光陰矢の如しだ。

後輩を見捨てて、大雄山方面に進んでいった。次の目的地は南足柄の山の中にある大雄山最乗寺。天狗寺として有名な曹洞宗の古刹だ。

よく伊豆へツーリングに行くけど、いつも湘南の海沿いを通っていくので、どん詰まりの山奥にあるこの古刹へは訪れる機会がなかった。

今回は内陸部を通って伊豆へ向かうので、ルート的にもピッタリ。前々から訪れたいと思っていたので、かなり楽しみにしていた。

大雄山への道の写真 天狗と深海魚ツーリング08'
大雄山への道

伊豆箱根鉄道の大雄山駅を越え、しばらくすると道は緩やかな上り坂となり、道幅も細くなった。

道路沿いには古風なつくりの民家が多く、道路脇には庚申塔やら石の道標も置かれている。走っていると古くからの旧道とか、参道といった情緒が感じられ、これから向かう最乗寺への期待がどんどんと高まってきた。

大雄山の仁王門前の写真 天狗と深海魚ツーリング08'
仁王門前

道沿いに並んでいた民家が途切れたところに最乗寺の仁王門があった。ちょっと寄ってみよう。

バイクを停めていると、ちょうど後輩から電話がかかってきた。「集合場所ってどこですか?」って、遅い!

「連絡がなかったから先に行ってしまったわい。とっとと追いかけて来い。そこからだと、そのまま駅方面に進んで、駅からは大雄山という看板の案内通りに進んでに来ればいい。きっと仁王門の先のどこかにいる。」と適当。

迷子になっても文明の利器である携帯電話があるので、会えないということはない。それに探す方も、どこにいるか分からない方が楽しかろう。とても後輩思いのやさしい先輩なのだ。

大雄山の赤い仁王門の写真 天狗と深海魚ツーリング08'
赤い仁王門

赤い仁王門は雨上がりのせいか、しっとりと美しい佇まいをしていた。仁王門もいいけど、その仁王門越しに見える向こう側の景色がまたいい。

門から先はうっそうとした杉林が真っすぐに伸びていて、少し靄がかかっているのもあって神秘的な雰囲気がする。霊験あらたかなパワーが奥から門に流れてくる感じがして、門の前に立つと気持ちがいい。

異世界につながる門といった感じだな。この先には何が待っているのだろう。最乗寺はどんな寺だろう。好奇心が抑えきれない。先を急ごう。

line

仁王門から先へ進んでいった。ここからは道の両脇がうっそうとした杉林となり、道も曲がりくねった山道となった。

明らかに今までと雰囲気が変わり、俗世から聖域内に踏み込んでしまった、といった感じだった。おまけに今日は靄がかかっているので、進んで行くと山に吸い込まれていくような感じもする。

こういった人里離れた神秘的な雰囲気だと、天狗や鬼に物の怪といった類が出てきてもおかしくないな・・・。ちょっと怖いけど、そういった存在との出会いも面白いかもしれない。

でも、それよりも・・・・、路面が濡れていてちょっと危険。なんだかヌルっとした感じで滑りやすそう。スリップという魔ものにも気を付けなければ。

二十二丁目茶屋付近のお堂の写真 大雄山最乗寺 天狗と深海魚ツーリング08'
二十二丁目茶屋付近のお堂
二十二丁目茶屋付近の写真 大雄山最乗寺 天狗と深海魚ツーリング08'
二十二丁目茶屋付近

しばらく杉林の中の道を走ると、茶屋などが並ぶ二十二丁目茶屋に到着した。ここはお堂とお土産屋が数件並んでいて観光バスが数台停まっていた。

この付近も雰囲気がいいな。ちょっと降りて歩いてみるか。一般車の駐車場はもう少し上にあるようだったが、ここで一旦バイクを停めた。

後輩が来た時にわかるように目立つ場所にバイクを置いておき、少し付近を散策してみることにした。

ここからは団体客や路線バスで訪れた人たちの参道が始まる。日曜とあってちらほらと観光客が参道の階段を登ったり、下ったりしていた。でも中高年のおじさんやおばさんばかり。若い人がいないのがちょっと寂しい。

杉の木に囲まれた参道の写真 大雄山最乗寺 天狗と深海魚ツーリング08'
杉の木に囲まれた参道
見上げると美しい杉の森の写真 大雄山最乗寺 天狗と深海魚ツーリング08'
見上げると美しい杉の森

周囲に立派な杉が林立している遊歩道を歩いていると、今までは靄といった感じだったのが、急に濃度が濃くなり、霧と言える状態になった。

周囲の背景ををぼかすように覆う白い霧。その中にそびえるようにある杉は神秘的で、上を見上げると立ち眩みをしてしまうほど美しく感じる。

少し奥の方まで歩いてみると、一段と霧が濃くなり、佇んでいると霧と木々に包まれるような感覚。これぞ神々の森ってな雰囲気で、ほんとうに素晴らしい。

朝はあいにくの曇り空だし、雨もパラパラと降ってくるしと、今日は天気に関してはいまいちだな・・・と思っていたのだが、むしろ絶好のコンディションに訪れたようだ。

夫婦杉の写真 大雄山最乗寺 天狗と深海魚ツーリング08'
夫婦杉

しばらくパシャパシャと写真を撮っていたら、ようやく後輩が「すいません。遅くなってしまって・・・。」と、やってきた。

「おう、きたか。悪いな先に行ってしまって。尊徳さんが光陰矢の如しと耳元で囁くから先に行くことにした。」「はっ、なんですか、それ???」「あっ、いやいや、こっちのこと。」

先輩なのでここは寛容なところを。と言いつつも、小言を言って今度自分が遅れたらみっともないので言えない・・・。

「なんか凄いところですね。まるでもののけ姫の世界ですね。」と言う後輩と一緒にバイクのところへ戻り、奥の駐車場に移動した。

天狗と深海魚ツーリング08'
#2 大雄山最乗寺へ
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