風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

御前崎、初日の出ツーリング
#5 浮世絵の薩た峠

<2006年1月>

友人から初日の出を見に行こうと誘いがあり、御前崎へ人生初の初日の出ツーリングに出かけました。(全5ページ)

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5、浮世絵の薩た峠

空には青空が広がっていた。気温もどんどんと上がっているようで、早朝のような凍てつく空気の冷たさはなくなった。もちろん久能山へ登った後なので、体が温まっているというのもあるだろう。

すがすがしい感じの正月晴れだな。空気も澄んだ感じで気持ちいい。この青空を見ると、どうせなら日の出の時から晴れてくれれば、もっと爽快な気分になっていたのに・・・と思ってしまう。

思ってしまうが、それもまた巡り合わせ。旅の綾の一つなのだろう。「だったらよかったのに・・・」というのは旅を本気で楽しみたければ言ってはいけない禁句だ。

地理院の地図
日本平付近の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

さて汗も引いてきたことだし、そろそろ出発しよう。次の目的地は由比近くの旧東海道の薩た峠。安藤広重(歌川広重)の浮世絵に描かれている峠だ。

東照宮を出発すると、そのまま国道150号、通称いちごラインを東に向けて走っていった。そして清水で国道1号バイパスに合流。更に東進した。

バイクで走ると、体に受ける風は冷たく感じるものの、防寒着をしっかりと着ているので、程よい寒さといった感じ。ひんやりと爽快というのがいい得ているだろうか。道路も混んでいなく、なかなか気持ちのいい道中だった。

旧東海道、薩た峠の道標 御前崎、初日の出ツーリング06'の写真
薩た峠の道標

興津で1号バイパスを降り、身延に向かう国道52号へ。すぐ先にある東名高速道の高架下を右折。ここから細い山道を登っていった。

この峠が旧東海道の薩た峠となる。薩た峠とは東海道五十三次の由比宿と興津宿の間にある峠で、ここから見る風景を安藤広重が浮世絵に描いたことで知られている。古くからの景勝地であると同時に、東海道の難所でもあったようだ。

ちなみに峠のある薩た山は、漁師の網にかかって引き上げられた地蔵菩薩像を山に祀ったことからその名が付いたそうだ。

旧東海道、薩た峠の眺め 御前崎、初日の出ツーリング06'の写真
薩た峠からの眺め

あいにくと富士山は雲の中でした。

細い道を登っていくと、駐車場を兼ねた展望台に到着。辺り一面みかん畑といった場所で、潮風とミカンの香りがするさわやかな場所というのが第一印象だった。

ここから富士市の方向を眺めると、安藤広重の浮世絵と同じような眺めを見ることができた。ただ、空は晴れていたが、肝心の富士山が曇の中。姿が見当たらない。きっとあの辺りに雪を被った富士山があるはず・・・とイメージを湧かすしかない。

なんだかこれって初日の出と同じような展開・・・。悪くはないけど、よくもない。今日一日なんか微妙に物足りない感じがする。

でも青空と青い海、木々の緑とミカンの黄色に囲まれた環境の中で、のんびりと風景を見ていると、そういったことはどうでもいいかなと思えてくる。

写っていなければならない写真とは違って、想像すれば色々と補える。旅とはそういうものだ。一枚の浮世絵から富士山を想像してみたり、江戸時代にここを通っていった旅人を想像したりすると楽しい。そういう意味では色々と旅心を刺激してくれる場所でもあった。

それにしても高速道路などの近代的な建造物が混じっていても、あまり昔と雰囲気が変わらないのは不思議だ。うまく調和しているというべきなのだろうか。

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峠からは旧東海道を由比宿に向けて下っていった。この東海道の道中がとても素晴らしかった。

古い家々が狭い街道沿いにずらっと並んでいて、とても雰囲気がいい。しかも正月ということで、家の前には門松や日本国旗が掲げられていて、古い町並みの情緒がいっそう増していた。

緑に囲まれた高原などを颯爽と走るのも気持ちいいが、こういった古い情緒ある町並みをかみしめるように走っていくのも心地いいものだ。

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旧東海道を走り、情緒ある由比宿、由比本陣を通り過ぎた後で、再び国道1号に合流した。

この先は特に目的地や予定はなかったけど、この付近の国道1号線はバイパスとなっていて走りやすいし、車が少ないし、何より通行料金が節約できるしと、高速に乗るのは沼津からという事にして沼津に向けて走った。

そして沼津からは東名に乗って、いつもどおり海老名SAで集合すると、もう夕方になっていた。夕食には早すぎるし、ここで食べると家に帰って食べられなくなる。軽く喫茶をしてくつろぐだけにした。

一服していてもやっぱり出てくる話題は久能山東照宮の長い階段だった。予想外の展開だったし、かなりきつかったのでみんなの印象に強く残ってしまったようだ。でも辛かったこともこうやって振り返ってみればいい思い出となっているものだ。

「お疲れさま。明日はみんなで仲良く筋肉痛になろうね。」とここで解散し、それぞれの家路についた。

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無事に帰宅すると、人生初めての元旦初日の出ツーリングが終わった。やれやれ疲れたな。夜中から活動していたので、疲労感一杯だ。

でも充実感も一杯で、元旦早々、大冒険というわけではないけど、なんかちょっとした事をしたぞといった気分だった。

一年の計は元旦にあり。今日の充実感が今年一年のやる気につながりそうだ。今年はいい年にするぞ。そしていい夢を見るぞ。と、夕食後は早い時間に床に入った。

徳川家康が、君は志のある人間だとか。君は100万人目の参拝者だとかで、徳川の財宝のありかを教えてくれる夢だったらいいな・・・。

御前崎、初日の出ツーリング06'
ー 完 ー
風の旅人 (2020年11月改訂)

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