風の結晶 ~風の旅人エッセイ集~
旅や旅人にまつわるエッセイ#8

旅人の恋愛

旅に出ると色々な出会いがあります。旅先で偶然知り合った恋人。とてもロマンチックなイメージを感じますが、実際はどうなのでしょう。旅人の恋愛についてつづってみました。

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1、出会いが大事な旅だけど

旅とは日常からの脱出です。日常の行動範囲や人間関係から脱出し、新しい風景や人間、文化、食事と出会う事が旅の醍醐味となりますが、とりわけ人との出会いは特に重要な要素であり、例え観光が面白くなくてもいい人との出会いがあればその旅は素晴らしいものと思えてきます。

それは色んな国々を旅してきた者にとってはしみじみと実感する事で、よく酒の席などで「どこの国が一番よかった?」などと聞かれるのですが、遺跡が素晴らしかった場所、風景が素晴らしかった場所、そこに住む人々が素晴らしかった場所と様々なことが頭をよぎり、正直言ってあまりにも漠然とした質問に困ってしまいます。

旅人同士が集まった場合にはそれが顕著に現れます。同じようにユーラシア大陸を横断した旅人がトルコ辺りで出会った時、それぞれよかったと感じた国などを聞いてみると出てくる国はバラバラです。なぜ?って聞いてみると、そこで出会った人がよかったからかな・・・という少し曖昧な返答が多かったりします。

そんな人との出会いが重要な旅ですが、とりわけ男女の出会いというのは色んな事を考えさせられます。もちろん男女関係は日常生活でも色々と考えさせられますが、ここでは旅といったフィルターを通した恋愛について考えてみたいと思います。

ただ、男女の関係というものは簡単に文章で定義出来るものではないし、事実は小説よりも奇なりなんて言われるほど色んなケースがあります。だから私が出会ったごく少数の旅人から旅人の恋愛はこうだと結論を出すのも浅はかな事だと思います。

言い訳っぽいかもしれませんが、あくまでもここに書いてあるのは私が出会った旅人や自分の経験から感じたことです。そんなに外れていないとは思いますが、これが全てではないので、こういう考え方やこういう人もいるんだなといった感じで読んでもらえるとうれしいです。

本題に入る前にちょっと質問してみましょう。海外旅行において「旅人の恋愛」を考えるなら、どういう恋愛を想像(もしくは理想)しますか?日本人の旅人が現地の人と恋をする事ですか?それとも日本人の旅人が日本人の旅人と恋をする事ですか?はたまた旅人に恋愛は必要ないでしょうか?自分が実際に旅する旅人だと思って考えてみてください。

旅の情景スケッチ 旅する女子の写真 旅の情景スケッチ
旅する女子

楽しそうに旅をしている女性はとても魅力的に見えます。

2、旅人同士の恋愛

まず旅人同士の恋を考えてみましょう。旅に出て旅人同士の恋を理想とする人は、少々閉鎖的な欲求不満型の人が多いようです。わざわざ海外に出て同郷の異性と出会いを求めるのは、日本で出会いの機会が少ないとか、はたまた感傷的な動機で旅に出たとか、その人の旅を考えると現実逃避的要素が強い感じがします。

最近は昔よりも女性の旅行者が増えましたが、それでも海外を一人旅行をするのは男性がほとんどです。治安の安定しない地域や衛生環境の悪い国への旅となるとその傾向は顕著です。そういった環境の中で旅を続けていると、人恋しくなり、また色んな意味でのはけ口が欲しくなります。

日本人が溜まっている宿などに行くと、「可愛い子来ないかな~」「可愛い子がこんなとこに来ないよ」「可愛くなくてもいいから女の子来ないかな~」「一緒に旅してくれる女の子いないかな~」といった会話をよく聞きます。こうぼやく人と話をすると、特に当てもなく旅をしている人が多いようです。「今はのんびりしているようだけど、俺は動く時には動くんだ。女の子が一緒なら張り切って観光するんだけどな。」といったような屁理屈が口癖なのですが、この後に続くパターンとして、売春婦で我慢するか・・・とか、女がだめなら麻薬で我慢するか・・・と、はけ口というか、刺激が過激になっていく傾向があるようです。

同じ国の異性の旅人は言葉の障害がないので、寂しさを紛らわすために一緒になりやすいといえますが、長期で旅をしている人はそれぞれに何かしらの覚悟や目的があって海外に出てきているわけなので、恋愛をしている場合ではありません。デートぐらいならいいのですが、長期に渡って一緒で行動するということに抵抗がある人が多いようです。だから旅人同士というのはなかなか真剣な恋愛対象になりにくいものです。

それに長期の旅人はそれぞれが自我の塊っぽいところがあり、考え方に芯があるというか、頑固というか、独創的というか、好き嫌いがはっきりした性格の人が多く、まずはデートからと始めてみても、やっぱり性格的に無理という場合も多いです。圧倒的に売り手市場の女性旅行者は、次々と声をかけてくる男性旅行者、そして現地の男性にうんざりといった感じで、男とハサミは使いようといったように、目的意識のない旅人からは情報を聞き出したり、治安の悪い場所に同行してもらったりと、いいようにあしらっていることが多かったです。

もちろん同じ目的や同じ趣味を持っているなら意気投合する事も可能でしょう。同じ旅をするもの同士なので、気が合うこともあるかと思います。でも多くの場合、一時的にはうまくいっても、ある程度の期間が過ぎたり、ある共通の目的(国境越えや秘境ツアーなど)を終えた後にお互いの新鮮さというか、異性の連れがいるといった旅の新鮮さが薄らぎ、お互いの関係に疑問を感じつつ、いつの間にか元の一人旅に戻っていたりします。本当にその人が好きだったのだろうか。後で考えてみると、ちょっとカップルを演じて旅をしてみたかったとか、寂しさを紛らわしたかったというのが正直なところかもしれません。

やはり旅が長い人の場合は、何かがしたくて旅をしているわけで、異性と楽しく旅をしたいわけではありません。理想の人と思っても自分の旅の方が優先順位が高くなってしまいます。もちろんこの人が生涯での伴侶だ、旅をしている場合ではないという人もいることでしょう。でもお互いが同じようにそう思わないと旅が続いたり、一緒に帰国することができません。タイミング的にゴールが見えた状態とか、帰国が近い時ならまた別なのかもしれませんが、生活の土台がなく、自由に行動するもの同士というのは意外と融通が利かなくて難しいのです。

その一方、学生旅行のシーズン。とりわけ卒業旅行シーズ人になると、日本人が集まる日本人宿と呼ばれる宿では日本が世界に誇る若者の文化、合コンなどといったものが開かれていたりします。「自分は~~大学の学生で、4月からは○○社に勤務します。」などと自己紹介する若者の中に、仕事をやめて旅に出ている身としてはなかなか入りつらいものがありますが、本気の人やら旅の余興で楽しんでいる人やら単に宴会気分の人やらと入り混じっていて、なんか不思議な光景でした。

気晴らしというか、束の間の息抜き的要素が強いのが卒業旅行だったり、短期の旅行です。こういった旅行ではカップルになりやすい環境ではありますが、こういった場所で出会っても・・・、日常的な接点がある場合はいいかもしれませんが、そうでないとこれもまた一時的な出会いで終わりそうな感じです。

旅の情景スケッチ サンバを踊る少女たちの写真 旅の情景スケッチ
サンバを踊る少女たち

南米でのイベントでは欠かせない光景です。
祭りは男女が知り合ういいきっかけですが、
言葉が通じないとさっぱりです。

3、旅人同士のカップルの行く末

旅先で生まれたカップルは最終的にうまくいくのでしょうか?私の周りでも実際に結婚している人がいましたが、ほとんどの場合が長く続いていないようです。その理由を考えると、アメリカのパニックものの映画でたまたま一緒に居合わせた男女が降りかかったパニックを乗り越えて恋に落ちるといったストーリーがありますが、それと同じ事かなと思えます。

旅とは脱日常の出来事。いわば普通でない状態なのです。旅先で輝いてみえた人でも、日本に帰って現実というフィルターで透かしてみると、単なる給料の安いフリーターではないかという事も十分にありえます。また、旅先では自由に時間を使っていたり、少々だらしない事に何も感じなくても、日本で一緒に生活してみれば時間にはルーズだし、部屋は片づけないしと、現実の生活のなかで不満が爆発するケースも珍しくありません。

また帰国した直後に日本の日常での接点がない場合が多いのも原因の一つだと思います。アメリカ映画の特殊な環境で生まれた恋は長く続かないという格言は旅にも言い得ているのかもしれません。更に言うなら、映画やドラマで共演者がそのまま意気投合して電撃結婚したものの、撮影が終わってしばらくすると役の感情から現実の感覚に戻り、なんでこの人が好きなんだろう、理想の人と違う・・・と離婚してしまうのも同じような事でしょうか。

逆に「成田離婚」という言葉が示すように、旅に出て別れてしまうケースもあります。華やかな新婚旅行についてはあまり詳しくは知りませんが、テレビで見る限りでは、「こんなにだらしない人だと思わなかった。」「こんなにはっきりしない人だと思わなかった。」などと、今まで相手の見えない部分が見えてしまったケースが多いように感じました。女性が男性に愛想を尽かすのが多いのでしょうか。

これは前にあげた例と逆で、普通でない状態においてはマニュアル(ガイドブック)通りに事が運びません。日本では雑誌などに書いてあるデートコースばかり調べて、その通りにうまく事を運んでいた人に多いケースではないでしょうか。旅は攻略本が用意されているロールプレイングゲームとは違います。普段マニュアル通りに事柄を進めることでうまく輝いていた人のメッキが落ちてしまっただけなのでしょう。でもまあ・・・、結局のところ相手のことを知らなかっただけの事で、旅とはあまり関係ないような気もします。それに最近では成田離婚も死語になりつつありますね。

その他、旅人同士の場合での応用編として、日本人旅行者が欧米人とか韓国人などの旅人と恋するというパターンもありますが、基本は日本人同士の場合と同じです。こういった場合、あくまでもどちらかが片方の国の言葉を話すケースが多いようです。例えばフランス人と日本人といった場合、どちらかが相手のフランス語か日本語を話すような組み合わせの事です。

両方とも英語しか話せない場合(ネイティブを除く)は、コミュニケーションがいずれうまくいかなくなり、そんなに長く続かないようです。最初は一緒にいるだけでも幸せかもしれませんが、そのうち細かいすれ違いや文化の違いが気に障りだすようになった時、ちゃんとコミュニケーションがとれないとストレスになることが多いからです。でもこういうケースは同じ国籍以上に一時的なはけ口というか、旅で外国人の恋人を持ったという気分に浸りたいだけである事が多いような気がしました。

旅の情景スケッチ 観光案内所の女学生の写真 旅の情景スケッチ
観光案内所の女学生

日本語学科に通っている学生がいて、
珍しく若い子に囲まれて話ができました。

4、旅人と現地の人との恋

では次に、現地と人との恋の場合を考えて見ましょう。旅をしているからには世界を又に掛けて・・・ってな感じで、国境を越えた恋なんていうのもスケールが大きくていいかもしれません。最近は国際結婚も一般的になってきたので、旅のお土産に婚約者・・・なんていう発想は短絡的ですが、でも人生どこでどういう巡り合わせに出会うか分からないもの。まあ「事実は小説よりも奇なり」といった感じで、そんなつもりはなくても思いもよらない出会いが待っているかもしれません。

ただ、こういった場合は色々な要因が考えられるものの、まず第一に旅をするほうに時間のゆとりがないと難しいと思います。そこで暮らす人を好きになるにしても、その場所にある程度滞在しないといけません。ビッチリとスケジュールが決まっている短期旅行者にはいい出会いがあってもいい人や理想の恋で終わってしまう事が多いです。

短期旅行者の中には帰国後、とんぼ返りのように再び戻ってくる人もいてビックリしましたが、一度食事をしたり、観光案内をしてもらっただけで、運命の人だといった感じで相手の全てが分かった気になって戻るというのは、ちょっと浅はかだと思います。恋は盲目とは言いますが、盲目になりすぎではないでしょうか。国際結婚となると、相手の国の文化も宗教なども考えないといけないのですから。

現地と人との恋は男女によってパターンが違うので分けて書いていきます。まず男の場合ですが、国や宗教にもよりますが現地の女の人と出会える環境があまりないです。観光地や公園といった場所を訪れても大抵集団でいることが多く、言葉の問題もあるのでなかなかその辺の女の子と仲良くなるきっかけがありません。だから近くにいる存在、宿の娘に惚れる、近くの食堂で働く女性に惚れるといった事が比較的多いと思いますが、かなり頻繁に通って印象を良くするなどしないとデートすらすることもできません。いきなり見も知らない外国人に心を許すほど身の軽い女の人はそういないからです。

それに好きになったところで、こっちで仕事を探すのも現実的ではないし、日本につれて帰るのも・・・といった感じであれこれと先のことを考えると難しいものがあります。ということで、多分男性旅行者の恋愛で一番多いのが売春婦に入れ込むケースです。遊びのつもりが本気になりというか、特にタイではアパートを借りて売春婦と同棲している人が多くてちょっとびっくりしました。それが当たり前の文化のように感じてしまうのが恐ろしいぐらいです。

ただ、結婚まで行くケースというのはやはり少ないのではないでしょうか。あくまでも見聞きした話からの推測ですが、真剣に悩み、結局周りに説得されたり、自分でけじめをつけて帰国している感じです。この辺の感覚は身勝手な男の性分というか、いざとなれば帰国してしまえばいいやといった感じでしょう。ただあまりにも深入りしすぎると、売春婦の元締めのマフィアに責任を取ってもらうぞ!と因縁を付けられて・・・ということもあるので、ほどほどにといったところです。

旅の情景スケッチ 夜の歓楽街の写真 旅の情景スケッチ
夜の歓楽街

土地に不慣れな旅行者は特に注意が必要です。

女の場合では、恋は女の特権といわれるように男と比べるといろんなケースが思い浮かびます。自分が惚れるケースに逆に惚れられるケース。配偶者の生活を考えなけらばならない男に比べると身の振り方が容易な分、色んな可能性を模索できるのかもしれません。それは海外にある日本人宿の多くが現地の人と結婚した日本人女性が切り盛りしているのがいい例かもしれません。

その反面、男性と違って結婚詐欺が多いのも問題です。次から次へとやってくる日本人女性相手にジゴロをやって生活を立てることができ、結婚詐欺までいくと一財産築けてしまうのが後進国での現状だったりします。笑ってしまいますが、女を抱けて、さらに金までもらえるときたなら男としていいことはありません。いってみれば日本で問題になっている援助交際の逆バージョンってなものになるのでしょうか。

おかげでそういう地域では熱心に日本語を勉強する若者が多いです。またそういうことが慢性化してくると、カネヅルとして日本人の彼女を持つことがステータスになっている国もあります。インドネシア、ネパール、トルコ、イスラエルなどといった国が特に顕著でそういった国を旅行すると、普通の女性旅行者からなんかこの国では売春婦のように思われているといった不平不満もよく聞きました。こういったことも一時的な恋のうちなのかもしれませんが、傍迷惑な恋愛の仕方はやはり問題があるのではないでしょうか。

旅の情景スケッチ バラの少女の写真 旅の情景スケッチ
バラの少女

民族衣装に身を包んだ女性は美しいです。
微笑みかけられるとすぐに恋に落ちてしまいそうです。

5、旅人の恋の難しさ

結局のところ、現実的に旅人と現地の人の恋愛を考えると、金銭の損得というものが密接に結びついているように感じます。特に日本は経済的にも高い水準の国です。だから男性旅行者が旅をしていると、藁にもすがる思いで日本人に自分の娘を嫁がせたいと考える親が娘を紹介してきたり、日本の豊かさに憧れる売春婦にしがみつかれたりと、お金の損得だけを考えた政略な話も多かったりします。

また日本人と親類になれば一族が経済的に安泰だという考え方もあります。もちろん女性旅行者でも同じ事で、ジゴロ、結婚詐欺といった目先のお金目的に近づいてくる人も多ければ、あわよくば結婚して日本国籍をと考える人もいます。結婚詐欺とまではいかないにしても金銭(豊かさ)が目的であることも多いです。その辺の見極めがしっかりとできないと、自分が好かれているのか、金銭のために尽くされているのかが判断できず、結婚詐欺に遭ったり、結婚後すぐに離婚となってしまうこともあります。

恋は盲目なり・・・、いや、ちゃんと目を開いて現実的に考えないと国際結婚は失敗する確率が高いと思います。そんなのすぐに分かるではないかと思うでしょうが、なかなか当事者には分からないものなのです。そもそも旅自体が脱日常をテーマにした非現実的な世界です。そういった状況にどっぷりと浸っていると、非現実的な恋愛も現実的に思えてしまう節があるようです。大使館に旅行者から窃盗などの被害届が多いのは当たり前ですが、結婚に関した相談も実は多いです。

また、恋愛とは少し違うけど男と女の関係という事でいえば、日本では到底できない事ですが、物価の安い国でならとお金に任せて売春婦をはべらせてという曲がった恋愛感もあります。それは男性の特権ではないとばかりに女性旅行者でも小遣いをばら撒いてビーチボーイをここぞとばかりにはべらせて女王様気分を味わっている人もいたりします。日本じゃないからいいやとばかりに行動しているようですが、そういった道徳観のかけらのないような事もごく一部の人ですが海外では行われています。

政略結婚に結婚詐欺、道徳観のない買春・・・、そう考えていくと旅人の恋にロマンを感じるのは想像の世界だけの方がよさそうです。想像の中で異国の恋人が欲しいとか、異国の金持ちと結婚して宮殿で暮らすなどと憧れるぐらいがちょうどいいのかもしれません。それに同じ職業とか、同じスポーツ選手ならまだしも、ほぼ接点のない異国の人間同士は、生活や文化、経済、宗教の違いといった現実的な壁が大きく、どちらかというと政略結婚に例えるような現実的な恋でなければ成り立たないのではないでしょうか。

もちろん困難が大きいほど燃えるような恋ができる場合もあるのでしょうが・・・。でもやぱり・・・、こういう事は机上の空論では語れなく、結局は人それぞれなんですよね。そういった様々な人間模様に出会えるのもやはり旅ならではの事で、そういった人間模様を観察するのも面白いものです。でも気がついたら自分が・・・ってことも十分にあり得るのでお気をつけて。

旅や旅人についてのエッセイ
#8、旅人の恋愛

ー 風の旅人 (2019年9月改訂) ー

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