風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

清澄山初日の出ツーリング
#2 清澄寺の初日の出

<2007年1月>

房総半島の清澄山へ、日本で一番早い初日の出を見に行こう!をテーマにツーリングを行ってみました。(全4ページ)

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2、清澄寺の初日の出

昨年は早い時間に集まって、時間を調整しながら目的地の御前崎に向かったものの、途中で時間を持て余し気味になってしまった。

ということで、今年は少し遅めに出発し、一気に目的地に行くことにした。集合は少し遠い館山道の市原PA。時間も少し遅めの5時とした。

私はいつもどおりの節約の旅。下道で大晦日の都内を散策しながら集合場所へ向かった。

しかし、なんか寒い。冬の夜なので寒いのは当たり前だし、覚悟の上の事なんだけど・・・、寒さで体がピリピリとしてくる。

特に湾岸道路に出てから酷くなり、橋を通過するときなど、寒さで体がしびれるような感じがする。今年は暖冬なので体がまだ冬の寒さに慣れていないのだろうか。

なんか変だなと走っていると、道路脇の気温表示を見てビックリ。なんとマイナス1度。寒いはずだ。ひょぉ~~~点下ではないか。

今まで氷点下になるような寒い中でツーリングした事があったっけな。色々と思い起こしても思い当たらない。昨年の初日の出ツーリングは比較的暖かかったし、そもそも寒い時期のこんな時間帯にバイクに乗ることがない。

地理院の地図
房総半島の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

下道で行ったので、市原PAで集合した仲間3人を姉崎袖ケ浦ICの出口付近で待って、無事に合流した。そしてここから隊列を組んで清澄山に向かった。

まずは県道24号から国道410号に入った。そして久留里方面へ進んで行き、常総松丘で国道465号と合流。橋がやたらと多い亀山湖畔を過ぎると、清澄山へ続く県道81号に入った。

この道に入ってからが今回のツーリングの山場だった。と大袈裟に書くほどのことでもないけど、最初のうちはちゃんとした2車線の道だったのが、進んで行くと車がすれ違うのが困難なほどの細い道になった。

照明もほとんどなく、道が真っ暗。路面に何が落ちているかわからないので、慎重に細い道を走っていくのだが、しばらくするとなんと道が行き止まり。あれ、行き止まりだ!みんなストップ、ストップ。

おかしいな・・・、なんか迷子になっているぞ。もしかしてさっき工事をしていたところを曲がらなければならなかったのかな・・・。とりあえず戻ってみよう。

えっ、ここでUターンするの?何やってるの!という仲間の視線や言葉を受けつつ、道が狭いし、少し傾斜になっているのでバイクを降りて、慎重に切り返しながらバイクの向きを変えた。

暗い道なので前方よりも路面に気を付けながら走っていたし、寒すぎて、自分の吐く息でヘルメットのシールドがすぐに曇ってしまうし、設置されているのも小さな案内板だったし、道路の工事もしていたしと、言い訳する要素は沢山ある。

でもここで言い訳をしてもしょうがない。開き直って、「こういうアクシデントがなければツーリングは楽しくない。旅はトラブルがあってこそ面白いんだ。」と、道を間違えた人間が胸を張って言ってもきっと逆効果だ。素直に「ごめん、ごめん。」と謝りながら、全員が無事にUターンを終えるのを待った。

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迷子になったものの、その後は間違えることなく、ちゃんと日の出時間に間に合って清澄山に到着した。よかった。この一番大事な部分さえ間違えなければ問題ない。

到着してみると、駐車場は満車状態。バイクも数台停まっていた。結構人が来ているんだな。流石は日本一早い初日の出スポットだけはある。

仲間に「ほら凄い場所だろ。こんなに人が来ている。」と、ここを目的地を選んだ正当性をアピール。もちろんさっき迷子になった汚名返上といった意味も含んでいた。

しかしここがこれほど賑わっているのは、初日の出が早く見られるという旅のネタによるものではなく、日蓮さんがここからの日の出を見て日蓮宗を開眼した日蓮宗の聖地となっているから。

さすがの日蓮さんも当時ここが日本一早い初日の出の場所とは知らなかったはず。なんとも妙な因果というか、うまい組み合わせとなったものだ。

参道を歩く友人たち 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
参道を歩くバイク乗り

駐車場にバイクを停めると、清澄寺境内の奥にある日の出ポイント、旭ヶ森の展望台を目指した。

寒いには寒いけど、風を切って走るバイクに乗るためにしっかりと防寒対策をしているので、バイクを降りて歩き出すと寒さは感じない。

唯一感じるとしたら顔などの頭部ぐらいだが、友人にいたっては頭が寒いのが嫌だとヘルメットも被ったまま。気持ちはわからなくもないけど、さすがに後ろから見ると不審者だ。

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参道を歩くと、清澄寺に到着。境内は明々とライトが灯されているものの、ほとんど人はいなかった。みんな初日の出を見るために旭ヶ森展望台に行っているようだ。

今なら並ばなくても参拝できるけど、やっぱり人が多いときにお参りするのが初詣だよな。列に並んで願い事を考えているときも意外と楽しかったりする。

旭ヶ森の展望台の日蓮像 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
旭ヶ森の展望台の日蓮像

境内から少し丘を登ったところに旭ヶ森展望台があった。訪れてみると、大きな合掌をした日蓮の像が東の朝日のほうに向かって建てられていて、その前で多くの人が日の出を待っていた。後ろから見ると、日蓮さんと初日の出を見る会といった雰囲気だ。

肝心の朝日の方は・・・。明るくなってきた東の空を見ると、分厚い雲がびっしりと空を覆っていた。これではちょっとやそっとでは太陽が出てこれない。

今年もまた昨年と同じパターンではないか。日の出が見えるのは予定時間よりも20分後ぐらいかな・・・。やれやれ、今年もか・・・と、ため息をつきながら後ろの方でやる気なく待っていると、どこからとなく念仏やら太鼓の音が聞こえてきた。

ん、なんだ。後ろから聞こえてくるのか。しかも段々とこっちに近づいてくるぞ。後ろの方を伺っていると、僧侶の行列がお寺の方から展望台に登ってきた。なんだろうと思いながら見守っていると、お坊さんたちは日蓮の像の前へ進み、東の空に向かって一斉に念仏を唱え始めた。

これは雲払いの念仏か。ここは日蓮宗の聖地だ。雲払いの秘儀とか奥義が伝わっているのかもしれない。なかなかサービスがいいぞ(かなり勘違い)。頑張ってくれ。

題目を唱える僧侶たち 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
題目を唱える僧侶たち

東の空に向かって太鼓を叩きながら題目を唱えます。

さてどうなるのだ。これだけ分厚い雲が東の空を覆っていては、モーゼの十戒のようにズバッと雲を割って太陽の道をつくるしかない。日蓮宗にはそんな凄い法力があるのだろうか。

この芳しくない状況、日蓮宗の真価が試されているぞ。と後ろの方で偉そうに眺めていた。実は、「初日の出が日本一早い」でしか調べてこなかったので、この時はいきなり始まった念仏の意味がよく分かっていなかったのだ。

雲の合間からの太陽光 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
雲の合間からの太陽光

念仏が始まってから5分が経った。相変わらず状況は変わらない。お坊さんたちはやっぱり太陽が見えるまで声を張り上げて念仏を唱えるのだろうか・・・。群衆もずっとこの場にいるのだろうか・・・。

絶望的に朝日が見えそうにない現状では、朝日よりも帰るきっかけの方を心配をしてしまう。

こりゃ、駄目そうだ。そろそろ戻ろうか。今なら混雑していない。人混みの後ろで帰る算段をしていたら、雲の隙間から太陽がピカっと覗いた。

えっ、絶対に見えそうになかったのに・・・これは奇跡か。それとも念仏の効果なのか?あちこちから歓声が起こり、展望台に集まっていた群集は朝日の方向へ一斉にカメラや携帯を向けていた。

旭ヶ森展望台の初日の出 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
旭ヶ森展望台の初日の出

雲の合間でしたが、神々しく感じました。

絶望的な状況からの逆転劇。モーゼの十戒のように壮大な展開ではなかったが、これでも十分に凄い。なかなか感動的だ。ずっと後ろの方でやる気なく見ていた私だったが、太陽が見えた瞬間からやる気が出てきて、場所を移してちょっと高い場所から写真を撮ったりし始めた。

昨年同様にすっきりとした初日の出ではないけど、なんか今年はちょっと感動的。念仏効果のおかげか少し神々しくも感じてしまった。

柔らかい日を浴びた日蓮像 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
柔らかい日を浴びた日蓮像

これでキリが付いたので、群衆は次々と展望台から離れ、帰路に着き始めた。

ふと日蓮さんの像を見上げると、柔らかい日を浴びて、優しい感じで佇んでいた。なんだか満足そうな表情。信ずるものは救われる。慌てない。慌てない。と表情で語りかけているように見えた。

清澄寺の参拝 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
清澄寺

切りがいいところで我々も清澄寺のほうへ戻り、初詣をすることにした。初日の出と初詣ができてしまうというのは・・・・、意外と便利なものだ。

ここ清澄寺(せいちょうじ)は、日蓮宗の7つある大本山のうちの一つになる。

案内板を読むと、およそ1200年の昔、「不思議法師」と名付けられた僧侶が千光を発する柏の木で虚空蔵菩薩の仏像を彫り、その仏像の前で21日間修行をしたことが始まりになるそうだ。

承和3年(836)には天台宗である比叡山延暦寺の祖慈覚大師円仁師がこの地を訪れ、同じくその仏像の前で21日間の修行をした事で、この後は天台宗の寺として栄えた。

日蓮が登場するのは天福元年(1232年)のことで、12歳だった日蓮は小湊からこの寺に入り、道善法師に師事した。そして修行を終えると、諸国を周って各宗の奥義を学び、32歳の時に帰山し、旭が森で日蓮宗立教の第一声をあげたとなっている。

清澄寺 初詣の様子 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
初詣の様子

境内を訪れると、朝日を見ていた人たちの長い行列が・・・とはなっていなく、ほどほどに人がいる程度だった。多くの人は日の出前に済ませてしまったようで、そのまま駐車場に向かっていた。

参拝の列の最後尾に並び、今年の願い事は何にしようかと考え始めた。旅の計画を立てるのと同じで、この時が一番楽しい気がする。特に何かしらの由緒のある寺ではその由緒にかけて願い事を考えると何かワクワクしてしまう。

あまり待つことなく順番がきた。ここは日蓮宗の大本山だし、日蓮に所縁が深いお寺なのでご利益も大きいぞ。しかもさっきは雲から太陽を出すといった秘儀を披露していた。と色々と考えまくった挙句、結局巡り巡っていつものように交通安全の願掛けを行っていた。

この程度の信仰心しか持ち合わせていない人間にご利益がどっさりと転げ込むということはないだろうけど、まあ旅は楽しく、お参りも楽しくといった気持ちがあればいいと思う。

宝物館 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
宝物館

寺宝を展示した宝物館もあります。

お参りをした後は、私はおみくじを引かない人なので、私以外の3人が境内にあるおみくじを引いた。すると、なんとビックリ3人とも大吉。以前に伝説の大凶を引いた友人までもが大吉とは・・・。これは凄いことだ。当然、本人は疑心暗鬼。

しかし、辺りから聞こえてくる声は、「やったー大吉だ。」「中吉か~、まあまあだな。」と言ったような縁起のいい歓声ばかり。

この状況から考えるに、どうやら新年大売出しといったところ(デパートじゃないって!)。

もしくはたまたま大吉のクジが固まっていてタイムサービス状態になったのかも(スーパーじゃないって!)。

いや、これこそ「不思議法師」様の神通力なのだろうか・・・。名前的に・・・。

参道のドライブイン 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
参道のドライブイン

初日の出日本一のまちの文字が見えます。

参道の趣のある建物 清澄山初日の出ツーリング07'の写真
参道の趣のある建物

門前町らしく、宿坊らしき古い建物も多いです。

初日の出を見れたし、初詣もしたし、おみくじは大吉だしと、それぞれ満足して清澄寺を後にした。

駐車場に戻る途中、お土産屋を見ると「初日の出 日本一のまち」という看板が掲げられていた。

旅好きとしては「日本一早い」などと書いてあれば気分が盛り上がるのに・・・と思ってしまったが、日本一とかはどうあれ、初日の出を見るのに素敵な場所というのは確かだった。

清澄山初日の出ツーリング07'
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