風の結晶 ~風の旅人エッセイ集~
バイクのエッセイ

愛車を語る2
NSR250(Honda)

特に珍しいバイクを所有していたわけではないのですが、私のバイク生活とこれまで愛用してきたバイクを紹介しています。ここでは少し速さやレースに興味を持った時期に乗ったホンダNSRなどを紹介しています。

広告

1、愛車3号 NSR250

長い海外放浪から帰国して普通の生活を始めたものの、かつての愛車バルカンは旅に出る前に売ってしまったので、足のない状態でした。今まで移動のほとんどをバイクでこなし、バイクでの移動が当たり前となっていたので、ちょっとそこまで出かけるのも億劫。

それに刺激的な海外を歩き回った後なので、日本のありふれた町並みや風景をわざわざ電車に乗って見て周りたいという気にもなりませんでした。

自転車での行動範囲は限られるし、気分転換に海とか、山へ気軽に行けるような移動手段となる愛車三号が必要かな。かつてのツーリング仲間からツーリングの誘いを受けると特にそう感じるものの、また長い旅行に出たいといった気持ちもあったし、お金の方も気前よくドカッと出せる状態ではなかったので、なかなか実行に移せませんでした。う~ん、バイクに乗りたい!とまあバイクを持てない辛い日々が続きました。

そんな時、後輩の家に乗っていないバイクがあると聞き、頼んでしばらく借りる事にしました。借りたバイクはホンダのNSR250。知る人ぞ知るレース用バイクのレプリカです。2ストロークのエンジンを積んだ軽い車体は加速や旋回性に優れ、昔は峠では無敵の存在でした。

友人のバイクは88年式とNSRの中でも人気のある年式でしたが、転倒時にカウルがボロボロとなってしまい、カウルをとっぱらったネイキッド状態となっていました。ちょっと見てくれが悪く・・・、いやかなり悪く、バイクを知らない人から見ると、それ動くの・・・・と言われるほどでしたが、走らせるにはそれほど問題なく、キックで一発で始動とはいかないまでも、そこそこ順調でした。

昔乗っていたバルカンとは乗る体勢やエンジン特性がかなり違うので、最初はかなり違和感を感じました。しかし慣れてくるとこれがなかなか面白いバイクでした。特に強烈な加速をするのが特徴で、アクセルを一気に回すとバヒューンと脳みそがとろけるような感じで加速していきます。なんか加速重力で脳みそがズレているような感触。ある意味、こういうのも麻薬の一種かもしれません。

今まではアメリカンスタイルのゆったりしたバイクに乗っていましたが、このようなレース用のバイクも面白いもんだな。脳みそがとろける感覚に味をしめつつ思ったのでした。

友人のNSRの写真
写真がないので友人のNSR

レース用のバイクを町乗り用にしたバイクです。

その後、しばらくしてとうとう愛車3号を購入することにしました。車種は同じくNSR。

2ストロークエンジンを積んだこのバイクは、排気ガス規制のため現在では生産を打ち切っています。必然的に中古車となるのですが、私のように今後消えていく2ストローク車に乗りたがる人が多いようで、市場価格が上昇中でした。

その分、売る時もそれなりの値段で売れそうです。買っても一年以内に旅に出るかもしれないし、置いておくにしても250㏄は車検がないし、手放すことを念頭に入れての購入だったので色々と好都合でした。

そしてバイク屋を周り、偶然近所のバイク屋でいいバイクを発見しました。年式は10年前のもので、値段も、程度も手ごろでした。

これにしよう。家からバイク屋が近いというのが決定した一番の要因でした。なぜなら何かあった時に持ち込みやすいからです。整備して納車してくれるとはいえ、基本は10年前の絶版バイク。いつ壊れるか分からないものです。そうなった時に、あまりバイクの整備に詳しくない私には自力で対処する自信がなく、バイク屋が近いのは何よりの安心感があります。

そして待ちに待った納車。バイク屋に歩いてバイクを取りに行きました。バイク屋の人が色々と説明をしてくれましたが、以前乗っていたのでほとんど省略。それよりも早く乗りたい。鍵をもらい、キックでエンジンスタート。さすが整備済みなので一発でエンジン始動。以前借りていた友人のバイクとはえらい違いだ。

出だしもよく、絶好調。これは当りだな。このまま家に帰るのはもったいないぞ。ちょっと走って帰ろう。加速はどうかな。大通りでバヒューンとアクセルを回すとぐいぐいと加速していきました。いいぞ。この感触。よし、もう一度。バヒューン。ガッガッ、ガタン!えっ、なんだ!なんと足元のほうから大きな振動と音がして、後輪がロックしました。

慌ててクラッチを握り、路肩にバイクを停めました。一体どうしたというのだ。今の感触はギアーが壊れたような感じに思えたのだが・・・、改めてエンジンをかけようとするものの無理でした。これは・・・いきなりSOSだ。明らかに手には負えそうにない。先ほど納車したばかりの店に電話しました。

バイク屋に電話すると、すぐに軽トラックで迎えにきてくれました。そして一言「こりゃ駄目ですね」と言い、軽トラックにバイクを載せてバイク屋へ持って帰ってしまいました。

そして次の日に電話がかかってきて、「簡単に開けてみたのですが、これは直るか分かりません。直るとしても、一度ばらばらにしないと直せないので、一ヶ月ぐらい時間がかかってしまいます。」

そして「お金を一度返金しますので、もし直ったら改めて購入するといった形にしてください」との事でした。

後日バイク屋にお金を取りに行くと、隅っこには私の愛車3号となるはずだったNSRがバラバラに分解されていました。聞くと、かなり重症らしい。なんとも短い付き合いだったな。走行距離にしてたった7km。しかも自宅にたどり着けなかったというおまけつき。がっくり。

後輩のスティードの写真
後輩のスティード

ホンダを代表するアメリカンです。
91年には販売台数が一位でした。

2、ホンダ スティード

一度ケチが付いてしまったので、積極的にバイクを探すというよりも、気楽にいいものがあれば買おうかなといった程度の気持ちになってしまいました。まあ実際のところはほぼ購入は諦めていました。

そんな時、別の後輩が夏休みを利用して2ヶ月程海外旅行へ行くことになり、その間バイクを使えることになりました。後輩は一人でアパート暮らしをしているので、むしろ置いておくと心配なので預かってくださいといったものでした。これは幸運というか、大歓迎。大切に可愛がってあげるよ。でも変な癖がついていても知らないよ。うふ~ん。といった感じ。

今度の車種はホンダのスティードでした。昔乗っていたバルカンと同じアメリカンタイプのバイクですが、車体は一回り小さいので、取り回しがしやすく、またがった時の感じもスリムな印象です。排気量は400㏄と一緒なので、加速などの動力性能はほぼ一緒でした。ただ前輪が小さいので、コーナーリングはスティードの方がしやすいというか、安定感がありました。

アメリカンの足を前に投げ出すように乗るライディングスタイルは懐かしく、そしてしっくりときます。でも乗り心地はいいんだけど・・・・、アクセルを回しても思うように前に進みません。なんか・・・もどかしいぞ。少し前に加速するバイクに乗っていたから余計にそう感じてしまいました。

アメリカンを買うなら大排気量のものではないと駄目だな。一度スピードの出るバイクに乗ってしまうと400ccぐらいのアメリカンではアクセルを回した時の反応に物足りなく感じてしまうようです。

しばらくスティードに乗る生活が続きました。やはり足があるのはいい事です。やっぱりバイクのある生活はいいな。普段の行動範囲が広がって楽しい。後輩が海外から無事に戻って、バイクを返してみると、無性にバイクが欲しくなってきました。でも今買ってしまうと中途半端だな。買うとしたらもう一度海外へ行った後かな・・・。

その後、一つ大きな転機を迎え、親父がガンで入院してしまいました。最悪な事態には至らなかったものの、こんな状態で再び仕事を辞めて長期で旅行に行っている場合ではありません。

とりあえず旅は一旦諦めよう。旅のために貯めていたお金をバイクに使おうではないか。いっその事いいバイクを買おう。今までのようにアメリカンに乗るにしても大排気量でないと楽しくないというのは、ここのところ色んなバイクに乗せてもらって分かったこと。まずは大型免許を取るべきだ。

ということ試験場に行って限定解除のテストを一発で・・・、というのは昔の話で、今では教習所で手軽に取ることができます。もちろん試験場でも今まで通りの実技試験も行われていますが、受かる自信はないし、仕事の休みの日に何度も通う根性もないので、久しぶりに教習所へ通うことにしました。

バイクのエッセイ
愛車を語る2 NSR250(Honda)
風の旅人 (2020年3月改訂)

広告

広告

広告