風の結晶 ~風の旅人エッセイ集~

~ 異文化や歴史についてのエッセイ ~

§6、世界七不思議ってどれ?

世界七不思議という言葉は皆さんもよくご存知だと思いますが、何が七不思議かまで知っている人は少ないのではないでしょうか。あるいは指折り数えると7つ以上になってしまい、おかしいぞ・・・と首をかしげてしまう人もいるのではないでしょうか。私自身もHPを製作していて、これが七不思議か、えっ、これも七不思議なの、なんか多いぞ・・・とこんがらがり、これはちゃんと調べておいたほうがいいなと調べてみることにしました。

そして調べてみると、世界七不思議は時代によって何パターンもある事がわかりビックリしました。なるほど、道理で七不思議の看板を掲げた遺跡がたくさんあるはずだ・・・。おかげで頭の中で混同していたのが無事に解決。せっかくだからこの感動を・・・ということで、七不思議についてちょっとまとめてみました。

まず、一番古いものからみていくと、紀元前150年頃にビザンチウムのギリシャの数学者フィロ氏が選んだ七不思議があります。これよりも前にも七不思議はあったと言われているのですが、内容が分かっていない為、このフィロの七不思議が現存する一番古い七不思議となっていて、「元祖、世界の七不思議」と言われています。比較的世間一般に知られている七不思議なので、世界七不思議といえば基本的にはこれを指すようです。

ギザの大ピラミッドの写真
ギザの大ピラミッド
エフェスのアルテミス神殿の写真
エフェスのアルテミス神殿
ファロスの大灯台跡地の要塞の写真
ファロスの大灯台跡地の要塞

「元祖、世界七不思議(フィロの世界七不思議)」
1、ギザ(エジプト)の大ピラミッド
2、バビロンの空中庭園
3、エフェスのアルテミス神殿
4、オリンピアのゼウス像
5、ハリカルナッソスのマウソロスの陵墓
6、ロードス島のコロッソス(大巨像)
7、アレキサンドリアのファロスの大灯台

基本的に巨大建造物が中心で、大きさ、荘厳さこそが全てといった感じでしょうか。この中でちゃんと昔のままの形で現存しているのは、エジプトのピラミッドだけです。現在アルテミス神殿はわざとらしい柱が一本しか残っていませんし、ファロスの大灯台は要塞に建て替えられています。

木材建築が伝統の日本文化ではあまり実感がわきませんが、石材を使用して造られた巨大建築物は、支配者が変わったり、地震などで倒壊するとばらばらに壊され、その石材は再利用され別の建物に建て替えられます。エジプトのピラミッドですら、表面にあった化粧石はギザの町の建築資材として持っていかれました。紀元前のものがそのまま残っていること自体が奇跡に違いありません。

これらの建物はその当時としての国力、財力、権力、技術の粋を集めて造られた巨大建造物で、他国に名を轟かせるだけの存在感があったはずです。情報化されていない時代では噂を伝え聞いた人々があの国は強いとか、技術が進んでいるとか、あの都市は財力があるといった事を考えた事でしょう。

そして畏怖、憧れ、羨み、妬みなどといった感情を抱いていたに違いありません。そういう意味では実際の存在以上の存在感があったのかもしれません。そう考えるとこういった建物は民族のプライドとか、政治的な一面もあったように思います。ちょうど現在の世界で世界一ののっぽビルを各国が競っているのと同じような感じでしょうか。

もしこれらの建造物が全て現存していたなら、現在の我々が見たらどう感じるでしょう。古代の人々のように畏怖や七不思議の対象になったでしょうか。残念ながらエジプトのピラミッドだけが現在の我々から見て七不思議に感じるのではないでしょうか。他の七不思議は現在の工学をもってすれば、さほど訳なく造れるものですから。

例えばバビロンの空中庭園は現代でいうビルの屋上庭園みたいなものですし、ロードス島の巨像は全長は34メートル、台座まで含めると約50メートルの大きさで、現代でいうならニューヨークの自由の女神像とほぼ同じです。オリンピアのゼウス神殿に置かれていたゼウス像は座像で高さは12m。神殿と一体で考えるとかなり豪華絢爛だったようですが、奈良の大仏の14.7mに比べると小柄です。

アレキサンドリアの大灯台は約120mの高さを誇る灯台だったようです。ピラミッドよりは小振りですが、当時この高さまで塔を建てることが出来たのは驚きです。ただ500m以上のビルが数多く建てられている現在から考えると、遺跡の類でしかないでしょう。でも七不思議の中では唯一生活に密接した建造物であり、灯台として14世紀に地震で倒壊するまで残っていた事を考えると、土木遺産としては一級品となりそうです。

アルテミス神殿はトルコの貿易都市エフェスにあった建物です。総大理石で建てられ、改修を重ねた建物はギリシャのパルテノン神殿の4倍の大きさがあったそうです。これは現存していれば美しさで一見の価値がありそうですが、タージマハルが建造されている現在においては少々かすんでしまうかもしれません。

といった感じで、どちらかというと現存しているよりは残っていない方が想像力やロマンをかき立てられていいのかもしれません。失礼ながらそんなことを思ってしまいました。

次の世界七不思議は、何時頃、誰が選んだのか分からない為、「第二・世界の七不思議」と言われています。少なくとも14世紀以降に選ばれたのもだそうです。

アヤソフィア寺院の写真
アヤソフィア寺院

「第二・世界の七不思議」
1、ローマのコロッセウム(円形劇場)
2、アレキサンドリアのカタコンベ(地下墓地)
3、中国の万里の長城             
4、イギリスのストーンヘンジ
5、イタリアのピサの斜塔
6、南京の陶塔
7、イスタンブールのアヤソフィア寺院(聖ソフィア大聖堂)

南京の陶塔以外は現存しているので、その気になれば見て回ることができます。元祖と比べると西はイギリス、東は中国まで範囲が広がっている事を考えると、人間の活動範囲が広がったというか、交通の便が良くなり、情報の伝達が広がったのかなと思えます。

また比較的新しい建造物が多いのも特徴であり、元祖と同じように巨大建造物が多いのですが、巨大は巨大でもピサの斜塔のようになぜ傾いているの?とか、ストーンヘンジのようになんの目的で?といったなぜという部分にスポットが当てられていたり、建物の美しさなどが考慮に入っているのが時代の流れでしょうか。また、この七不思議の続きとして、「天然自然物の七不思議」というものがあります。

「天然自然物の七不思議」
1、死海
2、アルジェリアの砂の海
3、チベットの氷の滝
4、アラガラ山上の怪光
5、ノルウェーの白夜
6、北アメリカの化石木の山
7、ハワイの火の海(溶岩湖)

天然自然物の世界遺産はちょっとやそっとで見に行けないような感じですね。というよりも、選考の時代を考えると、これを選んだ人も全てまわるのは不可能だったに違いありません。何人かの冒険者がとある伯爵の家に集まって自慢話を披露し、その話を聞いた伯爵が独断で決めたといった感じでしょうか。そんなロマン溢れる大航海時代を思い浮かべてしまいましたが、実際のところはどうだったのでしょうか。

ここまでが一応昔から七不思議と言われるものです。皆さんは幾つ知っていましたか。また、幾つ見たことがあるでしょうか。過去の人を七不思議と言わしめたほどの建造物なので、現存しているものはぜひ自分の目で確かめに行ってみてください。って気軽に週末にでもというわけにはいきませんが・・・。

ここからは近年選ばれたものを紹介します。まず最初は近年といっても半世紀ほど前に選ばれた七不思議で、「古代の不思議」(1962年)の著者、レオナード・コットレル氏が選んだものです。彼はイギリスBBCのプロデューサーを務めた人です。

パルミュラ遺跡の写真
パルミュラの都
岩のドーム(円屋根の写真
岩のドーム(円屋根)
クラク・デ・シュヴァリエの写真
クラク・デ・シュヴァリエ

「レオナード・コットレルの七不思議」
1、クレタ島のミノス宮殿
2、テーベのネクロポリス
3、王家の谷(ファラオの呪い)
4、シリアのパルミュラの都
5、エルサレムの岩のドーム(円屋根)
6、クラク・デ・シュヴァリエ
7、デルフィの神託

これらは、最近の考古学調査で明らかになったことが不思議の要素に多く含まれています。建物の大きさや美しさに重点を置いた過去の七不思議に対して、神とか、黒魔術的な目に見えない部分に注目している感じがします。王家の谷のファラオの呪いなどが典型的な例です。科学に頼りすぎると科学で解明できない部分にミステリアスな魅力を感じるのかもしれませんね。そのへんのところはテレビプロデューサーならではの視点かもしれません。

しかしながら過去のものに比べるとどことなく魅力に欠けると感じるのは私だけではないはずです。それにグローバル化が進んでいる世の中なのに逆行するように地中海東部地域に集中しているのも魅力に欠ける一因だと思います。どちらかというと地中海の七不思議といった感じでしょうか。

近年ではテレビ番組とか、本などの企画で世界七不思議を選んで放送したり、学者が選んだりと様々な世界七不思議が存在したりします。それを一つずつ紹介していたらとんでもない量になってしまうようです。その中でも一応日本人に馴染みのあるものとして、この手の長寿番組の「世界ふしぎ発見」が選んだ七不思議を紹介します。ただこれは他のとはちょっと違い、全世界を七つに分け、各ブロック最大の謎を選出したものです。内容よりは世界中からまんべんなくといった感覚が日本的かなと、そっちの方に興味がいってしまいました。

アンコール・ワットの写真
アンコール・ワット

「世界ふしぎ発見の新・世界七不思議(1997年)」
1、グレート・ジンバブエ
2、シルクロードの城砦都市・メルブ(トルクメニスタン)
3、楽山大仏(中国)
4、イースター島のモアイ像
5、マチュ・ピチュ
6、アンコール・ワット
7、エアーズ・ロック

最後に近年、世界規模で選ばれた新・世界七不思議があったので紹介します。これはスイスの「新世界七不思議財団」が企画したもので、世界中からWEBでの投票を呼びかけ、2007年7月7日にポルトガルの首都リスボンで開かれた式典で発表されました。ちなみに最終候補に残った21の候補地の中には日本の清水寺があったそうです。

タージ・マハルの写真
タージ・マハル
古代都市遺跡群ペトラの写真
古代都市遺跡群ペトラ
マチュ・ピチュの写真
マチュ・ピチュ
チチェン・イッツァの写真
チチェン・イッツァ

「新・世界七不思議」
1、中国の万里の長城
2、インドの廟堂タージ・マハル
3、イタリア・ローマの古代競技場コロッセオ
4、ヨルダンの古代都市遺跡群ペトラ
5、ブラジル・リオ・デ・ジャネイロのコルコバードのキリスト像
6、ペルーのインカ帝国遺跡マチュ・ピチュ
7、メキシコのマヤ遺跡チチェン・イッツァ

この文章を書くまで、この新・世界七不思議の存在を知らなかったのですが、こうしてみると世界的に有名な、いや超有名な観光地ばかりといった印象です。なんでもインターネットでの投票だったようで、世界中から投票が集まったようです。

ただインターネットということで一人が何票でも投票できたり、インターネットが普及していない国もあったり、まあ世界的な投票には違いありませんが世界まんべんなくといったわけではないようです。でも世界的に選ばれたのならこういった知名度抜群の場所が上位にくるといった結果になるのはしょうがないことかもしれません。

しかしながら、なんか有名な観光地を選んだだけといった薄っぺらい七不思議といった感じもします。個人的には客引きがうざったい場所ばかりだな・・・といったのが最初の感想でした。まあどこも恐ろしいほど観光客が訪れる場所なのでそれもしょうがない事なのでしょうが・・・。

内容に関してもコルコバードのキリスト像以外は古代遺跡ばかりです。しかも都市遺跡が三つもあります。そう考えるとやはりちょっと選考が偏っている感じがします。これにカンボジアのアンコール・ワット遺跡群と元祖のエジプトのピラミッドが加われば世界の有名な巨大遺跡が集結といった感じですね。

ちなみにユネスコの世界遺産とは無関係で、ユネスコは我々のコンセプトとは相容れないとこの選定に関して批判しているようです。実際、2011年には第2弾として自然版が選出されるのですが、公費を使った組織票で韓国の済州島が選出されているといったいい加減な一面もあったりします。

こうして世界七不思議をみていくと、やはり「不思議」という文字が入っている事からも何かしらロマンやファンタジー的なものを感じるのではないでしょうか。実際、世界七不思議に出てくる遺跡などは子供の絵本や冒険活劇などといった物語や漫画などによく登場しているので、子供の頃に感じた憧れやロマンなどが強く影響しているのかもしれません。

言ってみれば、七不思議の言葉の響き自体がロマンの象徴ってやつでしょうか。特に好奇心旺盛な旅人は「最北端」とか、「世界一」といった言葉と同じように「七不思議」という言葉に強烈な魅力を感じるはずです。

もし現在きちんと七不思議を選ぶとしたら?と考えてみると、なかなか七つに絞るのが難しいのではないでしょうか。情報化社会と言われる現在では多くの遺跡が身近な存在となり、また多くの謎が解き明かされると同時に科学で解けない謎も多く発見されています。そういった不思議、未解明というものは我々の心に訴える何かを持っているのは確かです。

もしその不思議がすべて解明されてしまったら、何の魅力も感じなくなってしまう遺跡もでてきて、世界を旅する面白さが半減してしまうかもしれません。だから不思議を解明してもらいたい反面、分からないままの方がいいと思っていたりもします。ネス湖のネッシーがいい例かもしれません。そう考えると恋心に似ているのかなとふと思いました。そのような人間の複雑な心の方がもっと不思議なのかもしれませんね。

最後に私なりの七不思議を・・・といきたいところですが、残念ながらそこまで多くの場所を訪れていないし、知識人でもないので、そんな大それたものを世界から選ぶことが出来ません。でも旅人として少し角度を変えて七不思議を見てみると、最初に選ばれた頃は写真もなければ、異国の情報もほとんど手に入らなかった時代です。手に入る情報といえば、旅行者の旅行記や絵といったものが中心で、書き手の主観や錯覚が多く含まれたものだったはずです。

また本が印刷された時代でも識字率は低かったはずで、結局のところ、異国にこんな凄いものがあるというのは噂によってもたらされるのがほとんどで、後はそれを聞いた人が想像で再現するしかありませんでした。過大な想像により天にまで届く建物だったり、夜な夜な動く石像だったかもしれません。そしてそれがまた人から人へ伝わり・・・、といった感じで、噂が噂を呼んで憧れや畏怖の象徴となった事でしょう。

そういった百聞に一見を確かめに向かってしまうのが好奇心旺盛な旅人や冒険家です。そう考えると世界七不思議というのは人々が潜在的にもっている好奇心によって美化、崇拝されたものであり、人々の好奇心の象徴と呼べる存在であるともいえるのではないでしょうか。そして好奇心の塊とも呼べる旅人にとって、冒険や好奇心を満たす憧れであると同時に、俺は七不思議を訪れたぜ!といったように訪れたことを自慢できるステータス的なものでもあったに違いありません。

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<異文化や歴史についてのエッセイ §6、世界七不思議ってどれ? 1999年8月初稿 - 2015年12月改訂>