風の結晶 ~風の旅人エッセイ集~

~ バイクツーリングやレースについてのエッセイ ~

§2、旅ツーリングの仕方

今までバイクチームでツーリングに行ったり、友人などとツーリングに行ったり、一人でテントを持ってツーリングに出かけたりと多くのツーリングを行ってきました。そういった経験から私なりの旅を中心としたツーリングの仕方を「1、隊列の基本」、「2、隊列の順番」、「3、目的地の選び方」、「4、ルート設定」と分けて書いてみました。

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ただこれはあくまでもツーリングをこうやらなければならないといったマニュアル的なものではなく、バイクを旅の道具的な目線で見たツーリングの仕方というか、旅を中心としたツーリングのアドバイスみたいなものです。

旅好きな人がバイクを移動手段に選ぶ事はよくあっても、バイク好きな人がバイクに乗るために旅を趣味にするかというとちょっと疑問な訳で、特に走り屋系のツーリングチームに所属している人はどうも旅下手な人が多い印象です。そこまで旅には興味はないけど、バイクを公道で走らせるのに峠以外にも何か目的地が欲しいというのが実際のところでしょうか。

もしそういった人たちが旅的なツーリングも楽しめるようになると、旅というものが趣味に変わったり、グルメツーリングなど自分に合ったテーマでの旅ツーリングも行えるようになり、バイク生活の幅が広がります。そしてそうなると一層バイクに乗るのが楽しくなり、バイクの稼働率も上がのではないでしょうか。

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>>> 1、隊列の基本 <<<

西伊豆での隊列の写真
一人だけウイニングランを・・・

ある程度まとまった台数でバイクを走らせる場合、最初に順番やルールなどといった事をきちんと決めないと事故につながります。まあぐちゃぐちゃになって走っている暴走族を見ればよく分かるかと思いますが・・・・。という事で、一般道を走行する時はきちんと隊列を組んで走るのが基本となります。ツーリングにおいての隊列の基本は、先頭から左右交互にジグザグに並んで走る千鳥走行です。ツーリングにおいては基本中の基本といった感じで、世間一般に広く知られているので、今更あれこれと説明する必要はないと思いますが、一応バイクに乗らない人のために書くと、この隊列で走るのは隊列が必要以上に長くならないようにする為です。

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ただ、細い道やコーナーの多い峠道では仲間同士でぶつかってはシャレにならないので、一列走行になって車間を開ける様に走ります。実際のところ、走っていて接触するという事は居眠りや脇見でもしていない限りないので、隊列走行に関しては特に気を使う事はないと思います。

ちょっと気をつけたいのは停車する時や転回するときです。あまり密集するとバランスを崩して将棋倒しになることがあります。信号待ちなどでは横の感覚を少し空けるように停まったり、駐車する時は一台ずつ確実に停まるぐらいの気持ちで行うほうがいいと思います。バイクは適度なスピードで走っている時よりも、低速や停まっている時のほうが倒れやすいのです。特に初心者やあまりバイクに乗らない人などが一緒の時は、超低速でのUターンや取り回しの際に密集すると危険です。

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信号待ちしている写真
信号待ちの図

隊列の先頭車は車線のどっち側に寄ればいいのでしょう。どちらも見受けられますが、安全を考えると右側のほうがいいような気がします。いきなり駐車場に入る左折車を避けたり、停留所に停まるバスを避けたりしやすいからです。左側を走っていて、急な左折車のために突然つっかえたり、避けるためにいきなり右に寄ったりすると危ないです。特に二番目に初心者を配置して走る場合はそうです。

それに渋滞などで左からすり抜けする場合も、先頭車が左に寄っていくことで、後続車がすり抜けする意思があるんだと心構えができます。いきなりすり抜けを始めると、後続車が混乱して接触や転倒する場合があります。もちろんすり抜けに限らず、どのような場合でも先頭車ははっきりとした意思表示をしないと、後続車はどっちに行くのだろう、どうするんだろうと混乱してしまいますので気をつけましょう。

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>>> 2、隊列の順番 <<<

バイクの初心者やツーリングの経験が浅い人がいる場合、先頭車両のすぐ後ろに配置するのがベストです。ペースの遅い車両がいる場合も先頭車から目の届く位置に配置すること。そうしないとオーバーペースになり、無茶して事故を引き起こす可能性があります。あくまでもペースは一番遅い人に合わせるのが基本です。ですから先頭車両は誰がどのペースで走れるかをちゃんと把握しておく必要があります。

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日光を隊列で走っている写真
まだ雪の残る日光で

ただし、それはあくまでも基本的なことです。隊列走行中に起きる事故はもうちょっと複雑な原因で起こります。それを説明する前に、まずツーリングライダーとサーキットライダー、或いは峠を攻めまくるローリングライダーの違いを知る必要があります。

ツーリング的乗り方とローリング的、もしくはサーキット的乗り方は根本的に違います。もちろん個人の癖というものもありますが、長いことどちらかの運転をし続けていると自然にその乗り方が体に染み付いているものです。特に端的なのが峠などでのブレーキ位置です。

サーキットや峠を主体にしている人はコーナーの手前まで引っ張って強くブレーキをかけ、すばやく倒しこんでいきます。ツアラー的乗り方の基本は燃費走行や長距離を走るのに疲れないような省エネ走行です。コーナーの手前でエンブレをかけて減速し、余裕を持って倒しこみます。コーナーリング中のスピード自体が同じでもこの二つの動作の違いは決定的で、時として危険な落とし穴となります。

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伊豆を隊列で走っている写真
伊豆山中で

なぜならローリング的乗り方をしている人が十分ゆっくりとコーナーに入ったつもりでも、ツーリングライダーや初心者にはオーバーペースでのコーナーへの進入となり、コースアウトや転倒を引き起こすことがあるからです。隊列で走っていて一番危険なのがこの違いです。隊列の先頭でペースを作る人はこのことを気をつけなければなりません。

しかし一番前の人がそれを気をつけていれば防げるというものでもありません。先の見えにくい隊列の中ほどの方が起こりうる可能性が高かったりします。隊列の中ほどでサーキットライダーの後ろをツーリングライダーや初心者が走った場合、やはり同じような事が起こります。ある程度自分のペースをつかんでいると思っていも隊列で走っていると感覚がずれてくるものですし、それに隊列の中で走っていると気が緩みます。そんなときに前の車両との間隔が開いたからと、サーキットライダーがスピードアップしてコーナーに侵入し、今までと同じように後続車が付いて行った場合、このような事故が起きる可能性があります。

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伊豆を隊列で走っている写真
西伊豆で

ツーリングにおいては速いペースで走れる人が運転がうまいとは限りません。他人を思いやったり、周りの状況をうまく判断しながら走れる人がうまいのです。とりわけ一緒に走る人間やバイクの特性を知ることが大事です。そういったことを考えると、先頭を走る人はサーキットや峠専門に走っている人よりも公道を多く走っている人のほうがふさわしいと思います。土地感、車の動き、一緒に走っているバイクの動きなどを状況に応じて的確に判断できるからです。

ただし、くれぐれも事故や交通違反の多い人を先頭にしないようにしましょう。そういう人は運転中の視野が狭いので後方確認や安全確認がちゃんとできていないことが多く、また一般の車両に対しての思いやりに欠ける傾向があるからです。

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>>> 3、目的地の選び方 <<<

ツーリングの目的地をどうするか。常に同じ目的地で開催している場合を除いて、ツーリングを主催する人にとって頭を悩ませる問題です。同じ場所ばかりではマンネリです。かといって、新しい目的地はルート設定やみんなが行きたがるか、楽しいツーリングになるかとか色々と不安要素が山積みです。みんなが満足するような目的地はどう選べばいいのでしょう。

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大観山での集合写真
大観山での集合写真

観光や旅好きなツーリングライダーには峠ばかり走るツーリングは退屈ですし、逆につなぎやライダーブーツを履いた人に美術館巡りや長い遊歩道や山道を歩かせる観光は酷です。走行距離にしても高速道路主体でちょこっとだけ走るのが好きな人もいれば、長距離歓迎という人もいるし、てきぱきと行動するのが好きな人もいれば、のんびりとした行動が好きな人もいます。

結局のところ一緒に走るメンバーの性格次第で、極端にツーリングの様子が変わってしまいます。一緒に走るメンバーを考えて目的地を選ぶか、目的地を選んでメンバーを選ぶか。これはツーリングチームごとの台所事情といったところだと思います。例えば古城めぐりとか、温泉めぐりを趣味としているなど同じような感覚を持った人ばかりだと目的地を決めやすいのですが、実際はバイクが好きといった共通項でまとまっている事が多いので、目的地に関しては前述のような様々な思惑ができるのが当然だと思います。

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五箇山での写真
五箇山で

では、色々な個性が集まったツーリングチームだった場合、目的地をどう設定したらいいのでしょう。それは、先にあげたような色々な個性をまとめる事から始めなければなりません。

まず最初に距離の問題を決めるべきです。メンバーの所在地や性格、諸都合を考えてどのくらいの距離まで行けそうか。そして体力的なことや、乗っている姿勢の辛さ、二人乗りの人がいる場合、そして隊列全体のスピードや休憩頻度、高速道路の利用などを考え、有効圏内をある程度絞ります。これは目的地が面白いとか面白くないといった以前の問題で、ツーリングを無理なく行えるか、行えないかの問題となります。

特に感じるのはスムーズに気持ちよく走れている時は隊列で走っていても楽しいのですが、疲労が溜まった状態で混雑した道を走るのはかなりしんどいものですし、ある意味危険です。こういった状況で居眠りをしてしまったり、集中力が途切れてしまったという経験がある人は結構多いのではないでしょうか。ですから大人数の場合は余力を残した状態で、最後は混雑を避けた高速道路でスムーズに帰れるルートなどを選んだ方がいいかと思います。

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そして次にその範囲内から目的地を選びます。色々な個性を持ったメンバーをまとめるには、旅心を持たせる事が重要になってきます。旅心というものは誰しも持っているものですし、ツーリングに行こうと考えている事自体が旅心なので、比較的みんなの心をまとめやすいかと思います。実際に旅心をくすぶる目的地といえば・・・、少なくとも何かわくわくするような要素がなければなりません。

例えば知名度のある観光地であったり、もしくは日本最大とか、日本最北端などといった冒険心をくすぐるような場所もいいです。もちろん旬の食べ物やご当地物、または話題性のある場所でも構いません。そういったものを主軸の目的地に決めます。もし一つで弱ければ、紅葉+味覚+観光地といった三つでの併せ技という手もあります。とりわけ普段あまり旅をしない人には知名度が重要な要素になっているようです。

なぜなら、有名な場所にすら行った事のない(行かない)人には、あまり知られていない史跡や、観光地などは全く興味がわいてこないからです。目的地に行く途中に寄るぐらいなら構わないのですが、そういった場所をメインの目的地にしたなら、いくらバイクに乗るのが好きでもなんかやっぱり行くのが面倒だなとだれてしまう事があります。

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御前崎での写真
御前崎で

ある有名なゲームプログラマーの話ですが、「続編を出すときは半分は前のシステムを受け継いで、もう半分を新しくするんだ。これが続編をヒットさせるコツなんだ。」というのは、なかなかいい考え方で、ツーリングにおいても応用ができます。

今まで峠にしか行った事のないツーリングチームが旅ツーリングを行う場合、全てを変えるのではなく、一カ所づつお寺や観光地を増やしてみたり、今まで行っていたツーリングの目的地付近の有名なグルメを毎回一つずつ制覇していくなど、今までの土台の上にプラスアルファーといった感じでプランを練るといいかと思います。また全体として考える場合も同じで、例えば年に5回ツーリングに行くチームだった場合。年に2回は安心感のある定番コース、もしくはそのアレンジで行い、1、2回は新しいルートの開拓、残りは過去のツーリングの中から良かったもので目的地を決めていくなどすれば、保守的な人、旅好きな人、それぞれが満足でき、ツーリングチームとしてのバランスが取れると思います。

何においてもそうですが、急激な変化を行うと、他のメンバーからの反感を買いやすくなるので、根本的にシステムを変えたいと思った場合でも徐々にシステムを変えていき、良かったものを残しつつ変えていくのがいいのではないでしょうか。

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>>> 4、ルート設定 <<<

伊豆スカイラインの料金所手前での写真
伊豆スカイラインの料金所

主軸である目的地が決まったならそれに色々と肉付けしていく作業に入ります。ここからの作業はチーム内の台所事情によって変わってきます。まず行く人のだいたいの好みを考えます。峠が好きだとか。風景のいい道を走るのが好きだとか。自然が好きだとか。寺が好きだとか。色々あると思います。そういったことを考慮して目的地へ行く途中、あるいは周辺で探し、つなぎ合わせていきます。

こういったことが苦手な場合は旅のプロに習いましょう。一番いいのはバス旅行のパンフレットです。いいとこ取りでルートが作られているので、それを参考にして、必要ないものを省き、遠回りだけど峠道を織り交ぜたりすると形の整ったツーリングコースが出来上がります。

ここで注意すべきは、同じ好みを持った人ばかりなら構わないのですが、そうでない場合は極端に特定の目的地を増やさない事です。峠を1~2箇所、観光地を1~2箇所、景勝地を1箇所といった感じで設定すると、興味のない分野でも行こうかなといった気になってきます。そして最後に集合場所と目的地まで高速で行くのか、一般道で行くのかを、作ったルートを見ながら時間的な事などを考えて決めていきます。

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波勝崎での集合写真
波勝崎にて

一応これでコースや目的地が決まりました。しかし現段階ではまだ机上の空論です。5人ぐらいまでの少人数ツーリングなら、目的地に駐車場がなかったり、道を間違えたりしても、ごめんUターンするよといった感じでその場その場で何とかこなせてしまいますが、5人を越えると色々と考えなければなりません。まして10台を越えると少し慎重に計画を練らなければなりません。

走るルートがごちゃごちゃしていない事。信号や交差点が少ないこと。 目的地に駐車場があること。途中に適度な休憩所があること。どこで食事をするのか。こういった下調べが必要になってきます。正直言ってここが一番厄介な問題でもあります。行った事のある場所ならイメージが簡単に出来上がるのですが、行った事のない場所に関しては推測で決めるしかありません。かといってあまり鉄砲的に行って失敗ばかりしていると、他の仲間からの信頼を失ってしまい、無難なツーリングを望む声が大きくなってきます。

できる範囲内で下調べをしておき、少なくとも何箇所かは確実な情報を仕入れておいた方が大事というか、幹事をしている本人にとっても安心かと思います。最近ではグーグルマップなど便利なものがあるので、衛星写真を利用してルートを確認しておくのが最善です。昔入っていた大学のバイクサークルの部長は熱心な人で、前週にわざわざ下見に行っていたことを考えると、ずいぶんと便利な世の中になったものです。

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雨が降ってきて合羽を着込む写真
雨の日

結局のところ、新しいルートの探求というか、新規の開拓は、色々と面倒な事が多くなります。こういった面倒や手間を考えると、旅に関心のない人が幹事を行う場合、どうしても無難に今までどおりで箱根だ、日光だといった設定になってしまう傾向があります。しかしそんなマンネリなツーリングばかりでは、豊かな旅心を持ったツーリングとはいえません。ただ形だけバイクを走らせているだけのツーリングであったり、バイクの品評会みたいなものです。

そういった事が趣味な人や刺激的なことを嫌う年配の方ならそれでもいいと思いますが、若い人なら失敗を恐れずに色々と新しい事に挑戦していくべきだと思います。その方が想い出も多く残るというものです。例えば誰しも経験があるかと思いますが、途中で雨が降ってきて悲惨な思いをしたツーリングなどは、楽しかった普通のツーリングよりも鮮明に記憶の中に残っているのではないでしょうか。

後でその時に一緒に走っていた仲間と飲みに出かけた時などに「あの時は雨がひどくて・・・」といった感じで簡単に思い出を共有でき、辛かった事が逆に良き思い出になってしまったりしませんか。楽しかったという曖昧な記憶よりも、こういった辛かった思い出や失敗した思い出の方が記憶に残るものです。

だから失敗を恐れずに色々と挑戦してみて下さい。新しいものを見て、新しく何か発見し、感動すると心が豊かになれるし、満足感も違ったものになります。旅とは新しい出会い、新しい出来事があってこそ面白いのです。

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~~~ まとめ ~~~

出発の準備をしている写真
出発準備中

色々偉そうに書いてきましたが、もちろんツーリングの基本中の基本はみんなで楽しく走る事です。例え旅心がなくても、新たな出会いや発見がなくても、美味しい食事にありつけなかったとしても、いつもの仲間と交通ルールを守って安全に、そして楽しくバイクを走らせる事ができたならそれはいいツーリングだと言えます。だからここで書いたツーリングの仕方はあくまでも旅好きな私のイメージするツーリングの一つの形であり、これを参考にしたら楽しいツーリングができるといった指南書でもありません。

例えば、峠ばかりを走っていたチームがいきなり慣れない観光地巡りを始めたところで、逆に楽しいツーリングが楽しくないツーリングになってしまう可能性が高いかと思います。あくまでもそれぞれの個性にあったツーリングというものがあるので、自分勝手に面白そうだからとスタイルを変えてもひんしゅくを買うだけです。

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結局のところ、自分、そして仲間で話し合ってそれぞれの好みなどを考慮して何が楽しいだろうかというのを考え、求めていくのが一番です。他のメンバーの多く、あるいは一部の人だけでも好きなことがあるなら、その部分は我慢しようといった配慮も必要かと思います。それぞれ好みが違う人間なのですから。今までのツーリングもいいんだけど、何か少し物足りないな・・・、と思った時、或いはツーリングがマンネリ化していて困っている時や、旅ツーリングをしてみようかと思った時などに参考にしてみてください。

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<バイクツーリングやレースについてのエッセイ §2、旅ツーリングの仕方 2006年8月初稿 - 2015年11月改訂>