風の結晶 ~風の旅人エッセイ集~
文化、歴史、雑学についてのエッセイ#9

アジアのマック事情

日本の銀座にマック(マクドナルド)の一号店ができてから、かれこれ30年以上経ちました。私の子供の頃は・・・、かなりの田舎に住んでいたせいもありますが、ハンバーガーというものはあまり馴染みのない料理でした。しかしそれが今では日本の津々浦々までに浸透し、とりわけマクドナルドのハンバーガーはごく当たり前の食べ物となりました。それは日本だけではなく、今や世界中に広まり、マックは世界標準料理の一つと言っても過言ではないというほどよく知られる存在です。

2000年の私が長旅へ出発する少し前に、日本でマック3000店舗目が出来たと報道されていました。この数字を1億2000万人の人口として考えると40万人に1店舗の割合となります。多い、少ないと考えるのは人それぞれでしょうが、約10倍の人口を持つ中国でこの割合を当てはめると十倍の4万店舗になります。そう考えると恐ろしい数ではないでしょうか。近年では上り調子だった売り上げも少々下降気味のようで、店舗数の削減とか不景気な話も聞きますが、まだまだ子どもには大人気で、マックの影響力は非常に強いです。

私自身マックに思い入れがあるわけでもないし、日本ではすぐそばに店舗がありながら滅多に食べに行くことはないのですが、旅に出るとたまにお世話になることがあります。現地の料理に胃が疲れた時などがそうです。日本で食べても、他国で食べても味がそう変わらないからです。

しかし、色々な国で訪れてみると、店内の様子、メニューなどが国によって違っていて、端的にその国の文化を映し出している事があって興味深いです。その観察も兼ねていつしか国を訪れるたびに必ずマックを訪れるようになってしまいました。ここではマックについての国ごとの違いを国別にレポートしてみました。

*このページは2000年に旅をしながらレポートしたものです。現在では状況が違っています。

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1、香港のレポート (2000年1月、2001年10月)

香港の街を歩いていると、やたらとマックの看板が目に入ってきます。香港の派手な看板群の中でマックの看板はそんなに目立つ物ではないのですが、それでもよく目に付きます。そして違和感は全く感じません。すっかりと香港の町並みに馴染んでいるようでした。そんな香港のマックの値段はバリューセットで17.8HK$(約200円)と、物価に比べるとかなり安いのが特徴です。

2年前香港に来た時は、マックの店舗も少なく、値段はもっと高かった気がするのですが、随分と変わったものです。この値段を他の食堂と比較すると、普通の大衆食堂で20~25HK$、屋台だと10~20HK$。もちろん食べるものによるのですが、食堂で中華料理を食べるよりも断然安かったりします。この手ごろな値段が人気となり、これほど多くの店舗を構えるに至ったに違いありません。この安さはマックが中国に進出して大量に店舗を構えた事で、商品を中国の工場で大量に製造できるようになったからではないでしょうか。

メニューの方は世界標準で、朝食のセットもちゃんとありました。世界標準と言うのは、日本の標準メニューからはテリヤキ、チキンタツタを抜かして、チキンバーガーを増やしたものです。残念ながら2000年1月に訪れた時には、特にオリジナルメニューはなかったのですが、こっちで暮らす友人の話によると、かつてはテリヤキバーガーを「侍バーガー」という名で売っていた事もあるそうです。なかなか面白いネーミングです。「ワン、サムライ、プリーズ」ってなもんで、ぜひオーダーしてみたかったです。

これだけ店舗があるなら、日本のように何か文化に密着したバーガーを提供しても良さそうなものです。そう思っていたら、2001年の秋に訪れると、期間限定メニューというものを始めていました。飽きっぽいというか、流行物が好きというか、そういったアジア人のつぼを心得てきたようです。マックの店内で唯一中国らしいと思ったのが、チキンナゲットのソースでした。甘酢など中華料理に使うソースが選べるようになっていました。中華料理のアレンジが加わったマックというのも面白いものです。しかし味のほうは私好みではありませんでした。

2年前に香港に来た時には、ここまでマックの店舗数が多くなく、マックブランドが健在していました。若い子を中心に、マックの袋や紙コップを自慢げに持っていたのを記憶しています。しかしここまでマックが増えた今回は、そういった光景は消えてしまいました。もはや日本のように大衆料理の一部になってしまったようです。今後もこの手頃な値段が続く限り、マックの人気は衰えないでしょう。バーガーキングやケンタッキーなどのライバルとなりそうなファーストフード店の勢いがないのも、そう思える一因でした。

2、中国のレポート (2000年2月)

中国本土にもマックは進出しています。そのスピードはかなりのもので、雨後のタケノコのように、次々と店舗が増えているそうです。マックの勢いは共産圏の中国でもお構いなしのようでした。そして日本ではそんなに見かけない光景ですが、中国のマックのすぐ側には必ずといっていいほどケンタッキーが立地しています。これはお互い相乗効果を得る為で、その一画をファーストフードのエリアにして、どちらにも客が入るようにしています。

中国の商店街や市場などでは、同じものを売る店が同じ通りなどに密集しています。客とすれば何か欲しいとなると、その物を売っている通りや市場に行けばいいと発想します。ファーストフードにしても同じ事で、マックが食べたいと思うとマックの店に行くわけですが、混んでいると隣のケンタッキーに変更となり、ケンタッキーにも簡単に人の流れが出来ます。もちろんその逆もあるわけで、どうやら中国ではこの方が両方とも売り上げが伸び、効率がいいようです。

中国の派手なマックの写真
派手な外観のマック

深圳のマックです。
立地がいいのもあって店内はとても賑わっていました。

値段は200円弱で、メニューは香港とほとんど変わりませんでした。香港の物価から考えると安いのですが、中国の物価からするとちょっと高め。しかし高級料理というほどではありません。普通の食堂で食べれば、山盛りのご飯におかずが付いて100円もしないほど食べ物の物価が安い国。それでもマックは大人気で、店内はいつ見ても客が沢山いました。

その理由を2つ上げてみると、第一に食堂は安くメニューも何十種類あるとはいえ、所詮すべて中華料理でしかありません。もちろん中国人とて中華料理以外のものを食べたい時もあるわけですが、中国では他の国の料理をあまり見かけません。あったとしても高級料理となっている事がほとんどです。パスポート取得に大金がかかり、海外旅行は庶民にとって夢のような話の土地柄なので、気軽に外国料理を食べれるマックに人が流れるのも納得できます。

第二にマックの派手な宣伝やキャラクターでの売り込みがあげられます。派手好きな中国人にとってマックの赤や黄色の看板は好まれる色であり、店の前にはドナルドの人形が置いてあったり、アドバルーンを上げたりと他の国よりも外観が派手に作られているように感じました。そして子供用のおもちゃの付いたセットや遊び場を作り、子供をターゲットにしたマックブランドの売り込みに力を入れていました。

店内には子供連れのの家族や若い人たちに交じり、老人の集団がいたりと、中国文化の中に着々と浸透しつつあるようでした。今のところ特に競争相手もいませんので、10億人の巨大マーケットを持つ中国全土をマックの看板が埋め尽くす日はそう遠くないはずです。中国政府はアメリカの文化を象徴するマックがどんどん繁殖しているのをどういう思いで見ているのだろうか。賄賂をもらって懐さえ温まればそういったことに関してはどうでもいいとしか思っていないような気もします。

ちなみに日本国旗を燃やして暴動まがいな事を行うお国柄なので、事あるごとにカーネルサンダーおじさんや、ドナルドの人形が倒されているのはあまり日本では知られていなかったりします。反米の政治ニュースが店舗の経営者の悩みかもしれません。

3、ベトナムのレポート (2000年4月、2001年10月)

ベトナムにはマックはありませんでした。というよりも、ハンバーガーやファーストフード店がまったく普及していない状態で、唯一ホーチミンでロッテリアを一軒見かけただけでした。しかも覗くと昼時だというのにがらがらでした。それもそのはず。値段を見て納得しました。普通のセットで400円ぐらいするからです。この国の物価からすると、安食堂で食べる8~10倍もの値段にあたります。そんな値段では手軽に食べるファーストフードを遥かに越え、超高級料理となってしまいます。

更に、ベトナムはかつてフランスの植民地だったため、パンといえばフランスパンの事をさします。そしてフランスパンに色々と物を挟んだベトナム式ハンバーガーというか、サンドイッチが町の至る所で売っています。その値段は約20~30円と安いです。現在の物価から考えると、この国でマックを普及させるには、セットで150円以内にしないと無理じゃないかなと感じます。しかしそんな値段のマックは世界中でどこにもないはず。マックがない理由は、きっとマックの上層部の人がビジネスにならないと考えているからに違いありません。

仮にビジネスになると考えても、果たしてベトナム政府が許可するだろうか。国民の大半が反米感情を持つ国柄。アメリカを象徴するようなマックが開店する日はくるのだろうか?今後のベトナムの経済成長に拠るところが大きいのでしょうが、ちょっと興味があります。

4、カンボジアのレポート (2000年4月、2001年9月)

カンボジアにもマックはありませんでした。というより、その他一切の外資系ファーストフード店がありませんでした。カンボジアはベトナムと同様に物価が安く、フランス領だった為、フランスパンに物を挟んで食べる習慣があります。ベトナムとは若干パンの形や味付け、具材が違うようでしたが、似たような感じで値段も安かったです。

この国には反米感情はないし、タイや中国の文化が大量に受け入れられているので、マックが受け入れられる基盤はあります。マックがないのは上層部がビジネスにならない考えてるだけなのでしょう。後はもう少し国が安定し、経済が上向き、インフラの整備進むと、きっとこの国にもマックが出来ると思います。たぶん第一号店はアンコールワットの遺跡のあるシェムリアップかな。観光客が多いし。プノンペンよりもタイに幾分近いし。

ラオスのサンドイッチ屋の写真
ラオスのサンドイッチ屋

フランスパンに自慢の具材を挟み、味付けしていきます。

5、ラオスのレポート (2000年10月)

ラオスの首都ヴィエンチャンぐらいにはタイの延長上でマックもあるだろうと期待していたのですが、見つけることはできませんでした。ベトナム、カンボジア同様に物価が安く、旧フランス領だったので、ここでもやはりフランスパンに具をはさんだものが町中で売られていました。値段は、小さいパンに簡単な具で1500kip(20円)ぐらいからで、ちょっと豪華版というかばかでかいフランスパンに大量に具を詰め込んだものが10000kip(140円)ぐらいで売られていました。これを1人で食べるのは量が多く、2人でちょうどいい代物だった事を考えると高くても70円くらいのものです。

この国の食べ物の物価をみてみると、安食堂で食べて5000kip(70円)前後、高くても7000~9000kip(100~130円)ぐらいです。このような物価なので、仮にマックを造るにしても値段を200円ぐらいにしないと一般庶民に受け入れてもらえません。そう考えると、山国で港のないラオスに出店するのはちょっときついかもしれません。タイかベトナム、中国から陸路で輸入しなければならないとなると、セットで200円は現実的ではない値段です。この国でのチェーン展開はまだ先になりそうな感じです。

6、タイのレポート (2000年4月、10月、2001年8月)

バンコクの街を歩いていると、日本でも有名なファーストフードの店をあちこちで見かけます。バーガーキングに、ウエンディーズ、ケンタッキー、サブウェイに日本食やラーメン屋などなど、一通りのファーストフード店はあるようです。そして、その中でもマックは一番目に付きます。それは立地条件がいいからで、必ず表通りの人がよく歩く場所に立地しています。

マックに限らずタイにあるファーストフードの店の多くは有名なショッピングセンターの中にあります。店内はこぎれいで、値段を見るとセットの値段は90バーツ(約260円)。コーラとポテトのサイズはLサイズでした。260円の食事はタイでは決して安くはありません。屋台や安食堂で食べれば100円もしません。そのため店内はやはり少し身なりのちゃんとした人がほとんどで、スーツ姿のサラリーマンやお洒落なOLに、金持ちそうな学生や外国人が主な客層となっているようでした。

何件か覗いているうちに面白いことに気がついたのですが、どこのマックを覗いても欧米人の姿を見かけます。旅行者だったり、スーツ姿だったりと出で立ちは様々でしたが、本当にこの国に外国人が多いようです。このような欧米人達が見本となって、タイにマックを広めているのではないかと思えてしまいました。

タイのマックのメニューはほぼ世界標準。違うのは一つにサムライポークバーガーというものがあることです。メニューの写真を見ただけでその正体はすぐわかったのですが、名前の響きがいいので頼んでみると、奥の方で“ワン サムライ プリーズ”と復唱しているのが聞こえ、思わず苦笑いしてしまいました。味は想像通り日本のテリヤキバーガーとほぼ一緒でした。

もう一つにパイの種類が沢山あることです。コーンパイ、タロイモパイ、パイナップルパイとアップルパイにベーコンパイ。この国の人はパイが大好きなようです。試しにタロイモパイを頼んでみると、中身は紫色のカスタードクリームといった感じでした。タイ式のカスタードクリームが緑色なのとどっこいどっこい。味のほうは甘すぎて、他のパイを頼む気に慣れませんでした。

その他で目に付いたのは、ポテトを頼むと必ず皿をくれ、自分でケチャップやスイートチリソースを入れることが出来ます。ポテトにケチャップを付けて食べる派の人にはいいサービスです。スイートチリソースは最近日本のスーパーでも置いてあり、少しずつ浸透しつつありますが、生春巻きなどにつけるとおいしいやつです。ピリッとした辛さがないので、子どもでも好きな子が多いです。ポテトにもよく合います。

あとは店内に異様に店員の数が多かったです。日本では考えられないぐらい店員がうじゃうじゃいて、どうも気になって落ち着きません。手の空いた店員が席を立とうとすると、空いたトレーを片付けに来てくれるのは楽でいいのですが、これでは庶民的ファーストフードといったイメージではありませんでした。

7、インドネシアのレポート (2000年5~10月)

インドネシアにはマックはあるにはあるのですが、この国のマックは他の国のマックと比べてかなり異様でした。その理由は後述するとして、今のところ店舗はジャワ島やバリ島などの大都市のショッピングセンター内にしかなく、ちょっと苦戦をしている感じがします。その一方、ケンタッキーはたいていの大都市にはありました。マックよりもケンタッキーが圧倒的に多い国を訪れたのは初めてです。

その原因はこの国の食文化によるものです。インドネシアではご飯とチキンの唐揚げ組み合わせが定番料理なのです。そしてこの国の人はパンを食べる習慣がほとんどありません。一応パンは売っているのですが、きちんとしたパンの専門店以外ではえらくまずく、乾パンとまではいかなくても、保存食品というイメージが強いです。しかもパンよりもドーナツの方が人気があるといった感じなので、今のところパン食のハンバーガーはインドネシアの人々にはまったく定着していない食べ物でした。

ケンタッキーの看板
ケンタッキーの看板

インドネシアはケンタッキーの天下でした。

マックについて書く前に、この国のケンタッキーについて書くと、バリューセットみたいなセットメニューは3種類あって、セット1がチキン2ピースにペプシとライスで140円ぐらい。セット2がチキン1ピースと水とライスで90円ぐらい。セット3がチキンバーガーにペプシとポテトで160円ぐらい。そして店内で食べているほとんどの人は前半の2つでハンバーガーを食べている人は滅多にいません。しかもライスは普段の食生活同様、当然のように手づかみで食べています。店内の設備そのものはファーストフード店なのですが、食べている光景はアメリカのファーストフード店のイメージからかなりかけ離れていました。

ちなみに町中でセット2と同じような組み合わせを食べると、屋台で半額ぐらい、食堂では60~80円と若干安いのですが、チキンの大きさが小さかったり、味の質が悪かったりとトータルで見るとあまり変わらない気がしました。それでケンタッキーが増えているようです。実際私もたまに食べに行き、チキン2ピースのセットにライスをもう一つ追加して合計160円ぐらいの食事をします。かなり満腹になるし、美味しく落ち着いて食べれます。ただ、店によってなのか、州によって税金が違うのか、値段が若干違い、いつも微妙に支払額が違いました。

インドネシアのマックの看板
インドネシアのマック

ショッピングセンター内にあることが多いです。

話をマックに戻すと、マックの店内に入ってもやはりケンタッキーと同じで、チキンとライスの組み合わせで食べている人がほとんどでした。他の国では当たり前のハンバーガーを頬ばり、ポテトをつまむ光景はここではあまり見られません。店内でこんなマックらしからぬ光景が繰り広げられているのはインドネシアぐらいではないでしょうか。私も地元の人に交じり、いつもケンタッキーで食べているチキン2ピースにライスとコーラのセットに、もう一つライスをつけて頼んでみると、値段は同じくらいの約160円でした。

ただ、ライスは少し小さめで、ハンバーガーのように紙に包まっていました。これは手をあまり汚さずに食べれるかな。さすがは世界のマックと思ったのですが、実際食べてみるとぼろぼろとライスが崩れてしまい、食べやすいとはいえませんでした。結局、ケンタッキーのときと同じように手でライスをつまんで食べるほうが楽でした。そして、これは好みによると思いますが、チキンはやはり専門店のケンタッキーの方が美味しいと感じました。

二回目訪れた時、さてハンバーガーでも食べてみようかとメニューを見ると、他の国では当たり前のハンバーガーにポテトとコーラなどを付けたバリューセットがありませんでした。あるのはハンバーガーとコーラだけのセット。マックらしからぬ。一体どうなっているだと思いながら、ケンタッキーのセットと同じ組み合わせの、チキンバーガーとコーラのセットに単品でポテトを付けて頼んでみると合計で250円弱もしました。ケンタッキーよりも90円も高く、この値段はこの国の物価からすると少し高いです。普通に安食堂で食べると30~50円ぐらいなので、約5倍、ちゃんとしたレストランで、いい食事ができる値段です。

定番メニューのハンバーガーは一式置いてありましたが、あまり売れていなさそうでした。唯一1つだけお試しセットみたいなものがあって、バンコクバーガーにポテトとコーラのセットで、値段は140円ぐらいと安く、これを食べている人を何人か見かけました。私も食べてみたのですが、このバンコクバーガーというのは、バンズ(パン)に日本のテリヤキソースに少しチリソースを混ぜたようなソースを塗りたくったハンバーグだけを挟んだ代物で、まったく美味しいとは感じませんでした。キャッチコピーがアジアンテイストとのことですが、一体どこからバンコクバーガーの名がでてきたのかも不思議でした。もちろんバンコクのマックにはこのような物は置いていません。

そしてジャカルタだったと思うのですが、バスの乗り継ぎの合間にマックを発見して入ってみると、東京バーガーというものが置いてありました。何じゃこれは。名前からして食べなければ。そして食べてみると、バンコクバーガーより少しグレードアップしていて、ハンバーグの肉厚が少し厚くなり、気持ち程度のレタスが挟まれていました。きっと照り焼きバーガーを意識したものに違いありません。が、これもやっぱりいまいち。安いお試しセットがこんなに不味ければ、余計にハンバーガーを食べる人がいなくなってしまいそうです。

インドネシアの大都市では、マックに似たようなファーストフードの店をショッピングセンターなどで見かけました。メニューは定番のチキンのから揚げが主流なのですが、ちゃんとチキンバーガーというものを置いている店が多かったです。しかし、マック同様、それを食べている地元の人はほとんどいないのが実際です。まだこの国ではハンバーガーがメジャーな料理になりそうな気配はありません。というより、まずはパンが浸透しないことにはといった感じです。

お誕生日会か何かのイベント
お誕生日会のイベント

子供に人気なのは世界共通です。

そう考えるとハンバーガーが主流のマックの未来は明るくなさそうです。しかしマックにはマックブランドがあります。若者や子供達の間ではケンタッキーよりもマックのほうが人気のようで、カップルや友人同士、子供に手を引っ張られてやってくる家族連れの姿を見かけました。マックで食べることはちょっとしたステータスなのかもしれません。値段が高いのでアイスクリーム(約10円)だけを食べていく人が多いのも実際ですが、ハンバーガーは浸透しなくても、マックは確実に人々の間に浸透し始めていました。

マックのメニューを見てわかるように、この国でのマックは主流商品のハンバーガーでの勝負を諦め、マックチキンとマックアイス、そしてマックブランドで売り込んでいます。しかしハンバーガーでの勝負を捨てたマックの今後はどうなっていくのだろうか。果たしてケンタッキーに追いつける事が出来るのだろうか。インドネシアにパンブームは起きるのだろうか。色々と興味深く思いました。

8、ミャンマーのレポート (2000年12月)

ミャンマーにマックはありませんでした。というより、この国には外資系のファーストフード店はもとより、外資系の企業すらほとんど見かけませんでした。軍事政権が拒否しているらしいのですが、実際拒否されなかったとしても、こんな不安定な国にチェーン展開したいとは企業も思わないはずです。いつ政府の方針が変わって、追い出されたり搾取されるか分かったものではありません。

おまけにこの国の物価は恐ろしく低いです。一食20円も出せばまともなカレーが食べられて、50円も出せばかなり豪華な食事ができます。そんな中で200円前後もするマックが流行るのは難しいし、軍事政権下、対米感情はベトナム同様に最悪ときたら、もう絶望的。政権交代が行われない限り、この国にマックができる日は永遠に来ないでしょう。

そう思っていたのですが、ヤンゴンの街を歩いていると、マックバーガーなる店を発見。少なくとも二軒は見たのでチェーン店のようです。店のロゴはあのマックにそっくりだし、店先にはあの人形に似た人形が・・・。これは単なるぱくりか。それとも何かの陰謀?最初に見つけた日以来、一体どんなものかと気になってしょうがありません。そして出国の迫ったある日、とうとう我慢できなくなって、他の旅行者と連れ立って入ってみる事にしました。

怪しいMac Burgerの写真
ヤンゴンのMac Burger

似たようなロゴとキャラクターがありました。

店内はこぎれいでファーストフード店の雰囲気そのままというか、ちょっと喫茶店ぽくした感じでした。メニューを見ると、バリューセットは流石になく、何種類かのハンバーガーとサイドメニューにポテトや飲み物がありました。とりあえず単品でチキンバーガーとポテトにジュースのお決まりを頼んでみると、料金はしめて約1$。日本ではおやつ感覚の値段でもミャンマーでは高級料理の値段になってしまうから恐ろしい。

そして待つ事5分。チキンバーガーを店員が持ってきてくれました。が、何だこれは!?というような代物。思わずメニューの写真と見比べてしまいました。不味そうだけど、とりあえず食べてみるか。が、やはり味のほうも最悪でした。パンは焼いてなく、ぱさぱさ。中のチキンは普通の焼いた鳥なのですが、いつ焼いたものだかわからない冷めたもの。更には不味いコールスローが挟んであるので、一緒に食べると不思議な味がしました。

かぶりつくにはちょっと無理があるので、分解して食べるのが正しい食べ方に違いない。ポテトの方は、形は不揃いなものの、揚げたてがでてきて、こちらはまだ納得できました。これでは店内ががらがらなのも無理ないよな。呆れつつも食べていると、ふと、これはもしかしたらミャンマー政府の策略ではないかと頭をもたげてきました。国民に先進国の人々は、こんな高くて不味い物を食べていると宣伝しているに違いない。そうすれば国民も納得するはず。とまあ、SF的な考えまで飛び出して、一緒に食事をしていた旅行者と笑い出してしまいました。

何はともあれ、この軍事政権下では外国人との交流が活発に行われなく、アメリカを象徴するような食べ物であるハンバーガーが国民に浸透する機会もないし、このマックバーガーの味が向上することも考えにくいです。ましてファーストフード店が沢山できる事など、全く想像がつかない状況でした。

文化、歴史、雑学についてのエッセイ
#9、アジアのマック事情

ー 風の旅人 (2019年10月改訂) ー

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