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風の祭事記 ~祭り、イベント訪問記~

六郷どんど焼きととんび凧あげ

東海道の六郷の渡しがあった大田区の六郷では、小正月行事のどんど焼きと地元の工芸品のとんび凧揚げ大会が同じ日に行われています。

・場所 : 多摩川六郷橋緑地(大田区東六郷3丁目地先)
・開催日時 : 1月第2日曜(2019年1月13日)
・スケジュール : 12時からどんど焼き、13時から凧あげ
・備考 : 2012年訪問
*開催場所、日時、内容等は年によって異なる場合があります。

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*** 六郷どんど焼きととんび凧あげの写真 ***

六郷どんど焼きの写真
サイトと式典

最初に式典が行われます。

六郷どんど焼きの写真
燃え上がるサイト

式典後に火入れが行われ、一気に燃え上がりました。

六郷どんど焼きの写真
自治会のテントが並ぶ会場

自治会によって食べ物や飲み物などが用意されています。

六郷とんび凧揚げの写真
とんび凧揚げ会場

凧の整備が行われます。

六郷とんび凧揚げの写真
凧の修理を見守る様子

落下すると壊れやすいのが難点です。

六郷とんび凧揚げの写真
凧を揚げている様子

鳥が飛んでいるようにみえます。

* 六郷どんど焼きととんび凧あげについて *

六郷は暴れ川として有名だった多摩川の河口付近の東京側に位置している地域です。東海道の六郷の渡しが広く知られているでしょうか。その六郷の渡しがあった付近には今では第一京浜の六郷橋が架かっていて、その南側の河川敷で毎年1月の第2日曜日に六郷どんど焼きが行われています。といってもしばらく中断していて、平成23年に6年ぶりに復活したばかりになります。復活のきっかけは大田区の地域力応援基金助成事業実施団体の認定を受けたからで、どんど焼きは大きな火を扱うという性質上、安全管理などなかなか自治会レベルで行うのが難しい現状があり、取りやめた地域は数知れません。6年ぶりに復活できたのは行政の後ろ盾が出来たといった事もありますが、やはり地元関係者の熱心な活動や思いがあったからこそです。

六郷どんど焼きは六郷の正月の風物詩で、江戸時代から行われている伝統行事です。かつては小正月の1月15日に行われていたそうですが、国民の祝日の変更に伴い1月の第2日曜日に行われるようになりました。櫓(サイト)は長い竹を数本組んで立て、そこにその年飾った門松や注連飾りなどを持ち寄ったもので、ここの場合は特に特徴のないスタイル・・・、いや、なんというか、かなり飾り付けがいい加減というか、そのまま持ってきた袋ごとぽんぽん積み上げていくので、ゴミの山に見えなくもなかったりします。

当日会場では地域の団体や町会により、サツマイモ、みかん、甘酒、おしるこが振舞われ、配布時間になると長い列ができていました。ここの特徴はサツマイモを配布し、それに針金で巻いたものを竹につるして、火勢が弱くなった時にどんど焼の中に入れて焼き芋にして食べることです。他の地域ではお餅をつるして食べているので、ちょっと面白く感じました。

同時に河川敷では古くから六郷に伝わる郷土玩具「とんび凧」を使用した「とんび凧あげ」が六郷とんび凧の会によって行われます。とんび凧は名前の通り鳥の「とんび」の形をした凧のことで、江戸時代から受け継がれています。なんでも江戸時代の終わりに、河川敷で干している干物をカラスから守るために何かいい方法はないかと思案していて、河原で捕まえた「とんび」を見ながらあれこれ試行錯誤して作り出されたと言われています。これはカラス除けにいいということで、この地域に根付き、農閑期の副業として盛んに作られたそうです。大正の初期には六郷に七、八軒の凧屋があり、最盛期には年間十数万枚が生産され、海外にも輸出されました。愛好家が作る模型といったレベルではなく、立派な大田区、そして六郷の工芸品として知られていたようです。しかしながら昭和になると衰退の一途をたどり、戦後しばらくすると凧職人がいなくなり、工芸品として生産される事がなくなりましした。その後、かつて凧を作っていた人の協力によって復活し、「六郷とんび凧の会」といった団体などによって伝統を後世に伝える活動が行われています。

とんび凧は間近で見てみると微妙な曲線部分が和紙と竹ひごで作られていて、鳥の持つ流線型の雰囲気がそのまま伝わってきます。それに三角に突き出たくちばしは本物さながらに鋭いものもあり、左右の端がピンと伸びた親羽はいかにも飛びかかりますといった雰囲気を醸し出していて、なかなかの迫力です。実際にあげてみると、これが本当に鳥が飛んでいるようで、上空に高く上がってしまうとどれが本物の鳥で、どれが凧なのか分からなくなってしまう程です。一風変わった凧揚げに子供達も興味津々のようで、保存会の方々の指導を受けながら凧揚げを楽しんでいました。

このように同じ河川敷で日本の正月の伝統的行事や伝統文化を楽しめるのはいいことですね。一度は中止や廃絶の憂き目をあったとんび凧とどんど焼きですが、地域の人が協力したり、タッグを組んだりして復活できたのは地域にとってもいいことだと思います。一度中止といった試練を乗り越えたからこそこれから素晴らしいイベントになっていきそうな感じもします。しかしながら・・・、よく考えると、この2つはあまり相性がよくないのでは・・・。どんど焼きは安全性から無風に近い方がベストなのですが、凧の方は風がある程度強く吹いていないと揚げられません。でも雨さえ降らなければ、今年は凧日和、今年はとんど日和などとどちらかがいいコンディションで出来そうなので、あまり気にすることではないのかもしれませんね。

風の祭事記 六郷どんど焼きととんび凧あげ

風の旅人
<2012年訪問 - 2019年2月更新>

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