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風の祭事記 ~祭り、イベント訪問記~

千束稲荷神社 初午祭

台東区竜泉にある千束稲荷神社の初午祭では境内に百灯余りの地口行灯が飾られ、ほんのりとした灯が入ると少し怪しい雰囲気の境内となります。

・場所 : 千束稲荷神社(台東区竜泉2丁目19−3)
・開催日時 : 2月2の午の日(2019年2月23日~26日)
・スケジュール : 夕刻から21時まで
・備考 : 2012年訪問
*開催場所、日時、内容等は年によって異なる場合があります。

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*** 千束稲荷神社 初午祭 ***

千束稲荷神社 初午祭の写真
社殿と行灯

立派なものが拝殿前に掲げられていました。

千束稲荷神社 初午祭の写真
樋口一葉の像

代表作「たけくらべ」の舞台となりました。

千束稲荷神社 初午祭の写真
地口行灯が灯る千束稲荷神社

妖怪が出てきそうな怪しい雰囲気になります。

千束稲荷神社 初午祭の写真
鳥居に掲げられた大きな行灯

3個分の大きなものが飾られます。

千束稲荷神社 初午祭の写真
境内の様子

幟と行灯がずらっと並びます。

千束稲荷神社 初午祭の写真
地口行灯

ダジャレとともに色々な絵が描かれています。

* 千束稲荷神社 初午祭について *

台東区竜泉にある千束稲荷神社は、江戸時代初期の寛文年間(1661~1672)に創建されたといわれています。当時の浅草一円は千束郷と呼ばれていて、その千束郷に上下二社の稲荷社がつくられました。その北側に北稲荷として建てられたのがこの神社で、南の方は現存していないようです。その後は村の氏神様として地域の人々に親しまれ、寛永6年発行の地図には「チヅカイナリ」という名前が記されています。そして明治5年太政官令により竜泉寺町一円の村社と定められ、現在にいたっています。また、樋口一葉の著書「たけくらべ」に登場する神社で、明治26年頃に行われた祭礼が話にでてきます。そのため境内には平成20年5月に氏子が建立した一葉の胸像があったり、「樋口一葉 たけくらべゆかりの神社」といった案内板が設置されています。

この千束稲荷神社では毎年2月の二の午の日に初午祭が行われます。初午祭は2月の稲荷神社の祭日である午の日に行われる祭りで、大なり小なり全国の稲荷神社で行われています。春の到来を感じつつある2月は今年の農作物などの準備を始める時期でもあり、その前に今年の豊作を神様にお祈りしようというのが初午祭の趣旨となります。ここ千束稲荷の初午祭は境内に百灯余りの地口行灯が飾られる事で知られています。かつて江戸の初午祭では、多数の地口行灯が飾られていたそうです。地口行灯とは簡単に書くなら行灯に地口絵(昔の漫画)が貼ってあるものです。現在の感覚で読むといまいち面白さが分からないのですが、江戸の言葉遊びの文化と精神が込められている絵といえます。そういった江戸の風情を感じさせる地口行灯を初午祭で百灯余りも飾ってある神社は他になく、古き良き時代の風習を今に残している貴重な存在となっています。

初午の日は朝から地口行灯が飾られるそうです。そして祈願祭が午後4時から行われます。その少し前になると行灯を奉納した氏子の方々が続々と集まってきて、自分の名前の書かれている行灯を捜し、その前で写真を撮ったりしていました。社殿で祈願祭が行われた後は社務所で直来が行われます。行灯の奉納費用(万灯掲揚初穂料)は1本につき8千円で、そこには神札・供物・福餅代と直会費も含まれているから、決して高い金額ではなく、氏子の皆さんも町内会の集まりといった感じでやってきている感じでした。直来が終わる5時頃には辺りは薄暗くなっていて、明かりの灯った行灯が存在感を増し、境内がとても趣のある雰囲気になります。そういった様子に満足そうにして氏子の方々は境内を後にしていきます。この千束稲荷は空襲で焼けて再建されたものです。地口行灯の風習も1970年代に宮司の努力によって復活されたものだそうです。宮司の努力と地域の人々に支えられて行われているささやかな祭り。いつまでも続いて欲しいものです。

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<2012年訪問 - 2019年2月更新>

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