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風の祭事記 ~祭り、イベント訪問記~

五條天神社 うけらの神事

節分の日、上野公園にある五條天神社ではうけらを焚いて病鬼を退散させるといったちょっと変わった追儺神事が行われます。

・場所 : 五條天神社(台東区上野公園4-17)
・開催日時 : 毎年2月3日
・スケジュール : 15時から
・備考 : 2012年訪問
*開催場所、日時、内容等は年によって異なる場合があります。

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*** 五條天神社 うけらの神事の写真 ***

五條天神社 うけらの神事の写真
4つ目の方相氏による追儺神事

四方を弓で払います。

五條天神社 うけらの神事の写真
宮司による蟇目式

強烈な音がします。

五條天神社 うけらの神事の写真
うけらの香炉

うけらはキク科の薬草です。

五條天神社 うけらの神事の写真
赤鬼と青鬼

様々な障害を乗り越え、舞台まで来てしまいました。

五條天神社 うけらの神事の写真
方相氏VS鬼

異形のもの対決です。

五條天神社 うけらの神事の写真
鬼問答をする神官

文章を読んでいる感じでした・・・。

* 五條天神社 うけらの神事について *

上野公園といえば西郷さんが有名ですが、公園内には幾つかの宗教施設があります。東照宮に弁天堂に清水観音堂、そして五條天神社と花園稲荷神社です。この中で節分祭を行っているのは五條天神社で、この神社は元々この地にあったものではなく、幾度か社地を転々とした後、花園稲荷神社のあるこの地に移転してきました。天神社となっていますが、主神は大己貴命と少彦名命で、菅原道真公は江戸時代の寛永18年(1641年)に相殿で合祀されたものです。小さいながらも2010年には鎮座1900年大祭を執り行うなど由緒ある神社と知られ、三年おきに運行される大神輿渡御も賑やかに行われます。

この五條天神社では節分の日に「うけらの神事」という変わった神事が執り行われています。うけらとは朮勝の事で「おけら」と古名で呼ばれることもあります。キク科の薬草で芽は食用にされ、根は漢方の健胃薬として用いられるそうです。近年ではあまり馴染みがありませんが、立春の日(2月4日)に「うけら」を焚きながら餅を焼いて食べると、一年間無病健康に過ごすことができると信じられ、江戸時代には流行したそうです。五條天神社の主神は大己貴命、少彦名命で、古くから医薬の祖として崇められる神です。うけらを焚いて病鬼を退散させる追儺(ついな)の神事がうけら神事となり、それが節分祭の行事の一つとして行われます。

五條天神社の節分祭は幾つかの行事が合わさって行われますが、基本は4つの金色の目を持っている方相氏が大晦日の夜に宮中を回って災厄を鬼に見立てて追い払うといった古式の追儺に則った形で行われます。まず社殿内でまず節分祭が行われ、祝詞などが奏上されます。それが終わると、4つ目の方相氏が登場します。鬼にも勝けないぐらい怖い形相をしたお面を付けています。そして追儺神事に習って社殿前に設けられている舞台の4隅で桃の弓と葦の矢をたたいて、悪鬼、病魔を祓います。昔は社殿内で行っていたのですが、近年見やすいように舞台を造って行うようになったとか。

方相氏の祓いが終わると、宮司が弓を持って登場します。そして社殿前で方相氏と同じように弓を引きます。これは蟇目式(ひきめしき)といい、蟇目鏑(ひきめかぶら)という神弓・神矢で鬼や病霊を祓う儀式になります。方相氏に宮司とダブルでお祓いをすればもう怖いものなしとなるはずなのですが、なんと鳥居の方に病鬼とされる赤鬼と青鬼が現れ、奇声を上げながら群衆をかき分け、舞台に近づいて来てしまいます。この時にうけらを焚いている香炉が社殿前に置かれます。これは邪気祓いで、鬼を威圧するためと言われています。

更にうけらまで焚いたというのに鬼達はなんなく舞台に上がってしまいます。いや、実際には舞台になかなか上がれなく、近くにいた観客に持ち上げられてなんとか舞台に上がっていたりしたのですが、それは愛嬌というやつ。舞台に上がった鬼達は社殿の中に入ろうとしますが、方相氏の懸命な妨害にあって前に進めません。やっぱり物理攻撃が一番いいようです。そこへ問答役が登場し、鬼問答が始まります。この問答を行うのは宮司ではなく、斎主の氏子の年番総代です。これは変わっているかもしれません。そう思ったのは最初だけで、原稿を読みながらの問答なので、ちょっと・・・・といった感じもしてしまいます。結局、方相氏のお祓いと物理攻撃、宮司の蟇目式、うけらの神事と色々行ってきましたが、棒読みの鬼問答に勝るものはなかったようで、鬼達は退散し始めていきます。すかさず社殿内にいた年男達が豆などをまき、鬼を追い払います。ここでは「福は内」とは唱えません。豆まき行事は本来「鬼やらい」と呼ばれた儀式で、疫病を追い払うのが目的です。したがって「鬼は外」だけを連呼する方が本来の目的に添っているからだそうです。そして年男達によって福まきが行われます。

なかなか盛りだくさんな節分祭だなといった感想でしょうか。撒かれる豆やお菓子、備品なども多く、結構楽しめた節分でした。祭事の後には「追儺の御札や神矢」の他、1年間を無病健康に過ごせる「うけら餅」や「鬼討ち豆、福杓文字、追儺の絵馬」を購入することができます。 興味があれば手に入れるといいでしょう。

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<2012年訪問 - 2019年2月更新>

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