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お吉祭り(下田)

日本開国の地、下田。その陰で悲しい人生を歩んだ女性の話も残っていて、お吉さんの命日に供養祭が行われています。

・開催場所 :お吉ケ淵、宝福寺(下田市1-18-26)
・開催日時 :3月27日
・行事内容 :供養祭、ステージ
・備考 :2010年訪問

*このページは過去の訪問記録です。
*日時、場所、行事内容が変更されている場合があります。

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* お吉祭り訪問記 *

・お吉祭りについて

下田の海と黒船 お吉祭り(下田)の写真
下田の海と黒船

黒船を模した観光船が運行されています。

伊豆半島の南にある下田と聞けば、黒船、下田条約、開国などといったキーワードが頭に浮かんできます。アメリカとの国交を結び、正式に日本で一番最初に開港された港が下田となります。

日本史重要な開国の地である下田では、開国をテーマにした黒船祭が毎年6月に行われています。一応日本とアメリカとの関係、日米同盟の原点となるので、日米の関係者が集まり盛大に式典行われます。

当時は屈辱的な条件での開国だったとかは抜きにして、日本の新たなる1ページが記されたといった歴史的な事件だった事には違いなく、教科書にも載るような華やかな舞台となるのでしょうか。

お吉祭り(下田)の写真
お吉さん

川辺のお堂に写真が飾られていました。

しかしなしながらその裏側では、悲しい話も残っています。その悲劇のヒロインがお吉さんで、本名を斎藤きちといい、下田で人気の芸者をやっていました。

17歳の時に運命の転機が訪れ、奉行所から下田に置かれた米国領事館の総領事ハリスの世話係として仕えるように命じられました。

三ヶ月間の奉仕後、再び芸者に戻るものの、世間からは外国人と関係を結んだ「唐人」という名で蔑まされ続け、元の生活とはほど遠い状態でした。幼なじみで恋人だった船大工の鶴松との婚約話もなくなり、酒におぼれる生活が始まります。

その10年後に、一度は鶴松と暮らすものの破綻してしまい、その後流浪の人生を送ったお吉は、1891年(明治24年)の3月27日に我が身の苦悩に耐えかね、稲生沢川に身を投じ、数奇な一生を終えました。享年51歳だったようです。

お吉が渕 お吉祭り(下田)の写真
お吉が渕

お吉さんが身を投げた付近です。
池としてきれいに整備されています。

遺体は川を流れ、下流で岸に上がった遺体は汚らわしいと誰も片付けようとせず、見かねた宝福寺住職が埋葬したそうです。なんとも閉塞的な日本らしい話です。

ただこれには別の一面もあって、ハリスに奉仕した事で多くの財産を手に入れたのも事実で、嫉妬も多くあったようです。とはいえ、誰もやりたがらない事を幕府から半ば強引にやらされて、この結果というのは気の毒に感じてしまいます。

宝福寺と唐人お吉記念館 お吉祭り(下田)の写真
宝福寺と唐人お吉記念館

唐人お吉記念館が隣接しています。

お吉に関しては宝福寺にある「唐人お吉記念館」に詳しく展示してあり、また悲しいエピソードは、多くの戯曲や歌、文学の題材にもなっています。

お吉祭りは毎年お吉の命日である3月27日に行われます。最初に身を投げた稲生沢川岸に整備された「お吉ケ淵」で法要が行われ、その後墓のある宝福寺に会場を移し、墓の前で法要が行われ、ステージなどが行われます。

・行事の様子

お吉が淵で法要 お吉祭り(下田)の写真
お吉が淵で法要

お吉が淵で供養のための法要が行われます。

まず最初に身を投げたとされるお吉ケ淵で法要が行われます。ここは川べりが公園のように整備されていて、川岸に小さな池とお堂が作られています。

法要はお吉ケ淵で行われ、池に向かって花を投げ込んだり、着物姿の芸者達が手を合わせる姿はなかなか絵になっています。

私が訪れた時はちょうど120回忌とのことで、お吉と鶴松に見立てた2匹のコイが放流されていました。

下田市内からすぐ上流にあると思って訪れたのですが、結構離れていて迷子・・・。時間に余裕を持って訪れたのに、開始時間に間に合いませんでした・・・。

お参り お吉祭り(下田)の写真
お参り

お吉が淵での法要の後に順番にお参りします。

太鼓の演奏 お吉祭り(下田)の写真
太鼓の演奏

お吉が淵の横で地元の団体による演奏が行われました。

お吉ケ淵での法要が終わると、すぐ傍に建てられているお堂に参列者が向かい、それぞれ手を合わせていました。

その後、川辺では地元の団体による太鼓の演奏が行われました。

宝福寺での法要 お吉祭り(下田)の写真
宝福寺での法要

お吉さんの墓の前で法要が行われます。
この日はたくさんの花に飾られていました。

宝福寺での式典 お吉祭り(下田)の写真
宝福寺での式典

関係者、芸者等が参列して行われます。

お吉ケ淵でのその後宝福寺に場所を変えて、お吉の墓の前で法要が行われます。

この日は宝福寺の唐人お吉記念館は無料開放されているので、誰でも中にある墓前を訪れる事ができます。

墓前には芸能関係から多くの献花がされ、舞台などでお吉役を演じた女優からの献花もあるようです。

宝福寺での芸能大会 お吉祭り(下田)の写真
宝福寺での芸能大会

最初に芸者が踊りなどを披露します。

子供たちの歌唱 お吉祭り(下田)の写真
子供たちの歌唱

着飾った子供たちが歌を披露していました。

法要が終わると、宝福寺前に設置されたステージで芸能大会が始まります。

最初の演目は「唐人お吉」。お吉ケ淵や墓前での法要の際に先頭にいる芸者による劇のような演目です。

その後も芸者や歌手などによってお吉にまつわる演目を中心にステージが続いていきます。

・感想など

お吉さんへの祈り お吉祭り(下田)の写真
お吉さんへの祈り

お吉さんに気持ちが届いたでしょうか。

絶望だけしかなく死んでいく人、期待や幸福があったからこそ絶望が大きく死んでいく人、人の生き方は様々です。お吉さんがどういう思いで身を投げたのか、それはお吉さん自身しかわからないことです。

もし20代で短い人生を終えたのなら単なる悲劇だけの話になっていたのでしょうが、50近くまで生きた末の終焉。人生山あり谷ありというように、いい時もあれば悪い時もあります。特に芸に生きる人にはその人生に自分の人生を重ね、共感する部分が大きいのかもしれません。

幕末、明治と閉鎖的な日本の中で最後まで自分らしく生きた女性、それがお吉さんであり、後世に語り継がれる魅力なんだろうな。訪れてみてそんな感じがしました。

お吉祭り 風の旅人 - 2010年訪問

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* 情報、アクセス等 *

・お吉祭りの概要

・開催日時中止 2020年3月27日(金) (毎年3月27日)
・開催場所お吉ケ淵、宝福寺(下田市1-18-26)
・行事内容法要、ステージ
・スケジュールお吉ケ淵で法要、宝福寺の墓前法要、ステージ
・アクセス等宝福寺は伊豆急下田駅より徒歩圏内。
お吉ケ淵は伊豆急蓮台寺駅。
・備考お吉ケ淵と宝福寺は距離があります。
・関連サイト

*訪れる際には最新の情報を入手されることをお勧めします。

* 地図 *

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