* やまきた桜まつりについて *
神奈川の最西端、国道246号沿いに山北町があります。東京から静岡方面に抜ける場合、一般幹線道路なら海岸沿いを小田原、箱根と抜ける国道1号か、内陸部を厚木やこの山北、御殿場を抜ける国道246号といった選択になります。1号の方が距離的には近いのですが、箱根の険という難所があります。箱根新道という有料道路が整備されましたが、それでも急坂を登るのにスピードのでない大型車両が通ると、大渋滞といった事も多々あります。
鉄道に関しても箱根の山はとんでもない難所で、現在では箱根登山鉄道が運行されているぐらいで、一般の鉄道は熱海まで下って、長い丹那トンネルを通って三島方面に抜けていきます。しかしこのトンネル開通前は厳しい箱根山を避けて、国府津から大きく内陸に入り、比較的斜面の緩い山北、御殿場を通っていました。それでも傾斜がきついのは当然で、機関車を前後に1両づつ連結して、山北辺りの急斜面を駆け上っていたそうです。そういった歴史があるので、山北駅前には鉄道公園があり、旧東海道本線で使用されていたSL、D52が静態展示されています。
現在の山北駅は御殿場線の駅となっています。東海道線に比べると通過する列車は少なく、地方の小さな駅といった感じでしょうか。ただ、桜の時期になると、多くの観光客と鉄道マニアが訪れる事で知られています。それは山北駅から御殿場方面にかけての線路沿いに樹齢60年のソメイヨシノが約130本ほど植えられていて、桜のトンネルをつくっているからです。鉄道マニアの人には桜のトンネルを進む列車は絶好の被写体。線路を見下ろす橋が何カ所かに架かっていて、桜並木を通過する列車を写真に収めるのに絶好のスポットとなっています。多くの人が訪れるのか、橋のところには親切な事に電車の通過時刻表が貼ってありました。また、夜にはライトアップされ、その中を進む列車も幻想的との事です。乗って楽しむのも良し、散策して列車が通るのを楽しむのも良しといったところでしょうか。ちなみにこの桜並木は「かながわのまちなみ100選」にも選ばれています。
こういった名物の桜を利用して、桜の時期、三月下旬から四月上旬にかけて山北鉄道公園広場周辺で「やまきた桜まつり」が行われます。期間中は山北鉄道公園内で日中から21時まで、飲み物、お土産品等の模擬店が出店し、桜並木のライトアップが18時から22時まで行われます。期間中にはメインイベント日が1日あり、その日は会場のステージで山北川村囃子、世附の百万遍念仏、向原川村囃子などといった郷土の伝統芸能が行われ、その他演芸大会といった感じで、阿波踊り、手話の唄、和太鼓演技、フラダンスなどが地元の人によって行われます。
また、期間中には「ソーラン山北よさこいフェスティバル」も行われ、その日は20チーム以上のよさこいチームが山北駅前広場や駅前大通り、桜並木通り、鉄道公園な どで華やかで、パワー溢れる踊りを披露します。満開の桜の下で踊るのはさぞ気持ちのいいことでしょう。満開で鹿も晴れていると、よさこいの踊の手の鮮やかな衣装がよく映え、見ていてとても美しく感じます。
感想としては地方の小さなお祭りといったところでしょうか。ただ桜祭りといえば公園や城跡などといった場所で行われるのが普通なのですが、すぐ横を列車が通過するような駅前で行われているのがちょっと新鮮な感じがしました。鉄道が好きな人、よさこいが好きな人、普通に桜が好きな人、いろんな人が楽しめる桜まつりです。
風の祭事記 やまきた桜まつり
風の旅人
<2009年、2012年訪問 - 2019年2月更新>