* 瀬戸屋敷ひなまつりについて *
神奈川県の西部、足柄上郡の開成町には瀬戸屋敷という古民家が残っていて、普段内部が公開されていて見学することができます。この瀬戸屋敷は、この地方の名主だった瀬戸家の屋敷だったもので、主屋は桁行11.5間、梁行5.5間、面積63坪、奇棟造りの茅葺屋根でできています。一般的に原型を良く留めた足柄地方を代表する古民家といわれ、開成町の重要文化財に指定されています。この古民家を利用して毎年2月中旬~3月上旬に瀬戸屋敷ひなまつりが行われます。このひなまつりは元々は開成町婦人会の活動として開始されたもので、平成17年から会場を瀬戸屋敷に移して行われるようになりました。最初は小規模で展示も無料だったものが、今ではマスコミにも取り上げられるぐらい規模が大きくなり、更には隣町の南足柄市にある郷土資料館と「森と里のひなまつり」といった合同のひな祭りにもなり、現在では知名度もうなぎ登りといったところでしょうか。
ここの雛祭りは古民家内に飾ってあるお雛様を見て回るといったものです。古民家園の中に展示してある雛人形といえば、季節感を出すためにオブジェ的な感じでこじんまりと飾られることが多いのですが、ここのは屋敷全体、蔵の中までがひな人形や雛飾りで一杯になります。そして所狭しと手作りの7,000個以上のつるし雛が飾ってあることも特筆すべき事です。これは開成町婦人会が毎年こつこつと作ってきたもので、さすがにこれだけあると圧巻といった感じです。しかも結構色んな種類があるので見ていても楽しいです。きっと来年には更に増えていることでしょう。もちろん普通の雛人形も所狭しと飾られています。その中には瀬戸家収蔵の雛人形もあり、これがここでの見所の一つです。このひな人形は小田原藩主であった大久保家から瀬戸家へ嫁いだときに持参したもので、人形の調度品には大久保家の家紋入りといった凝り具合。しかもよく見ると碁盤とかの小道具も立派だったりします。古いものでは町内に保管されていたという享保雛も展示されています。また離れの蔵、渡り廊下にも大量に展示されていたりと、屋敷全体が人形だらけというか、見応えがあります。
このひな祭りへは2010年と14年に訪れたのですが、14年に訪れてみると雛人形の数も増えているし、観光客も増えているし、飾り付けや展示の仕方も随分と変っていてビックリしました。毎年毎年模索しながら進化しているようです。ボランティアの人に聞くと出したりしまったりするのも吊し雛を作るのも大変だけど、多くの人が来てくれるから結構楽しんでやっているのといったようなことをおっしゃっていました。部屋ごとに展示のテーマがあったり、屋敷内がお雛様ワールドといった感じです。なんていうか、屋敷の中に小宇宙が出来上がっているといったところでしょうか。
イベントなどは、手作りでつるし雛を作っているだけあって、手作り紙びな教室、手芸教室などといったものや、郷土芸能発表とった類のものが中心です。日にちが決まっていますが、着物を着た女性が着物で出迎えてくれるといった趣向もあります。変わった物といえば、開成町観光親善大使Kyocoさんとお雛様の前で一緒に写真を撮れるといった事もあるようですし、特産らしい風車を利用した開運かざぐるま抽選会といった事もやっています。その他郷弁の販売とか、昔ながらの駄菓子や新鮮野菜などの地場品を安く売っているのも民家園らしい感じがします。瀬戸屋敷が里のひな祭りというのに対して、隣町の南足柄市の郷土資料館は大雄山に向かう山の途中にあることから山のひな祭りと名付けられています。ちょっと距離があるのですが、期間中はシャトルバスで両会場が結ばれているので、交通手段のない人でも楽に訪れることができるようになっています。あちらにも多くの雛人形が飾ってあるので、興味があれば訪れるといいでしょう。
ただ久しぶりにホームページを覗いてみると、入場料が400円になっていました。300円も400円も100円しか違わないと思うか、400円も払うの!と思うか、そのへんはそれぞれでしょうが、私の中では300円が何も考えず払える限界で、それを越えるとよくて当たり前といった判断をしています。400円払って見たいと思うかと言われるとちょっと考えてしまいますし、気軽に見るといった感じではなくなってしまった気がします。ひな祭りの良さはおもてなしの部分。各地で地域の特色を生かしたひな祭りが行われているので、そこまで興味がない人はそういった場所を訪れ、その分お土産や昼食の足しにしたほうがいいかと思います。
風の祭事記 瀬戸屋敷ひなまつり
風の旅人
<2010年、2014年訪問 - 2019年2月更新>