* 山北道祖神祭について *
神奈川県の西の端にある山北町では多くの道祖神が道ばたなどに祀られていて、毎年小正月にあたる1月中旬の土日にそういった道祖神を祀る山北道祖神祭が行われます。この祭りは昔ながらの形態で存続している山北町の伝統的な民俗行事で、大正時代から伝わる華やかな造花で飾り付けられた6台の花車(かしゃ)と3基の神輿が運行されるのが特徴となっています。このように花車や神輿が揃って町内を廻るといった道祖神祭は他の地域ではなかなか観る事の出来ないようです。
祭りは、1日目、土曜日の夜に花車を収めている小屋で子供達が川村囃子を演奏します。翌日、日曜日の午前中はそれぞれの庭、萩原庭、池田庭、鶴野田中庭、馬場田中庭、清水庭、宮万庭を練り歩きます。
昼頃になると山北体育館に全ての花車と神輿が集合し、祭事が行われます。そしておよそ4時間の町内巡行に出発します。途中休憩をしながら練り歩き、中盤から後半にかけて室生神社に向かいます。この時に国道下の小さなトンネルを通らなければならなく、行き帰りともに花車の上に取り付けられている花傘の部分を外さなければなりません。こういうさりげなく苦労している部分などは見ていて面白い部分でしょうか。また室生神社前では全ての花車が縦に整列するので風景的に美しく感じるポイントです。
室生神社からは線路を越えて駅の北側に出て、東に向かいます。そしてぐるっと回って旧道に入ると最後の休憩を行います。この時に花車の上部に取り付けられていた花傘部分が外され、代わりに絵灯籠が取り付けられます。花車から万燈車に変身です。後は最終目的地である駅の北口広場を目指すだけ。ここからは絵灯籠に明かりが付き、神輿も電飾が取り付けられ、今までとは違った雰囲気での巡行となります。またこの付近の旧道は古くからの商店街となっていて、その中を花車が進んでいく様子はなかなか雰囲気がよく感じます。
駅に到着するとライトアップした全ての花車が並べられて、駅前の広場が明るくなります。そしてそのライトアップされた花車の前にそれぞれの花車から子供達が太鼓などを持ち寄り、最後の締めとして川村囃子を演奏します。これがまたいい雰囲気で、祭りのフィナーレにふさわしいものとなっています。子供達の川村囃子に始まり、子供達の川村囃子とともに花車が巡行され、そして子供達の川村囃子で終わるのがこのお祭りで、華やかな花車や一生懸命引っ張っている大人が目立っていますが、実は本当の主役は川村囃子を演奏している子供達なんだなと感じました。
今回は室生神社からの巡行しか見ていなく、午前中の各庭の練り歩きや巡行の前半部分は分かりませんが、見ていてとても雰囲気のいい祭りだと感じました。何より寒い中、午前中から暗くなるまで練り歩くのは大変なことです。それを一生懸命行っているというか、当たり前のように楽しみながら行っているというか、そういった地元の人達の姿は美しいものです。
風の祭事記 山北道祖神祭
風の旅人
<2011年訪問 - 2019年2月更新>