* 大岩神社歩射について *
大磯の西小磯にある白岩神社では、毎年三月上旬の祭礼で歩射が行われます。歩射とは流鏑馬などが馬に乗って矢を射るのに対して、歩いて的の前に向かい矢を射る事です。簡単に書くなら、歩射は的に矢を撃ってそのあたり具合などでこの年の豊作を占うといった村行事になります。そういった文化がある地域に暮らす人には特別な事ではないのですが、そうでない地域の人から見ると結構珍しい行事となるでしょうか。
白岩神社の歩射は毎年3月上旬の日曜日に行われています。歩射といえば今年一年を占うといった意味で正月の行事といった印象が強いです。詳しくは知りませんが明治までは1月に行われていて、その後は神社自体の祭礼日と一緒にしてしまった感じのようです。実際に行事を見た感じでは占い的な要素はなく、単純に祭礼の儀式として執り行なわれていて、的に当っても「今年は豊作間違いないしだ」「今年は大量だ」といったような会話は聞こえてきませんでした。もちろん当るにこした事はないのでしょうが・・・。
白岩神社の歩射は古くからのしきたりを守って行われている事が特色で、大磯町指定の無形文化財に指定されています。歩射の儀式は、まず神前で神事が行われます。その後巫女による浦安の舞が奉納されます。それが終わると歩射の儀式が始まります。
まずは社人たちは社殿からフクメンをくわえて出てきて、足袋のまま社殿を右回りに3回まわります。そして足袋のまま階段を降り、鳥居に向かって移動します。鳥居付近で的が設置され、ここでも地面に描かれた円を回ります。そして、弓持ち(射手)がそれぞれ的とアキ(空)の方に向けて矢を射ちます。2本の矢を打ち終わると、歩射は終了。使われた矢は縁起物なのは当然なのですが、ここでは的も縁起物のようで、その場ですぐに解体されて配られました。ただ雨だったので見物人が少なく、的も湿ってボロボロ。もらい手がほとんどいない状態でした・・・。
これらが当日見物できる祭礼ですが、それ以外にもこの祭礼にはもっとより深い伝統的な儀式があり、前日には歩射に使われる道具やお供え物の製作。宵宮では社人が整然と座し、お神酒とオスイモノをいただく冷酒の式などがひっそりと行われています。歩射として占い的要素がないのはちょっと残念な気がしますが、フクメンをずっと咥えていることは他では見ないし、古くからのしきたりや風習を守って行われているという意味ではとても興味深い行事でした。
風の祭事記 白岩神社歩射
風の旅人
<2010年訪問 - 2019年2月更新>