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スロータウン常陸太田ひなめぐりのパンフレット
風の旅人 祭り、イベント訪問記

スロータウン常陸太田ひなめぐり

常陸太田市の旧市街にある鯨ヶ丘商店街では、古い町並みと落ち着いた環境を活かした雛めぐりが行われています。

・開催場所 :鯨ヶ丘商店街(常陸太田市)
・開催日時 :3月頃(旧暦の3月3日まで)
・行事内容 :雛めぐり、ひな祭りイベント
・備考 :2012年訪問

*このページは過去の訪問記録です。
*日時、場所、行事内容が変更されている場合があります。

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* スロータウン常陸太田ひなめぐりの訪問記 *

・スロータウン常陸太田ひなめぐりについて

スロータウン常陸太田 鯨ヶ丘の写真
鯨ヶ丘

常陸太田市の旧市街は鯨ヶ丘と呼ばれています。

鯨ヶ丘?どこだろう。以前は「スロータウン鯨ヶ丘ひなまつり」という名で行われていので、最初に情報サイトでイベント名を見たときにどこで行われているひな祭りか分かりませんでした。

鯨が見える丘。それとも鯨漁が盛んだった港町にある丘。いずれにしても海岸付近なんだろうな。そう思ったのですが、なんと鯨ヶ丘は海岸から遠い内陸にある常陸太田市にありました。

なぜに鯨・・・。それは太田盛衰記によると、その昔日本武尊が東夷征伐の途中にこの地を訪れ、丘陵の起伏があたかも洋上を泳ぐ鯨の背に見えたことから「久自」と名付け、それが久慈となり、鯨ヶ丘になったとか。

そういった伝説の真偽は分かりませんが、昔の人がこの丘陵状の台地を遠くから見て、鯨の背を連想したのは確かなようです。

スロータウン常陸太田ひなめぐり くじら屋の写真
くじら屋

鯨ヶ丘商店街の象徴するお店です。
タイ焼きならぬくじら焼が売られています。

そういったユニークな伝説を持つ鯨ヶ丘は、常陸太田市の旧市街にあたり、通りには明治~昭和時代に建てられた土蔵造りの建物や商店が並んでいます。

商店が多く、鯨ヶ丘商店会としても機能していて、ひな祭りの時期には鯨ヶ丘商店会と常陸太田市商工会女性部太田支部の主催で「スロータウン常陸太田ひなめぐり」が行われます。

スロータウンと名がついているのは、鯨ヶ丘地区では古い建物や文化財、そして文化が多く残り、この地区を訪れる人達にゆったりとした時間と空間を楽しんでもらいたいといった思いからのようです。

ここのひな祭りは旧暦に基づいて行われるので、他のひな祭りよりも少し遅く始まり、年によっては4月ころまで行われます。旧暦で行うのにはこだわりがあるようで、季節の行事や風習を古来からの和暦(旧暦)で行う事で、本来の意味や季節感が感じられる町にしたいとの事です。

ひな祭りの他にも武者人形を飾ったり、広場に鯉のぼりを飾る端午の節句。月見飾りや昔使っていた道具や農機具などを展示する十五夜などといった季節行事もここでは旧暦で行われています。

スロータウン常陸太田ひなめぐり 旧稲田家住宅赤煉瓦蔵の写真
旧稲田家住宅赤煉瓦蔵

明治43年に建てられた三階建ての煉瓦造の蔵です。
平成26年に国登録有形文化財になり、
現在はギャラリーとして活用されています。

ここのひな祭りはレトロな家々に飾られているお雛様を見て歩くといった雛めぐりタイプのひな祭りです。平成21年から始まり、参加している店舗などは約48店。町歩きと共にお雛様も楽しめるというのは真壁や結城に通じる部分があるでしょうか。やはり古い町並みに飾られるお雛様は雰囲気がいいものです。

イベント的には鯨ヶ丘屋台村が行われたり、着物で街歩きといったイベント日があったり、土日には湯茶の接待もあります。

このほか、鯨ヶ丘商会によるスタンプラリーが行われています。お雛様が飾られているお店の前にスタンプがつるされていて、それを台紙に押していくといったものです。20個集めると鯨ヶ丘オリジナルポストカード、缶バッチが先着千名限定でもらえます。

飽きっぽい子供と一緒に散策する場合、くまなく見て回ろうと思っている人、収集癖のある人などにはこういうさりげない楽しみがあると散策にも楽しみが増えそうです。

・行事の様子

スロータウン常陸太田ひなめぐり ヤナゼンのお雛様の写真
ヤナゼンのお雛様

天保時代のもので鯨が丘で一番古いひな人形となるようです。

スロータウン常陸太田ひなめぐり 空き店舗を利用した展示の写真
空き店舗を利用した展示

段飾りとつるし飾りがきれいに展示されていました。

スロータウン常陸太田ひなめぐりは、店舗などに飾られたお雛さまを見学して歩く雛めぐりのイベントです。

見所をあげていくと、まず鯨が丘で一番古い天保7年の雛人形が展示してあるヤナゼン。ここには大正時代の神殿飾りなども展示されているのでお勧めです。

大和田時計本店では昭和10年のひな人形は朱色と金色に輝く寝殿つくりのひな人形が展示してあり、オープンギャラリー倉では少し凝った展示を行っています。

マンゴク醤油の醸造元の立川醤油店では本宅に布遊といって古い着物などを利用した手作りの布の作品やつるし飾りを中心に展示してあります。とても量が多く、その様子は圧巻です。

スロータウン常陸太田ひなめぐり 風格のある蔵で営業する佐藤運動具店の写真
風格のある蔵で営業する佐藤運動具店

外から見るとひな人形店に見えてしまいます。

この他運動具店のショウウインドウに並ぶお雛様だったり、空き店舗を利用して飾られるお雛様など町を歩いていると色々なお雛様に出会うことができます。

私が訪れたときは震災の翌年でした。町を歩くとブルーシートに覆われている建物も幾つかあり、郷土資料館には震災の時の様子や被害の様子が展示してあり、震災の深刻さを実感しました。

震災があった日は3月11日。新暦の3月3日でひな祭りを終えてさっさと片づけたところは被害に遭いませんでしたが、ここのように旧暦で行っていたところは人形が落下し、大きな被害を受けました。

この年のひな祭りもひな人形が壊れてしまったり、余震を警戒して大規模な展示を見合わせたり、或いは建物の工事を行っていたりと苦労しながら開催されていました。

スロータウン常陸太田ひなめぐり 梅津会館の写真
梅津会館(郷土資料館本館)

梅津氏から寄贈され、以前は市役所として利用されていた建物です。
震災の影響なのか壁に穴がたくさん開いていて、
まるで銃撃戦があったような状態でした。

スロータウン常陸太田ひなめぐり 企画展「梅津会館のひなまつり」の写真
企画展「梅津会館のひなまつり」

茨城県の郷土工芸品に指定されている桂雛が展示されています。

鯨が丘の中心にあるのが国の登録有形文化財の梅津会館です。外壁にスクラッチタイルが貼られていて、正面には大アーチの車寄せを備えた本格的な庁舎建築です。常陸太田市出身の実業家梅津福次郎氏の寄附によって昭和11年に建てられ、昭和53年まで常陸太田市役所として利用されていた建物です。

現在では常陸太田市郷土資料館として利用されていて、館内は1階が特別展示室を兼ねた美術展示室、2階が歴史展示室と民俗展示室となっています。

ここではスロータウン常陸太田ひなめぐりの期間に合わせて企画展「梅津会館のひなまつり」が行われ、茨城県郷土工芸品に指定されている旧桂村(現・城里町)で代々製作が続けられてきた桂雛が展示されます。

桂雛は過度な装飾を抑えたシンプルな人形で、人形の手足などの部位を一貫して手作りで製作していることとが特徴です。

・少し足を延ばして

妙福山佐竹寺の本堂の写真
妙福山佐竹寺の本堂

大きなかやぶき屋根が特徴の建物です。

鯨ヶ丘商店街の北側には佐竹氏の居城、太田城(舞鶴城)がありました。佐竹氏は茨城の広範囲を治めていた茨城を代表する大名です。現在では城の遺構は残っていませんが、城の鬼門除けとして佐竹氏が整備した佐竹寺が町の西南にあります。

佐竹寺の本堂は少し変わった造りをしています。寄棟造の茅葺屋根というのはよくあるのですが、屋根の上に大きな茅葺屋根がのっかっているといった面白い外観です。当時の面影を残していることもあり、国の重要文化財に指定されています。

現在は本堂として使われていますが、元々は観音堂として建てられたもので、北側を向いていることから北向き観音とも呼ばれています。ちょっと公共交通の不便な場所にあるので、車等の足があれば立ち寄ってみるといいでしょう。

・感想など

スロータウン常陸太田ひなめぐり 立川醤油店のウサギたちの写真
立川醤油店のウサギたち

一つ一つの人形が異なり、まるで生きているかのように自然です。

スロータウン鯨が丘とはどんなところだろう。変わった名前だけに期待して訪れました。丘陵の起伏が鯨の背に似ているという丘の上にある町には古い建物が多く、丘の上といった少し閉鎖した空間といっや環境に拠るものかスロータウンの名の通りここにはとても穏やかな雰囲気が流れていました。

板谷坂からの眺めは想像以上にダイナミックで、ここでの一番のお気に入りです。不満を挙げるなら町を歩いていて自分のいる場所が鯨の背に似ているのかどうかわからないということでしょうか。

雛めぐりはそういった雰囲気のいい町並みで行われているので、巡ること、いわゆる散策が楽しかったです。中でも一番感動したのは立川醤油店のずらっと並んだウサギたちです。手作りなので一つ一つ表情や大きさが異なり、しかも着ている服も違い、まるでウサギの妖怪が祭りや花火の見物をしているかのようでした。

スロータウン常陸太田ひなめぐり 風の旅人 - 2012年訪問

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* 情報、アクセス等 *

・スロータウン常陸太田ひなめぐりの概要

・開催日時2020年3月1日(日)~22日(日) (例年3月中)
・開催場所鯨ヶ丘商店街一帯(常陸太田市)
・行事内容雛めぐり、ひな祭り関連イベント
・スケジュール展示時間は施設、店舗の営業時間内
・アクセス等JR水郡線常陸太田駅から1キロ程度、無料の駐車場有。
・備考商店街のサイトでパンフレットなどをダウンロードができます。
・関連サイト

*訪れる際には最新の情報を入手されることをお勧めします。

* 地図 *

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