大竹ひな流し
広島と山口の県境を流れる小瀬川流域4箇所で行われる流し雛です。大竹市青少年育成市民会議が主催となり地域をあげて行われます。
・開催場所 : | 小瀬川流域の4カ所(広島県大竹市) |
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・開催日時 : | 3月3日後の日曜日 |
・行事内容 : | 流し雛 |
・備考 : | 2015年訪問 |
*このページは過去の訪問記録です。
*日時、場所、行事内容が変更されている場合があります。
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* 大竹ひな流し訪問記 *
・大竹ひな流しについて
広島県と山口県の境を流れているのが小瀬川です。大竹市街地のある下流部には大きな工場が並び、工場地帯の川といった感じですが、少し上流に遡ると木々が生い茂り、自然豊かな環境が残っています。
流域ではかつては清流と木材を利用し、製紙産業で栄え、流域には多くの人が暮らしていました。上流部には羅漢峡、中流部には弥栄峡、蛇喰磐などといった景色の素晴らしい場所もあります。
この小瀬川は、広島では木野川と呼んでいました。流し雛は流域のいくつかの会場で行われますが、メイン会場は木野川渡しのあった場所です。ここには広島側に木野の集落があり、対岸の岩国市には小瀬の集落があり、ここは古くから山陽道の要所となっていました。広島側から見たら残念ながら対岸の小瀬の方の名が正式な河川名になってしまったということになります。
今ではダムや堰ができているのであまり実感がわきませんが、かつての小瀬川は緩やかな流れが続いていて、中流域の弥栄ダム付近まで舟の往来が容易にできました。木野は沿岸部と山間部との中継地として栄えると同時に、手すき和紙作りも盛んに行われ、木野で造られた和紙は広く知られる存在でした。
そういったかつての栄華というと語弊があるかもしれませんが、木野の集落には明治から大正期の立派な建物が多く残っています。雛流しのメイン会場からも歩いていける距離なので時間があれば散策してみてください。
また、対岸には吉田松陰の詩碑が設置されています。安政の大獄で囚われの身となり、萩から江戸に送還される際にここで詩を詠み、故郷長州に最後の別れを告げました。詩碑には「夢路にも帰らぬ関を打ち越えて、今を限りと渡る小瀬川」と刻まれています。
この小瀬川流域では、戦後の昭和33年より大竹市青少年育成市民会議が中心となり、地域の行事、大竹ひな流しとしてずっと続けられてきています。
開催日は3月3日以降の最初の日曜日に行われます。西日本では旧暦や月遅れで行うことが多いので、西日本に暮らす人の感覚では一足早いひな祭り行事となるでしょうか。
流し雛の会場は小瀬川流域なのですが、4カ所もあります。一番下流は工場地帯にある住吉神社の前、国道2号線よりも少し上流にある大和橋手前の青木公園付近、そしてメイン会場の前木野両国橋下流の河原、ちょっと上流にある旧穂仁原小学校前の河原です。
駐車場があり、訪れやすいメイン会場には地域外からも多くの人が集まりますが、それ以外は地元の人が中心となっています。
流し雛に使われるのはワラで作ったさん俵です。さん俵とは米俵の蓋の部分の名称のことで、丸っこい藁のお盆といった感じです。この付近というか、瀬戸内では舟を流す行事が多いので、ちょっと珍しく感じます。
ここのさん俵は少し大きめなものが使用され、その中に頭部を紙粘土で、胴体をようじと色紙で形作った内裏人形を折敷(板)に貼り付けたものをのせます。そして梅などの小枝、菜の花などの季節の花が添えられます。人によってはあれもこれもとのせてまるでバイキングのお皿状態に。これだけ華やかな流し雛は他にないです。
この流しびなの首と折敷は主催者の大竹市青少年育成市民会議が作成し、市内各地区で女子児童のいる家庭に配布され、当日会場で製作します。会場でも配布されるので、当日参加することも可能です。
・行事の様子
下流部では工場地帯にある住吉神社の前と、国道2号線よりも少し上流にある大和橋手前の青木公園付近で行われています。
護岸がしっかりと整備され、都市河川といった趣きです。ここで面白いのは海に流れていくのか、上流に遡っていくのか、流れがない状態なのかは年によって違います。沿岸部の河口付近に暮らしていないとなかなか理解できないことですが、潮の満ち引きによって川の流れる方向が変わります。
また、ちょうどこの時期、満潮にかけてシロウオが小瀬川を遡上します。中市堰の下流はシロウオの産卵場となっているので、流し雛を行う人に交じってシロウオを採っている人の姿も見かけます。
メイン会場は前木野両国橋下流の河原です。ちょうど木野川渡しのあった場所になり、広島側には木野の集落があり、山口側には小瀬の集落があります。
メイン会場ということで地域の人だけではなく、地域外からも訪れる人が多く、ぜんざいやうどんの販売が行われていたり、露店も数軒出ていました。
家族だったり、友人同士だったりと多くの人が訪れていて、流し雛の順番を待つ長い列ができ、川べりでは三脚を立てたアマチュアカメラマンの列もできていました。
ここでは川の中に木製の流し場が設置され、そこから流します。川の上から流せるので、流しやすいというか、流れやすいです。水の量が少ない年はちょっと流しにくいかもしれません。
流し場は一か所しかなく、家族なり、友人同士なりと順番に流していくので結構時間がかかります。後ろで待っている人がいるから早くしなければとか、一人で注目される場所で流すのは嫌だなと緊張した面持ちで流している子供を見ると、ちょっと改善してあげた方がいいのかなと思えます。
一番上流部は旧穂仁原小学校前の河原です。この付近まで来ると所々に集落があるといった感じで、周囲は森ばかりです。
旧穂仁原小学校は平成25年に閉校となり、今は集会所等に利用されているようで、流し雛の製作もここで行われます。
景色的に一番のどかで、素朴な感じがします。河原にある石から流すので、雪解け水の量や前日までの雨の量などで流す位置が変わります。
ここでは自然の中で楽しそうに流している様子がとても印象的でした。
・感想など
ここ大竹の流し雛の特徴はさん俵が大きく、そして思い思いに装飾できることです。一所懸命装飾して作りあげた世界でたった一つの自分だけのさん俵。それを流すことのうれしさというのは自然と顔に出てしまうものです。とてもいい表情で流していました。
瀬戸内では想いや願いを船に込めて流す行事が多く行われています。文化圏的にはここはさん俵ではなく舟の方が自然だと感じますが、川で流す場合は細長い船よりも丸いさん俵の方が安定し、見栄えもいいというのが実際です。
見てて思ったのが、さん俵に置かれる大きな折敷の木の部分を起こせば舟の帆の部分のように見えます。生活や風趣からうまい具合に流し舟と流し雛が混ざったのかもしれませんね。
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* 情報、アクセス等 *
・大竹ひな流しの概要
・開催日時 | 2020年3月8日(日) (例年3月3日後の日曜日) |
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・開催場所 | 小瀬川流域の4カ所(広島県大竹市) メイン会場は木野両国橋下流の河原(木野川渡し跡付近) |
・行事内容 | 流し雛 |
・スケジュール | 流すのは午前11時ころから |
・アクセス等 | JR大竹駅からは「鮎谷」方面行きバスで中津原バス停で下車。駐車場有。 |
・備考 | 当日訪れて行事に参加することができます。 |
・関連サイト |
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