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大仏追善供養(船橋市)

船橋では江戸時代に漁場の境界を巡る争いで投獄された総代を追悼し、大仏に白米を塗りつけるといった変わった供養行事が行われています。

・開催場所 :不動院(船橋市本町3-4-6)
・開催日時 :2月28日
・行事内容 :供養祭
・備考 :2012年訪問

*このページは過去の訪問記録です。
*日時、場所、行事内容が変更されている場合があります。

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* 大仏追善供養訪問記 *

・大仏追善供養について

船橋漁港の写真
船橋漁港

漁船がたくさん並ぶ漁港です。

東京湾の最も北に位置するのが千葉県船橋市です。比較的都心に近く、ベッドタウンとして人気のエリアであり、また海岸には工場が建ち並び、工業地帯の町といったイメージを持ってしまいがちですが、今でも漁業が盛んです。

船橋の漁業は江戸時代から盛んで、船橋沖の海は魚貝の豊富な漁場でした。元和元年(1615)、船橋に宿泊した徳川家康に地元の漁師が魚貝を献上した縁から、船橋の沖の漁場は徳川家に魚や貝を献上する御菜浦と定められ、課税免除や他村の漁師の入漁を禁止するなどの特権を得ていたほどです。

現在でも立派な漁港があり、千葉県は東京湾で捕れる代表的な魚、スズキの漁獲高が日本一番ですが、その中でも船橋港が一番となるようです。

また船橋で水揚げされた海苔やあさりは江戸前として市場でも人気があり、海苔の味と香りは全国でもトップクラスだと言われていたり、東京湾に残された貴重な干潟三番瀬で採れたアサリは粒が大きく人気があります。同じ東京湾にある川崎の方は工業化によって海苔の養殖が全滅したのと比べると、工業と漁業がうまく共存していると言えます。

豊かな漁場を持つがゆえに利権争い、漁場争いも堪えませんでした。そういった争いにまつわる少し変わった大仏追善供養が今でも船橋では受け継がれています。

釈迦如来坐像の背中 大仏追善供養の写真
釈迦如来坐像の背中

津波で亡くなった人々を供養するために建立されものです。
背中には永代供養の文字が彫られています。

大仏追善供養が行われるのは船橋市本町3丁目にある不動院です。門前には像高80cm、台座等を含めた高さは185cmになる石造の釈迦如来坐像があります。この像は延享3年(1746)8月1日に起きた津波で亡くなった人々の供養のため建立されもので、基礎部はおよそ130名分の戒名と立顕者で埋めつくされています。

坐像の後ろには供養塔が設置されていて、二名の名が刻まれています。この供養塔は文政7年(1824)に、他の村と漁場の境界をめぐる争いが起き、船橋の漁師が相手方の侍を殴打するという事件が起きました。

その際に責任を取って漁師総代3人が入牢し、うち2人が亡くなりました。船橋の漁場を命がけで守った二人を供養するために建立されたものです。

この翌年の文政8年(1825)から毎年1月28日(明治以降から2月28日)に先の津波で亡くなった霊とともに、牢で亡くなった人や津波で亡くなった人がひもじい思いをしないようにと大仏に白米を塗る大仏追善供養が行われるようになったそうです。

・行事の様子

僧侶による法要 大仏追善供養の写真
僧侶による法要

大仏追善供養は法要から始まります。

焼香 大仏追善供養の写真
焼香

関係者や参列者が供養塔と大仏に焼香します。

大仏追善供養は釈迦如来坐像と供養塔の前で行われます。

まず僧侶によって津波で亡くなった人や牢獄で死んでいった総代を弔う法要が行われ、その後は参拝者による焼香が行われます。

白米がだらけの大仏様 大仏追善供養の写真
白米がだらけの大仏様

参列者が次から次へとご飯を付けていきます。
温かいので頭から湯気が上がっていました・・・。

行事の様子 大仏追善供養の写真
行事の様子

震災の翌年ともあって多くの人が参列していました。

そして漁業関係者や参拝者によって白米の飯が盛り上げるようにつけられていきます。

これは牢内で食が乏しかったのを償うためだとかいわれているようです。と言うことで、せめてこの日ばかりは白飯をたくさん食べてもらおうと、特に大仏様の頭部には沢山の飯が付けられていきます。

訪れた年はは震災の翌年だったので多くの人が関心寄せて訪れていました。

白米の争奪戦 大仏追善供養の写真
白米の争奪戦

持って帰って食べると風邪を引かないそうです。

この大仏様に盛った飯を食べると風邪をひかないとされているので、行事が終わるとはがされていきます。

縁起ものなので我先にと昔は争奪戦になっていたようですが、今では年配の方が盛り上げるために争奪戦をしてくれるといった感じです。

御飯が取られた後の中途半端にご飯がついている大仏様は、子供っぽいというか、お茶目な感じがするというか、ちょっと微笑ましい感じでした。

・感想など

行事後の大仏様 大仏追善供養の写真
行事後の大仏様

お腹一杯になって満足そうな表情をしていました。

大きな津波の被害が起きてしまった東日本大震災の翌年に訪れたので、色々な思いを持ちながら参加している人が多く、最初は慰霊祭のような堅い雰囲気でした。

でも大仏様にご飯がどんどんと塗られていくと、徐々に場が明るくなり、最後はいい祭りだったねといった楽しい雰囲気となりました。

行事を終わった後の大仏様の顔もみんなの気持ちを表してか、ご飯粒をたくさんつけてほっこり笑顔になっていました。

大仏追善供養 風の旅人 - 2012年訪問

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* 情報、アクセス等 *

・大仏追善供養の概要

・開催日時2020年2月28日(金) (毎年2月28日)
・開催場所不動院(船橋市本町3-4-6)
・行事内容供養祭
・スケジュール午前10時から法要開始
・アクセス等JR総武線船橋駅、京成船橋駅より徒歩圏内。
・備考市指定無形民俗文化財
・関連サイト

*訪れる際には最新の情報を入手されることをお勧めします。

* 地図 *

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