風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

八丈島、三宅島卒業旅行記
#21 夕日と露天風呂

<1998年3月>

友人と卒業旅行に向かったのは離島の八丈島と三宅島。3泊5日の行程で旅をしました。(全21話)

広告

21、夕日と露天風呂

宿に戻ると、宿のおばさんがご苦労様といった感じで出迎えてくれた。やはり温かく迎えてもらえると、ホッとしたような、うれしいような、落ち着く気持ちになる。

宿への送迎中に「三宅島に観光に来ました」と胸を張って言ったからだろうか。それともいつも聞いているだろうか。それへんはわからないが、おばさんは間髪入れずに「三宅島はどうだったかね」と、興味あり気に聞いてきたので、各所で火山の凄さを思い知った旨を伝えた。

そして雄山での恐怖体験を熱を込めて語ってみると、「それはいつもの事だよ」と笑われてしまった。「やっぱり都会者は・・・」とは言わなかったが、そう顔が物語っていた。

でもあれが当たり前と言い切ってしまうところが凄いというか、たくましい。人間慣れというのは恐ろしいものだな。まあ実際、今のところ噴火していないから、あんなに慌てて降りてくる事もなかった。それは確かだ。

会話が一段落すると、おばさんは「うちの風呂に入ってもいいけど、島の西側にある夕日が綺麗な露天風呂があって、そこに入りたいのなら車で連れて行ってあげるよ」と言ってきた。

それはいいかも。どうせ暇しているし。宿の風呂に入るよりも楽しいに違いない。その提案を受ける事にした。

温泉のチケット
訪れた温泉のチケット

送ってくれたのは宿のおじさん。軽トラに3人で乗ると、ってまあちょっと問題あるかもしれないけど、離島だとこれが日常なのだろう。窮屈に軽トラに乗っていると、ほんわかとした離島ならではといった感じで楽しい。

トラックが止まったのは、阿古の集落にある温泉で、ちょうどめがね岩近くにあるふるさとの湯だった。ここは昨年できたばかりのようで、まだ施設が新しかった。施設は新しいけど、利用している人はあまり新しいとはいえず、地元のおじいちゃんたちに交じって温泉に浸かった。

ここの目玉は外の露天風呂から海がよく見えること。夕日がきれいということで期待していたのだが、日が沈む時間帯には水平線上に分厚い雲がかかってしまい綺麗な夕日を見ることが出来なかった。でもまあこれもいい思い出だ。宿の人の好意に感謝しなければ。

line

40分後、宿のおじさんが迎えに来てくれ、再び軽トラックに乗って宿に戻った。宿に戻るとおばさんが迎えてくれ、「もう夕食の準備ができているけど、どうする」と聞いてきた。

じゃあ早速夕食にしよう。今日はよく動いたので、腹が減った。食堂に行くと、今日は他に客がいないので貸し切り状態。海の幸を使った料理もおいしい。こりゃお酒も進む。

八丈島もよかったけど、三宅島も楽しかったな。それに住む人々もよかったな。やはり厳しい自然と向き合って暮らしている人達は人間味があふれ、心が暖かいものなのかな。

いい人に出会うと旅も楽しい。そして気分もいい。調子に乗って、

「風に苦しめられ、島流しのような旅だったけど、なかなかいい思い出だよな。やろうと思ってなかなかできるものではない。俺たちはもの凄く運がいいぞ。」と、友人に言ってみると、

「えっ~、そうなの。あんまり運がいいとは言えないんじゃないかな・・・。」と返ってきた。

まあ考え方は人それぞれ。今は「こうだ」と思っていても、後から考えると違った印象になっているかもしれない。それが旅であり、人生の経験だ。

でもこの旅が楽しかったというのは二人とも一致していた。いい卒業旅行だったなと、この3日間の旅の話で楽しく盛り上がりながら、最後の夜を過ごした。

朝の三宅島 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
朝の三宅島

そして翌日、風は一段と穏やかになり、定刻通り、午前中のフェリーに乗った。来るときは胸をときめかせながら船に乗り込み、船旅を満喫したものだが、帰りはそういった感動はなく、ただ疲れて寝ているだけだった。おかげで気が付いたら芝浦に到着していた。

JR浜松町駅から電車を乗り継いで家に戻ると、3泊4日の楽しい小旅行が無事に終わった。そしてその一週間後、長く楽しかった大学生生活も終わってしまった。

八丈島、三宅島卒業旅行記98'
ー 完 ー
風の旅人 (2020年11月改訂)

広告

広告

広告