風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

八丈島、三宅島卒業旅行記
#16 波乱の船出

<1998年3月>

友人と卒業旅行に向かったのは離島の八丈島と三宅島。3泊5日の行程で旅をしました。(全21話)

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16、波乱の船出

待てども船はやってこない。出発予定時間を1時間以上過ぎたが、船がやってくるといった気配が感じられない。いつまで待てばいいのだろう。このまま来ないという可能性もありそうだ。色々と心配になってくる。

ここでじっと待っていても退屈だし、不安になるだけ。もうお土産はいらないけど、2回目の散策に出かけてくるか。

友人に荷物の番をしてもらい、20分ほどカメラを持ってぶらぶらと浜辺などを歩いてみたが、ただ風が強いというのを再認識しただけだった。

羽を休めるカモメ 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
羽を休めるカモメ
海の様子 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
登龍峠の下あたりの様子
底土海水浴場 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
底土海水浴場

出発予定時間から2時間ぐらい経った頃、やっと水平線に船が現れた。港では「お~、やっと来た」「無事に着いた。」などと安堵の言葉があちこちから聞こえてきた。

やっと到着したか。船が来たことに安堵するものの、なかなかその姿が大きくならない。どうやら高波のために非常にゆっくりと港に近づいているようだ。

もどかしさを感じながらしばらく眺めていると、船が少しずつ大きくなってきた。肉眼ではっきり見えるようになると、大きなフェリーが川下りの船のように揺れているのが分かる。まるで海に浮かんだお椀といった感じ。あんな状態の船には乗りたくない・・・。見ているだけで酔いそうだ。

港にいる人たちもその様子に、「どうやって接岸するんだ」とか、「出航しないんじゃないか」、「今日は乗るのやめよう」などと異常な状態の船を見てざわついていた。

荒波の中をやってきたフェリー 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
荒波の中をやってきたフェリー

波の中で大きく揺れていました。

船は時間をかけてゆっくりと桟橋のすぐ近くまでやってきた。相変わらずよく揺れている。肉眼で見て揺れるのが分かるほどだから、相当な揺れだと思う。

港内に入ると、作業が慎重になってきて、周囲の緊張感も高まってきた。そしていよいよ接岸という段階になると、陸にいる作業員の動きが慌ただしくなった。

大声でやり取りしながら、まずは何本もロープで船と桟橋をつないでいった。船のバランスを保つためだ。そして慎重に少しずつ岸に寄せていった。

しかしこれがなかなかうまくいかない。波が高すぎるのだ。10~20mぐらいまでは近づくものの、そこからは岸壁にあたる波と、風による揺れで船が安定しなくなる。

桟橋のコンクリに船が勢いよくぶつかってしまうようなこととなってしまうと、横転、或いは船に穴が開いて沈没なんてことも考えられる。

目の前でそんな惨事は絶対に起こってほしくない。作業をしている方も必死だったが、その様子を見守っている人々も手に汗を握っていた。

接岸を試みるフェリー 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
接岸を試みるフェリー

なかなか船体が安定しなく、大変でした。

もう既に最初に接岸を試みてから30分近く経っていた。何回か接岸を試みるものの、いずれも失敗。なかなかうまくいかない。

舵を握っている人からすると、岸壁に近づいてからの挙動が好ましくないようだ。そのあたりで躊躇し、岸から離れている感じがする。

隣にいたおじいさんが言うには、かつて船がここまで来たけど、接岸できずに本土に戻ったこともあるとか。

今日もそうなってしまうのか。いやいやそれだけは勘弁して欲しい。いや、むしろその方が諦めが付くのか・・・。色々な思いを巡らせながら接岸作業を見守った。

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そして何度か接岸作業が失敗した後、とうとう船が港を離れ、湾の外に出て行ってしまった。

あららら、行っちゃうの・・・。ホッとしたような、がっかりしたような・・・。なかなか複雑な心境だ。ただ、この後の予定が無くなってしまうので、「どうしたものか・・・」というような呆然といった気持ちが強かった。

港では見守っていた人たちも色々な思いがあるようで、少しざわざわとした感じになったが、すぐに、「一旦船の体勢を立て直す為に湾を離れ、もう一度試みます。」とアナウンスが流れたので、安堵の声が聞こえてきた。

接岸作業 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
接岸作業

陸からロープを張ってゆっくりと接岸しました。

再び船が近づいてきた。今度はうまくいくだろうか。また同じことになるのだろうか。今日は駄目だったと一度諦めが付いたので、「駄目でもしょうがない。」と少し気持ちに余裕をもって作業を見守った。

船が近づくと、ロープで固定していってと、先ほどと同じように接岸作業が行われた。今度はみんなの思いが通じたのか、前回の教訓を活かしたのか、意外とすんなり接岸することができた。

ただ、降りてきた数少ない乗客の顔色が悪い事。あれだけ接岸中に揺れれば気持ち悪くなるのは当然だよな・・・。

そんな様子を見ると乗りたくないと思ってしまうのだが、この後ちゃんと出港するとの事なので、それまでに覚悟を決めるしかない。

モニュメントと雲 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
港のモニュメントと雲

雲がきれいな日でした。

接岸してからは急ピッチに出航の準備が進められた。そして30分ほどで乗船の準備が整い、乗船の受付が始まった。

今日のうちに三宅島へ着いておいた方が明日の日程が楽になる。気持ち悪くなったとしても一晩寝れば何とかなるだろう。友人と覚悟を決めて乗船受付に向かった。

乗船の受付のカウンターに行くと、係りの人から「もしかしたら戻ってくることになるかもしれませんが、いいですね」と念を押された。

「もしかしたら沈むかもしれません」なんて言われたら、さすがに「嫌だ」と言うけど、それぐらいのことは覚悟の上だ。

それに先ほどの着岸作業を見ている限り、なかなか信頼がおけそうな感じもする。きっと大丈夫だ。無事に三宅島に到着できるはず。

「わかりました。」と返事をし、乗船手続きを済ませた。

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外はいよいよ風が強くなり、桟橋まで歩いていくのもやっとなほど。海に落ちると大変だからという事で、船のところまでは港の車で運ばれていった。なんだか飛行機に乗るみたいだ。

しかし船と岸壁をつないでいるタラップはむき出しになっているので、ここを歩くのがなかなかの恐怖だった。波の高い海に落ちたら海の藻屑になりかねない。風にあおられないように手すりを捕まりながら慎重に渡って乗船した。

それにしても先程に比べて乗船する人が減っているような・・・。みんなお迎えや野次馬で集まっていただけなのだろうか・・・。それとも身の危険を感じたのだろうか・・・。乗ってはみたものの、私達も正直言ってちょっと怖い・・・。

乗り物に酔いやすいほどではないけど、この状況では絶対に酔う自信があったので、乗船するとすぐに売店に行って酔い止めの薬を購入した。これを飲んで後は寝て三宅島に到着するのを待とう。頑張って起きていても気分が悪くなるだけだ。

八丈島、三宅島卒業旅行記98'
#16 波乱の船出
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