風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

八丈島、三宅島卒業旅行記
#13 八丈富士の登山

<1998年3月>

友人と卒業旅行に向かったのは離島の八丈島と三宅島。3泊5日の行程で旅をしました。(全21話)

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13、八丈の富士登山

牧場の背後には八丈島のシンボルである八丈富士の山頂がすぐそこに・・・。いやいや、まだまだ充分高い位置に見える。

ガイドブックによると、標高は854mで、伊豆諸島中では最高峰の山になるとか。そして火口には原生林が生い茂っていて、地下森林と呼ばれる不思議な風景となっていると書いてあった。

この山を制覇したら伊豆諸島の山は制覇したようなものだ。そんな単純なものではないけど、そういったことに心躍らせてしまうところが私の行動の源だ。それに地下森林というのにもちょっと興味があるし、もうちょっと高い場所までバイクで行ける。頑張って登ってみよう。

ということで、牧場から更にスクーターで山道を登っていった。相変わらずトロトロと進んでいくのだが、ずっとアクセルを開きっぱなしで動かしていたせいか、アクセルを回すスロットル部分の反応がちょっと悪くなってきた。ワイヤーが伸びてしまったのかな・・・。

それとともにエンジン音がさっきよりもドモッた感じがする。酸素が薄くなったからか・・・。って、そんなにビックリするほど高い場所に来ているわけではない。富士山に登っているわけではないのだから・・・。

何にしてもそろそろバイクの限界が近い気がしてきた。この登山が終わったら壊れる前にさっさと返してしまったほうがいいかもしれない。

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登山口には小さな駐車場が設置されていて、車が2台か停まっていた。先客がいるようだ。我々の他にも観光客が来ているんだな。飛行機で来たのだろうか。船の中からほとんど観光客に会わなかったので、同じ島流しの仲間がいるんだといった変な連帯感みたいな感情がわいてくる。

登山道の入り口には「山頂まで40分、1280段、頑張ろう」と書かれた案内板が立っていた。千段以上もあるのか・・・。なかなか長く、そして過酷な道のりだな。

やれやれと思いながら屈伸なんぞして気合いを入れてみる。まあ時間をかければ何とかなるだろう。為せば成るだ。

八丈富士登山道入り口 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
八丈富士登山道入り口

登山道を登り始めた。登山をする時に山頂まで何kmと書かれていることは多いが、ここのように1280段と段数で書かれているところは少ない。

登り始めると、ちゃんと段数で書かれているだけあって登山道には石段が整備されていた。これは登りやすい。誰でも安心。楽ちん使用の登山だな。

最初の10分ぐらいは友人と話ながら登る余裕があったものの、階段になっていても登りは登り。きついものはやっぱりきつい。次第に真剣な顔つきに変わっていった。

これは結構しんどいぞ・・・。階段ばかりといってもやっぱりちゃんとした登山だ・・・。いや当たり前か。山に登っているのだから・・・。脳内酸素が薄くなり思考が回らない。

私がぜぇぜぇとしんどい思いをしながら登っているのに対し、友人の方は不公平なほど息が乱れていない。なんなんだこの差は・・・。

やっぱり最近タバコを吸いすぎだよな・・・。移動するのもバイクばかりで歩かないし・・・。伊豆諸島最高峰という肩書は伊達ではなく、不健康な人間にはやっぱり甘くはなかった。

登山道の途中で 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
登山道の途中で

しばらく歩くと、観光客と思われる中年夫婦が降りてきた。離島の登山。お互い親しみがわくというもので、元気よく挨拶をし、挨拶がてら「後どれくらいありますか?」などと聞いてみると、「まだ20分ぐらいあるかな~。頑張ってね。」と、その笑顔とは裏腹に恐ろしい答えが返ってきた。

まだそんなにあるの・・・。徐々に足が止まっていき、「先に行っていていいよ。自分のペースで登るから・・・」と情けない事に私はダウン。

友人は、「別に急いでいるわけではないし。俺もゆっくり登るから大丈夫だよ」と私のペースに合わせて登ってくれた。

「わるいね。ありがとう。」と言いながらも、かなりの負けず嫌いなので、次山に登るときは逆のセリフを言わせてやると心の中で思うものの、リベンジする次の機会はあるのだろうか・・・。

八丈富士の山頂 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
八丈富士の山頂

大きなカルデラとなっています。

カルデラ内の原生林 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
カルデラ内の原生林

登れば登るほど足が痛くなり、息も苦しくなっていくのが登山の困ったところだ。しかもまた同じ道を降りなければならないと思うと、気が重い。

しばらく腰が痛い、足が痛いと呻きながら苦しい道中を耐えると、なんとか山頂に到着。いや頑張った。本当に・・・。

ここ八丈富士の山頂は大きな噴火口が開いていて、山のてっぺんといった感じの山頂ではない。とても大きなカルデラで、尾根に沿って一周できるようにもなっている。そして火口内には樹木が生い茂っていて、これがガイドブックに書かれているヤマグルマなどが生い茂る地下森林となるようだ。

なかなか広々としていていい眺めだ。そして火口内が樹木で覆われているというのも不思議な光景だ。苦労して登ったかいがあったというもの。この景色を見たら疲れが吹き飛んでいく・・・なんてことは絶対にありえないが、ここまでの辛かった道中が少し報われる気がした。

お鉢巡りの道 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
お鉢巡りの道

尾根沿いを一周歩けるようになっています。

ただ困った事に風が強い。耳元で「ごうごう」と音を立てて吹き、腰を低くしていないと風であおられる。のんきに立っていられないほどだ。まるで台風の時の強風といった表現がピッタリだ。

ちょっと気を抜くと飛ばされてしまいそう。いや、大袈裟に言っているのではなく、本当に気が抜けない状態だ。海岸で弁当が飛ばされるのとはわけが違う。

それに私は中学生時代に強風に飛ばされて、危うく死にかけたという変な過去を持っている。強風は他の人よりも苦手なのだ。なのでこの状況は洒落になっていないというか、恐怖そのもの。

岩にしがみついてかなりへっぴり腰になりながら記念写真を撮って、八丈富士登山の任務完了。

登山の記念撮影 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
登山の記念撮影

怖くて岩にしがみついています・・・(笑)

本当はゆっくりと火口を一周、いわゆるお鉢巡りをしたいけど、この状況ではもってのほか。火口に落ちるか、山の下に落ちるかの二択しかない。

火口の原生林に降りるのなら風の影響は少ないけど、結構深いので却下。きっと私は登ってこれない・・・。だったら長居は禁物。というより、本気で怖いので早く下山したい。飛ばされるかもしれないという恐怖心から早々に下山する事にした。

八丈島、三宅島卒業旅行記98'
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