風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

八丈島、三宅島卒業旅行記
#2 旅の目的地探し

<1998年3月>

友人と卒業旅行に向かったのは離島の八丈島と三宅島。3泊5日の行程で旅をしました。(全21話)

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2、旅の目的地探し

さてどこに行こうか。日本だってなかなか広いぞ。社員旅行のように熱海や日光などといったありきたりな場所へ行ってもしょうがない。行くこと自体にワクワクする場所がいい。

しかもこれからの新しい生活に備え、少しのんびりとできたりするといいな。そんな理想的な目的地はどこかにないものか。つまみをほおばりながら、酒と意見を交わした。

旅行というものは計画している時が一番楽しい。自分が持っているありったけの知識と想像力を駆使し、行ってみたい土地や興味のある場所を探す。そしてその土地の文化などを想像しながら自分が旅していることを考えると、夢や期待、好奇心が無限に膨らんでいく。

しかも想像の世界をいくら旅をしてもお金がかからない。世界一周だって簡単にできてしまうし、宇宙旅行だって可能だ。旅の話をするときは夢と理想しかないので本当にワクワクする。そして困ったことに私の場合は話が止まらなくなる・・・。

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「どうせ行くならお互いが行ったことがな場所がいいな。どこか行きたい場所はある?」と、旅慣れた余裕をみせつつ友人に聞いてみると、九州出身の友人は「東北はどう。東北に行ってみたいな。」と提案してきた。

理由を尋ねると、「東北地方に行ったことがないし、卒業後は地元の九州に戻るので、今後も行く機会がないと思うから。」とのこと。なかなかうまいアピールの仕方だ。「君は一次面接合格だ。ぜひうちで採用したい。」などと就活の面接をネタに盛り上がりつつ、東北案は議案として採用された。

私も福島や仙台には行ったことがあるが、それ以外へは行ったことがない。遠野とか花巻などはいつか行ってみたい場所の上位候補だ。それ以外にも中尊寺金色堂なども見たいな。ここは友人を立てて東北というのもいいかも。

「東北といったらやっぱり宮沢賢治の世界だよな。銀河鉄道に乗って機械化惑星へ最新のノートパソコンをもらいに行く旅ってやつをやろうか。」

「おい、それってアニメの銀河鉄道999じゃない。河童や注文の多い料理店があるところだよ。」

「おっ、そうかそうか。でもどっちも似たように宇宙へ飛んでいくではないか・・・。ははは。他には何かあったけ?」

「中尊寺の金色堂とか、松島とか、仙台の牛タンとか・・・、あっ、タン塩頼もうか。」

とまあ、会話は弾みすぎて脱線を繰り返し、それと共に酒の量も増えていった。

注文の多い料理店の写真
注文の多い料理店

宮沢賢治の世界です。

東北か・・・。東北でもいいと思う。そう思うのだが、さっきから東北で行ってみたい場所などを挙げながら「そこ行ってみたい」「あっ、そこ、俺も行ってみたい。」などと盛り上がりながら話をするものの、何かすっきりとした気分になれなかった。心の奥底から東北へ行きたいといった熱い気持ちが湧き上がってこないのだ。

東北は素朴な土地柄が魅力と言える。だが、今の時期は雪が降っていて寒そうだし、簡単な表現で言うなら思いっきりシーズンオフってやつではないのか。

季節がよければ「東北はのんびりしていて素朴だね~」などと言いながら颯爽と旅を楽しめそうだけど、激寒だと「ここは厳しい土地柄だね!」と縮こまりながら旅をすることになってしまいそう。そこの部分が「さあ、行こうぜ!」という気分を妨げているようだ。

東北の曲がり屋の写真
東北の曲がり屋

東北は素朴な風景が多いです。

それに季節外れの大雪が降ってしまった日には身動きがとれなくなってしまい、宿のおかみさんに「お客さん、除雪が済むまでバスは走らないから、しばらくお部屋でゆっくりしてくださいな。」と言われるような事態になりかねない。

窓の外は一面季節外れの雪。することがなく、友人とエンドレスで一日中「なごり雪」を歌う旅は・・・、いやだな。ということで、東北案は長い審議の後、否決となった。

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じゃあどこにしよう。南国の代名詞である九州は友人の出身地だし、四国はお互い何度か行っているし、中国地方も私の出身地なので、却下。

「おっ、そうだ。思い切って飛行機に乗って沖縄っていうのはどうだ。最近飛行機も安くなったことだし。」と得意気に言ってみれば、「ごめん、去年地元の友人と行ったんだ」とのこと。

なんだ、昨年行っちゃったの・・・。これで決まりだと思ったのにな。なかなか目的地が決まらない。この二人だと組み合わせが悪いのかもしれない。

いやいや、いい案が浮かばないのは酒が足りないからだ。知恵が浮かばないのを軽くなったジョッキのせいにして、お代わりを頼んだ。

そして、注文したものが店員に運ばれて来た時、厳密に言うなら我々のところよりも先に隣のテーブルに「伊豆大島の焼酎です。」と酒が運ばれたときに脳天にひらめいた。

「そうだ。沖縄まで行かなくても東京の南にも島が浮かんでるぞ。八丈島っていうのはどうだろう?なんか面白そうじゃないか。」

「お~それはいいかも。島旅って楽しそう。それに東北以上に今後行く機会もなさそうだし。」と、めでたく2人の意見が一致した。

そして、長々と目的地を探して世界やら日本をぐるっと周ったわりには、結局、目的地が同じ東京内にあったではないかと、のんべい二人は盛り上がって、夜遅くまで飲み続けたのだった。

八丈島、三宅島卒業旅行記98'
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