風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

極寒のモスクワ散策記
#1 モスクワでのトランジット

<1997年12月3日>

ソビエト連邦が崩壊してから6年後、ロシアの政治、経済が不安定だった1997年の冬、トランジットでモスクワに立ち寄り、半日ほどモスクワ市内を散策しました。

*この旅行記は全12話で構成されています。また、1997年の話になります。現在とは様々な事情が異なっています。

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1、モスクワでのトランジット

私の乗っている飛行機は、間もなくモスクワ国際空港に到着しようとしていた。徐々に高度が下がっていく感触を体で感じながら、着陸の時を待った。

今回の目的地はここモスクワ・・・。ではなく、北アフリカのモロッコだった。モロッコはアフリカ大陸の北側、ちょうど地中海の出口に位置していて、スペインとジブラルタル海峡を挟んでいる。

地理院の地図
世界地図

国土地理院地図を書き込んで使用

旅の出発は晩秋の11月。大学4年生だった私は色々と思うところがあり、また時間もあったことから、ちょっと中途半端な時期に勢いで旅立ってしまった。

目的地のモロッコは前から行きたかった・・・・というわけではなく、ふとテレビを見ていたらモロッコに行きたくなってしまい、モロッコを選んだ。

そして安いフライトチケットを探してみると、断トツで安かったのがアエロフロート(ロシア航空)だった。

シーズンオフだったので、全般的に航空料金は平常時よりも安かったが、他に運行しているのはヨーロッパ系の航空会社ばかり。そのためアエロフロートの安さが際立っていた。

モロッコから遠く離れたモスクワ経由でもいいか。ロシアは政情が不安定であまり印象がよくないけど、トランジットならそういったことは関係ないはず。やっぱり安いが一番。と、アエロフロートを選んだ。

シェレメチェボ空港のアエロフロートの写真
アエロフロート(ロシア航空)

今そのモロッコへの旅を終え、後はモスクワで飛行機を乗り継ぎ、日本へ帰国するだけだった。ただ、困ったことがあり、このモスクワ経由のフライトは乗り継ぎ時間がとても長いのだ。

往路の場合は、夜、モスクワに着いて、出発が朝だった。乗り継ぎ時間は約12時間。乗り継ぎ客にはトランジットホテルを用意してくれる航空会社もあるが、アエロフロートでは用意されていない。泊まりたかったら、自前で空港内のホテルへどうぞってなものだ。

だから安いと言えばそうなのだが、空港内にあるトランジットホテルに泊まってしまうと、安いというメリットが消えてしまうだけではなく、乗り継ぎには時間がかかるし、週2便しか飛んでいないので、スケジュール的にも融通がきかないしと、デメリット方が大きくなってしまう。

「ホテルに泊まってはアエロフロートに乗った意味がなくなるぞ!」と、往路は空港内で過ごすことにしたのだが・・・、実際にやってみようとすると、連れでもいればまだしも、一人でやるのはなかなか心細い。

旅初めの不安に、まだ手元にたっぷりとある旅費。ホテルに泊まってしまおうかな・・・という強烈な誘惑に惑わされながらも覚悟を決めることにした。

幸いな事にここでは隅っこの方で横になって寝ている人も多く、私も空港のパンフレットなどを床に敷いて横になったのだが、でも、なんだかこれって・・・、モスクワ空港でホームレス体験?ある程度は覚悟していたものの、あまり楽しくない一夜を過ごすこととなってしまった。

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復路は往路以上に乗り継ぎ時間が長く、14時間もある。しかも到着が朝5時過ぎで、出発が19時と、昼間に待たなければならない。なので、往路のように隅っこで寝ているわけにはいかない。

14時間も空港のベンチでただ座って過ごすというのは、拷問のような退屈だ。とはいえ、希望があり、ガイドブックには空港でトランジットビザが取得できると書いてあった。

確実ではないようだが、世界最強と言われる日本のパスポートだし、トランジットを証明できる航空券もきちんとあるので、きっと大丈夫のはず。

ロシアはビザの取得が厄介でなかなか気軽に訪れることのできない。この機会にロシアに入国したい。モスクワの町を見てみたい。そう思うのは旅人として自然な成り行きだ。

アエロフロートは値段が安いのも魅力だったが、赤の帝国と恐れられた旧ソビエトの首都、モスクワに途中下車ができるかもしれないという部分にも魅力を感じていた。

もちろん日本で事前にビザを取得しておくことが一番確実で、安心な方法となる。もし時間があれば六本木の領事館を訪れてビザの取得を試みただろう。或いは、モスクワに一泊という旅程を組み直したかもしれない。

しかしロシアのビザは取得に最低一週間はかかってしまう。ふと思い立って旅立ちを決めてしまったので、出発までに間に合わない可能性の方が高かった。

まあトランジットビザなので、現地できっと何とかなるだろう。もし取得できなかったとしても14時間の退屈に耐えるだけだ。と、空港でビザを取得できることにかけることにした。

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やがて「ドスっ」と軽い衝撃があり、飛行機は無事にモスクワの空の玄関、シェレメチェボ空港に着陸した。

窓の外はまだ暗闇が支配していたが、照明に照らされた滑走路には雪が積もっていた。

さすが北国モスクワ。比較的暖かかったモロッコからやって来たので、窓一枚隔てた向こう側は想像もつかない極寒の世界に感じる。

モスクワ シェレメチェボ空港の写真
モスクワの空の玄関
シェレメチェボ空港(2001年訪問時)

時計を見ると午前5時過ぎ。律儀なことに定刻の到着だった。まだ大半の人が寝ているような時間なので、もっとゆっくり・・・そう2時間ぐらい遅れてもかまわなかったのに・・・などと自分勝手に思ってしまった。

さて降りるか。急ぐ理由はなかったので、大半の乗客が開降りた後にゆっくりと飛行機から降りて、空港の建物に入った。

そして「トランジット(乗り継ぎ)」と書かれた案内板に従って進み、簡易チェック所でパスポートや航空券のチェックを受け、免税店などがある出発ロビーに入った。1ヶ月前に一晩明かした場所なので、少し懐かしく感じる。

まずはイミグレーションオフィスを探して訪れたものの、ドアは閉まっていた。24時間営業ではないんだな・・・。午前5時では開いているわけないか・・・。

それにしてもなんだか開けにくい雰囲気のドアだな。ドアを叩いたりしたら「うるせ~何時だと思っているんだ!」なんて怒鳴られて、ビザが下りないなんて事はないだろうか・・・。

仮に営業しているとしても、こんな早朝にビザをもらっても外でする事がない。・・・。ビザの係りの人はいない事にしよう・・・。面倒なことは後回しだ。隅っこの椅子で横になり、少し時間を過ごすことにした。

極寒のモスクワ散策記97'
#1 モスクワでのトランジット
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