風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

進め若者! 突撃タイ旅行記

~ 第10章 パタヤビーチでの冒険 ~

*** 第10章 パタヤビーチでの冒険の目次 ***

~~~ §1、恐怖のバンジージャンプ ~~~

<1996年9月13日>

今日もいつものように後輩に起こされ、一日が始まりました。でも今日はなかなかすがすがしい目覚めでした。やっぱりちゃんとしたホテルのベットは寝心地がいい。それに宿泊料に朝食が含まれているので、起きたら朝食が待っているといった楽しみがありました。付いている朝食を食べなきゃ損だ。バンコクの時の教訓を活かして、ちゃんと朝食タイムの時間に起きたのです。そしてさっと着替え、豪勢な朝食を期待しつつレストランへ出向きました。朝食はバイキングスタイルでした。こりゃいいやと張り切ってテーブルに着いたものの、料理の置いてあるテーブルに行ってみてがっかりしてしまいました。大したものがないではないか・・・。シーズンオフだし、ちょっと遅めに起きたからしょうがないのかな。それでも最近の食生活から考えれば、豪勢な部類に入ります。それなりに食べて部屋に戻りました。

ホテルから見たバンジーのクレーン
ホテルから見たバンジーのクレーン

今日は昨日の分まで動くぞ!と、なかなかハードな予定となっていました。まずはパタヤでのメインイベント、バンジージャンプに挑戦です。これは日本にいるときにガイドブックを開いていて見つけたもの。後輩たちと絶対これだけはやろうと決めていました。バンジーの会場は町外れの丘にあり、ホテルの部屋からもよく見えました。にょきっと建っているクレーンを見ると、結構高くて怖そうです。あんな高いところ所から飛び降りるのか・・・。高いところから飛び降りても面白くないよな。やっぱりよしておこうか・・・。今更ながら少々怖じ気づいている私でしたが、後輩の張り切りようはなかなかのもので、今更やめようかなどと言える雰囲気ではありませんでした。もっとも昨日グースカ寝てしまい、午後を無駄にしてしまった張本人なので、そんなことを言える立場にはありませんでした。ちょっと休憩した後、身支度を整えホテルを後にしました。

バンジーの会場まではちょっと距離があるので、ホテルの前でトラックバスを拾いました。そして到着してみると、とんでもなく高いクレーンが目の前にそびえていました。あ、あ、あんなに高いの!さすがに私だけではなく、後輩達もビビリモード突入。でもそのまま敷地に歩み始めているところを見ると、やる気は失っていないようです。やれやれ。後輩の後から渋々と敷地に入っていくと、オーナーの人が出迎えてくれました。「君たち、バンジーをやりに来たのか?」「イ、イエス」 聳え立つクレーンにおののいて、ちょっと声が小さくなってしまいます。「じゃ、こっちにおいで」と受付のテーブルにつかされました。事故があった時のための書類などにサインして、料金を払うと手続き完了。最後にオーナーは、「クレーンで上に上がって、飛び降りれなくても料金は返しませんよ。」と付け加えました。あまりの高さに飛び降りれなく、そのままクレーンに乗って降りてくる人も少なくないそうです。「オッケー、オッケー。大丈夫。我々は必ず飛ぶよ。」と三人を代表して笑顔で答えました。この時点ではまだ強がりを言えるだけの余裕が残っていた私でした。

バンジー用のゴンドラ
バンジー用のゴンドラ
下から見たところ
下から見たところ

さあいよいよバンジーの始まりです。まず飛ぶ順番を決めなければ。さて誰が一番最初に飛ぶ?正直、この高いクレーンを見ると自然と腰が引けてしまいます。係りの人の話では50mあるとか。「じゃ、まずは俺がお手本を見せてやる」などとは冗談でも言える状況ではありませんでした。ここは一番気の弱い後輩に振るか。「これは男の見せ場だぞ」とそそのかしてみると、予想外にあっさりと「じゃ飛んできます」とクレーンの下で待っている係りの人の所へ行ってしまいました。残った後輩と私は唖然。我々の方が気が弱いのでは・・・。でも上に着いたら分からないぞ。怖気づいてそのまま降りてくるかもしれない。二人で後輩が用意するのを見守りました。まずは足に命綱となるゴムを巻きつけていました。命に関わる問題なので慎重な作業です。それが終わると、ゴンドラはずんずんとエレベータみたいに上に上がって行きました。どんどん上に上がっていく後輩。どんな気分なんだろう。人事ではないので、見ているほうも真剣です。「まだ上がっていくよ。」「どこまで上がるんだ。」などと心配していると、ゴンドラが止まりました。一番上に着いたらしい。下から見上げるだけでも、顔が引きつるような高さです。さてどうなるのだろう。下から後輩が立ち上がるのが見えました。いよいよ飛ぶんだ。怖いだろうな。見ているほうも手に汗握る瞬間です。

あっ。隣で見つめる後輩が声をもらしました。なんと、いともあっさり後輩が飛び降りてしまいました。そして段々と我々に近づき、地面から5mぐらいのところでゴムが伸びきったらしく、びよ~んと今度は上に上っていきました。そしてまた重力の法則に従って落ちてきました。なんだか人間ヨーヨーみたいです。結構な衝撃らしくなかなか止まりません。何回か繰り返してようやく止まりました。止まったのはいいのですが、後輩は空中で逆さづり状態。なんともいい格好だ。後輩が静止たのを確認すると、ゴムが少しずつ降ろされ、後輩が逆さのまま下に降りてきました。そして係りの人に受け止められて無事生還。いやーすごい。こっちへ向かってくる後輩を拍手で迎えました。

飛び終わって降ろされるところ
飛び終わって降ろされるところ

「よくやった。」と今飛び終えた後輩に声をかけると、「一発目で飛ばないと、飛べなくなりそうで。それにしても高かった。」と興奮冷めやまぬといった口調で返ってきました。そうだよな。さっき後輩に大口を叩いた手前、私もちゃんと飛ばないとみっともない。それは次に飛ぶ後輩も同じ。その後輩は「次は俺が行きます。」と笑顔でクレーンに向かって行ってしまいました。そしてさっきと同じように足にゴムを巻き、クレーンは上に上がっていきました。隣にいる後輩に「どんな感じだった。」などと尋ねれば尋ねるほど飛びたくなくなってくるもの。まいったな。いつしかクレーンは一番上に着き、後輩が立ち上がっていました。さて飛べるだろうか。心配する間もなく、あっという間にもう一人の後輩も飛び降りました。そして同じようにビヨーン、ビヨーンと、かえるのおもちゃのように宙吊りとなり、無事に降りてきてしまいました。すがすがしい顔で戻ってくる後輩とは裏腹に、私の顔は自然と引きつってきました。ちゃんと飛べるだろうか。最後を締めくくる私がちゃんと飛ばないと先輩失格は確実。できる限りの笑顔をつくり、「じゃ飛んでくるよ」と言って、クレーンの方へ向かいました。

クレーンに行くと係りの人が笑顔で待っていました。そして私の足にゴムを巻きながら「みんな勇気あるね。掛け声と共に一発で飛ぶんだから。君も一発で飛ばないと、なかなか飛べなくなるから一発で飛ぶんだぞ」と言ってきました。よけいにプレッシャーになるではないか。段々と自分の顔から笑顔がなくなっていくのが分かります。血の気が引くというのはこういうことを言うんだろうな。あ~もう~えらいこっちゃ。バンジーなんかやろうと言わなければよかった。憂鬱になっていると後輩が声をかけてきました。写真撮りますよとの事。慌てて引きつった顔からぎこちない笑顔を作らなければなりませんでした。それが終わるとクレーンは上に上がっていきました。いよいよだ。足に巻かれているゴムは大丈夫だろうか。足から抜けて、そのまま地面に激突なんて事はないよな。これが命綱だと思うと、なんとも頼りなく思えました。

ゴンドラから見たパタヤの町
ゴンドラから見たパタヤの町

そうこうしているうちにクレーンはかなりの高さまで昇っていました。う~高い。周りを見るとパタヤ市街が一望できました。もちろんそれを冷静に眺める余裕は今の私にはありません。クレーンよ止まらないでくれ。でも止まらないとどんどん高くなってしまうではないか。少々頭の中もパニック気味。下を見ると、後輩が豆粒のように見えるし・・・。あいつらこんな高いところからよく飛んだな。今度は足が震えてきました。もう十分高いよ。止めてくれ。そんな私の気持ちを裏腹にクレーンはずんずんと上昇していきました。そして想像を絶するような高さでようやくクレーンは止まりました。下を見ると後輩たちがさっきよりも小さく、今度は米粒のように見えます。50mってこんなに高いのか。完全にひざががくがくと震えていました。係りの人が「準備オッケー?」と聞いてきました。うぁ~待ってくれ。心の準備がまだできていない。悪あがきというか、とりあえず「写真を撮ってくれ」と、時間稼ぎをする事にしました。

自分の写真を撮ってもらい、周りの風景を撮ったら、もうすることがなくなってしまいました。これ以上の時間稼ぎは思いつかないし、きっと余計に気分がなえてくるはず。ここで覚悟を決めて飛ばなければ・・・。係りの人が再び「準備いいか」と聞いてきました。もう覚悟を決めるしかない。「オッケー」と力なく頷き、眼鏡とカメラを係の人に預け、飛び降りる場所に立ちました。非常に目が悪いので眼鏡を取ると視力がほとんどなくなるとはいえ、怖い事には変わりありません。完全にひざがかくかく震えています。今までの人生でこんなことあったけな。記憶を呼び戻しても思い当たりません。ということは人生最大のピンチではないか。係りの人が「ワン」、「ツー」とカウントダウンに入りました。まるで死刑執行の時を迎える囚人の気分。これで飛ばなければ大学に帰っても笑いもの。「スリー」。もう覚悟を決めるしかない。もはや頭の中は真っ白。係りの人の「バンジー」という掛け声と共にもうやけくそだといった感じで飛び降りました。

上から見たバンジー
上から見たバンジー

すさまじい重力が体に伝わるのが分かりました。右手を上げ、頭からウルトラマンのように落下したつもりでしたが、自分がどういう状態になっているのかさっぱりわかりません。ただお腹の中がスーとした感触がして気持ち悪いのだけはよく分かりました。きっと内臓の位置がずれてるんだろうな。そして足に強い衝撃が加わり、我に返りました。お~地面が目の前にある。ぶ、ぶつかる。と思った瞬間、今度は体が上に飛ばされました。な、今度は上か~。そして勢いがなくなると、再び落下。上へ下へ体が引っ張られる感じで何とも体が痛い。おまけに目が悪いせいもあってどっちが地上で、どっちが空なのかさっぱり分かりませんでした。もうどうにでもなれ状態。更にはどういう訳か、体が妙な回転をしながら上下に動いていました。後輩はこういう感じではなかったはずなのに・・・、変にウルトラマンのポーズをしてしまったせいなのか。

3回目バウンドしたぐらいから、ようやく自分の力で制御できるようになってきました。ふぅ~助かった。ここで初めて安堵できました。しかしまだバンジーは続いていて、コマのようにくるくると回転しながら上下に動いていました。それにしてもよく回る。後輩たちは回っていなかったぞ。何で私だけ・・・しばらくヨーヨーのように上下していましたが、それも静止しました。しかし上下に動かなくても回転は止まらなく、逆さ宙づり状態でくるくる回転していました。何で私だけこうなるの・・・。目が回る・・・。何とかしてくれ。これははっきり言って拷問だ。何よりみっともない。

係りの人がゴムを足からはずしてくれて、ようやく自由の身になりました。歩こうとすると膝が変な感じです。さっきあれだけ回転したからバランス感覚が少しおかしくなってしまったのかな。いや、もしかしたらさっきあれだけ膝がガクガクしていたから腰が立たなくなってしまったのかもしれません。どっちにしてもふらふらしながら後輩のところへ行くと、自然と顔に笑みが浮かんできます。俺もやり遂げたぞ。そんな気分でした。一番最初に飛んだ後輩に感謝しなければならないのかな。もし一人だった事を考えると、そう思えました。後輩に「ウルトラマンのように飛んでみたけどどうだった?」と尋ねてみると、いたって普通だったらしい。それよりもひたすらくるくると回転していたのが面白かったようです。これはみっともないな。次回の反省点だ。って、もう二度とやらないぞ。こんな怖いこと。まあ、とにもかくにも三人とも無事に飛べたから今回はよしとしよう。いまだに引きつったままの顔とフラフラする足取りで係りの人たちにお礼を言い、バンジーの会場を後にしました。

~~~ §2、寂しい海水浴 ~~~

閑散としたビーチ
閑散としたビーチ

バンジーを終えた我々は一旦ホテルに戻りました。次の予定は海水浴。せっかくタイでナンバーワンと言われるビーチリゾート地に来たのに泳がないで帰るのもむなしいし、後で後輩に何を言われるか分かったものではありません。部屋で海パンに着替え、再び外出しました。あいにくと今日は曇り空。風もあり、絶好の海水浴日よりとはいえませんでした。浜辺に行ってみると、昨日よりも閑散としていました。水着美女がいない・・・。「昨日寝ている場合ではなかったですよ。」と、すかさず後輩が突っ込んできましたが、返す言葉がない。まあ昨日は昨日。今日は今日。今日をしっかり生きようではないか。はははぁ。なんてごまかしながら、どこで泳ごうかと、浜辺を散歩し始めました。中心付近だと、バナナボートとか水上バイクとか騒々しい。どうせ水着美女がいないのなら外れでも同じ事。空いているところで気兼ねなく泳ご方がいいではないか。ビーチをずんずんと歩き、中心からかなり離れた場所で荷物を置き、泳ぐことにしました。

浜辺で
浜辺で

周りは誰もいない。青空が広がっていたら、さぞ気持ちいいに違いありませんが、現実はあいにくの曇り空。上半身裸になると、ちょっと肌寒いといった感じでした。でもせっかく来たんだからと、海水に足をつけてみるものの、う~、つめたい。思わず後退りしてしまいました。まずは準備体操が必要だ。おいっちに~、さんし~、ごぉ~ろく。体を少し動かすと、少し温まってきました。よしっ、再チャレンジ。再び海に向かいました。今度もやはり冷たいが、さっきとは幾分気合が違う。なんせ準備体操をしたんだ。単純な我々の頭の中では、準備体操イコール交通安全お守りみたいなもの。ずんずんと海に入っていきました。最初のうちは波打ち際でじゃぶじゃぶとはしゃいでいましたが、いかんせん男三人では盛り上がりません。なんか虚しいぞ。こうなったら沖の深いところへ行って、まともに泳ぐか。沖へ向かって歩くものの、遠浅な海のようでなかなか深くなりません。しかし油断していると、いきなりずぶん。腰から一気に肩まで浸かってびっくり。おまけに沖にでると結構波もありました。じゃぶ~ん。ひぃ~~。頭まで海水をかぶるとさすがに覚悟が決まって、泳ぎ始めました。しかし、雨季明けのせいか海水が汚いような・・・。あまり口に入れたくないような海水かも。これでは楽しく泳いでいられません。後輩を残し、さっさと陸に上がることにしました。

陸に上がると、風があるので一気に体が冷えました。うぅ~寒い。慌ててタオルで体を拭き、服を着ました。こうなってしまうと再び海水に入る元気は沸いてきません。腰をかけて、後輩たちが戻ってくるのを待つことにしました。しばらくすると後輩が戻ってきました。やはり陸に上がるなり、「さむ~」と騒ぎだし、体を拭き始めました。この後、後輩の一人が気合を入れて再び泳ぎだすものの、この時点で我々の海水浴は終わってしまいました。後は浜辺でボーとすることにしました。浜でボーとしていると、自分がタイに来ている事を忘れてしまいます。海はどこでも同じなんだな。潮風に吹かれていると心が落ち着いていい。明日帰国することを考えると、なんとなく感傷的な気分にもなってくるものです。いよいよ日本か。楽しくもあり、長い旅行だったな。しばらくの間それぞれボーとまどるんで、ゆっくりとホテルへ戻る事にしました。それにしてもリゾート地だというのにさびしい海水浴だったな。

~~~ §3、タイスキに挑戦 ~~~

ホテルに戻り、体についた塩をシャワーで流しました。とんだ海水浴だったな。でもこういう海水浴もいい思い出のうちかも。そういうことにしよう。時間は夕方前でした。腹減ったな。飯を食いに行こうか。昼食にしては遅く、夕食にしては早い時間でした。ショッピングセンターを散策したりするのもいいな。何にしても、このまま夕方まで宿に居ようなどと計画すれば、昨日のような事になりかねません。一休みした後、すぐに町へ繰り出すことにしました。

繁華街にあるでかいショッピングセンターにやってきました。お土産物屋や雑貨屋、服屋、レストランなどが並んでいました。店内は明るくて、日本のショッピングセンターとさほど変わりがありません。まずはぶらぶらと一回りしよう。しかし歩いているとレストランが多く、視覚的にも嗅覚的にも刺激され、異様にお腹がすいてきました。やっぱりまずは腹ごしらいをしたほうがいいだろう。腹が鳴っていては力が湧いてきません。何を食べようか。明日の夜には後輩たちは日本へ帰国するので、一応最後のディナーという事になります。最後ぐらいは豪勢な食事にしようではないか。前々から後輩がタイスキを食べたいと言っていました。タイスキとはタイ風のすき焼きのこと。これなら三人で楽しく鍋を囲みながら食べれるはず。ショッピングセンター内を探すと、ちゃんとタイスキの店がありました。チェーン店っぽい店でしたが、なかなかこじゃれた店構えをしていました。タイに来て大衆食堂には入り慣れたものの、レストランと呼べるものには・・・、ホテルの朝食ぐらいしか入っていません。なんか入り辛いぞ。そもそもタイスキっていくらぐらいするものだろうか。めちゃくちゃ高いのでは。まったく見当がつきません。まず頭に浮かんだのは料金の心配でした。店頭でたじろぎながら置いてあるメニューを覗き込むと、そこまで値の張るものではありませんでした。これだったら十分予算内だ。気持ち襟を整えて店に入りました。

夕食時には少し早い時間帯だったので、店内はすいていました。ウェイターのお姉さんに連れられて席に着きました。テーブルには日本でいうしゃぶしゃぶ用の鍋がコンロの上に置いてありました。ん!しゃぶしゃぶ?すき焼きじゃないのか。なんだか変な感じがしますが、タイスキ自体どんなものか分かっていないので、あまり気にせず注文することにしました。が、メニューを見ても注文の仕方がよくわかりません。色々とメニューが書いてあるけど、どれを頼めばいいのだ。メニューを見た感じでは、どうもバラで好きなものを鍋に放り込むのが一般的な食べ方といった感じがするけど・・・、何を入れていいのか分からんぞ。ここは無難にお得なセットというやつを3つ注文することにしました。初心者用としてはいいはず。注文が終わると、ウェイターのお姉さんがコンロに火をつけました。店内の雰囲気もそうですが、日本のしゃぶしゃぶ店とまるで変わりがないように思えます。

タイスキの店で
タイスキの店で

しばらくするとウェイターのお姉さんが具材を持ってきました。今まで見た事もない食材も幾つかありました。お姉さんに食べ方を聞くと、どんどん鍋に入れればいいとの事。しゃぶしゃぶの鍋でぐつぐつ煮込むのは変な感じですが、野菜とか海鮮、はんぺんみたいなものとかを鍋に入れました。しばらくすると鍋がぐつぐつといってきました。もういいのかな。初めて食べるものなので、火の通り加減が分かりません。「もういいだろう」と言いつつ、「もうちょっと煮ようか」と箸を引いてしまう弱腰ぶり。帰国目前で腹痛を起こすのは嫌だしな。ちょうどウェイターのお姉さんが通りかかると、後輩が呼び止め、鍋を指して、オッケー、オッケーと聞くと、笑いながら鍋を箸で交ぜ、オッケーと言ってくれました。いざ戦闘開始。日本で鍋物だと、高い具の争奪戦が繰り広げられるものですが、ここではお互い遠慮しながらの食事となりました。第一何が高い具なのかよくわからないし、具自体何かわからないものも多かったからです。「これなんですかね。」と後輩が聞いてきますが、さっぱり。とりあえず食べてみるのが手っ取り早い。口に入れてみるとえらく辛かったり、香草が効き過ぎてむせ返ったりと大変なものもありました。それでもなかなかおいしく、タイスキは日本人の口に合う食べ物だと思いました。付けだれといい、日本の水炊きによく似ています。タイスキというよりも、タイ風の水炊きと言ったほうがいいかもしれません。いや~うまいっすね。後輩の笑顔に私も満足。ドリアンの時のようにならなくてよかった。いい思い出は残しておこう。いつものごとく最後に観光客っぽくウェイターのお姉さんと一緒に記念撮影をして、店を出たのでした。

~~~ §4、パタヤの熱い夜 ~~~

ショッピングセンターを出ると、辺りはもう暗く、ネオンが華やかに点滅していました。繁華街を歩くと昨日同様にゴーゴーバーの勧誘やいかがわしい物売りが寄ってきました。今夜はゴーゴーバーに行く約束だったな。隣で張り切っている後輩を見ると頭が痛くなってきます。バンジー以上に今更やめようかと言える雰囲気ではありませんでした。まあ話の種にはなるかな。何事も経験だし。正直言ってあまり風俗関係には行きたくないのだが・・・いやそんな事はないかな。う~ん。後輩の前ではっきりしないのもみっともない。覚悟を決める事にして、入る店を探すことにしました。

昨日入ろうかと迷った店の前を通りかかると、昨日と同じ客引きが我々のところにやってきました。「オー、フレンド。リメンバーミー?」 昨日少し立ち話しただけなのによく覚えてるな。感心、感心。でもいつからフレンドになったんだ。ここは突っ込んでみようかと思ったものの、間髪入れずに客引きは昨日同様に商談を始めました。といっても、「見るだけ無料」「ドリンク一杯幾らだよ」といったもの。まあどこも似たような感じだし、ここでいいかなと後輩のほうを見ると、もう既に入る気満々の顔をしていました。では、いざ突撃だ。気合は入るものの、こういう所へ行ったことがないので、はっきり言って怖い。中に入るなり、巨漢の男たちに囲まれて身包みをはがされるのではないか。もしくは睡眠薬入りのビールを飲まされるのではないか。なんやかんや因縁をつけられて、ぼったくられるのではないか。不吉なガイドブックの読者体験談が頭をよぎります。後輩をそのような目にあわせてしまっては先輩としてまずいよな。その為にも今日は財布の中に必要分しかお金を入れてこなかったではないか。貴重品はちゃんとホテルに置いてきたし。一応最低限の備えをしてきたから最悪の事態は免れるはずだ。もう一度お金を隠し持っている場所などを確認し、最悪の事態を予想しつつ、恐る恐る入り口のドアをくぐりました。

中に入ると、一面ピンクの世界でした。ピンク色の照明が我々や部屋を照らし、なんともいえない空間を作っていました。そして広い部屋の真中にボクシングのリングのような舞台があり、水着姿のお姉さんが10人ぐらい踊っていました。なかなかいい眺めだ。と、そっちに目を奪われていてはいかん。まずは非常事態に備えて店内の観察をしておかないと。浮ついた目玉を正気に戻して店内を見渡しました。我々の他に客は欧米人が一人。なかなか体格がよく、いざという時には頼りになりそうです。入り口は今入ってきたところだけ。ダッシュで逃げようとしても、扉を閉められてしまったら駄目かもしれない。いや、そうなったら欧米人と力を合わせて体当たりで・・・などと考えるものの、喧嘩の弱い我々だとそこに辿り着くまでにボコボコにされていそうです。でもまあ今のところ雰囲気的にぼったくられるような感じはしないから大丈夫だろう・・・。たぶん。考えれば考えるほど心配になってくるけど、実際何か起こってもどうしようもない気がします。そもそも店に入った以上まな板の鯉に近い状態ではないか。覚悟を決めて楽しむ方がいいように思えてきました。

連れられるままに舞台から一番前のテーブルに着きました。そしてすぐにドリンクの注文係りがやって来ました。料金表を見ると、外で飲むのに比べれるとべらぼうに高いけど、それはそれ。すぐ目の前に水着のお姉さんが沢山いることを考えれば安いもの。・・・かな??。バンコクでツアーの最中に頼んだビールに比べればとても安く感じてしまいます。テーブルに置かれたビールを飲みつつ、今のところは問題なし。まずは満足といったところかな。隣にいる後輩と目を合わせると、なんともみっともないにやけ顔をしていました。スケベ丸出しではないか。情けない。ん!でもまてよ。恐らく後輩は自分の映し鏡。私も同じ顔つきをしているに違いない・・・。

しばらくすると音楽がとまり、舞台上のダンスが終わりました。踊っていたお姉さんのうち3人が我々のところへやってきて、それぞれの隣に座ってきました。いよいよ鼻の下が伸びてしまいます。私の隣に座ったお姉さんは美人ではないがぽっちゃりしていてかわいい。しかも寄り添うようにして座ってくるからたまらない。う~ん、たまりませんな。えへぇ~。ふと心配になって後輩のほうを見ると、お姉さんといちゃいちゃ。おまけにでれぇ~とした横顔。きっと私もあんな顔をしていたに違いない。あ~いやだ。いやだ。再び後輩の顔を見てテンションが下がり始めましたが、隣に座っているお姉さんは容赦ない。知っていると思われる英単語を羅列して矢継ぎ早に質問してきました。「名前は?」「いくつ?」「学生か?」「いつ日本に帰るんだ?」などなど、最初はかわいい質問ばかり。順調に返答していたのですが、そのうち段々と大人の質問?になっていったのでした。

さて踊りの終わった舞台では、お姉さんがストリップショウがやっていました。内容は恥ずかしくて?書けないけど、まあよくお股であんなことをやるもんだといった内容のもの。変に感心してしまいます。それに人前でよく裸になれるもんだと思うのですが、見た感じではあっけらかんとしていて、仕事への義務感や悲壮感は全く感じられませんでした。そういうもんなのかな。いやそういうものではないはず。でもやっぱりそうなのかな。う~ん、男としてはなかなか理解に苦しみます。まあ世の中の需要と供給のバランスを考えると・・・いやそんな事どうだっていいや。何にしても初めてのストリップ体験。頭の中で目まぐるしく色んな事が横切っていきました。そうこうしていると舞台でのストリップショウが終わって、再び音楽が鳴り始めました。隣に座っているお姉さんは「ちょっと踊ってくるから待っててね」と舞台へ行き、踊り始めました。ふぅ~~。やっと開放された。今のうちに頭を冷やさないと。後輩に「どう?」と耳打ちすると、「たまりませんなぁ」とニヤケ顔。困ったものだ。

再び音楽が終わり、お姉さんが戻ってきました。そして先ほどよりも更に寄り添って座ってきました。英単語での会話がそう長く続くわけがなく、大人の会話から更に踏み込んで、段々とボディートーク?になりつつありました。舞台ではさっきとは別のお姉さんのストリップショウが始まっていました。最初のショウに比べると新鮮味は薄れましたが、相変わらず興味は尽きません。男だからしょうがない。さてこれからどうしたものか。何時切り上げるべきなんだろう。一応まとめ役としては最低限の事は考えておかないと。しかし、隣でお姉さんが体を触ってくるせいか、はたまたピンク色の照明のせいか、落ち着いて物事を考える事ができない。頭ものぼせ上がって少々オーバーヒート気味。もう笑ってごまかすしかないか。はははは。しばらくするとショウが終わり、再び音楽が鳴り、ダンスが始まりました。

何回かこの繰り返しが続きました。店内には新たに2組客が入ってきて、少し賑やかになってきました。これで安心。何かトラブルに巻き込まれることはまずないだろう。隣に座っているお姉さんはというと、段々と慣れなれしくなって、最初は婉曲な表現だったのが、直接的にホテルへ行こうと誘ってくるようになりました。なるほど。ここにいるお姉さんたちは売春婦なのか。ようやく理解できました。ゴーゴーバーとは売春婦を選ぶところなんだ。そりゃ見るだけ無料だよな。客引きの言葉を思い出しました。では買ったらいくらなんだ。ちょっと疑問に思いましたが、聞いてしまうとこいつは買う気があるぞと思われ、しつこく値段交渉が始まりそうです。それに人の体を高い安いと値切るなんてことはしたくないし、恐らく聞いて断ると、このお姉さんもいやな思いをするに違いありません。結局、疑問のままでした。そろそろ舞台にも飽きてきたし、潮時かな。そう思ったのですが、隣のお姉さんが次は私の番だから見ていってというので、それが終わるまでいることにしました。

ダンスが終わると、私の隣にいたお姉さんのストリップショウの開始。しかし困った事にしきりに私を舞台に誘ってきます。うっ、それだけは後生だから勘弁してくれ。後輩が見ている。ふと後輩のほうへ目をやると、片方の後輩の所にいたお姉さんがいない。あれっ、休憩中?。まあいいや。今はそれどころではない。舞台の下からとはいえショウに協力させられているのは、なんとも耐えがたい。ここは社会勉強としてその大役を後輩に譲ろう。と、無理矢理後輩に振るものの、二人とも首を横に振って頑固拒否。そうこうしているうちにショウが始まってしまい、逃げれない状態となってしまいました。う~早く終わってくれ。拷問のような時間が過ぎ、ようやくショウが終わりました。額は汗だく。全くとんでもない目にあった。後で後輩にからかわれるんだろうな~。目の前でストリップに荷担したのだから・・・。

音楽が鳴り、ダンスが始まりました。ふぅ~と汗をぬぐった。まだ体が熱い。いやいや精神的に疲れたぞ。脱力感を感じつつ、もう十分だと思いました。後輩にそろそろ行こうかと言うと、そうしましょうとの事。このダンスが終わり、お姉さんが戻ってきたら出よう。お別れを言わないで出てしまうのはあんまりだろう。ダンスが終わるのを待ちました。そしてダンスが終わるとお姉さんが戻ってきました。相変わらず甘えたよな笑顔をしています。それを見ると帰るとは言い辛いものです。なんか別れ話を切り出すような感じが・・・。でもまあ向こうは商売。割り切って考えなきゃ。意を決して、我々は帰るよと告げました。お姉さんの顔が曇る。う~ん。なんか辛い。きっと私が買ってくれると思っていたに違いない。気持ち程度のチップを水着に挟んで席を立ちました。後輩のほうを見ると、片方の後輩はちょっと未練がありつつも、お姉さんにまたいつかくるよと別れを告げていましたが、もう片方の後輩のところはお姉さんがいなくなっていて、しょぼくれています。そういえばさっきもいなかったよな。まあいいや。会計を済ませて外に出てから、「どうしたの?」と聞くと、途中で他の客にとられてしまったらしい。しかもお金で。そりゃ気前のいい客のほうへ行っちゃうよな。そういうこともあるよ。いい勉強になったじゃないかと励ましながらホテルへ戻りました。

ホテルの部屋で
ホテルの部屋で

ホテルへ戻ると、再びシャワーを浴びてすっきりとしました。今日一日長かったな。バンジーは飛んだし、海で泳いだし、ゴーゴーバーへストリップショウを見に行ったし、本当に疲れた。ふぅ~と一息ついていると、途中でお姉さんに逃げられてしまった後輩はさっさと寝始めてしまいました。よほどショックだったようです。もう一人の後輩はまだ興奮が覚めやらぬといった感じで、テンションが異常に高い状態でした。なんとも対照的で見ていて面白い。何にしてもこんな後輩たちとの旅行も明日で最後となってしまいました。いよいよ帰国か。私にとっては約二ヶ月ぶりの日本だな。さすがに日本が恋しいような・・・、いやでもまだ旅行をしていたいような・・・。どっちづかずの気分のまま布団に入りました。

第10章 パタヤビーチでの冒険  ー 完 ー

第11章 「さらばタイ ~エピローグ」に続く

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<進め若者!突撃タイ旅行記 第10章 パタヤビーチでの冒険 1999年12月初稿 - 2015年10月改訂>