風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

進め若者! 突撃タイ旅行記

~ 第9章 再びバンコク、そしてパタヤへ ~

*** 第9章 再びバンコク、そしてパタヤへの目次 ***

~~~ §1、いざ!カオサン通り ~~~

<1996年9月11日 夕刻>

バスに乗って、まもなく夕暮れを迎えました。昼間、かなりの距離を自転車で移動したりとハードに動き回っただけあって、疲労度も充実感も一杯。すぐに夢の世界の住民となっていました。どれだけ熟睡していたのだろうか。あまりにも寒くて目が覚めました。う~、寒い。冷房の効かせすぎだ。もう日が沈み、猛暑は去ったのだから少しは冷房を緩めればいいのに。夜行列車の時といい、まったくもって過剰サービスだ。ぶつぶつ言いながら体を丸めて再び夢の世界へ旅立ちました。そして次に目が覚めると、窓の外にはネオンがきらびやかに光っていました。バンコクに着いたんだな。ボーとまどるんでいるとバスが道をそれてバスターミナルに入っていきました。

バスを降りると、懐かしいバンコクの匂いがしました。排気ガスと湿った暖かい風、そして屋台から漂ってくる食べ物の匂い。そういったものが交わったのがバンコクの匂いです。本当に懐かしい。さてここはどこのバスターミナルだろう。バンコクには4つぐらいバスターミナルがあったはず。とりあえずベンチに腰掛けて考えよう。ん。歩き出そうとすると、妙に体がだるく、頭もボーとしていました。最初は冷房の効いた車内から急に暖かい外に出た為かと思ったのですが、どうも違うような感じです。なんか体調が変だ。おでこに手を当ててみると少し熱っぽい感じです。もしかして冷房で風邪を引いてしまったのか。乗る時に服が汗で濡れていたからな。再びバスの冷房を恨めしく思うのですが、今更文句を言っていてもしょうがありません。

とりあえず宿へ向かおう。そして今日は早めに休もう。って事で、早速カオサンに向けて出発だ!といきたいのですが、まずは現在地を確認しなければ動きようがありません。ちょっと熱っぽい頭でここはどこだと辺りを見回してもさっぱり分かりません。下手に自分で解釈するよりも聞いた方が早い。係りの人に尋ねると、ここはバンコク西ターミナルで、市内まではかなり距離があるとか。西ターミナルからカオサンまではと・・・。ガイドブックを開いてみるものの、バスの路線図が複雑でいまいちよくわかりません。夜なので違うバスに乗ったり、降りる場所を間違えたりして迷ったら最悪です。それにかなり距離バスに乗らないといけないし、でかい荷物もあるし・・・。なんか考えるのも行動するのも面倒だ。そもそもあれこれと考えようとすると頭がボーとしてきます。こんな状態で市バスに乗って夜のバンコクをさまよって大丈夫だろうか・・・。いや、あんまり自信ないぞ。後輩に恐る恐る「タクシーで行こうか?」と問いかけてみると、意外にもすんなりと「そうしましょう」と返ってきました。今まで元気いっぱいだった後輩も、今日はかなり疲れているようです。しめしめ。さっそくタクシーを拾いました。

タクシーに乗り、カオサン通りを目指しました。運転手にカオサン通りと伝えるだけで、すぐに車を走らせたところをみると、思った以上に安宿街としてカオサン通りは有名なようです。しばらくボーとしていると、眠くなってきました。やはり調子がいまいちよくない。タクシーの運ちゃんが回り道をしたりしないように気を付けなければと思いつつも、道を知らないので気をつけていてもしょうがないか。いや起きていることに意義があるんだ。などと思いながらも、いつの間にか夢の中の住民になっていました。

夜のカオサン通り
夜のカオサン通り

「着きましたよ」と後輩に揺さぶられて目が覚めました。えっ、あ、ん~!着いたところはネオンのきらびやかな通りでした。なんだここは。異様に明るいぞ。運転手に「カオサン?」と聞くと、「イエス」と淡白に返ってきました。笑顔もなく、愛想も全くありません。観光客やここカオサン通りが嫌いなのかも。速やかに料金を払い、トランクから旅行鞄を取り出し、運転手に別れを告げました。改めて辺りを見渡すと、まるでお祭り騒ぎといった感じです。しかも歩いているのはタイ人ではなく、外国人旅行者ばかり。不思議な空間でした。「なんだか凄いところへ来てしまいましたね。」と、後輩が話しかけてきました。本当にそうだ。話には聞いていたが、ここまで凄いところだと思わなかった。少なくともこの通りだけはバンコクにあってバンコクであらず。なんていうか、日本でいうなら出島みたいな場所になるのかな。とにもかくにも想像していた以上の光景に我々は少々戸惑ってしまいました。ただあまり怪しい雰囲気ではなかったのは幸いで、すぐに気を取り直して宿を探して歩き始めました。

夜の到着とあって、2軒断られてやっと宿が決まりました。通りを歩いている旅行者の数といい、この界隈はなかなか流行っているようです。部屋の方はというと・・・、いかにも安宿といった感じで、なかなかお粗末なものでした。おまけに通りに面しているのでやかましい事。値段を考えると妥当だと思うけど、落ち着けるという意味での快適さとは無縁の宿でした。初めてカオサンに来たので、ここの相場とか、どこがいい宿とか、どの地区がいいとかいった勝手も分からないし、何より夜の到着だったのでしょうがないと言えばそうなのですが、正直ちょっと失敗した感が漂っていました。まあ一日だけの辛抱だ。今日のところは我慢しよう。明日はちゃんとした宿を予約していることだし・・・。それにこういう繁華街のど真ん中に泊まるのも変わった経験や思い出になるはず。プラス思考で考えることにしました。

夜のカオサン通り2
夜のカオサン通り3
カオサン通りの様子

荷物を置くと、さっそく何か食べるためにカオサン通りの探検に出かけました。先ほどに比べ身軽になったせいか、宿が決まって心が落ち着いたせいか、よく周りが見えるようになりました。やはり心のゆとりは必要なようです。道沿いにはお土産物屋の屋台、旅行用品の屋台、食べ物屋の屋台、その他なんだかよく分からないけどいかがわしそうな店が並んでいました。通りに面する店は夜なのでシャッターが閉まっている店が多いものの、旅行代理店やレストラン、ホテル、みやげ物やに本屋といった旅に関するものばかりでした。本当にここは旅行者の為に存在する通りではないか。なんとも凄い場所だ。カオサン通りに始めて来た我々にとっては興味深い光景の連続でした。なんか楽しもうとすればとことん楽しめそうな場所だな。奥が深そうだ。そして深く入り込めば法に触れるような遊びまでも揃っていそうな感じです。

夜9時を回っていても表通りはいきなりナイフを突きつけられるような危ない雰囲気ではなさそうな感じでした。とはいえまだ完全にカオサンを知ったわけではないので、油断しないに越したことはありません。ちょっと落ち着かない感じで歩いていると、一人の女性が私の後ろを歩く後輩に声をかけてきました。客引きかな。適当に断わるんだぞ。そんなに危険はないと思いほっておいたら、後輩は逃げるように私のそばに寄ってきました。まあそんなに勢いよく逃げてこなくても・・・。でもまあ、いい判断だ。こういう状況でぐだぐだとした対応をすると、つけ込まれるだけ。そもそも向こうから声をかけてくる奴らは大抵下心のあると決まっています。関わらないのが一番安心だ。でも、そこまであからさまに避けなくても・・・と思ったら、「い、今の見ました?オカマですよ。オカマに誘われましたよ。」と、後輩の顔が青ざめていました。かなり衝撃的だったらしい。そりゃそうだな。こんな落ち着かない状況で話しかけられれば、誰だってそう感じるに違いない。でもそんな後輩の様子にもう一人の後輩と思わず吹き出しそうになってしまいました。

きらびやかなネオンと、喧騒とした町並みを歩いていると、いつしか頭痛がひどくなってきました。おでこに手を当てるとかなり熱い。もう限界だな。あまり酷くなると明日寝込んでしまうかも・・・。この後、後輩たちとどっかで食事をしようという事になっていたけど、そんな元気はありませんでした。後輩達はじゃあ自分たちも・・・といった感じだったのですが、私につき合わせるのも悪いし、まだ歩きたいような感じでした。まあ二人で歩いていれば大丈夫だろう。さっきのオカマへの対応もよかったしな。簡単な注意をして、私一人で宿に戻ることにしました。

宿に戻る途中にコンビニに寄って、パンと飲み物を買いました。ちょこっと胃に食べ物を入れて、薬を飲んで、水を大量に飲んでおけば明日の朝には治っているはず。部屋に戻ると、簡単な食事をして、風邪薬を飲みベッドに横になりました。それにしても外が喧しいな。何と賑やかなところだろう。カオサンは。後輩は大丈夫だろうか。まあ今まで色々教えてきたから彼らなりに楽しくやっているだろう。再び目をつむったものの、やはり外の喧しさが気になります。それと同時に外をほっつき歩いている後輩のことが再び気になってきました。えーい。考えてもしょうがない。よけいに頭が痛くなるだけだ。無理に寝ようとすればするほど寝れないものです。そうこうしているうちに何時の間にかまどるんでいました。そして部屋の中をごそごそする音で目が覚めました。薄目を開けると、後輩が戻ってきていました。見た感じ何事もなく無事に戻ってきたようだ。これで安心。今度こそ完全に夢の世界へ旅立っていきました。

~~~ §2、バンコク脱出 ~~~

<1996年9月12日>

今日は目覚ましの音で目が覚めました。起きてみると、昨夜の頭痛は治っていたものの、あまりすっきりしない目覚めでした。何となく騒々しい町のせいだろうか。熟睡できたような、できなかったような・・・。とりあえず動かなくては。昨晩は後輩にも迷惑を掛けたしな。それに今日はバンコクの南にあるパタヤビーチへ向かうことになっています。旅の最後はのんびりとしたい。という事でバンコクから気軽に行けるパタヤビーチを最終目的地に選び、今晩と最終夜の明日の夜の宿は日本で予約しておきました。それも星が3つ付いたリゾートホテルでした。だから無理してでも動かないとせっかくの予約が無駄になってしまいます。そう考えて動く気になってしまうのは、貧乏症の典型かもしれない。どっちにしてもこの喧しいカオサン通りに長居する気にはなれないので、無理してでもパタヤに行くぞってな気分でした。ガイドブックを見ると、パタヤ行きのバスはバンコクの東ターミナルから出ているようです。現在いるのがバンコクの西側なので、東ターミナルまで市の中心を越えていかなければなりません。昨夜と違って朝の通勤ラッシュ時間にタクシーに乗るとかなりの額になるに違いありません。それにまだ朝一番なのでやる気のある状態です。昨夜の調子悪くてタクシーに乗ってしまった分の挽回も兼ねて、ここは頑張って市バスに乗って行こうではないか。さっそく宿をチェックアウトして、大通りのバス停まで歩きました。

バス停の様子
バス停の様子

大通りのバス停に着いてみると、大勢の人がバスを待ち、ひっきりなしにバスが到着していました。それにしても・・・、ある意味すさまじい光景が目の前で繰り広げられていました。なぜなら日本のように秩序整然としているわけではなく、到着するバスもバスを待つ乗客もわやくそ状態だったからです。バス停の前後50m前後がバス停状態といった感じなのです。バスに乗れるだろうか・・・。バンコクに到着した日、バスに乗れなく無念な思いをしたのが脳裏によみがえってきました。いや、ここでひるんではいけない。二度同じ失敗を繰り返さないのが、プロフェッショナル。一流の旅人というものだ。って、いつから一流の旅人になったのかは自分でも不明ですが、今まで旅をしてきて、タイ人の人が親切だというのは身に沁みて分かっています。何も分からなかった初日と違ってそういう意味での心の余裕がありました。あの時はたまたまだったんだ。気にしてはいけない。それに今日は後輩も見てるんだぞ。気を引き締めて東ターミナルへ行くだろうと予想される2番のバスを待ちました。

「あっ、来た」、「えっ、通り過ぎた。」、「あっ、あっちで停まったぞ。それ乗り込め。」 最初に来たバスは我々のいた場所からだいぶん先に停車してしまい、乗ろうとバスに近づいた瞬間、出発していってしまいました。三人とも大きな荷物を持っているのですばやく動けないし、それに乗ろうとしてもバスの運転手は客のことなど考えず容赦なく出発してしまいます。それにバス停といっても適当で、どの辺りに停まるかは運転手次第。要はおっとりと待っていてもバスに乗れないのがここのバス事情なのです。ですから、なるべく自分たちの前でバスを停める事が重要で、次に素早く入り口に陣取り、なだれ込むようにしてバスに乗り込まないとバスに乗れません。荷物を持っていなければそこまで苦労しないかもしれないけど、荷物があるとなかなか厄介な挑戦となります。いや、初日の経験からこうなることは何となく予想していたので、そこまで驚くことではありませんでした。よしっ、今度こそ乗ってやろうではないか。地面に下ろしていた荷物を担ぎ、いつでも乗れるようにしてバスを待ちました。

ちょっと前の方に位置取らせた後輩が、「来ました~!!」と手を振りました。よし今度こそ乗ってやるぞ。道路に駆け出て、バスを止めにかかりました。道路のどこで停まるか分からないので、なるべく大きなジェスチャーで自分たちの近くで停める事が、乗るための絶対条件です。停まれ~と騒いでいたか定かではありませんが、思いっきりジェスチャーしたおかげで、比較的我々の近くでバスは停まりました。よっしゃ、第一段階成功。なるべく急いで入り口に駆け寄っていつでも乗れるように陣取り、降りる客が降りたら一気に車内へなだれ込みました。三人とも乗れたのを確認すると、ようやく一安心。バスに乗るのも一苦労です。

車内はちょっと混雑していました。降りるのもだいぶん先だし、荷物があるのでなるべく隅にいるほうがいい。比較的スペースがあった一番前に位置取りました。荷物は運転席のすぐ横、エンジンガードの上に三つ重ねて置きました。これで万全。そしてすぐに車掌が検札に来ました。東ターミナルに行くのを確認して切符を買うと、3人で10.5バーツ。およそ40円ほど。なんとも安い。おまけに車掌は笑顔で「着いたら教えてあげるから安心して乗っていな。」と、なんとも親切な対応をしてくれました。後は到着するのを待つだけです。これで初日の悪夢が完全に脳裏から払拭されて、あんな事もあったかなといった過去の事となりました。

バンコクの渋滞
バンコクの渋滞

つり革にしがみつきながら、時がたつのを待ちました。しばらく経って車窓に目を向けるものの、さっきから変わり映えのしない風景でした。いわゆるバンコクの大渋滞ってやつで、バスが全然前に進まないのです。おまけに我々が乗ったのは冷房の付いていないおんぼろ市バス。車内に空気が入ってこないし、周囲の排気ガスのにおいが充満してくるので、停まっていると排気ガスの臭いがするサウナ状態でした。暑い・・・。まだ午前中だというのにこの暑さは・・・。それに空気が悪くて一酸化炭素中毒になりそうだ。バンコクの渋滞恐るべし。渋滞のイライラと、暑さのイライラで頭がおかしくなりそうでした。タイ人は人がいいと言いますが、日本人みたいに時間にきっちりとせこせことしていたらここでは暮らせないだろうな。大らかな気持ちで生きていないと、この暑さの中では脳みそがオーバーヒートしてしまいそうです。

町の中心、前回の滞在で泊まったホテルやデパートの付近を過ぎると道は空いてきました。それと同時に車内も空いてきたのでようやく私たちも座れるようになりました。そして乗り始めてから1時間以上経った頃、車掌が肩を叩いて、次だぞと教えてくれました。ようやく到着か。なんとも長い旅だった。バンコク市内渋滞ツアーとでも言うのだろうか。観光客として興味本位で経験する分にはまだ楽しみを見いだすこともできるのですが、毎日こんな通勤をしていたら体がもたない。少なくとも市バスの倍以上する冷房バスにでも乗らないと、会社に行く気にもならないだろう。本当に大変なところだ。平然と乗っているタイ人を見ながら思ったのでした。何にしてもタクシーに乗っていたらとんでもない金額になっていたかもしれません。

パタヤ行きバスターミナル
パタヤ行きバスターミナル

ようやく停留場に到着。降りる際に車掌は、「そこの歩道橋を渡って、あの道を入っていくといいよ」と親切に教えてくれました。本当に至れり尽くせりと親切な車掌でした。その行為に深く感動した我々は、丁寧に御礼を言ってバスを降り、バスの発車を笑顔で手を振って見送ってしまいました。そして教えられたとおりバスターミナルまで歩き、パタヤ行きのバスチケットを購入しました。パタヤまではひっきりなしに便が出ていて、特に待つこともなくすぐ次の便に乗ることができました。バンコク近郊のリゾート地なので、よほど需要があるような感じです。出発時間が間近に迫っていたので、すぐにバスのとこへ行き、荷物をバスの腹の中にしまいました。そして乗車。今度のバスの中は冷房が効いていて涼しい。汗がすぅ~と引いていくのが分かります。乗客は6割程度。欧米人の姿もちらほらとありました。車内の雰囲気から、これからリゾート地に行くんだなと実感してきました。今までは都会のバンコク、遺跡のスコータイ、ジャングルっぽいカンチャナブリと旅してきたけど、今度はビーチリゾートだ。新たな目的地に期待しつつ、いつものごとく夢の世界へ旅立っていました。

~~~ §3、パタヤ到着 ~~~

昼過ぎにパタヤに到着しました。バスを降りると一段と激しい日差しが出迎えてくれました。暑い。めまいがしてきそう・・・。冷房の効いた車内に慣れていた体には、急激な気温の変化は結構きついものです。パタヤのバスターミナルから町の中心まではちょっと距離がありました。歩いて行けなくもないけど、このくそ暑い中歩くのは体力を無駄に消耗するだけ。無難に市内を巡回する市バスに乗って行く事にしました。

市内を循環するバス乗り場へ行くと、そこにあるのはトラックばかり。トラックの荷台にみんな乗り込んでいます。世界的に有名なリゾート地なのに、市内を走るのはトラックかよ・・・。もしかして名だけのリゾート地なのかも。なんだか納得できないままトラックの荷台に乗り込みました。乗り込むと「どこで降りるんだ?」と聞かれ、泊まるホテルの名を言うと直ぐに「OK」と返事が返ってきました。泊まるホテルは比較的大きなホテルなので、こういう時は説明の手間がかからなくて楽チンです。そして乗り心地の悪い荷台に揺られ、町を循環。町には水着姿の欧米人の姿を中心に観光客であふれ返っていました。それにおみやげ物や、レストラン、ホテルも多い。リゾート地に来たんだなと実感してきました。どんどん客が降りていき、終いには車内は我々だけになってしまいました。なかなか声がかからないなと心配になった頃、ようやく着いたぞとトラックが停車。町の外れのホテルの前で降ろされました。星の付いているホテルにしては激安だなと思ったけど、こういう事だったのか。ちゃんと場所を地図で確認して予約すればよかったと一瞬思ったのですが、かなり安かったことを考えると、立地場所については目をつむるべきだな。快適に過ごせるならどこでもいいやと思い直しました。

パタヤで予約したホテルはバンコクで最初に泊まったホテルほどではありませんが、なかなか立派なものでした。ただみすぼらしい格好をしている我々に相応しくない点は全く同じ。ちょっと遠慮気味に中に入ると、なんとなく冷たい視線を感じました。受付の人も何しに来たんだといった態度が目に見えました。全く失礼な。日本でもらったクーポン券を渡すと、クーポン券の力恐るべしというか、冷やかしでないとわかったのか、受付の人が急に笑顔になったのには閉口しました。あまりに露骨すぎる・・・。ちょっとがっかりしてしまいました。受付が終わると、頼んでもいないのにポーターがやってきました。部屋ぐらい自分たちで行けるのに・・・。こういうホテルではこのポーターが厄介です。日常的にチップという習慣に馴染んでいないので、どうも無意味にチップをとられる気がするからです。しぶしぶポーターに引きつられて部屋に向かいました。

部屋はそれなりに立派なものでした。特にベッドがふかふかなのが、疲れた体にとっては非常にうれしい。どさっと荷物を置くと、すぐにベッドに横になってしまいました。この後は海に泳ぎに行く予定だっけ。気持ちよくベッドに横になってしまうと、そんな気力はどこへやら。全てベッドに吸収されてしまった感じです。後輩が「どうするんですか?」と問い掛けてきましたが、「う~ん、いまいち調子が悪い。留守番させて」と言うのが精一杯。やっぱり眠い。何でこんなに眠いのだろう・・・。いつしか夢の中へ旅立っていました。

~~~ §4、パタヤで散髪 ~~~

ふと目を覚ますと、それぞれのベッドに後輩たちは寝ていました。これで気兼ねなく寝れるぞ。布団をかけ直して、今度は安心して寝始めました。そして次に目が覚めても二人とも寝ていました。窓の外に目をやると、外は薄暗くなりつつありました。うっ、これはまずい。非常にまずいぞ。このままでは今日一日何もせずに終わってしまう。むくっと起き上がり、わざとらしくがさがさとしていると、二人とも起きてきました。

もう夕方か。何もせずに一日が終わるのも虚しい。かといって、この時間から何をすればいいのだ。2人ともちょっと寝すぎたのか「どよ~」とした表情をしていました。私のせいで無駄に一日を送ってしまったようだ。ちょっと罪悪感を感じつつ、この後の打開策を練りました。さてどうしたらいいものか。この時間から楽しめるような健全で画期的なことはないだろうか。ちょっと考えた末に、そうだ、床屋にでも行ってみようではないかと思いつきました。しばらく床屋に行っていないので、頭はぼさぼさ。帰国前に時間を見つけて床屋に行こうというのは前々から思っていたことでした。私なりには面白そうなんだけど、後輩たちはどうだろうか。思い付きを口に出してみると、後輩も「それはいいですね。海外で床屋もいい経験になりますよ。」と湿った表情から一転して、目を輝かせ始めました。よしっ、決まりだ。決まればすぐに行動開始。外出の用意をして、夕暮れ間近の町に繰り出しました。

ホテルから出て、すぐの所に床屋がありました。床屋というよりは美容室というべきなのだろうか。けっこうおしゃれな感じのする店構えでした。「ここにする?」と、後輩に聞いてみるものの、どこでもいいですよとの事。せっかくだったらもう少し歩いてみるかと、この付近を一回りしてみたものの、他にいい店が見つからなく、結局この店に戻ってきてしまいました。この店に決めた要因は、タイ人の若くてきれいなお姉さんが二人でやっている事でした。なんとも男らしいというか、簡単な理由でした。

「ハロー」と言いながら店に入ると、美容師のお姉さんが笑顔で迎えてくれました。いかにも観光客らしい行動ではありましたが、明るい態度はいい印象を与えるものです。あまり英語が通じないようなので、身振り手振りと簡単な英語で髪を切ってくれと伝えると、「オーケー」と笑顔で頷いてくれました。一番バッターは私。室内の様子は日本の床屋とあまり変わりありません。ただ貼ってあるポスターのモデルがタイ人という事だけが違和感を感じました。さてどう切ってもらおうか。お姉さんもどう切っていいのか困惑気味。正直言って、あまり髪型は気にしないのでどう切ってくれてもよかったのですが、それでは切る方も困るというものです。横の髪の毛をつまみながら「ショート、ショート」、上の髪の毛をつまみながら「ロング、ロング」と無難な注文をしておきました。お姉さんも「了解」といった感じで、仕事に取り掛かり始めました。

散髪の様子
散髪の様子

まずは霧吹きで髪を濡らしました。そして取り出してきたのは電気バリカン。お姉さんがバリカンを指差しながら「オッケー」と聞いてきました。どうやら横はバリカンで刈るつもりらしい。そういえば町を歩く若者はツーブロックにしている人が多い。今タイではこの髪型が流行なのかな。日本では2、3年前に流行ったよな。まあいいか。「オッケー、オッケー」と言うと、バリカンで横をバリバリと刈り始めました。作業が進んでいくと、やはり私の髪型はツーブロックと確定。今時日本でこの髪型の人はいたかな?そう考えると少々日本に帰ってからのことが心配になってきましたが、まあいいや。あまりにも変だったら日本に帰ってから、すぐに床屋に行けばいい事。どうせここはタイだし。そう思うと出来上がりが楽しみになってきました。

床屋で記念撮影
床屋で記念撮影

切り終わると、洗髪をして、ドライヤーで髪を乾かし終了。仕上がりは予想通りといった感じでした。後輩の一人は既に作業中なので、私と入れ替わりにもう一人の後輩が散髪用の椅子に座りました。そして後輩が身振り手振りでこうしてくれとお姉さんに伝え始めるものの、なかなか通じなくて苦戦。見ていると面白い。笑いながら面白がっていると、私のほうに助けを求めてきました。後輩はそんなに切って欲しくないとのこと。それを私が身振り手振りで通訳すると、お姉さんは「オッケー」と作業にかかり始めました。しばらく後輩が髪を切ってもらっているのを眺めていましたが、退屈。しまった。いっそうの事、坊主頭とか、モヒカンにしてれとか伝えた方が面白かったのではないか。どうせここはタイなんだし、ネタ的に面白かったはず。後でどうなるかは分かりませんが・・・。後輩が二人とも切り終わってみると、残念ながら二人ともそれなりに満足いく髪形になったので笑顔でした。そしてお姉さんと一緒に記念写真を撮りました。床屋で記念撮影する人もあまりいないとは思うけど、お姉さんは気持ちよく応じてくれました。

パタヤのネオン街
パタヤのネオン街

さてこれからどうするか。もう外は真っ暗。とりあえずパタヤの中心部に繰り出してみよう。繁華街のほうへ歩き始めました。それにしてもこの町はネオンが華やかだ。さすがはタイきってのリゾート地。しかし妙にピンクのネオンが多い気がする。いや気のせいではない。実際にピンク色のネオンだらけではないか。屋外バーなどの怪しい店もそうですが、普通の夜店でもピンク色の照明をともしていたりします。ジーパンを売っている露店も怪しいジーパン屋に見え、なんだかジーパンが下着に見えてくるから面白い。それにしてもどうなってるんだ。ここはピンクの町なのか。ちょっと唖然としながらも繁華街へ到着。すると今度はゴーゴーバーというストリップ劇場ばかり。ピンクの元凶はここか。ここはこういう町なんだな。いやはや。世も末だ。まぶしすぎるネオンの中をきょろきょろとしながら歩いていると、客引きの人が日本語で声をかけてきました。「社長社長、女の裸だよ。」「たった~~バーツだよ。」「見るだけ無料よ」「○○××○○○だよ」 男としてはなかなか魅力ある言葉の連続です。しかも日本語が氾濫しているので、まるで日本の歓楽街を歩いているような気分です。後輩のほうを見るとかなり行きたそうにしていました。もちろん私も行きたいが・・・、一応まとめ役としてあまり変なことに後輩を巻き込んではよくない。第一この町の状況もよく分からない。あと二日で帰国というのに下手な所に入って、恐喝や誘拐などの騒動に巻き込まれでもしたら、それこそ大変だ。行くにしてもまずは情報収集が必要だし、そもそもパスポートやカメラなどの持ち物をホテルに置いて来るなどの準備した方がいい。それに今日焦っていかなくても明日があるではないか。今日のところは自制心が働き、後輩をなだめることにしました。

パタヤの繁華街で
パタヤの繁華街で

とりあえずゴーゴーバーは明日行くことにして、繁華街を散歩しました。町の至る所で露店が沢山出ていました。売っている物はおみやげ物や衣類がほとんど。食事の屋台が多いバンコクと比べると、やはりリゾート地なんだなと感じてしまいます。と、突然後輩が「あぁ~こんなところでナイキのTシャツが売っていますよ。」とすっとんきょな声を上げました。よく見ると確かに見慣れたナイキのロゴが入っているTシャツが売られていました。値札が付いていて、見ると・・・たったの200円?そんな馬鹿な。安すぎる。値段からして明らかにバッタものでした。見たことのある高級ブランド品の鞄も無造作に山積みになっている店もありました。バッタ物をこんなに堂々と売っていていいものなのか。もう少し遠慮というものがあってもいいのでは。中心部はストリップ劇場ばかりだし、まったくどういう神経をしているんじゃこの町は。ゴーゴーバーとバッタものがあふれかえるタイで一番のリゾート地パタヤ。なんだかよく分からないけど、とにかく強烈なパワーを感じる町でした。いや~なんか凄いところへ来てしまったな。昨夜のカオサンもある意味凄かったけど、こっちの方が怪しい雰囲気満点。パタヤはタイで最強かも。それがパタヤの第一日目の印象でした。

第9章 再びバンコク、そしてパタヤへ  ー 完 ー

第10章 「パタヤビーチでの冒険」に続く

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<進め若者!突撃タイ旅行記 第9章 再びバンコク、そしてパタヤへ 1999年12月初稿 - 2015年10月改訂>