風の足跡 ~風の旅人旅行記集~
~ 海外短編旅行記 第8話 ~

シンガポール、自転車迷走記

*** ページの目次 ***

~~~ §1、いざシンガポールへ ~~~

<2000年4月>
モスクワの空の玄関

ユーラシア大陸を横断すべく香港から始めた旅は、中国で旧正月を祝い、ベトナムでホームステイを体験し、カンボジアで水掛け祭りを楽しみと、なんとか東南アジアの中心であるバンコクまで無事に到着しました。バンコクからはタイ北部やラオスという北のルート、ミャンマーへ向かう西ルート、マレーシアに向かう南ルートと選べましたが、日本の友人から届いたメールによると、五月の連休を利用してツアーでシンガポールを訪れるとの事。おっ、これは願ってもないチャンスかも。こっちでは手に入りにくいものを日本から持ってきてもらえれば助かるではないか。どうせ行きの鞄の中はスカスカだろうからそんなに負担にはならないはず。最初の予定では物価も高いし、あまり見所もなさそうだしと、シンガポールは敬遠しようかと考えていたのですが、友人が来るなら話は別。進路を南にとれ~とばかりに、急遽予定を変更してシンガポールへ向かう事にしました。

という事で、バンコクから一気にマレー半島を縦断してシンガポールへ向かうことにしたのですが・・・、地図を見てびっくり。同じ東南アジアだからすぐ近く、といっても東京~大阪ぐらいの距離かなと思っていたのですが、これが全くの勘違いでした。地図の縮尺で計算してみると、な、な、なんと2000キロもあったりして・・・・。こ、こ、こんなに距離があったのか・・・(唖然)。なんかすぐ近くといった感じがしたので、ついでだから会いに行くよと簡単に約束してしまったものの、これでは全然ついでといったレベルの話ではないぞ。これなら少し高くても必要なものはバンコクにある日系のデパートで手に入れたほうが・・・。冷静になって考えるとそうなるのですが、今更そんなことを友人に言えないしな・・・。もう既に勇んで必要なものをリストアップして日本に送ってしまったし・・・。でもまあ、どの道マレー半島を南下しようと思っていたから、それが早まったと思えばいいではないか。途中途中で寄りながらの旅が、一気に移動することになっただけ。その分、バンコクに戻るときにはゆっくり観光しながら戻ろう。これもなんかのきっかけだ。放浪生活を送っていると、こういうことに関してはすぐにプラス思考に持っていけるのがいいところ。要は特に当てがないので、何かしら確固たる目的ができると旅にメリハリがでるといった感じなのです。よしっ、こうなったら覚悟を決めてシンガポールへ向かうぞ。目指せシンガポール!ってな感じで旅の計画を練り始めました。

さすがに2000キロもあるとバスはしんどそうだな。飛行機は・・・うっ、ちょっと高いぞ。いや、距離を考えたら安いのかな。でも、ここまでひたすら陸路で移動してきたのに、ここで飛行機に乗って一気にワープというのはちょっと気が引けるというか、やっぱり可能な限り陸路にこだわるべきだな。でも心配無用でした。バンコクからシンガポールまではマレー鉄道が直通の寝台列車を運行していました。そこそこグレードも高いようで、マレー半島のオリエント急行と呼ばれているとか。これに乗れば旅情も満点だし、楽しそうな鉄道の旅もできるし、長旅もそんなに退屈しないで済みそうだし、何より乗っているだけでシンガポールに着けてしまう。これはいいぞ。チケットを購入するためにホクホクと駅に向かったのですが、窓口で1週間先まで満席だと言われ、見事に撃沈してしまいました。マレー半島版のオリエント急行は外国人観光客を含めてなかなか人気のある列車のようです。って、褒めている場合ではない。鉄道では約束の日に間に合わないという事ではないか・・・。となると、残りの選択肢はバスしかないぞ。

しかし、バンコクでシンガポール行きのバスを探すものの、直通のバスは走っていないようでした。一応カオサンにある代理店で尋ねてみると、ツーリストバスというのがあるにはあるけど、乗り換えが多いし、時間もかかるし、更には値段も高いからバスで行くのなら自分で乗り継いだ方がいいよと親切に教えてくれました。もちろん最後に飛行機で行く事を勧めるけどねと付け加えてきました。まあ普通に考えれば一気にバスでシンガポールへ行くなんて無謀なことをする人もいないはず。それに手間や労力、総合的な費用を考えると、代理店の人が言うように飛行機の方が安くつくような気がします。でもユーラシア大陸横断を試みる旅人としては安易に飛行機に乗るのはやっぱり・・・。でもマレー半島を南下するだけならユーラシア大陸横断と関係ないからいいのか。そう考えれば飛行機というジョーカーを使っても問題なさそうな気もします。でもやはりバスなどで地道に進んでこそ地球の大きさがわかり、ユーラシア大陸を旅する意義があるというものに違いない。ここは踏ん張りどころだ。ちょっときつそうだけど・・・。覚悟を決めて自力でバスを乗り継いでシンガポールへ向かう事にしました。

~~~ §2、マレー半島の長いバス旅 ~~~

バンコク南バスターミナルと
長距離バス

夕方前にバンコクの南バスターミナルに向かい、ここからまずはタイの南端にある国境の町ハト・ヤイ行きのバスに乗りました。国境まで・・・といっても1000キロ以上あるので大変です。長時間のバス旅は体に厳しいので、そんなに値段の差もない事だし一番グレードの高いバスに乗る事にしました。実際に乗ってみると、外装はいまいちでも内装は結構豪華にできていました。シート間は広く、椅子のクッションもなかなか。そして走り出すと、TVでは映画が流れ、ジュースなどのサービスもありと、なかなか至れり尽くせりといった感じでした。しかしながら長時間のバスの旅は退屈というもの。しかも14時間と半日以上なので、椅子やサービスなどはいいとはいえ移動そのものが苦痛でした。

翌朝、外がまだ暗い朝5時にバスはタイ南部の国境の町ハト・ヤイに到着しました。予定よりもかなり早く到着してしまったようです。こんな早い時間に到着するとは・・・ちょっと予定外でした。こんなことならもう一本後のバスに乗ればよかったな。かろうじて開いているターミナルの窓口で聞いてみると、シンガポールはおろか、マレーシアの国境を越えるバスさえないとの事。って、どうすればいいんじゃ。マレーシアにすら行けないということ?そんな事はないはず。更に詳しく聞いてみると、面倒臭そうに旅行代理店の運行しているバスに乗りなさいと言い、さっさと窓口を閉めてしまいました。うっ、まだ聞きたいことがあったのに・・・。でもまあ何にしてもこんな朝早くからでは何もできまい。ベンチで寝て待つか・・・と思っていたところ、バイクタクシーのおじさんが声をかけてきました。さっきの会話を聞いていたらしく、シンガポール行きのバスを運行している旅行代理店に連れて行ってくれるそうだ。でもな・・・、時計を指差しながらまだ開いていないよと言うと、笑顔で大丈夫との事。そうなの。じゃ連れて行ってもらおうか。ここにいても退屈だし、バスの時間とかも知りたいし、場合によっては一日一便のバスが後1時間後に出発とかだったら洒落にならないしな。という事で、バイクタクシーに乗ったのですが、ものの3分も走らずに到着。それもそのはず。バスターミナルのすぐ外でした。これってボラれたうちにはいるのだろうか・・・。仲介料と思えばいいか・・・。料金も安かった事だし。思わず苦笑いしてしまいました。

もちろん着いた先の代理店のシャッターは閉まっていました。やっぱり閉まっているではないか。そう思ったものの、おじさんは構わずシャッターを思いっきりガンガンと叩き始めました。おい、そりゃいくらなんでも強く叩き過ぎだろう。日本ではこんな近所迷惑はありえないなと思いつつ成り行きを見守っていると、代理店の人が何事かといった感じで出てきました。あっ、おいらが叩いたんじゃないから・・・と他人事のように後ろかで見ていると、バイクタクシーの人が事情を説明し始めました。すると、こんな朝早く起こされたのにも関わらず代理店の人は笑顔で私を迎えてくれ、まだ朝早いからと椅子で寝かせてくれたり、起きるとシャワーを貸してくれたりと、単なるお客の一人なのにとても親切に接してくれました。やっぱり微笑みの国だよな。タイは。感謝。

ハト・ヤイの町で

出発までかなり時間があったので、午前中はハト・ヤイを歩き回ってみる事にしました。とはいえ、特に何もない小さな町でした。でも国境の町というのは両方の文化が混じっていて面白いものです。とりわけ仏教一色の国といったイメージの強いタイですが、ここではイスラム教のスカーフをした女性が多く歩いていて驚きました。お隣のマレーシアはイスラム教の国。だからこの辺りは仏教とイスラム教の境界となり、混在しているようです。おまけに中国人も住んでいるので道教も盛んだったりします。こういった文化が混じった様子を見ると、なんか価値観が沢山あって文化的に豊かに思えてくるのですが、逆に価値観がぶつかって小さな揉め事も多かったりするのかな・・・。見た感じはのどかな雰囲気ですが、歴史を紐解くと色々ありそうな気もします。まあどの宗教も仲良く混在してくれるのが一番なのでしょうが、人類の歴史を見ている限りなかなか難しいに違いありません。

代理店のある通りとバス

時間が来たので途中で水やお菓子などを買い込んで代理店に戻りました。代理店に入ると、タイ人らしきおばちゃんが大勢いて賑やかになっていました。って、なんかおばちゃん達の井戸端会議場みたいなんだけど・・・。どっかへみんなで遊びに行く為に切符でも買いに来たのかな。もしかして・・・・、まさか同じバスに乗るって事はないよな。そんな事を思いつつ待っていると、出発の時間がきて、代理店の人に「店の前にあるバスに乗ってください」と声を掛けられました。店の外に出てみると、かなりくたびれた大型バスが待っていました。ボロいけどとりあえずはちゃんとしたバスで一安心。で、乗り込もうとすると、さっきのおばちゃん達が我先にといった感じで乗り込み始めました。えっ、このおばちゃん達もシンガポールに行くの・・・。シンガポールは普通のおばちゃんが気楽にワイワイと行ける国とは思えないんだけど・・・。それとも気楽に行けてしまうのか?よく分からない展開に唖然としてしまいました。でもまあいいか。私の旅とは関係ない事だし・・・。たぶん。いや、ちょっと気になるな・・・。まあいいや。とりあえずあまり近くだとうるさそうなので、おばちゃん達よりも少し後ろ目の座席に座る事にしました。

私とおばちゃん達が乗り込むとバスは出発しました。他に乗客は・・・いないようです。15人程度しか乗っていないけどいいのか。先ほど親切にしてもらっているので、採算が取れているのか心配になってしまいます。もしかしたら途中途中で乗客を拾っていくのかな。きっとそうに違いない。とりあえず乗っている方としては、リクライニングがあまり効かない狭い座席でも2席使えばそれなりに広々と空間をもてるので、混まない程度に、そして採算がとれる程度に乗客が乗ってくれるのが一番です。それにしてもこのおばちゃん達の集団は一体何者なんだろう。気になってしょうがありません。旅行にしては荷物が少ないし、あまりにも気軽すぎる感じがします。他に目的があるのだろうか。考えれば考えるほど気になってしまいますが、言葉が通じないのでよく分かりません。でも何ていうかこれが奇妙な感覚で、まるでタイ人のおばちゃんをターゲットにした日帰りバスツアーに混ざった感じの車内でした。彼女たちとは言葉は通じませんでしたが、なかなか騒々しくもあり、楽しい道中となりました。

マレーシアのイミグレ

走り出すと、すぐマレーシアとの国境に到着。みんなでぞろぞろとバスを降りて、窓口でスタンプを押してもらいました。ここの入国審査は形式的といった感じで、すぐに手続きが終わりました。そして国境を越えると、道や建物などが気持ち整然とした感じを受けました。そう感じるのはやっぱり国力の差なのでしょう。最近マレーシアは経済の調子もいいようだし・・・。そんなことを考えながら車窓を眺めていると、最初の休憩のためにバスが停まりました。休憩所というか、レストランみたいな場所に入ったのですが、ここで重大なことに気がつきました。うっ、おいらマレーシアのお金を持っていないぞ。これでは何も買えないではないか・・・。よく考えると惨め。腹減ったなと思っても、何も食べれなく、もちろん何か欲しくても買えない。マレーシアではタイのお金が使えるのだろうか。どうなんだろう。あっそうだ。おばちゃん達に両替してもらうという手もあるか・・・。でも相手の正体がいまいちよく分からないから心配。それは最終手段という事で切羽詰まるまで我慢しよう。とりあえずはさっきバスに乗る前にあまった小銭で買えるだけお菓子などを買ったので、それでシンガポールへ着くまでの半日弱をしのぐ事にしました。

バスはひたすらマレーシアの高速道路を南下し続け、早朝にシンガポールの国境に到着しました。噂ではシンガポールの入国審査は飛行機とかなら簡単だけど、陸路の場合は日本人でも出国用のチケットがないと所持金を提示させられたり、色々と質問されたりと厳しいという話です。さぞかし面倒だろうなと覚悟していたのですが、パスポートを提出するとすぐにポンとスタンプが押され、あっけなく終わってしまいました。持っている服で一番まともなのを着ていたおかげなのか。真面目そうな顔立ちのおかげか。う~ん、やっぱり人は見かけが重要かもな。などと思うものの、勝てば官軍というやつで、後からなら何でも言えるというものです。もし入国拒否されたら友人に会えなくなってしまうので、とりあえずホッと胸をなで下ろしました。

しかし同じバスに乗っているタイ人のおばちゃん達は大変でした。なかなか戻ってこないと思ったら、しばらくして一人一人興奮しながらバスに戻ってきました。タイ語が分からないので詳しくは分かりませんが、その様子からは何を聞かれただの、所持金を見せられただのを興奮しながら話している感じでした。中には1時間もオフィスで尋問を受けた人もいて、やはりシンガポールの入国審査は厳しいんだなと実感しました。そういったおばちゃん達の様子は見ていて面白いのですが、改めてこのおばちゃん達は何者だろうかと疑問に感じてきました。悪そうな人たちには見えないけど、どうみても怪しく見えるもんな。一体何をしに来たのだろう。確か荷物はほとんどなかったので、普通の観光客ではないはず。商売人?何か仕入れにでも来たのだろうか。それともやばい物の運搬人とか。そうだとしたらあまり深く関わらない方がいいのかも・・・。

何はともあれシンガポールに入国しました。シンガポールか。随分と遠くまで来たものです。思えば・・・全然意識していなく、ふとバスの中で気が付いたのですが、結果として旅初めの地である香港からシンガポールまでひたすらバスで移動してきたことになるようです。本当は中国国内は鉄道で移動したかったけど旧正月と重なって無理だったし、今回のマレー半島にしてもそうであるように、特にバスにこだわっていたわけではないので、実際のところはどうこうといった感動はなかったりします。でもまあよく頑張ったかな。ここまで。飛行機で移動しても日本から半日近くかかるのだから・・・。って、そう考えると妙にむなしい気が・・・。やっぱり飛行機は人智を越えた反則的な乗り物です。旅を楽しむのなら必要な時以外はなるべく乗らないようにするべきだなと今回の移動を含めて思ってしまいました。

~~~ §3、シンガポールに到着したものの ~~~

早朝にシンガポールに到着すると、ガイドブックに載っている安宿に落ち着くことにしました。安宿といえども先進国のシンガポールなので、今までと同じ感覚では泊まれません。宿泊費に関していえばちょうど香港と同じぐらいでしょうか。結構な値段がしました。ドミトリーに泊まればかなり宿泊費が抑えられたのですが、バスに揺られ続けて疲れ切っていたので、誰の気兼ねなく寝れるシングルの部屋にしました。しかも狭い個室ながら贅沢に冷房つき。物価上昇プラス冷房と今までの宿泊費の何倍もの値段となってしまったので、金額以上に割高に感じてしまいました。でも冷房がついているのはいいことで、部屋に落ち着くととても涼しくて気持ちいい。う~ん、たまにはこういう贅沢もいいかな。って、ずいぶんと些細な贅沢だな・・・。どうせならたまにはドンと星の付いたホテルに泊まるぐらいの贅沢を満喫したいところ。ただ、貧乏旅行をしている身というか、お金はある程度持っていても減る一方なので、やはり大きな出費に関しては神経質になってしまうのが実際のところなのです。とりあえずまだ朝も早く、銀行も開いていないだろうし、外出する気も起こらないので一眠りすることにしました。

ボーとベッドに横になると、今までの旅のことが思い浮かんできました。とりあえずマレー半島の最南端というか、どん詰まり部分のシンガポールまで来たので、私の旅もここで一区切りついた感じです。ベトナムでホームステイした家の主トゥアはどうしているかな?彼らの生活水準を考えるとユーラシア大陸を横断する旅をしているなんて口にできなかったので、もう日本に帰ったと思っているんだろうな。また会いたいな。ベトナムで出会った同じようにユーラシア大陸横断を目指していたシマさんやヤマさんはどこまで進んでいるのだろうか。今まで出会った人々のことが色々と思い起こされました。でもやっぱり今までの中ではベトナムでの体験が一番強烈だったな。修学旅行のようなツアーから始まって最後はホームステイだったもんな。やっぱり人と違うような体験は面白いし、人に自慢もできる。これからの旅でもそういった体験がしたいな。今までの旅を振り返りつつ思いました。

目が覚めると、昼前でした。一眠りしたせいか、かなり気分がすっきりしていました。そして思い立ちました。人とは違う旅。そう、自転車でマレー半島を旅してみてはどうだろうか。本当はバイクで旅ができればいいのだけど、色々と手続きやらが面倒だから同じ二輪車でも自転車ならそういったわずらわしいことはないはず。ただ問題は・・・、私にそんな大それた事ができるのだろうか。今まで一日だけ自転車を借りて走ったことはあっても、何日も掛けて、しかも荷物を積んで走ったことはありません。バスの移動でも2日がかりで疲れたのに・・・・、でもまあ・・・・何とかなるのでは。今までも何とかなってきたわけだし。そう、ベトナムでのホームステイも乗り越えてきたんだ。まだ若いんだし、若さを武器に少々無茶をやっても大丈夫ではないだろうか・・・多分。そもそも単に観光地ばかりを周る旅なら年を取ってもできるし、今しか出来ない事を全力でやるのが今できる最善の旅ではないか。色々と考えていくと、心がうきうきとしてきました。う~ん、なんだか自分にもできそうかも。となると、宿で考えていてもしょうがない。まずは自転車を手に入れなければ。話はそれからだ。早速外出して、散歩がてら自転車屋を探して周りました。

中国寺院

宿から少し歩くと商店街がありました。付近には中国寺院やら中国語の看板が多いから、ここは中華街という事になるのかな・・・。いや、シンガポールは華僑が多いからこれが普通にちがいない。まだ来たばかりなので、いまいちシンガポールという町の勝手が良く分かりませんが、その商店街の中に自転車屋を発見しました。この店も中国語の看板が出ているところをみると、やっぱり華僑の店なのかな。店の外からみる限りそこそこ品揃えが豊富だし、ちゃんと値札が付いているので、店内に入ってみる事にしました。

色々と物色してみると、なんか思っていたよりも自転車の値段が安い事に気がつきました。なんか立派そうな自転車だけどお手軽な値段だな。さすがは買い物天国シンガポール。って、見た目は良くても中身がいい加減な中国製って事なのかな。でもどうなんだろう。う~ん、自転車に関しては全くの素人なのでよく分からないというのが実際のところです。そういえばフエで出会った自転車で旅しているヤマさんは見た目がどうのこうのではなく、ベアリングが一番大事だとか言っていったな。外観は良くても安いものはペダルの付け根についているベアリングがすぐに駄目になり、走れたものではないとか。自転車で一番力の負荷がかかる部分だけに、いい加減な部品なものだとすぐに壊れてしまうそうです。実際ヤマさんが乗っていた自転車も見た目はいいものの、値段を聞くとびっくりするぐらい安くものでした。もちろん中身は中国製で、千キロ走るのにベアリングを何度か修理したとか。ここのも同じだろうか。ちょっと高いのはシンガポールの物価のせい?でもここはベトナムではなく、先進国のシンガポールだからまともなものがおいてあるような・・・。疑心暗鬼になりながら触ってみるものの、さすがにちょこっといらっただけではよく分かりません。

う~んと考えていると、店の人が声をかけてきました。しかも当たり前のように中国語で・・・。まあ普通に考えて商店街の自転車屋には地元の人しか来ないよな。地元の中国人と間違えるのも無理ないか。顔立ちも似ているし・・・。でも私が外国人だと分かるととたんに英語に切り替えて話し掛けてきました。う、さすがはシンガポール。切り替えが早いというか、二枚舌になれている・・・・いや違った・・・・国際色豊かな町だ。とはいえ、英語でベアリングが・・・などと難しい話をするつもりもないので、簡単に受け答えをしていると、店主はしきりにどれもこれもいい自転車だと連発していました。まあ高いものを買う気もないし、そんなにスピードとかも出さないだろうし、この程度の自転車がちょうどいいのかな。そう思いつつ、値段と形、色などを考慮して、数台めぼしを付けておきました。とりあえず・・・、思い付きで行動していい事もあるけど、やはりここは少し慎重になった方がいい。衝動買いをしてしまった後でやっぱりいらないとなると、ちょっと荷物になるどころの話ではないからな。そもそも自転車に関しては素人なんだし・・・。もう一晩考えてからにする事にしました。

そして宿に戻って一晩よく考えました。といっても、考えるったって・・・、そもそも自転車で長い距離を走った事がないので、いまいち何がどういった感じになるのかが分からなかったりします。結局のところ、肉体的にきついのは確かなので、それを根性だけで補えるレベルなのかどうかといったところが焦点になります。本当に私にできるのだろうか。地図で見る限り、バンコクまでは途中に山脈が聳えているわけではなく、比較的平坦な道が続いている感じだし・・・、時間を掛ければできるかな。そう何日で走ったかではない。走り抜くことに意義があるんだ。うんうん。あれこれ思っていると、自転車の旅が楽しく思えてきました。よしっ、やってみようではないか。困難に挑戦すること。それこそが旅の楽しさの一つではないか。もし駄目ならそこで自転車を捨てていけばいいし・・・って、おいっ。

~~~ §4、自転車の購入 ~~~

翌朝、一晩考えた末に・・・・、といっても大袈裟に考えることもなかったのですが、マレー半島縦断自転車の旅を行うことにしました。やはり今しかできないことをやるという試みがいいし、何より旅をしながら制作しているリアルタイム旅行記のネタに困らない。何かしら旅行記みたいなものを書こうと思うと、人と違うことをしなければ面白いことを書けないというものです。ということで、午前中は自転車を購入する為に銀行で両替をしたり、他にいい自転車屋がないか商店街などを散策したりしました。そのついでにシンガポールの電気街というか、電化製品の店が集まっているビルに行ってみました。シンガポールといえばやはり買い物天国といった印象が強く、電気製品も関税の都合で安かったりします。ただ、香水などの外国製品はそうかもしれませんが、日本製の電化製品はそれが当てはまるのかはちょっと疑問。でもそれは日本と比べてなので、他の国で買うことを考えれば安いに違いありません。

電気ビル
ビルの一階部分
コピーCD屋

このビルはシンガポールでも名が知れているだけあって、中は電化製品の店ばかりでした。1~2階部分は売れ筋のビデオカメラやデジタルカメラなどが店頭に並べられ、日本の電気屋さんと同じ感じ。売っている商品もソニーにパナソニックにニコン、キャノン・・・って、まるで日本と同じじゃないか。微妙に雰囲気は違えど、歩いていると秋葉原にあるビルにいる感じでした。更に上の階に行くと、怪しげな店が多いのも秋葉原と同じ。というよりもこれは世界共通なのかな。とりわけコピーのVCDやらパソコンソフトが堂々と売られているのには・・・やはりシンガポールも中国色が強いなと感じてしまいます。さすがにパソコンのソフトの日本語版はないだろうな・・・と思っていたら、ちゃんとあったりして・・・。需要があるのかな。それとも日本語版でも使えればいいというやつなのかな。よく分からないけど、う~ん、欲しい。これがあればホームページ製作も楽なんだろうな。そう思うものの、実際に使うのはかなり先のこと。どの道今買っても使えないし、持っていても荷物が増えて邪魔なだけ。それに使うときには古くなりすぎていると思われるので、購入は見送りました。それにしても日本の映画やドラマが多い。中にはバラエティーまで・・・。しかも日本の放送のまんまに字幕をつけたものなどが売られていました。これってやっぱり・・・中国で製作したものを華僑ネットワークで流しているのだろうか。中国のシンセンにも同じものがあったしな・・・。

ビル内にはインターネットができる店があったので、久しぶりにインターネットをしておきました。まずはシンガポールで会う事になっている友人は・・・っと。なになにちゃんと補給物資を購入して、明日出発します。って、うむうむ、これは助かる。後は管理人代行殿にホームページの更新分の渡航履歴などを送っておこう。さすがにシンガポールともなると物価が高くなり、インターネット代も馬鹿にならない。早々に切り上げることにしました。そうだ。シンガポールの秋葉原ってことで、ビル内の写真でも撮っておくか。パシャ、パシャ。写真を何枚か撮っていると、店の人がすっ飛んで来ました。「お前、何してる!」「何者だ。」「何の写真を撮ったんだ!」とえらい剣幕。どうやら違法コピーの店の人のよう。やましい事しているからピリピリしているんだな。やれやれ。まあここは面倒なので、英語の分からない観光客の振り。「お~私、英語分かりませ~ん。単なる観光客です。」と言って去ったのですが、どうも腹の虫が収まらないようで、後ろから罵声らしき言葉を浴びせてきましたが、今度こそ本当に英語が分からなかったので、無視して立ち去りました。ちょっと冷や冷やした体験でした。

午後になると覚悟を決めて、昨日の自転車屋に購入しに行きました。自転車は色んな種類のものが置いてありましたが、凡庸性のあるマウンテンバイクにしました。これなら少々の悪路でも大丈夫だろうし、雨が降っても、荷物を積んでいても大丈夫のはず。色は目立つ黄色。単に目立つから安全かなというか、目立っていいかなといった感じ。値段もそこそこ安く、見た目はなかなかのもの。でも中身は・・・ちょっと心配。先ほど訪れた電気街の違法CDのようにデザインとかも単にコピーして作ったんだろうな・・・。安全性とかは・・・。考えないようにしておこう。とりあえず2000kmだし、きっと大丈夫だろうってことで納得しておきました。自転車には長距離を走りやすいように色々とオプションが付けられるようでしたが、まあ今日のところはいいか。どの道まだ何日か滞在するわけだから後で必要なら買いに来ればいい。とりあえず今日のところはワイヤーロックと荷台を購入しました。

お金を払うと、荷台や泥よけを付けたり、油を差したりと整備するから1時間後においでと言われました。そして夕方取りに行ってみると、ちゃんと整備されている私の自転車が置いてありました。お~なんかピカピカに磨かれているし、油とかもちゃんと差してあるではないか。自転車自体はちょっと怪しい感じがするけど、店の人は親切で信用がおけました。何か困ったらまたおいでと言われ、店を後にしました。とりあえず乗り心地もいいし、満足だな。これでマイ自転車が手に入ったので、後は少しづつ足を慣らしていくだけ。目標ができたせいか、退屈そうに思えたシンガポール滞在がなんだか楽しくなってきた感じです。

~~~ §5、自転車で市内観光 ~~~

その翌日から早速マイ自転車と一緒に行動を始めました。初日なので自転車に慣れるためにシンガポール市内をのんびりと散策する事にしました。まずは・・・やっぱりシンガポール名物のマーライオンかな。今までの行動は全て徒歩だったので、歩いて行くにはちょっと遠いマーライオンはまだ未訪問でした。シンガポールといえば誰がなんと言おうとやっぱりマーライオンだろ。そう思うのですが、実際に訪れた旅行者の評判は芳しくないようで、旅行者の間では世界三大がっかりの一つだ!などといった噂を何度か聞いていました。そう言われるとますます見てみたくなるのが人情・・・いや、これは単に私の性格か。そういった意味でも一番シンガポールで楽しみにしていました。ちなみに他の2つはコペンハーゲンの人魚姫の像とブリュッセルの小便小僧だとか。どちらもまだ行っていないのでどうなのでしょう。どれだけがっかりするのか気になるところです。

走り出してみると、道がでこぼこしていなく平坦なので、走りやすいこと。歩道も広くてこれは快適だ。さすがはシンガポール。あのカンボジアの悪夢のようなダンシングロードとは大違いです。おまけに徒歩と違って自転車の速いこと。あっという間に町の中心部へ着いてしまいました。しかしここからがちょっと大変でした。今までは歩道があり、道も広くて走りやすかったのですが、繁華街は歩道に無駄に階段がついていたりと、自転車では走りにくい。って、自転車で走るなということなのか。では車道を・・・と思ったのですが、車道は車道で交通量が多く、おまけにガードレールが隙間なく続いているから、これもまた走りにくい。というか、慣れないので、車がどういう動きをするのか分からなく、結構怖い。車道を走るぐらいなら階段があっても歩道の方がましかも・・・って思いました。

マーライオンの像(2000年時)
モニュメントとマーライオン(奥)
戦争のモニュメント

繁華街のごちゃごちゃした場所で少し迷ったものの、無事に港付近に到着。この辺りはモニュメントやら立派なイギリス調の建物やらと色々と並んでいました。そして肝心のマーライオンは・・・。観光客が集まっていたのですぐにわかりました。が、マーライオン自体はなんとも小さい像でした。もっと大きいものを期待していたのですが、う~ん、やっぱり世界三大がっかりの一つに数えられるのも分かる気がする。というよりも、背景のビルが高すぎるから小さく見えるのか。対岸から見ると明らかにビルに埋まっている状態です。製作されたのが・・・1972年か。製作者もこうなるとは予想していなかったのだろうな。もし今の状況で製作を頼まれたら、きっともっと大きなものを作ったに違いない。そう考えると、がっかりの原因の一つはマーライオン自体ではなく、周りのビルを含めた環境の変化ということになりそうです。でもまあこれはこれでいいか。白色がきれいだし。私の場合は予めがっかりするかもと教えられていた分と、自転車で気分よく来たので満足できました。というよりも、どっちかというと自転車でシンガポールの象徴マーライオンに到達した事に感動していたような気がします。(*マーライオンは2002年に移転され、修理を行ったので、現在のマーライオンとは場所も像の雰囲気も違います)

付近は公園のようになっていて、色々とモニュメントなどがあったのでついでに訪れてみました。今まで訪れた国ではモニュメントといえば必ず偉大な指導者と呼ばれる人の像だったので、ここに置いてあるアート的なものを見るとある意味新鮮な感覚でした。やっぱり経済の豊かさとか、政治体制というのは重要だな。心が洗われていく。うんうんと感心しながらも日本の公園のモニュメントをちゃんと見たことがない人間が言っても説得力皆無のような気もします。歩いていると一際目立っている塔のように高く聳えたモニュメントを発見。これはでかいというか、大がかりだ。いったい何のモニュメントだろう。近くに寄ってみると、その碑の中心部に何やら書いてありました。第二次世界大戦で日本から独立を・・・って、あいたたぁ・・・といった感じで、楽しい気分が台無しに。そういえばシンガポールも日本が占領していたんだよな。まあ戦争を知らない世代の人間、しかも二世代前のことを今更言われても対応に困ってしまうのが実際のところかな。といっても無視できないので、ちょこっと手を合わせて後にしました。

川沿いに並ぶカフェ
橋の欄干と自転車

マーライオンはシンガポール川の河口にあり、マーライオン付近の見学を終えるとそのシンガポール川沿いに遡っていきました。両岸にカラフルな建物が建ち並んでいました。なんかお洒落だな。近くまで行ってみると、ほとんどがカフェというか、レストランというか、飲食店でした。河岸にテントを張り、オープンカフェといった感じになっていて、なんだか暑いシンガポールでもここは過ごしやすそう。でもまだ午前中なので、人はほとんど居ませんでした。休日の午後とか、夜には多くの人が訪れているんだろうな。雰囲気がいいし・・・と想像するのは容易でした。それにしてもこの辺りの橋のきれいなこと。旧宗主国のイギリスの影響を受けているんだろうな。案外ロンドンの橋なんかよりもよっぽどきれいかも。とりあえず自転車と一緒に写真を撮っておきました。

その後は適当に町を走ってみましたが、高いビルが聳えていることぐらいで日本とそう変わらないといった感じ。都会なんだな。バンコクでも都会と感じたのですが、やはりこっちの方が洗練されているといった感じを受けました。それはビルなどの建物にしても、道路の構造にしても、看板や案内板にしても、さりげない部分がやはり経済力があるときちんと作られていたり、設置されているからです。なるほどな。経済力があるとこうなるんだ。町を色々と見て旅していると、こういった些細な事に目がいってしまうものです。

オーチャードストリートのバス停
デパート街

そして昼過ぎに有名なオーチャード通りに自転車で乗り付けてみました。ここもまた走りにくいこと。車道は車だらけだし、歩道は人だらけ。どっちを走ればいいんだといった感じ。車道の方がスムーズかな・・・、でも散策しながら走りたいから歩道かな。と言うことでゆっくりと歩道を走っていると、なんか涼しく感じてきました。まるで外気が一気に下がった感じです。これは気持ちいい。って何でだ。辺りを見渡すと、この通りはデパートやらショッピングセンターだらけ。そしてドアが開いているので、冷気が外まで流れ出し、通り全体が冷えているようです。さすがは世界に名だたるオーチャード通りだ。これも地球温暖化対策か?いや冷房をするのに温暖化になっているから・・・差し引きゼロ?よくわからないけど、通りまで涼しいこの状況を素直に感心してしまいました。

適当に自転車を置いて・・・、日本と一緒でその辺のガードレールにチェーンロックでくくりつけただけですが、オーチャード通りを散策しました。昨日も自転車を探しに来ているので、そう目新しさはないけど、今日は時間もあるし、涼しいしとゆっくりと銀ブラならず、オーブラ?を満喫しました。ここには日系のデパートが多くあります。ソゴウ、伊勢丹、パルコってなんだかバンコクと同じような感じです。日本で暮らしているとわからなかったけど、日本のブランド力というか、文化力は東南アジアでは侮れないものなんだなと素直に感心してしまいました。そしてこういった光景を見ると日本人として鼻が高かったりします。って、実際は何も関係がないのですが・・・。やはり海外に出ると日本人という事を必要以上に意識してしまうので、日本に関わりのある事にはすぐに反応してしまうという事なのでしょう。という事で、我輩は本家本元の日本人だぜ!といわんばかりに胸を張って歩いてみるものの、残念ながら周りと顔立ちが変わらないので日本人だと分かる人はいなかったはずです。

さて、まずは空腹を満たさないと。さすがに朝から自転車をこいでいるのでお腹がすいていました。ここはやっぱり日本食か。これだけ日本のものを見せられると日本食の誘惑には勝てませんでした。そしてデパートの地下を訪れると、牛丼の吉野家を発見。う~ん、よだれが・・・。引き寄せられるように店内に入っていました。結構シンガポールでも人気があるようで、そこそこ地元の人らしき客が入っていました。ここはやっぱ大盛りだな。う~ん、なんか懐かしいというか・・・きっとアメリカ人が海外でマックに入る気持ちがこうなんだろうな。地元の客に混じり、しみじみとカウンターで久しぶりの牛丼を平らげました。なんとも幸せ。きっとこんなに感激して牛丼を食べていたのは店内でも私だけだったはず。その他にも日本でいうデパ地下を歩くと、たこ焼き、お好み焼きなど日本の食べ物がなんでも揃っていたりして・・・。うぉ~これは素晴らしい。シンガポールに来て、このデパ地下が一番感動しました。日本のものの豊富さはバンコク以上かもしれない。日本から直接来たら面白くないだろうけど、長旅の末にやってくると涙ものでした。

~~~ §6、サイクリング ~~~

昨日の夕方、再び購入した自転車屋を訪れ、パーツを買い足して少し走りやすいように自転車を強化しました。後、長距離を走るのに欲しいのはサドルバックぐらいかな。自転車屋で見たのは高くて立派なものだったので、さすがに躊躇してしまいました。一応ショッピングセンターを訪れたときなどに安くていいものはないかなと探してみてはいるものの、いいものは見つかっていません。まあそのうち何とかしよう。とりあえずは荷台を取り付けてあるので、なくても何とかなるはず。それよりも問題はエンジン部分。動力源がちゃんと動かない事には前に進まないってなもので、今日は足を慣らす為に島の東の方へ遠出のサイクリングをする事にしました。目的地はどこでもよかったのですが、北はマレーシアへ行くときに通るし、西は地図には何も目的地になりそうなものが書いてないしと、消去法で東になってしまいました。東も特に何もないけど、空港があるのでとりあえずそこまで行ってみる事にしました。

が、朝起きてみると、あいにくの空模様。う~ん、どうしよう。雨の中を走りたくないな。うだうだとしていたら昼になってしまいました。昼頃、外に出るとようやく雨が上がっていました。でもこの空模様だとまた降ってきそうだな。今日は止めておくか。でもな~・・・ちょっと億劫でしたが、明日は待ちに待った救援物資が届く日。そして友人にも会える日。そう思うと、今日は頑張ろう、今日頑張っておかなければといった気になってきました。よしっ、気合を入れるか。この程度で根を上げていてはマレー半島縦断なんてできやしないぞ。

交差点で
サルタンモスク

宿を出て東に向かってこぎ出しました。宿があるのも中心部からみると東側なのですが、ここよりも更に東側にはイスラム教徒の多いアラブ人街があります。大通りを走り出っていると早々にスカーフを巻いた女学生が多く歩いていました。これってイスラム教の学校の制服ということなのかな。よく分からないけど、シンガポールにしては珍しい光景だ。絵になっていないのか、いるのかよく分からないまま写真に収めておきました。でもこの感じだと名前だけのアラブ人街ではなく、本格的なのかもしれない。まずはちょこっと道をそれてアラブ人街の中心であるアラブストリートへ向かってみる事にしました。

シンガポールは案内板がしっかりしているので、アラブストリートはすぐに分かりました。この通りに入ると、早速目の前にデンッとイスラム教の象徴である大きなモスクがありました。う~ん、でかい。おまけに黄色のドームが目立っている。でも目立つには目立つのだが・・・、なんか光っていないな。私の中ではこういうのって金ピカに光っているイメージがあったのですが、ここのはそうでもないのが妙に気になってしまいました。中には入れるのだろうか。ちょっと興味がわいてきたものの、入り口は入り辛い雰囲気満点。諺どおりさわらぬ神に祟りなしという事でやめておこう。ここのモスクは観光客向けではなくちゃんとしたモスクなんだな。ただ、このモスク以外は墓地ぐらいしか特に目を引いてアラブ人街といった雰囲気はなく、全体としてはいまいちな感じでした。

バスを待つ学生達

再び本線に戻ると、ここからはひたすらビーチロードという通りを東へ進みました。海岸通りというやつで道が平坦で走りやすいのですが、なんか変わり映えがしないというか、整然とした風景が続いていました。でも初心者には走りやすくてちょうどいいか。信号も少ないし。おかげで最初の遠出にしては快調でした。しかし順調に走っていると、パラパラと雨が降ってきたりして・・・。う~む、やっぱり降ってきたか。でもこれぐらいの小雨なら。どうせ汗で濡れていることだし・・・。という事で、気にせず進んで行くと、雨は本降りになる事はなく、すぐに止みました。頑張っている人は神様もちゃんと見てくれているんだな。うむうむ。勝手に解釈すると気分がいいものです。しかも若干雨で体温が下がったこともあり、恵みの雨となりました。

順調に空港付近までたどり着きました。空港手前からはなんか自動車専用道路みたいな感じだったので、中に入るのはやめました。空港の手前の海外沿いに公園があったので、とりあえずここをゴールとしよう。ちょっと手前でスーパーを通り過ぎたのを思い出して、そこへ戻り弁当を買ってちょっと遅いランチにする事にしました。スーパーではなんと鉄火巻きが安く売っていました。サンドイッチよりも安いではないか。これは買いか・・・。いや大丈夫だろうか・・・。以前ロンドンのスーパーで売れ残った寿司が激安で売っていて、それを食べて食中りを起こしている身としては、海外の安い寿司はちょっと抵抗があったりします。でも日本の文化が浸透しているシンガポールなら大丈夫だろう。でもこの気温だと・・・。いやこの気温だからこそ管理には注意しているはず。それに生魚の扱いにも慣れているはず・・・。結局安さと寿司の誘惑に負けて購入してしまいました。

南国の雰囲気が漂う道
運動施設

いつまた雨が降ってくるか分からないといった空模様なので、のんびりとピクニック気分に浸っているわけにもいきません。目的は達成したことだし、早めに町の中心に戻っておいた方がいいかな。という事で、ランチ後は、もと来た道をそのまま戻る事にしました。途中からは更に海岸沿いの道に入ってみると、大きなスタジアムやプールがあったり、海ではボートの練習をしていたりと、なんか総合運動公園といった感じでした。どうもこの付近の海岸沿いはそういった施設などが建ち並んでいるようです。

雨さえ降らなければ急いで宿に戻る必要もないので、町の中心が近づいてくると、同じ道を走るもの面白味がないので道をそれてみましたが、特に目新しいものはない代わりにというか、かなり強い雨に降られることになってしまいました。さすがにこれでは走れないので、バス停で雨宿り。シンガポールではバス停にきちんと屋根がついているのがうれしいところ。やっぱりこういう細かいところに行き届いているのが先進国だよな。都会といえども乗用車などの交通マナーがいいのもそうです。車の運転手が笑顔で道を譲ってくれ、ありがとうとばかりに手を上げて返すのも気持ちがいいものです。今までの国だったら・・・、田舎ではそうでもないかも知れないけど、どけっとばかりんにクラクション攻撃にさらされるだろうな。う~ん、シンガポール最高!などと思っていたのですが、市内に入り、自転車の走るスペースがないのでバスレーンを走っていると、時々バスがわざと思いっきり幅寄せしてきて、何度か転びそうになりました。やはり世界はどこも一緒ででかい乗り物は思いやりがないよな。それだけが納得いきませんでしたが、概ね今日は満足のいくサイクリングができました。

~~~ §7、日本からの来客 ~~~

とうとう待ちに待った救援物資を友達が届けてくれる日がきました。全く持っていい時にシンガポール旅行を企画してくれたものです。どうやら今日の朝食後に少しだけツアーの自由時間があるようなので、それに合わせて友人に会いに行く事にしました。しかしながら、なんと友人が宿泊しているホテルがあるのはシンガポールの沖に浮かぶセントーサ島だったりします。というのはちょっと大袈裟な表現で、実際のところはシンガポールとは橋やロープウェイでつながっているほど利便性の高い島です。ガイドブックを眺めると、このセントーサ島は小さな島全体が観光用というか、レジャー用に開発されているようです。という事は、この島にあるホテルというのは町中の騒々しさとかがなく、いわゆる南国のリゾート満点な雰囲気を持ったホテルといった感じなのでしょう。遙々日本からやってきた観光客にとってみれば、仮に人工的な南国リゾートであっても市内の日本と変わらないようなロケーションにあるホテルに泊まるよりはいいに決まっています。これはツアーの客寄せにもなりそうだし、需要も高そうです・・・。でも、私からするとなんとも余計なことをしてくれてといった感じ。会いに行くのに大変ではないか・・・。できれば交通の便のいい町中のホテルに泊まってくれればいいのに・・・・。って、荷物を持ってきてもらっていのに、こんな暴言を言ったら罰が当るかも。何より友達がいなくなってしまいそう・・・。

朝のシンガポール駅

という事で、朝早く起き、張り切ってセントーサ島へ向かいました。もちろん今日も自転車での移動です。昨日のサイクリングの疲れはほとんどなく、若干いつもより足が重い程度でした。この調子で毎日走っていれば足も強くなっていくに違いない。島は町の中心部よりも西側から橋でつながっているので、宿からは中心部を突っ切っていかなければなりません。直線距離にしてみるとそんなに距離はないけど、中心部を横切るのはちょっと厄介。朝とはいえ繁華街の大通りを通ると、またバスに幅寄せされるといった恐怖を味わうかもしれないので、ちょっと繁華街を外したルートで向かう事にしました。どこの国でも都会で中心部を横切るというのは、バスや電車の乗換えが面倒なものです。そういった事を考えると、自転車は都会では非常に便利な乗り物です。乗り物の時間や路線を気にしないでいいし、お金もかからない。こういう短距離のときはやっぱり自転車は便利なものだと実感しました。

ロープウェイとセントーサ島

朝なので道もすいていてスイスイと島の入り口まで行くことができました。ここからは長い橋がかかっていて、その向こうにセントーサ島がありました。しかし橋の途中に料金所があったりします。これって自転車で通っていいのだろうか・・・。う~ん、分からない。ちょっと様子を見るものの、誰も自転車や徒歩で渡っていませんでした。料金所まで行って引き返すのも嫌だしな・・・。これ以上時間をロスしたくないしな・・・。そもそも歩いて渡れるならロープウェイがある必要がないような気もするしな・・・。う~ん。しばらくうだうだと考えていましたが、これでは埒があかない。小心者なので、これは仕方ないと、頭上を行き来するロープウェイに乗る事にしました。

シンガポール市街
セントーサ島

で、自転車を停めて、ロープウェイ乗り場へ行きました。それにしても見上げるように高い位置をゴンドラが運行しています。乗り場も煙突のように聳えるタワーだし・・・そもそもこのロープウェイ、セントーサ島とつながっているのですが、こちら側の始発は背後にある山の上でした。ですから現在地はちょうど中間地点といったところ。結構高いチケットを買うと、エレベーターに乗り、一気に高い位置にある乗り場へ到着。なかなか眺めがいい。暇そうにしていた係りの人にチケットを渡すと、山側へ向かうゴンドラに乗せられました。どうやら乗り降りは一方通行となっているとか。それにしてもこのロープウェイはガラガラだけど大丈夫なのだろうか・・・。私一人のために動かしているような感じで気分はいいのだけど・・・、やっぱり心配になってしまいます。

ゴンドラはどんどんとセントーサ島から離れていきましたが、山の方が標高が高いので、どんどんとセントーサ島が鳥瞰図のようになっていきました。これはいい。高い料金を払った分の価値があるようなパノラマでした。山側の駅に着くと、ここで一組の家族が乗ってきて、一人で独占していたゴンドラがちょっと賑やかになりました。今度は段々とセントーサ島へ向かっていくというか、どんどんと島へ向かって下っていくので、飛行機で降り立っているといった感じでした。もちろんひどく遅い乗り物なので、スローモーションでといった感じ。何にしても本当に眺めがいい。シンガポールの繁華街のビル群もよく見えるし、すぐ下は港になっているのか。って、よく見ると、ひどい藻。シンガポールは町はきれいでも海の方はそうでもないようだな。ちょっとした発見でした。

巨大なマーライオンの像
南国リゾートチックなホテル

セントーサ島の象徴のようなでかいマーライオンの像が段々と大きくなっていき、セントーサ島へ到着しました。降りるとホテルの位置を確認して歩きました。先ほどよく見えたマーライオンの横を通ったのですが、こっちのマーライオンはオリジナルの物と違ってなんともでかい。比べてしまうとこっちの方は化け物のような大きさです。おまけに夜になるとレーザー光線を発射するとか。まるで怪獣映画にでてくる怪物だななどと感心しながら歩いていると、ホテルに到着しました。そして中に入ると、ホテルの庭に設置されているテーブルで友人とその友人がくつろいでいました。

「よっ、久しぶり。」と声をかけると、第一声が「やつれていないね。」 「・・・」、当たり前じゃ!!そう簡単にへばってたまるかい。まあホームページに今回の旅のあらすじを載せているし、時々絵葉書を書いているので、ベトナムで1ヶ月もホームステイをしてしまったり、腹痛が酷くて病院へ行ったりしたことなどを考慮しての発言だったのと思うのですが、やつれていなく見えるのは旅人として名誉なことなのかな。それにしても・・・ちょっとホームページに大袈裟に書きすぎたのかも。でも些細なことでも海外で一人だと深刻に思えてしまうことも多いのも事実。これからは程々にしておいたほうがいいような気がしてきました。そして頼んでおいたガイドブックなどの補給物資を受け取り、気兼ねなくしゃべりました。しかし、久しぶりの友人同士の会話なのですが、どうもすこしテンポが悪い。なんだろ話題に付いていけていないというか、話題に困ってしまうというか、変だな。

10時になるとツアーの行程が始まってしまうので、ちょっと話しただけでお別れ。溜まっているフィルムなどを持って帰ってもらえる事になったので、夜再びホテルを訪問する約束をしました。で、聞くと、今日の夜のホテルは町の中心付近にあるとか。それならわざわざここに来る必要がなかったような・・・。高い入場料の事を思うとそう考えてしまうのですが、でもまあ友人が泊まっていなければこの島になど来なかったと思われるので、それはそれでよしとするか。ホテルの名前を聞き、夜にまた会う約束をして別れました。

島内のモノレール

友人と別れた後は、することがなくなり、まあせっかく来たことだしと、セントーサ島を歩いてみました。なんか島全体がビルだらけの中心部と一転して南国リゾート庭園といった感じにまとめられていました。更には園内にはモノレールが走っていて移動も便利だときたら、もう言うことはなしといった感じでしょうか。幾つか工事をしている場所もあったので、今後はもっと半人工的な南国テーマパークみたいな雰囲気になっていくに違いありません。日本などからの観光客を呼び込むのにはやっぱりこういう施設はいいよな。南国リゾートあり、買い物天国ありといったシンガポール旅行のパンフレットがすぐに頭の中で想像できてしまいました。とはいうものの、冷静に考えてみると南国雰囲気満点なんだけど特に何があるといったわけでもなく、でかい公園といった感じもします。いや、あるにはあるのだけど、水族館は入場料が高いし、巨大なマーライオンは展望台になっているけど、さっきそれよりも高いロープウェイ遊覧を楽しんだので、お金を払ってまでといったところ。やはり日本から来た観光客などが雰囲気を楽しむ場所なのかな。それとも工事している場所が多いから、もっと色んな施設ができて地元の人も楽しめるような場所になるのかな。

カラフルなマンション?

ブラブラと散歩した後は、来たときと同様にロープウェイに乗ってセントーサ島を後にしました。そして自転車に乗って町の中心部へ戻りつつ、町の西側へ来たのは今回が初めてだったので、ゆっくりと辺りを眺めながら走りました。走っていると、面白いビルを発見。なんかとってもカラフルだ。これは日本にはないセンスかも。シンガポール駅にも通りがかったので寄ってみました。マレー鉄道に乗れていたらここに到着できたんだろうな。そういう思いでやってきたのですが、根本的にここは鉄道の本数が少ないようで、駅構内はかなり閑散としていて、何も見所がありませんでした。その後町の中心部を通ると、再びオーチャードストリートに寄ってみました。何気にここのところカメラのレンズが欲しくてたまらなくなっていました。いいレンズで写真を撮れば腕ももっと上がるはず。もっと写真にもこだわれるはず。そう思うと、ぜひともいいものが欲しいところです。幾つかカメラ屋を回って良さそうな物の目星をつけておきました。さすがに衝動買いはまずいので、自転車の時と同様に明日までゆっくり考える事にしました。

ホーカーズ

宿に戻る前にお腹がすいたので、ホーカーズに寄って昼食をとりました。このホーカーズというのは日本でいうなら屋台村とでも言うのでしょうか。ビルの中に屋台が沢山並んでいて、その中から適当に注文してその辺においてあるテーブルで食べれるようになっています。って、早い話がデパートやショッピングセンターにある簡易食堂のようなものです。どうやらシンガポールでは元々の文化であった路上屋台が法律で禁止されてしまい、その救済措置といった感じでこういったホーカーズと呼ばれる屋台ビルができたようです。観光客としては注文がしやすいし、安いし、種類があるしとなかなか重宝します。今日は朝からかなり動いたし・・・、うん、チャーハンにしよう。大盛りのチャーハンを注文する事にしました。宿に戻る前にお腹がすいたので、ホーカーズに寄って昼食をとりました。このホーカーズというのは日本でいうなら屋台村とでも言うのでしょうか。ビルの中に屋台が沢山並んでいて、その中から適当に注文してその辺においてあるテーブルで食べれるようになっています。って、早い話がデパートやショッピングセンターにある簡易食堂のようなものです。どうやらシンガポールでは元々の文化であった路上屋台が法律で禁止されてしまい、その救済措置といった感じでこういったホーカーズと呼ばれる屋台ビルができたようです。観光客としては注文がしやすいし、安いし、種類があるしとなかなか重宝します。今日は朝からかなり動いたし・・・、うん、チャーハンにしよう。大盛りのチャーハンを注文する事にしました。

食後はすぐに宿に戻りました。そして、すぐに冷房を入れてクールダウン。う~ん、涼しい。部屋が狭いのですぐに寒いぐらいに涼しくなってしまいます。さて、満腹になったし、朝早くから起きているので、眠い。夕方まで一眠りするか。友人から受け取ったガイドブックを眺めつつ、睡眠モードに入りました。それにしても・・・懐かしかったな。でも会話がかみ合わなかったのが気になるところ。もしかして浦島太郎になっているのでは。長い旅や海外赴任、留学などをすると日本に暮らす人と感覚がずれるというのはよく聞くけど、私もそうなってしまったのかな。日本を出てから4ヶ月。少しずつ浦島太郎になりつつある自分に気が付き、少々考え込んでしまいました。

~~~ §8、脱力感 ~~~

贅沢な事にシンガポールに来てからずっと冷房の効いている部屋で暮らしています。といっても、部屋代は1400円ぐらいで、むちゃくちゃ狭い部屋でした。そう、プノンペンやバンコクの安宿と同じレベルです。今までと同じように考えるなら精神的苦痛を伴う監獄部屋と言えるのですが、冷房がついているとそう感じなくなるのか、それとも私が狭い部屋に慣れてしまったのか、ここでは苦痛に感じることはありませんでした。ただ、もしこの部屋で冷房がなくて、暑苦しいと感じていたなら、恐らくこんな監獄部屋!と思っていただろうと容易に想像できるので、やはり冷房の効果が絶大なのでしょう。そう考えると監獄部屋ではなく、冷蔵庫部屋といった表現が適切なのかなと狭い部屋の中でボーとしながら思ったりしました。

おかげで今日は起きると・・・、昼過ぎでした。昨日は昼寝をしてしまったし、夜は友人に会いに行って帰りが遅くなり、宿に戻ってからもずっとガイドブックを読んであれこれと計画を立てていたので、寝たのが明け方近くになってしまったのも原因となるのでしょうが、起きてからちょっとびっくりしました。今までの感覚だと、朝になると日が昇って暑くなって目が覚めるか、或いは部屋が明るくなって目が覚めるか、はたまた外がクラクションなどで騒がしくなって目が覚めるかなので、目覚ましを掛けることなく毎朝7時前後にきちんと起きていたのですが、ここではそのどれにもあてはまらず、気が付くと昼を過ぎていたというわけです。なんとも気合が抜けまくりといったところ。シンガポール自体も治安がいいので、なんかシンガポールに来てから日々に張り詰めるような緊張感がないのも事実です。

昨日から友人に届けてもらったインドネシアのガイドブックを読んでいるのですが、無性にインドネシアに行きたくなってしまいました。しかし自転車が・・・。どうもインドネシアは島国で起伏が非常に激しいようです。毎日のように山道を・・・などと考えるとぞっとします。そんなところを初心者がまともに走れるはずがない。とりあえずインドネシアへのフェリーが出ているマラッカまで行き、そこで考えようかな。船に乗せれるのなら行ってもいいし、或いは一度自転車でバンコクまで行き、マレー半島自転車での縦断旅を成し遂げてから一気にインドネシアへ飛行機で飛んでもいいかもしれない。インドネシアに行きたくなった理由は、ガイドブックに載っているトラブル例の多さ、そして島ごとに違う文化。なんかひっちゃかめっちゃかで面白そうだし、困難があればあるほど旅のしがいがあるというものです。なんか段々と一般的な旅から外れかかっているような・・・日本に帰れるだろうか・・・ちょっと心配。

さて今日は何をしよう。もう昼過ぎか~。もう友人達はシンガポールを出発したんだろうな。確か午前中の便だとか言っていたよな。こんなことなら空港まで見送りに行く約束でもしておけばよかったな。そうすればちゃんと朝早く起きて有意義に外出していたはず。でも空港って・・・、この前と同じコースか。やっぱり自転車ではちょっと億劫かも。いやいや電車か何かで空港まで見送りに行ってもよかったな。荷物を持ってきてもらったんだし・・・ちょっと失敗。まあ今日は足休めの休日と思えばいいか。まずは昼食でも食べに出かけるか。いや、その前に一服してからにしよう。喫煙場所となっている給湯室に行きました。

ここに宿泊している人は出稼ぎ労働者やら留学生が多く、たまに旅行者が来る感じでした。なんというか、香港の重慶マンションの宿と雰囲気がよく似ていて、居心地が良かったりします。スリランカからの留学生が何人かいて、よく給湯室でタバコを吸っていると顔をあわせます。そのうちの一人と仲良くなってあれこれと話をしてみると、彼はコンピューター関係、とりわけシステムエンジニアになりたくてシンガポールで勉強しているんだとか。色々話をするものの、正直彼の話は難しい・・・。日本は凄い国だ。コンピューターに関してはナンバーワンだ。日本人は優秀だ。などと認めてくれているのはうれしいのですが、どうも日本人のほとんどはコンピューターに精通していて、彼の知識程度は誰でも理解できると思っているところに誤解があるようで、平気で専門用語を使ってくるから困ってしまいます。全く持って甚だしい誤解です。確かに日本のコンピューターというか、電化製品は優秀だけど・・・、中身まで理解できている日本人はほとんどいないんだよ。そういった感じで伝えるのですが、「だったらなぜ日本の製品は優秀なものばかりなんだ。」と言われても困ってしまいます。どうも私の説明の仕方が悪いというか、英語が下手すぎていまいち納得してもらえませんでした。

露店のドリアン

結局、今日は自転車に乗ることなく、近所の市場などをブラブラと散歩したりして一日が終わってしまいました。忙しくしていてもあっという間に一日が終わってしまうけど、だらだらと過ごしてもあっという間に一日は終わってしまうものだな。海外では・・・。いや、日本でもそうか。とりわけ今日は市場で山積みになって売られていた果物の王様ドリアンが気になりました。トゲトゲだらけで、凄まじい匂いを発する果物ですが、果物の王様といわれるだけあって美味しいはず。シンガポールでも人気のようで飛ぶように売れていました。昔タイで食べたときはいまいち美味しさが分からなかったのですが、今なら食べられる自信がありました。これも今まで地元の食べ物を食べ続けてきていることや、ベトナムでホームステイをして鍛えられた成果なのかな。でも・・・、やっぱり一個は無謀だよな。今回は眺めるだけにしておきました。

夜、眠くないなと部屋で悶々としながら考えました。このままではいかんぞ。なんか一気に気合が抜けてしまった感じだ。これも友人と会ったせいかな。表面的には感じていなかったけど、内面的に・・・気が付かないところでプチホームシック状態なのかもしれない。とは言っても日本に帰りたいといった気持ちは全くないので、ホームシックというより友人に会って気がだれてしまったとか、気が緩んでしまったといったところだろうか。ここは気を引き締める為にも明日思い切ってシンガポールを発ってはどうだ。・・・って、さすがに明日はちょっと無理か。絵はがきを出したりと、まだやることがあるし。なら明後日にしよう。雨が降ろうが矢が降ろうが、前に進むことが大事だ。つい3日前にはやる気満々だった自転車旅行も、今では気の緩みからか、億劫な挑戦となっていました。足の調整も・・・一回遠出しただけなので、万全とはいえないし、どこまで出来るか怪しいものだ。でもこれは走りながらでも調整できる。自分の足に合わせて少しずつ距離を伸ばせばいいのだから。今はただリズムを取り戻すことの方が大事だ。このままではずるずるとよくない方向へ進んでいくのが怖い。だから無理矢理でも前に進もう。出発してしまえば何とかなってしまうに違いない。きっとそうだ。となると、明日は色々とやっておかないとまずいぞ。急に慌ただしくなり、なんだかやる気も戻ってきたような・・・気がする。

~~~ §9、気合いの再投入 ~~~

朝のビル街

明日は何が何でも出発日にするぞと決めたので、今日は慌ただしい一日でした。まずは各国恒例の絵葉書を出しに郵便局へ。シンガポールから日本へのエアーメールは高いだろうし、滞在日数も少ないので、今回はカンボジア同様に必要最小限の少ない枚数にしました。で、実際に郵便局に行って切手代を払おうとすると、予想以上に安くてビックリ。絵葉書そのものを購入するのに1枚40~50円ぐらいしたので、郵送代はそれ以上の70~80円はするんじゃないかなと思っていたのですが、切手代は30円ほどでした。切手代のほうが安いというのはどういうこと。国土が狭い分、配達が楽というか。経費がかからないのかな。それとも郵便は税金の補助で行っているとか・・・。よく分かりませんが、とっても奇妙な現象でした。それならもっと出せばよかったかなと思ったりもしましたが、書くのも色々と大変なので、これはこれでいい事にしよう。

そして次に繁華街に行き、カメラ屋を回りました。どうしてもレンズが欲しくてたまらなくなってしまったからです。さすがに安い標準レンズでは色々と限界に感じてきました。それに新しいレンズを手に入れれば旅も楽しくなるはず。このことで自転車旅行の起爆剤となってくれればある意味安い買いものです。幾つか店を回り、最終的にオーチャードストリート近くのショッピングセンター内になるカメラ屋でレンズを購入しました。手持ちのお金を減らしたくないので、この出費は必要外経費という事でカードで払いました。ポケットマネーという事にしておこう。それにしても・・・・、シンガポールというのはめちゃくちゃボッてきます。カメラ屋を回って値段を聞いていると言ってくる値段のひどいこと。シンガポールは買い物天国と言いながらも、実は日本人はボラれまくっているのでは。って、世界中でボラれまくっている現状を考えれば至極当然の事なのかな・・・と思ってしまいました。

混雑するオーチャードストリート
通りの大道芸
近所の青空骨董市

早速買ったレンズを試してみたくなり、とりあえずここから近いし、そのままオーチャードストリートに行ってみました。通りを訪れてみると、今まで訪れた時と比べ物にならないほど人が歩いていました。まるで東京の渋谷とか、原宿みたい・・・。そうか。今日は土曜日、週末だ。さすがは世界的に有名なオーチャードストリートだけあって、週末の賑わいはなかなかのものでした。ところどころで人だかりができていて、何事かとのぞいてみると、大道芸などのパフォーマンスも行われていました。ショッピングによし、散歩もよしと、なんか楽しそうな通りです。買い物に関してはもう十分なので、適当に写真を撮って新しいレンズの使い勝手や性能を試しました。

この後は一旦古いレンズなどを宿に置きに戻り、久しぶりにインターネットをやりに行きました。先日会った友人からは無事に日本に到着した旨のメールが届いていました。それはよかった。私の託した撮影済みのフィルムが無事に日本に届いたか・・・。って、こんなことを言っていたら日本に帰ったら友達がいなくなってそう。ただでさえみんなの日常から消えている存在なのだから・・・。お礼のメールを丁寧に書いておきました。そして何人かの友人などに明日シンガポールを出発して、自転車でマレー半島縦断を目指しますといったメールも送っておきました。きっとみんなびっくりするに違いない。それにこれで私も後に引けなくなったぞ。明日からは頑張らなければ・・・。と、ちょっと気合が入ってきました。

その後は近所の市場などを回ってみました。今までのレンズと違ってスナップはどうだろう。なんかレンズが変わると気分も変わってくるというか、見える風景が今までと変わってくる感じがしてくるもので、ちょっと新鮮な気分で写真を撮ることができました。おまけに今日はいつも空き地だった広場で骨董市みたいなものが開かれていたりと、週末ならではの光景も見ることができました。そして夕方前にはちょっと心配になって、明日のルート確認を兼ねて少し北のほうへ行ってみました。重い荷物を積んだ状態であっちかな、こっちかなと迷うのは大変です。市内を抜けて、国境に続く道にたどり着くまでを確認しておきました。

ライトアップされたマーライオン
裁判所

中心の方へ戻っていると夕暮れとなりました。そうだ。これはちょうどいい。世界三大がっかりのマーライオンもライトアップされている夜ならがっかりしないかもしれないぞ。ちょうどレンズも買ったことだしと思い立って、再びマーライオンを目指してみました。夜のシンガポールもまた乙なものです。とはいえ、光のまばゆさは香港の方が上だな。そもそも香港の場合はライトアップされている看板の量が多いもんな。そう考えるとシンガポールは香港によく似ていると思っていたけど、頭上に看板があまりないのが決定的に違うようです。今更ながら発見しました。そう考えるとどちらかというと東京に似ているのかな。そんなことを思いながら市の中心部を抜け、マーライオンの近くに行くと、この付近はきれいにライトアップされていました。イギリス調の裁判所らしき建物も闇夜に浮かび上がっていました。う~ん、これはいい。あっ、三脚が・・・。夜の写真まで撮るつもりで外出していなかったので、三脚を宿に置きっぱなしでした。まあいいか。適当に固定して写真を撮りました。そして肝心のマーライオンに行ってみると、やはりマーライオンもライトアップされていました。でも・・・、いまいちかな。昼間と一緒でビルの光の中に埋まっている状態です。う~ん、なんとかならんのかな。シンガポールの象徴なのに・・・。とりあえずズームで部分的に切り取った写真にしておきました。まあこれで思い残すことはなくなった、・・・かな。明日からはいよいよマレー半島の縦断に挑戦だ。ワクワクするような、不安のような、期待と不安の入り混じった夜になりました。

~~~ §10、マレー半島縦断の開始 ~~~

いよいよ新たな挑戦、自転車でのマレー半島縦断の開始です。一体どのような旅になるのだろうか。今まで自転車の長旅をした事がないので、未知への挑戦でした。初日なので万全の準備をして朝早くから出発といきたかったのですが、ちょっと航空会社のオフィスに用があるのを思い出し、まずは中心部になるオフィスに向かいました。今回私の使った航空券は以前に世界一周をしたとき(ぐうたら香港滞在記参照)にマイレージが溜まったもので、一応正規の航空券扱いです。ですから1年間有効という優れものの航空券で、帰国に関してはとりあえず半年後の設定にしていました。半年を越えれば旅にも慣れて1年以上続けているだろうと思ったからです。実際にその通りでこの調子なら1年以上の長旅になりそうな感じです。しかし途中でどんなトラブルに見舞われるか分かりません。この航空券は片道での使用と割り切ってはいたものの、念のため1年後に帰国予定便を延ばしておこうと思いつきました。ちょうどシンガポールにオフィスがあるからこの機会にやっておこうかなと思ったのです。でも実際はトラブルが起きたりしたらその国から直接帰国するだろうから、香港からの帰国便は必要ないような気もしますが、本当に念のためです。で、航空会社のオフィスに行ってみると・・・、見事に閉まっていました。今日は休みか・・・。なんか非常に無駄なことをした感じ。そもそもこんな事を急に思いつかなければよかったんだ。むなしい気分で宿に戻りました。

宿に戻ると、いよいよ出発の準備に取り掛かりました。本来はサドルバッグを付けて走りたかったのですが、結構な値段がするので、とりあえずバックバックを荷台に積んで移動する事にしました。バイクと同じだろといった感じで、安易に考えていたのですが、これが思いの他大変でした。まず鞄が結構な重さと大きさなのでバランスよく固定するのが大変で、走る前から何度も自転車を倒しそうになってしまいました。これから毎朝こんな大変な作業が待っているかと思うと、ちょっと憂鬱です。何とか積み終わると、見送ってくれた宿のおじさんに、「じゃ、さよなら」と挨拶して出発しました。が、こぎ出すものの・・・、うっ、いきなり重さに耐えかねて、転びそうになってしまいました。なんてバランスの悪いこと。さすがに見送ってくれる人の前でいきなりこけては立場がない。無理して体勢を整えました。思えば高校時代にお中元の配達を自転車でしたことがありました。その時は一度に多くの荷物を荷台に積んで走り、大変な思いをして配達して回りました。そうだよな。荷台に重いものを載せるとこうなるんだったよな。すっかり忘れていた。そして長距離の自転車乗りが荷物の重心を下げてバランスを良くする為にサドルバッグをつけているんだと初めて理解できました。

走り出してみると、・・・やはり安定しない。重心が高すぎるので、特にこぎ出しが酔払い運転のようにふらふらと蛇行してしまいます。信号に引っかかるのが辛い。これは大変かも。こんな状態で2千キロも走りきれるのだろうか。かなり不安になってきました。それでもしばらく走っていくと、幾分体が慣れ、まともにこげるようになってきました。でもこんな状態では山道など走れるはずがない。とりあえず・・・マレーシアの首都クアラルンプールでサドルバッグを探してみよう。少々高くても・・・、この状態で我慢するよりはいい。

昨日下調べしておいたおかげで道の方は迷うことなく、順調でした。下調べしておいてよかった。迷いながら走っていたら、停まる度に転びそうになっていたに違いありません。郊外に出るとひたすら平坦な道だったので、スイスイと進んで行きました。時々シンガポールのサイクリストとすれ違うと、よっ、といった感じで手を振ってくれました。これで私もサイクリストの仲間入りか。ちょっとうれしいかも。でもやっぱり荷台にバックパックをくくりつけているのはかっこ悪いよな。見る人が見れば明らかに素人丸出しです。少し余裕ができると格好のことまで気にできるようになってきました。

道が平坦だったこともあって、順調に進んでいき、なんとか国境に到着しました。さてどうすればいいんだ。自転車専用のレーンがあるはずもなく、困惑。こういう場合は車のレーンと一緒なのかも。車道の方から入って行こうとすると、車の人に駄目だよと教えられました。じゃ、どこへ行けばいいのだ。聞くと、歩行者と同じ所を通るんだとのこと。しかし歩行者用の方へ行ってみると、建物の入り口にエレベーターがあり、上の階へ行かなければならないようでした。で、自転車は・・・。このまま入っていいの?なんか土足で家に上がるような感じだな。う~ん、よくわからん。困り果てて、一度自転車を入り口近くにロックして建物の中に入ってみました。そしてイミグレーションまで行き、係りの人に自転車はどうすればいいのかと聞くと、ここへ持ってきなさいとのこと。改めて自転車を押してエレベーターに乗り、長い廊下を進んでいきました。なんか非常に目立っている・・・。普通自転車でこんなところを通らないよな。

そして先ほどの係りの人のところへ持っていくと、暇そうにしていた審査官の人がわんさか集まってきました。な、なんだ。よくなかったのか。もしかして不信人物扱い・・・。自転車をまじまじと見ているし。ちょっと不安に思いつつ成り行きを見守っていると、どうやら自転車で国境を越える旅行者は多くないようで、単に見物に来ただけのようでした。昔日本に帰国したときにモロッコの民族衣装を着て帰ったことがあったのですが、そのときも税関で係りの人が集まってきました。で、変わった服だねとかあれこれ聞かれ、このポッケどうなっているのとポケットに手を突っ込まれたことがありました。なんか日本的で陰湿な感じがしていたのですが、ここではそういったことはなく、出国審査が済むと、みんなで「頑張れよ」と笑顔で手を振って見送ってくれました。これには感動。終わりよければ全て良しというか、シンガポールでの思い出が全て美化されていく感じでした。よ~し、次のマレーシアでも頑張るぞ。

コーズウェイ
自転車の勇姿
マレーシア側のイミグレ

マレーシアとシンガポールはジョホール水道で隔てられています。行き来するにはコーズウェイと呼ばれる一本の長い道が掛けられています。その道を進んでいきました。なんか自転車で国境を越えるっていいな。旅をしていますってな感じがする。少なくとも自転車で国境を越えたなんて話すと、日本にいる友人はびっくりするだろうな。そうだ。証拠写真を撮っておこう。国境の途中で証拠写真を撮っておきました。これで万全。日本に帰ってから友達に自慢しよっと。そしてマレーシア側の国境に向かいました。

マレーシア側の国境は・・・、シンガポールの近代的な建物と比べてしまうと、かなり貧弱に見えてしまうのはしょうがないことなのか。なんか高速道路の料金所みたいな感じだし・・・。ここでは迷うことなく歩行者用のゲートに行きました。入国審査を受けると、「アー・ユー・ツーリスト・オア・テロリスト?」などと訳の分からないことを言ってきました。顔がにやけているところをみると、こう言うのが流行っているような感じです。真面目な人間に向かってそんな言われても、どう返答していいのか困ってしまうではないか。冗談のつもりでも勘弁して欲しい。

入国審査を受けると、次は税関か・・・。あれっ、まあいいか。よく分からないまま通過してしまいました。そもそもこの国境は入国審査をしなくてもすり抜けることができるではないか。なんか凄くいい加減な・・・。これもシンガポールの入国審査の厳しいことを当てにしているからではないのか・・・。呆れつつ外に停めていた自転車にまたがり、ジョホールバルの町に出ました。何にしてもこれで晴れてマレーシアに入国。最初の関門を突破だな。荷台にくくりつけた荷物のバランスの悪さには手こずったけど、まあここまでは順調そのもの。意外にやればできるものだな。といっても、距離にしてまだ2000km分の40kmぐらい・・・かな。ん、たったそれだけ・・・。かなり進んだ気分だったけど、実は先が長いというか、これは気が遠くなりそうな挑戦だ。

~~~ §11、あっけない幕切れ ~~~

ジョホールバルの町

さてどうしよう。まだ昼過ぎか。ジョホールバルに何があるわけでもないけど、今後のことを思うと今日はここに泊まるか。まだ足の調整ができていないので初日からあまり遠くへ行くのは次の日への負担が大きいだろうし、出発したのもちょっと遅めだったし、次の大きな町までどのくらいかかるか分からないし、とりあえず国境を一つ越えて満足だし、ここは宿が多いし、とまあ色々と言い訳を考えてここで宿を取る事にしました。しかしやたらと宿のある町で、宿には困らないけど、選ぶのには困りました。そのうちの一軒でチャックイン。なんか胡散臭そうなフロントの人でしたが、値段がかなり安いのでしょうがないところか。荷物管理さえしっかりとしていれば大丈夫だろう。という事で、宿を決め、まずは両替などをしに、市内へ出ました。

荷物を積んでいないと自転車をこぐのがスムーズなこと。まるで中を浮いて走っているような感じでした。やっぱりサドルバッグが欲しいな。それとともに荷物を少し軽くした方がいいかも。銀行で両替を行い、簡単に街を見たらすぐに宿に戻りました。なんか眠い。朝早く起きたし、昨夜は遠足の前の日の夜のように色々と考え事をしていて眠れませんでした。一眠りするか。宿の人に宿泊費を払い、部屋で夕方まで寝る事にしました。

気持ちよく寝ていると、キュイーン、バリバリと外の方で工事をするような音が聞こえてきました。ん、何だ。工事か・・・・。胸騒ぎがしたのか、ふと目が覚めました。まあ気にすることでもないか・・・、いや、もしかして・・・・、何か妙に嫌な予感がするぞ。第六感が働き、慌てて自転車のところへ行ってみると、自転車はなく、無残に切られたチェーンロックが落ちているだけでした。おいおい・・・・・(呆然)。って、こんな昼間にやるか、普通。自転車は昼間だし、一眠りしたらまた自転車を使う予定だったので、宿の外のガードレールにチェーンロックでくくりつけていたのですが、そんなものお構いなしでした。なんて国だ。マレーシアは。しかし・・・、どうしよう。いやいや落ち着くんだ。まずやるべき事をやろう。自力で捜すのは無理だし、今できることは警察に行って盗難届けを書いてもらうこと。そうすれば保険で損害はなんとかなるはず。

それにしてもどう考えてもこの宿の人が怪しく思えてしまいます。自転車に乗っているのを知っているし、部屋にいたもの知っていたし、何より行動が怪しい。ここは揺さぶりを掛けてみるか。部屋に戻るときに、「自転車が盗まれた。警察に行きたいのだが、警察はどこにある?」と尋ねると、「いや、警察はまずい。知らない。」の繰り返しでした。この慌てようはいよいよ怪しい。といっても証拠はないし、もしかして不法な営業しているだけで過剰に警察という言葉に反応しているのかもしれない。まあいいか。警察署ならガイドブックの地図に載っていたので、歩いていくことにしました。もちろん部屋の荷物は念入りに鍵を掛けておき、鞄もきちんとロックしておきました。

警察署に行くと、受付で「英語で大丈夫ですか?」と聞き、英語の話せる人に応対してもらいました。「自転車でマレー半島を縦断しようとしていて、宿の前に自転車を置いていたら盗まれてしまった。云々。」と状況を説明しました。「どこの宿に泊まっているのですか?」と聞かれ、ガイドブックにも書いてある宿の名前を言うと、「・・・?」といった感じ。知らないらしい。ジョホールバルにはいかがわしい宿が多いからそういうところには泊まらない方がいいとの事。他の宿に移った方がいいとまで言われてしまいました。そうなんだよな。また戻って泊まるのも嫌だな。でもお金払ってしまったしな・・・。まあこれは後で考えよう。とりあえず盗難証明書を書いてもらいました。証明書を書き終わると、係の人は「言いにくいんだけど・・・、アドバイスをするなら・・・、旅を続けるのなら新しいのを買い直したほうがいいよ。」と申し訳なさそうに言ってきました。こればかりは日本で同じことがあっても、同じ事を言われそうです。「色々とありがとう」といい、警察署を後にしました。

ジョホールバルの町で
川沿いの屋台地帯

このまま宿に戻っても気が滅入るだけなので、ブラブラと散歩することにしました。といっても特に見所があるわけでもなく、気分も沈んでいるので退屈な事。ジョホール水道沿いにはシンガポールを見ることのできる展望台みたいなものがありましたが、今朝まで滞在していたので特に感慨深いものはありません。でもシンガポールのイミグレーションの建物を見つけると、さっき見送ってくれた係の人たちになんか申し訳ないような気分になってしまいます。全く人のものを盗むなんて・・・。盗まれる方の事も考えてほしい。まして壮大な挑戦を試みている最中だというのに・・・。

薄暗くなりつつあったので町の繁華街に戻ると、川沿いの空き地では多くの屋台が開店準備をしていました。おっ、これは夕食にいいかも。まだ中途半端な感じだったので、もう少し暗くなるまで時間を潰し、ちょっとはやめの夕食をとりました。やはり屋台がこれだけ並んでいると、気分がいい。どれにしようかな、どの屋台にしようかなと迷うのもまた楽しいものです。とはいえ、事実上今日がマレーシア初日。なんか得体のしれない料理が多かったりします。今日はこれ以上失敗したくないしな・・・。無難に好きなチャーハンあたりにしておくか。後は・・・、いいか。そんなにお腹もすいていないしな。今日はかなり動いたはずなのに食欲があまりないのは、やはり精神的にショックを受けているからに違いありません。

食後はすぐに宿に戻りました。今の宿へあまり泊まりたいとは思わないけど・・・、宿を替わるのも面倒だし、まあ部屋に篭城していればこれ以上のトラブルは起こるまい。それに・・・、正直なところ一度マレーシア人に不信感を持ってしまうと、どこの宿に行っても同じ気分になるに違いありません。人間不信とは恐ろしいもので、関わりがあるもの、共通項でまとめられるものに対してひどく不信感を抱いてしまいます。落ち着くまではマレーシア人不振が続くのかな・・・。旅をしていてこれほど悲しいことはありません。

宿に戻ってからは一人で部屋の中で今後のことを考えました。どうしよう。どう考えても明日の朝までに自転車が見つかって、再びバンコクを目指して自転車で出発だ!なんてことはありえない。となると、自転車旅を諦めるか、シンガポールに戻って買い直すの二択だな。もちろんここに滞在して自転車を探しまくるとか、出てくるのを待つというのは当然却下。ありえない。それに海外保険に入っているので、保険の規約を読んでみる限りでは自転車の購入費用は保険で降りてきそうな感じです。国境で自慢げに撮った証拠写真が、保険用の証拠写真になってしまうのが悲しいけど・・・。まあインドネシアに行きたくなっていたので、ちょうどいいといえばちょうどいいタイミングだったかも。それに中途半端に途中で断念するよりも初日で良かったのかも・・・。楽しかった自転車旅行という事で終わりにしよう。とりあえず次の目的地はマラッカ海峡に位置するマラッカ。ここには日本人宿があるらしいし、そこでまた情報収集して次の予定を考えよう。って、なんかベトナムのハノイで腹痛に苦しんでフエの日本人宿に駆け込んだときと似ているかも・・・。色々考えていくと、これはインドネシアへ行けという後押しに違いないと思えてきて、今後のインドネシアの旅に心がときめき始めました。

翌朝、警察官が「おはよう、これが君の自転車だね。」と、笑顔で自転車を持ってきてくれるはずもなく、今まで同様にバックパックを背負っている私がいました。そして当たり前のようにバスに乗り、マラッカへ向かいました。なんかバスに乗っている自分に違和感を感じつつも、やっぱりこれが一番似合っているのかな。盗まれてよかったとは決して思わないけど、これも旅なんだなとすっきりした気分になっていました。それにしても壮大な計画がたった一日で終わってしまうとは・・・。距離にして2000キロ中の30~40キロぐらいか。そう考えるとなんか笑ってしまうな・・・いや、笑ってごまかさないと虚しくなるだけ。でもこういうことが起きるのが旅であり、それを全てとはいわないまでも起こった事をきちんと受け入れ、その事に対処していくことも旅の一部なのです。そしてその一連の過程を自分で一生懸命努力して解決すると、不思議とそのことに対してあまりわだかまりがなくなってしまうものです。そう考えると、トラブルも旅のうちとは言いますが、トラブルに対しても柔軟に受け入れている人が芯から旅というものを楽しめている人なんだろうな。この盗難劇は私にとってそう実感できる出来事でした。

シンガポール、自転車迷走記  ー 完 ー

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