風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

ぐうたら香港滞在記

~ 第8章 マカオでの大勝負 ~

*** 第8章 マカオでの大勝負の目次 ***

~~~ §1、行きつけの食堂 ~~~

昨日はシンセンに日帰りで行く為に早く起きれたけど、今日は昨日の疲れもあって起きられませんでした。後輩に起こされ、ようやく起床。う~ん、眠い。そう言えば今日はマカオに行く予定だったけ。うっ、やばい。のんびりとしている場合ではない。このままでは過去形になってしまうぞ。急いで起きて、出発の準備に取り掛かりました。そして30分後に宿を出発。我々にしてはなかなか機敏な支度でしたが、もう既に時刻は11時でした。予定では9時には出発しているはずだったのに・・・まあ午前中に出発できたから、よしとするか。前向きに考える事にしました。

半分寝ぼけながら出発したので、宿を出てから重大なやり忘れに気が付きました。昨日の朝までは友人も一緒にマカオに行く予定だったので、宿のおばさんに「明日はみんなでマカオに行くから荷物を預かってください。」と頼んでいました。昨夜には友人が急に他にやってみたいことがあるから残ると言い出したので、おばさんはまだその事を知りません。出発の時に姿が見えず、そのまま出てきてしまったので、おぼさんが掃除をしに部屋に入ったら、あらっ、ビックリ。友人が寝ていたなんてことになりそうだ。どういう反応をするのだろうか。その光景を想像すると思わず笑ってしまいました。それから昨日シャワーを壊してしまい、そのままにしてきた事。洗濯物を干しっぱなしにしてきた事。考えればまだ出てきそうだったので、その事について考えるのをやめました。どうせ明日戻ってくるんだ。それに友人が何とかしてくれているだろう。

食堂のおじさんと
食堂のおじさんと

港に行く前になんかお腹がすいているしと、最近通い続けている中華料理屋に朝食兼昼食を食べに行く事にしました。それに明日は香港滞在の最終日。食べに来れるかどうか分からないので、お別れも言っておこうかなと思いました。そこまで食欲がない私はお粥を食べることに。お粥だけでも結構メニューがあるから選ぶのに困ります。最近肉ばかりだから魚入りのやつでも頼んでみるか。もちろん頼むのも大変なわけで、今日はいつも注文の時に手間取るので、ちょっと工夫して食べたいものを紙に書いて、店のおじさんに渡してみました。なんて頭がいいんだ。効率重視。そして、しばらく待つと後輩の頼んだラーメンがやってきました。が・・・、なんとおじさんは同じものを2個持ってきました。何でだ。とりあえず1個でいいよと断ったのですが、次に持ってきた私の魚入りのお粥も2個持ってきました。おいおい。どうなってるんだ。今度はさすがに断りにくかったので、引きつった笑顔で受け取り、後輩に無理やり食べさせました。なぜこういう事になってしまったのだろう。「粥1」といった具合に分かりやすく書いたつもりだったのに。苦しそうな顔で後輩が食べ終わると、店を出る前に店のおじさんと一緒に写真を撮りました。きっとおじさんは何事かと思ったに違いないけど、周りの客はもっと何事かとこっちを見ていました。

食堂を後にすると、地下鉄の駅に向かいました。マカオ行きのフェリー乗り場があるのは香港島の上環なので、海を越えなければなりません。フェリーに乗って行くならセントラル(中環)の桟橋から上環まではトラムなどに乗らなければなりません。手間がかかるし、時間がかかってしまいます。なるべく早く着きたかったので、今日はさっと行ける地下鉄に乗る事にしました。駅の券売機で上環までの切符を購入しようとすると、うっ、高い!8.5HK$もするではないかとビックリ。海の下をくぐって香港島に行く場合の料金は高いと聞いていたけど、船とトラムで行く場合の倍以上の値段とは。窓の外の風景も見えないのに・・・と思うと、確かに速いのはいいのだけど観光客にはいまいち魅力的ではありません。明日の復路はフェリーに乗ろうと思いました。駅にして二つなので、あっという間に中環(セントラル)に到着。ここで上環行きの列車に乗り換えると、乗り換えた電車にほとんど人が乗っていませんでした。しめしめ。これはチャンス。ここぞとばかりツルツル滑る椅子で子供みたいに遊んでいました。発進時にはどのくらい滑るだろうか。お、お~、わぁ、ドカッ(こけた音)。大の大人がやることじゃないけど、誰も見ていないからいいか。それに加速と減速における重力移動についていい勉強になったし。うむ。と言い訳をしながらも、実はなかなか面白く、楽しいひと時でした。

~~~ §2、マカオへの船旅 ~~~

フェリーチケット
フェリーチケット

地下鉄の終着駅「上環」で降り、案内板に従って出口を出ると、目の前が港のターミナルビルでした。なかなか近代的なビルで中に入ると、鉄道の駅のような感じでした。早速フェリー会社のオフィスに向かったのですが、オフィスの前には凄い行列が出来ていました。うっ、今日もまた行列か。昨日の悪夢がよみがえってきます。人込みを掻き分けるようにしてフェリー会社を何社か回ってみましたが、どこもエコノミークラスのチケットは夕方の便しかありませんでした。さすがに夕方まで待つのは時間がもったいない。やむなく一番早く乗れる1時45分発の遠東噴射船のファーストクラスのチケットを購入しました。ファーストクラスといっても極端にエコノミーと料金は変わらなく、まあ我慢しようかという程度でした。正月だからこんなに混んでいるんだろうか。週末にも結構混むような話を聞いた事があるし。こうなるんだったら前もってチケットを買っておけばよかった。いや、もっと早く起きればよかったと、今更後悔しても後の祭りです。

停泊中のホーバークラフト
停泊中のホーバークラフト

出発まで後1時間以上もありました。チェックインのゲートは30分前にならないと開かないので、それまでぶらぶらと港を歩いて時間をつぶす事にしました。こんなに待つのなら、朝食兼昼食はここで食べればよかった。またもや後悔。退屈だ。当然の事ながら港のベンチは満席。床にまで新聞紙を引いて座っている状態なので、落ち着く場所がありません。しばらくは動き回っていたものの、そのうち地元の人に混じり通路にしゃがみこんでいました。しばらくするとようやく我々の乗る船の受付が始まったとアナウンスされました。暇なのですぐにゲートに向かうと、まずは出国審査。これは簡単に終わりました。そして乗船手続きを済ませると、後は乗船だけ。出発が待ちきれないとばかりにさっさと手続きを済ませたので、我々は列の前のほうにいました。船の席は乗る寸前にその席のシールをチケットに張ってくれるという、なかなか効率がいいような、悪いような。どっちともとれるシステムでしたが、前に並んでいたおかげで窓側のいい席を確保できました。

ファーストクラスの船室
ファーストクラスの船室

そして乗船。ファーストクラスは眺めのいい2階席でした。どうやら1階席がエコノミーで、2階席がファーストクラスといっただけの事で、特に椅子がどうのこうのといったことはなさそうな感じです。だから値段がそこまで変らないのかと納得。それよりもこの船は本当によく揺れる。まっすぐ歩けない程揺れるので、手すりを持ちながら階段を登り、なんとか自分の番号の席に着きました。しかしまだまだ出発までちょっと時間がありました。やれ、のんびり待つか。と思ったのは座って最初の30秒だけでした。うっ、なんかお腹の辺りがちょっと気持ち悪くなってきたぞ。乗客が乗船する度に船が上下に揺れるものだから堪りません。そもそもホーバークラフトだから普通の船よりも浮きやすく出来ていて、乗客の乗り降りだけでも恐ろしいほど揺れます。まだしばらく続くのか・・・。徐々に気持ち悪さが胃に登ってきて、そのうち頭の方にまで達し、顔面から血の気が引いていくのが感じられました。座ると余計に揺れに敏感になるもんだよな。勇んで早く乗らなければ良かった・・・。気持ち悪い・・・うぷっ。やばいかも・・・。5分も経たないうちに二人とも顔が青くなっていました。

何とか出発前の揺れに耐えると、船は出港しました。走り出すと揺れはほとんどなくなり、大分体が楽になってきました。しかし、後輩の方はまだ顔が青い。屯門の時といい、船には相当弱いようだ。しばらくするとお菓子が振舞われました。ガイドブックによるとこのサービスはファーストクラスだけだとか。といっても、配られた箱を開けてみると、中にはマフィンとジュースが入っているような簡単なものでした。ないよりはましだけど、なくしてその分値段を・・・とすぐに考えてしまうのは貧乏性の悪いところ。ここはファーストクラス特権だと優越感に浸って食べるべきか。なんかそれも貧乏性な考えかも。要は普通に食べればいいんだよな。よし、いただきます。食べて胃に何か詰め込めば、さっきまでの後遺症のような胸のわだかまりも解消されるに違いない。隣を見ると後輩は顔が青いまま。ん!いらないの。それはそれは。後輩は気持ち悪いからいらないと言うので、二個のマフィンを平らげ満足しました。その内揺れと満腹感で気持ち良くなってきて夢の世界へ旅立っていました。

気持ちよく眠っていると、後輩に「着きますよ」と起こされました。おっ、到着か。いよいよマカオ上陸だな。しかし・・・、なんかえらく揺れているぞ。どうなってるんだ。窓の外を見ると、まもなくマカオの港に停船するところでした。この船はスピードに乗っていない時は本当によく揺れる。港の桟橋が近づくにつれて、岸壁に跳ね返る波に乗ってまた一段と揺れが激しくなってきました。これは強烈。うっぷ。さっき食べたマフィンが・・・。よりによって一番揺れているときに起こさなくても・・・。完全に着いてから起こしてくれたら良かったのに。

~~~ §3、マカオ入国 ~~~

船から降り、人の流れに沿って進むと入国審査に着きました。そこは広い空間にずらっとカウンターが並んでいるといったなかなか壮観な眺めなのですが、それ以上にずら~と審査を待っている人の行列があって、見た瞬間げんなりとしてしまいました。これは凄い。なんて人の数だ。シンセンでの事を思い出して「VISITOR」の案内板を捜すものの、ここではマカオ国籍とその他の国籍の人の2種類にしか別れていませんでした。仕方なく短そうな列の最後尾に並びました。が、なかなか前に進まない。この列は失敗だったようだ。まったく何やってるんだと思いながら40分以上並んで、ようやく私の番になりました。何時も通りパスポートを丁寧に渡し、笑顔で終わるのを待ちました。なるべくこういう時は愛想を良くしておいた方がいい。しかし、審査官は私の態度をあざ笑うかのようにパスポートを投げるように返してきました。ムカッ。こんだけ並ばしておいてそりゃないぜ。中国よりひどい。いやここも中国の一部みたいなものか。だったらしょうがないのか・・・。これぞ本物の中国人。会えて光栄といったところか・・・。文句の一つでも言ってやろうと思ったけど、ここで問題を起こすのは百害あって一利無し。どうせ言い分も聞いてくれなく、横暴な態度で入国拒否となってしまうんだろうな。昨日の人民兵の事を考えるとそんな気がします。そんなことになったら後輩にも迷惑がかかってしまう。でかかった言葉を飲み込みました。でもしゃくだ。にらみつけてやれ。しかし、もう既に係官はそっぽを向いていました。ともあれ無事入国審査は終わったんだ。忘れよう。しかしマカオに入国したものの、マカオの第一印象は最悪なものとなってしまったな。入国審査はその国への第一歩。審査官はその国の顔。何とかして欲しいものだ。

イミグレーションを抜けると、港構内ではホテルやタクシー等の客引きが沢山待ち構えていました。さすがは観光で成り立っている町。ある意味気合が入っていました。さて今日泊まる場所はどうするか。特に当てがあるわけでもありませんでした。でも客引きはいまいち信用する気になれません。賭博の裏にはマフィアあり。こういった人達はみんなマフィアに繋がっているのでは・・・といった固定概念が邪魔していたからです。とりあえず港内にあるホテルのサービスカウンターに立ち寄ってみました。香港ではずっと狭い安宿に泊まっていたので、せめてマカオでは少しは良いホテルに泊まって英気を養いたいと思っていたからです。「安いホテルはありますか?」と少々遠慮気味に尋ねると、「ここはどうでしょう?」とパンフレットを出され、値段を見るとおよそ8000円。う~ん。日本のビジネスホテル並みの値段ではないか。根本的に我々が探しているのと値段の領域が少し違う。「やっぱり自分で捜します。」と、そそくさとカウンターを後にしました。

やはり自力で探すしかないか。とりあえず宿の集まっている中心部へ行こう。ある程度ガイドブックで泊まりたいホテルの目星をつけて、港の出口へ向かいました。港から市内へはバスが走っていて、そのバスはマカオ市内を巡回しているようです。なんともシンプルな交通システムだ。これならば乗りやすい。適当に乗って適当に降りればいいんだよな。よしっ、それに乗ろう。人の流れについていけばバス停に着くだろうとのんきに構えていたのですが、団体様だったらしく、みんな駐車場に停めてある観光バスに乗り込んでしまいました。あららら。なかなかの間抜けぶり。後輩と笑いながら、路線バスのバス停の方へ向かいました。しかしこっちのバス停には凄い行列が出来ていました。また並ばなければならない・・・。最近一日の何割かを行列の為に費やしている気がするのは気のせいか。なんか無駄に時間を消費している気がする。

リスボアホテル
リスボアホテル

ひっきりなしにバスやミニバスがやって来たので、さくさくと列が進み、思ったよりも早くバスに乗る事が出来ました。バスに揺られながらマカオの街を観察すると、道は広く、高層ビルが沢山建っていました。この辺がマカオの経済の中心なのかな。立派なビルが多いし。この風景だけ見ると、シンセン同様にどんどん新しくなっていく町といった感じを受けます。それにしもこのバスはしょっちゅう曲がるぞ。交差点の度に左右どっちかに曲がっている感じではないか。交差点を直進するということを知らないのか。まっすぐ走らないのがマカオの文化なのか。そんな事はないだろうけど、立っている身としては曲がる度にバランスをとらなければならないので、愚痴の一つでも言いたくなってきます。高層ビル街を抜けると、普通の町並みっぽくなってきました。さてどこで降りるか。窓の外を注意深く観察していると、前方にリスボアホテルが見えてきました。目立つ建物なので、マカオに初めて来た私でもすぐ分かりました。確かチェックを入れた宿もこの付近のはず。大勢の人々が降りたリスボアホテル前のバス停で我々も降りました。

まずは今晩泊まるホテルを捜さなければなりません。今晩はちょっとリッチに過ごす予定にしていました。中級ホテルで予算は4000円以内。出来れば3000円ぐらいがベストです。というのも、私にとっては香港、マカオでの最後の夜となり、明日はインドへ旅立ちとなります。少しお金を出してでもバスタブで体の疲れを取っておきたいと思ったからです。だからバスタブがある部屋が絶対条件でした。まずはガイドブックに載っている安くてお勧めのホテルというのに向かうと、満室だと断られました。そして、2件目に行ったホテルでは、「空室はありますか?」と聞くと、「予約はありますか?」と聞かれ、「ない」と答えると渋い顔をされました。また満室か。しかし次の言葉は予想外でした。「お支払いはキャッシュですか?」と聞いてきて、「そうだ」というと笑顔になり、空室があるとの事。なんか対応が露骨すぎて嫌な感じ。そんなに金がないように見えたのか。まあ実際学生だもんな・・・。でも何とか空室があった。やっぱり正月時期なのでいつもよりも混んでいるんだな。料金表を見せてもらうと、なんか祝日料金が適用されるようで、ちょっと割高な値段でした。でも他が空いているか分からないし、高いのはしょうがないのかもしれない。ここに宿泊する事にしました。そして受付を済ませて部屋に案内されてみると、値段相応というか、なかなか豪勢な部屋でした。今までが酸欠になりそうなぐらい狭い部屋だったので、余計にそう感じたのは間違いありません。

~~~ §4、マカオ観光 ~~~

タバコを吸ってまずは一息。それにしても今日はなんか疲れたな。朝食は頼んだ以上のものが出てくるし、船は混んでいてなかなか乗れなかったし、乗ったら乗ったで気分悪くなるし、入国審査はえらい待たされた上に審査官は横暴だし、バスも並ばないと乗れなかったし、宿も一軒目は満室だし、空室が見つかっても祝日料金で高いしと、思い起こしてみるとなんかいい事があまりないな。ふぅ~とため息をつく度に、どんどんと体重が重くなっていく感じです。このままではベッドに埋まってしまう。後輩にとってはもう旅の終わり。ここでだらけてはいかん。気合を入れ直してマカオの市内観光に出かける事にしました。やはりマカオの市内観光といえば、なんといっても聖ポール天主堂。壁一枚だけになってしまった教会の遺構です。パンフレットなどでよく見るので、マカオに無知な私でも知っていました。まずはそこへ行こう。いや待てよ。いきなりメインイベントでは後の楽しみがなくなってしまうのでは。地図を見ると、宿から天主堂に行く途中の丘にモンテの砦跡というのがありました。少し丘の上まで登らなければいけないけど、どうせ行く途中だ。それに今の疲れた状況を考えると、後回しにすると途中で燃料切れになるかもしれない。最初の目的地はモンテの砦と決まりました。

モンテの砦の砲台
モンテの砦の砲台
モンテの砦から眺める中国大陸
モンテの砦から眺める中国大陸

宿から10分ぐらい歩くと、坂道になり、それを登るとモンテの砦に到着しました。登りきると城壁に囲まれた広場に大砲がずらっと並んでいました。なかなか雰囲気が出ているではないか。何も残っていないだろうとあまり期待していなかっただけに満足。そして大砲の間から辺りを見渡すと、さすがに登っただけあって眺めがいい。マカオの町並みが遠くまで見渡せました。かつてはここから海に向かって砲撃をしていたんだな。しかし・・・、海までは結構な距離があるけど、大丈夫だったのだろうか。火薬の調合を間違えて、海岸付近の町にドカンって自爆した事も多々あったのでは・・・。なんかそんな感じがするな。この距離は。それに中国だし・・・。色々と疑問に感じたのでしたが、反対側に行くとこっちからは海が近くに見えました。なるほど恐らくはこっち側がメインだったに違いない。ここからなら砲撃して船を沈められそうな気がするけど・・・、どうなんだろう。大砲なんて撃っているところを見たことがないので、自分なりに勝手な想像して納得していました。

それにしても目の前に広がるマカオの町並みは、お世辞にも華やかさがないというか、美しさというものが感じられませんでした。なんだかゴミゴミとしているし、建物の調和も取れていなく、見た目がいまいちといったところです。なんか不調和音が鳴り響く町並みというか、これではまるで東京と同じではないか。ちょっとがっかりでした。その一方、大陸部を眺めると、ちょっと先に中国大陸をはっきりと見る事が出きました。この大陸の遥か先にはペルシャ、アラブ、ヨーロッパなどの色々な土地があり、多くの人々が暮らしています。あくまでもここはユーラシア大陸の東端でしかありません。ユーラシア大陸はどでかいぞ。その大きさを想像する事が出来ないほどでかい。まだ見ぬ地に思いを馳せながらモンテの砦を後にしました。

聖ポール天主堂跡
聖ポール天主堂跡
天主堂の裏側
天主堂の裏側
天主堂の前の広場
天主堂の前の広場

モンテの砦から坂を下ると、聖ポール天主堂の壁の前に到着しました。モンテの砦からも見えていたので、目の当たりにしてもわぁ~凄いといった感動はありませんでした。それにしてもなんだかこの付近は火薬臭いぞ。その時横の方でパン、パッパ~ンと何かが爆発するような音がしました。な、なんだ。もしかしてテロか、暗殺か。いやいや、そんな迫力のある音ではありませんでした。音のした方向を見ると少年達がクラッカーで遊んでいました。それで辺り一帯に煙と火薬の匂いが立ち込めていたようです。なんともはた迷惑な。こんな多くの人が通る場所でやらなくてもよかろうに。

子供達がクラッカーで遊ぶのを横目に天主堂跡に入りました。いや、入ったといっても壁だけなのでくぐったと言うべきなのか。何にしてもすごく違和感を感じる瞬間でした。確かに教会に入ったよな。でも外のまま。あら不思議といった感じがしました。ただ、面白いと感じたのはそこまでで、ぶらぶらと教会の敷地を回ってみたけど大して興味を引くものはありませんでした。最後に教会の2階部の窓へ階段が備え付けられていて登る事が出きるようなので、登って見ることにしました。が、少し眺めがいいだけ。なんでこんな階段を作ったのだろう。何か私の知らない見るべきものがあるのだろうか。しかし、他の観光客も教会の窓から広場の方を眺め、写真を撮り下に降りているだけ。まあ私も一枚とっておくか。写真を撮って教会の壁を通り抜けて子供達がクラッカーで遊んでいる広場に戻りました。

壁一枚となった天主堂を振り返りました。なんかうやむやした気分でした。この建物は一体なんだろう。覚めた目で見れば単に壊れそこなった教会ではないか。何だってこんなに観光客が来るのだろう。確かに最盛期には東洋一を誇ったなどと言われているけど、ただそれだけのことではないか。これがマカオ観光のハイライトであり、目玉なんだよな・・・。言い換えればマカオには他に見るべき観光スポットがないという事になるではないか。マカオ観光のハイライトに来たものの、これではどうも納得がいかない。いや、もしかしたら壁一枚だけになってしまった事自体が西欧人から見たら東洋の神秘なのかもしれない。とかく西欧人などはそういうのが好きだもんな。教会の壁を見上げながら思いました。

クラッカーの箱
クラッカーの箱

辺りはもう薄暗くなっていました。一応マカオの観光ハイライトを見たので、これでマカオの観光に関して思い残す事はなくなりました。宿に戻るか。いやその前にこのうやむやした気持ちを払拭しておこう。階段横に座っている物売りのおばさんからクラッカーを購入しました。こうなれば私もストレス発散だ。少年達に交じり「えいやー」とクラッカーを鳴らしてみるものの、ちょっと湿気っていたみたいで、ばんと鈍い音がしただけでした。クラッカーにまで私のうやむやした気分が伝染してしまったのかな。なんかマカオに来てからというもの気分の高揚感というものを感じられない。

~~~ §5、リスボアホテルのカジノ ~~~

マカオの町を観光がてらぶらぶらと歩きながら宿に戻ったものの、やらく沈んだ気分でした。なんというか、今日一日リズムに乗れていないというか、マカオに来たもののマカオの町並みが自分が思っていたほど見応えのないものだったという失望感というか、なんだかえらく疲労感漂う感じでした。もっと見応えのある観光名勝があれば違ったのだろうか。町並みも香港のような活気がなかったし、マカオグランプリのコースとなっている為か歩道も歩きにくかったな。それに上から見た時のごちゃごちゃ感は東京のように煩雑だったな。ベッドに横になりながらぼーと考えました。私はマカオに何をしに来たのだろう。観光か?それともカジノをしに来たのか?考えると頭が重くなってきました。そして何時の間にか寝ていました。

目が覚めると夜の11時半でした。少し寝たせいか妙に気分がさっぱりしていました。カジノに行こう。私の心は決まっていました。カジノに行く為にマカオに来たんだ。ここで勝負しなければ・・・、大げさに考えるなら一生後悔するに違いない。すぐに仕度にかかりました。健全な後輩は宿に残ると言うので、勝利の約束をして部屋を後にしました。

外に出ると、夜のマカオは少し冷たい風が吹いていました。その冷たい風は私の眠気を程よく覚ましてくれました。私の向かったのは東洋一のカジノがあるリスボアホテルでした。どうせ勝負するなら見学も兼ねて名のある有名な場所の方がいいと思ったからです。円筒形の建物は昼間は地味に感じたのですが、夜になると妙に明るく、華やかでした。そして入り口にはガードマンが3人立っていて、絶えず出入りしている客をチェックしていました。いざ勝負。気を引き締めて入り口から入ると、まずは危険物や不正防止の為に厳重なセキュリティーチェックを行っていました。カメラとかも駄目なようで、結構念入りに鞄などをチェックしていました。でも手ぶらで来た私にはあまり関係なく、他の人が手荷物検査をしているのを傍目にすぐに通過する事が出来ました。そして中に進むと、そこにはめちゃくちゃ広いホールがありました。明るく照らされたホール内には多くのギャンブル台が置いてあり、多くの人々が行き来し、そしてゲームに興じていました。なんて凄い熱気なんだろう・・・。その光景に唖然としてしまいました。まるで昼間のマカオを歩いた時と違うぞ。この熱気は。自分の中で出来上がりつつある地味なマカオのイメージとはまるで違った光景に驚きました。

まずは偵察がてら色々と周ってみる事にしました。1階のホールにはトランプを使って行う百家(バカラ)やブラックジャックが置いてあり、どの台も凄い人の山ができていました。個人的にはあまりトランプを使ってやるゲームは好きではないというか、雰囲気が合わないというか、まあ要は苦手なのです。簡単にできるルーレットとかはどこだろう。捜すと入り口近くに2階に上がるエスカレーターがありました。それを上がっていくと、1階と同じようなホールが2階にもあり、ここではルーレット、大小、スロットマシーンなどが置いてありました。特に凄い人垣ができているのが大小の台でした。これは始めて見るものでルールがわからないけど、ルーレットのサイコロ版といった感じでした。そもそも中国で古来からあるゲームなので、西欧のゲームよりもマカオでは人気があるようです。3階に上がるエスカレーターもあったので、3階にも行ってみると、とたんに人がいなくなり、普通のホテルの客室ようになっていました。これは・・・個室ってやつでは?部屋の中では一口1000HK$単位の大口で賭けが行われていそうです。それに3階は序の口でも上に上がっていくほど金額も上がっていき、最上階にもなるとアラブの石油成金や葉巻を吸ったマフィアなどが・・・さすがにうろちょろするのはまずいぞ。黒服のサングラスとかが出てきそうだ。身の危険を感じ、すぐに下の階に降りました。

一回りすると、まずは大小の台を観戦する事にしました。マカオのカジノに来た目的の一つが、この大小というゲームをやってみたかったからです。ルーレットやブラックジャックなどのゲームはどこの国のカジノでも出来るのですが、大小はマカオ土着のゲームなので、たぶんここでしかやれないはず。一体どんなゲームなのだろう。ガイドブックに簡単なルールが書いてあったけど、実際に見て覚えるほうが早い。しばらくどうやったら勝てるだろうかと観戦してみる事にしました。見ていると3個のサイコロが振られ、その目の合計が大きいか小さいか、偶数か奇数かなどを張るのが一般的なようで、毎回大や小のマスにはかなりの現金やチップが置かれていました。その他にはゾロメを当てるなどの倍率の高い役もあるようでしたが、そういう目に賭ける人はあまりいないようでした。でも2倍の配当の大や小に賭けるなら、かなり地道に勝ち続けないとチップが増えていかないような気がするのだが・・・。そういうものなのだろうか。そう考えると、儲けようと考えるならあまり魅力を感じるゲームではないような気がします。でもこれだけ人気があるということは、きっと配当の付く役という物をしっかりと理解すればそれなりに儲かるのでは・・・。きっとそうに違いない。しかし役を知らない素人が手軽に大か小といった感じで遊ぶのも、それはそれなりに面白そうだ。目を輝かせながら張っている人々を見ながら思いました。なんとなくルールも分かってきた事だし、場の雰囲気にも慣れてきたし、そろそろ頃合かな。私もやってみるかとまずは両替所に向かいました。

~~~ §6、予定外の水入り ~~~

両替所はどこだろう。歩き回って探すものの、あまりにも広いホールなので両替所が見つかりません。さっき一通り回ったときも見かけなかったな。でもこれだけの規模のカジノで両替所がないという事はないよな。しばらく歩きまわっていると、急にお腹が痛くなってきました。な、なんだ。いきなり。ト、トイレはどこだっけ。そういえばエスカレーターのところにあったな。冷や汗をかきながらトイレに駆け込みました。中に入ると、さすがは高級ホテルのトイレといった感じで清潔感あふれていました。しかし今はそれどころではありません。綺麗だろうが汚かろうが用を足せればそれでいい。便座に直行し、しばらく下痢と腹痛と戦いました。ふぅ~助かった。それにしてもどうしてこういう事になったんだ。何か悪いものでも食べたっけな。思い起こしてみると、昼に食べた魚入りのお粥が怪しく思えてきます。ちょっと生臭い味がしたからな。それ以外は船に乗って船酔いしてからあまり食欲がなくなり、食べたものといえばパンとかばかりなので、きっとそうに違いない。でも出すものを出したら楽になったぞ。やれカジノに戻ろう。便座から離れ、手を洗っていると係りの人がペーパータオルを差し出してきました。お~感動。さすが東洋一のカジノだけの事はある。サービス満点だ。しかし、この人はいつもこんなとこで働いているのだろうか。いや、きっとトイレで恐喝などの事件が起こらないように、ペーパータオルを配りながら警備も兼ねているのだろう。そう考えると頼もしい。人々が安心してようが足せるように・・・待てよ、ここでウンを出してしまったら・・・。しまった。いらない事を考えてしまった。縁起でもない。

トイレから出たものの、妙に物欲しそうなペパータオルを配っていた人の視線が気になっていました。もしかしてチップをあげるべき場面だったのかな。うっ、なんかそんな感じがしてきた。前の人が払っていれば気が付いたけど、他の客はそういう素振りをしていなかったよな。まあいいか。過ぎてしまったことだ。とりあえず両替所を探さなければ。でも一体どこにあるんだろう。人に聞いたほうが早そうだ。あちこちに立っているガードマンの一人に、「両替をしたいんだけど、両替所はどこ?」と英語で尋ねると、「あ~?」と返ってきました。私の英語が悪かったのかな?もう一度ゆっくりと単語を選んで言ってみるものの、同じような反応でした。どうやら英語が通じないようだ。一流ホテルなのに・・・。仕方なく懐からトラベラーズチェック(以下T/C)を取りだし、「チェンジ、チェンジ、マネー」と言うと、やっと通じたらしく、「お~、チェンジ、チェンジ」と言って奥のほうを指差しました。なんか一流ホテルのガードマンにしてはちょっと抜けた感じがするのは気のせいだろうか。

教えられた方向に行くと、奥まった場所に小さい両替所がありました。どうりで見つからなかったはずだ。先客が3人並んでいたのでその後ろに私も並びました。前に並んでいる人達が両替する様子をさりげなく眺めていると、いずれも人民元をHK$に両替していました。しかも結構な額で、受け取って確認の為に数えている札束がかなり厚くてビックリ。一体いくら両替しているんだ。この人たちは。100万円以上あるのでは・・・。両替所の壁にも「人民元歓迎」とでかでかと書いてありました。きっと大陸から一攫千金を狙ってやって来たのだろう。それとも中国の金持ち(万元戸)が道楽でやってきているのだろうか。どっちにしろ中国からの客が一番のドル箱となっている感じがしました。そんな事を考えていると、私の番が回ってきました。みんな高額の両替なのになんか1万円の小切手ではしょぼいな。でもこれが今夜私が使える限界。用意していたT/Cにパスポートを添えてカウンターに出しました。

しかしカウンターに座っている眼鏡をかけたおじさんは、ずり落ちそうな眼鏡を直しながら一言無愛想に「Only Cash(現金のみ)」と言ってきました。えっ、そ、そんな・・・。絶望のどん底に落とされた気分でした。なぜなら安全の為と自分が熱くなって使いすぎない為の予防策として、宿にいる後輩に現金や貴重品のほとんどを預け、今はT/Cを少し持ってきているだけだったからです。まいったな。現金なんて持っていないぞ。私のがっかりとした表情を哀れに思ったのか、カウンターのおじさんは「現金だったら日本円でも受け付ける。」と、やはり無愛想ながら付け加えました。とりあえず「ありがとう」と言って、カウンターを離れました。何て事だ。せっかくここまで来てカジノで遊べないなんて。宿までの遠い道のりを考えると、今から戻るのは億劫です。でもそうしないとカジノで遊べないし・・・そうだ。他のカジノにでも行ってみるか。宿を出る前に眺めてきたガイドブックでは、確かこの近くにカジノが集まっていたはず。そうすればT/Cが使えるかもしれない。マカオのカジノはここだけじゃないんだ。

外に出ると小雨が降っていました。手ぶらで来たので当然傘なんて持っていません。というより、そもそも旅行の荷物として傘は持ってきていませんでした。全く付いていないな。今日は勝負をしないほうがいいのかな。今日一日あまりいい事はなかったしな。水を差された気分と言うか、気分がなえてきました。これぞ本当の水入りってやつなのかもしれない。そう思ったのですが、今のうちに運の悪さを全て出してしまえば、後で馬鹿ツキ間違いなしではないかとすぐに思い直しました。悪い時はいいように考えよう。よしっ、立ちすくんでいてもしょうがない。小雨の中、ネオンで賑やかなほうへ急ぎ足で歩き始めました。そして角を何個か曲がると、目の前にホリデーインというホテルがありました。結構でかいな。それに名前も聞いたことがある。ここならカジノはあるだろう。早速中に入りました。しかし、深夜のロビーは静かで全く客がいませんでした。いるのはフロントや荷物係りの人だけ。そして一斉に入ってきた私の方を見ました。こ、これはまずい。なんか警戒するような視線が突き刺さってきます。当たり前か・・・ここは泊り客を装おう。当たり前のようにエレベーターのほうへ向かいました。でも背中のほうからチクチクと従業員の視線を感じてきます。失敗したな。カジノがあるにしてはどうも静か過ぎるぞ。エレベーターの横には館内の案内板が掲げられていました。それを見ると3階にカジノらしきものがあるようです。とりあえず行ってみるか。今引き返すのはちと気まずいし・・・。

エレベータに乗り、3階に到着。扉が開くと、目の前にはカジノという名の高級バーか、もしくは高級カジノと呼べそうなものがありました。扉は閉まっていて中も分からないし、ここのフロアーにも客の姿がありませんでした。これはちょっと気軽にという訳にはいかなそうだ。引き返そう。エレベータを降りかけていたものの、あまりの光景に立ちすくみ、そのまま扉が閉まらないように手で押さえていました。その手を離し、1階のボタンを押しました。また振り出しだ。別のホテルに行くか。別のホテルに行っても同じような事にならないだろうか。そしてドアが閉まりました。と、ここで思わぬ展開となってしまいました。エレベーターがどんどんと上に上がっていくではないか。な、なに。これはまずい。上の階で誰かがエレベーターのボタンを押したらしい。このまま乗り続けていればエレベーターのボタンを押した人のところへ着いてしまうぞ。それはあまりにも不自然だ。どうしよう。まずいぞ、どうしよう。そうだ。慌てて近くの階のボタンを押したものの、失敗。もう少し先の階を押さないと駄目だ。えいっ、今度は成功し、誰もいない17階で停まりました。そしてすぐ下りのボタンを押して、エレベーターが下りてくるのを待ちました。それにしてもビックリした。エレベーターはこの一基だけじゃないのになんだってこうなるんだ。

少し待つとエレベーターが下りてきました。扉が開くと、中には中国系の若い女性が乗っていました。この人が上でエレベーターを呼んだのか。全く迷惑な。向こうもこんな時間に他の階へ止まるのが不思議というか、高級ホテルに泊まっているにしてはあまりにもみすぼらしい姿のせいか、私が乗り込むとかなり怪訝な顔をしていました。失礼な。当然ながらお互い無言のままエレベーターは1階に向けて降りていきました。女の人は急いでいるらしく、時計を見ながらそわそわしていました。という事は、さっきの嫌そうな顔は急いでいるのにエレベーターはなかなか来ないし、何でこんな階で停まるのよという事なのだろうか。そうだよな。私が怪しく見えるはずがない。そう思うと、なかなか綺麗な女性に見えてきました。最初は売春婦かなと思ってしまったけど、きっと金持ちのお嬢様なんだろうな。高そうな服を着ているし。うんうん。

気まずい沈黙を終えて1階に到着すると、私はさりげなくこの女の人のそばを歩き、ホテルを脱出しました。傍から見たら連れに見えるはず・・・。でもちょっと離れているから微妙な関係だと思うだろうな。いやいやそんな事はどうでもいい。ホテルに入ってくる時にあれだけ警戒した視線を浴びていれば何となく体裁を整えたくなるものです。そして無事に玄関の外に出ると、ほっと胸をなでおろしました。やれやれ、冷や汗をかいたぞ。ん!その時に胸元に手応えがありました。なんだ。そ、そうだ。忘れていた。胸元に緊急事態用に1万円を忍ばせておいているのを今更ながら思い出しました。今まで忘れていたとはどうかしている。そんな自分にあきれながらも、なんか漫画みたいな展開に笑ってしまいました。何にしてもこれで勝負が出来るぞ。そして小雨の降る中、軽い足取りでリスボアホテルに向かいました。

~~~ §7、一攫千金の夢 ~~~

再びリスボニアホテルにやってきました。思わぬ水入りが入ってしまったけど、今度は勝負ができるぞ。もどかしい思いでセキュリティーチェックを受け、急いで両替所に向かいました。今度は誰も並んでいなく、無愛想だった眼鏡のおじさんはお茶をすすっていました。さっきの事があるので、また来たよってなもんで笑顔になりながら窓口に1万円を出したのですが、やっぱり眼鏡のおじさんは表情を変えず無愛想でした。笑顔になると損だと思っているのだろうか。いやいや、そんな事を気にしている場合ではない。カジノの勝負が待っているんだ。ウキウキしながら手続きが終わるのを待ちました。そして渡されたお金を見ると、なんか今まで両替したときよりも多いぞ。少なくとも600HK$はある。レシートを見てみると、レートが香港を含めて今まで両替した中で一番いいものでした。でもこのレートはあくまでもこれから始まる博打のベースでしかありません。1万円が最終的に一体いくらのレートでの両替になるかは私の腕次第といったところ。無愛想なおじさんに「ありがとう」と言って、その場を離れました。

端数をポッケに入れ、残りの600HK$の500HK$と100HK$の札を握り締めカジノ台が並ぶホールに向かいました。まるで駄菓子屋にお菓子を買いに行く子供のような気分です。まず向かった先は以前やったことがあり、ちゃんとルールを知っているルーレットの台でした。これならまともに勝負が出来るはず。以前にやった時は勝っているので、正直ちょっと自信がありました。空いている台に腰掛け、まずは大きい札の500HK$をディーラーに渡してチップに換えてもらいました。予定では100HK$のチップを5枚渡してくれると思っていたのですが、デンと大きな500HK$のチップが返ってきました。うっ、これでは高額すぎて使えんだろうが。それともお金を持っているように見えるのだろうか。すぐにこのチップをもっと小さな金額に換えてもらおうと思ったのですが、投げ返そうとチップを握り締めた時にピカーンと頭の中に危険にひらめくものがありました。なんかこれを賭けると当たりそうな感じがするぞ。ディーラーが故意に誘っている感じもします。それに今まで出し続けた悪運が逆に自信となっていました。よし、ここは一丁そのまま賭けてやれ。男は度胸とひらめきだ。

とはいえ、数字の一点に賭けるような度胸はありませんでした。まずは3分の1の確率の1~12に張りました。確率3分の1なら悪運を使い果たした今の私なら当てる事が出来るだろう。それなりに自信を持って賭けたのですが、ルーレットが回っている間は心臓が破裂せんばかりに高鳴っていました。「こい、こい」と心の中で念じ続けながらルーレットが止まるのを待つと、見事的中。やった!やったぞ。500HK$のチップが3枚になって戻ってきました。やっぱりさっきのひらめきは嘘ではなかったんだ。いいぞ。これで1500HK$だ。さて次はどうしよう。ひらめけ。ひらめくんだ。そして運を呼び込むのだ。う~ん、よしっ、ここだ。500HK$のチップのうち1枚を25~36に張りました。今度もこい。心の中で念じていると、またもや的中。やった。これで手元には500HK$のチップが5枚もある。全部で2500HK$だ。今日はついているぞ。予想通りつきまくっているぞ。この機を逃してはもったいない。一気に勝負をつけて、後は心も懐も余裕な状態でちまちまと遊ぼう。手持ちのチップ全て2500HK$を黒に賭けました。確率は2分の1.今までよりも確率はいいし、今の状態なら外れるはずはない。当たれば5000HK$だ。日本円で考えると9万円か。9万円あれば何に使おう。色々と頭の中を欲張った妄想がめぐっていました。そしてルーレットが回され、ディーラーの手で玉が投げ込まれました。こい、こい。いや、来るぞ。必ず来るぞ。手に汗を握りながらルーレットを見つめ続けました。そして段々と玉のスピードが落ち、玉がマスに入って止まった。そして私の心臓も止まった・・・感じがした。結果は赤。のぼせ上がっていた顔から一気に血の気が引いていくのが分かりました。調子に乗りすぎてしまったようだ。せっかく増えたお金もこれで水の泡。夢の幸福な世界から現実に戻ってきたような感じでした。なんて切ないのだろう。ため息混じりに台を後にしました。

これで手持ちは最初に両替した時の残りの100HK$となってしまいました。せめて500HK$残しておけばよかったな。そうすればプラスマイナスの原点だったのに。今更悔やんでもしょうがない。やっぱり熱くなりすぎてしまったようだ。二回ともズパンと的中してちょっと舞い上がってしまったようだ。それにしても未熟だったな。場の雰囲気に飲まれるなというのは、こういうことを言うんだなと初めて実感しました。さてどうしよう。しぼんでしまった風船のような気分なので、もう大きな欲はありませんでした。それに手持ちのお金もない。とりあえず大小でもやってみるか。マカオに来た記念にもなるし。そうしよう。そしてあわよくば原点に戻して帰ろうではないか。気を取り直して大小の台に向かいました。

幾つかある大小の台はどこも凄い人垣が出来ていました。ここは常に満席だな。ルーレットなどはそうでもないのに。やっぱりアジア人にはサイコロが性分にあっているのかな。というより、ルーレットの台はチップを使い、チップを載せる台も洗練されているのですが、大小の台は現金やらチップが混じり、賭け方もぐちゃぐちゃ。ひっちゃかめっちゃかなアジアそのまんまといった感じがします。しかもカジノというより、この台の周りは長屋といった感じがします。そういう泥臭さというのが大小の魅力なのかも知れません。今の手持ちは100HK$のみ。後がないので、一つの台に絞りしばらく様子を見る事にしました。そしてしばらく様子を伺っていると3回小が続きました。次はきっと大がでるぞ。周りの人達はどんどん大の方へ賭けていきました。ここは場の流れに乗ってみよう。後ろの方に立っていたので、投げるようにして100HK$を大の方へ張りました。場に置かれた掛け金は大が7割、小が3割といったところ。さて、どうだ。締切りの合図があって蓋が開かれてみると、残念ながら小でした。周りからも「アイヤー」とため息が聞こえてきます。次こそは大がくるぞ。間違いない。そう思っても賭けるお金がありません。くそっ、あと100HK$あればな。・・・諦めよう。場では次の賭けが始まり、さっき以上に大の目にチップや現金が置かれていました。もう100HK$あればな・・・。いや、なくて正解かもしれない。次が大という確証はないのだから。結果を見ると余計に悔しい思いをしそうなので、早々に大小の台を後にし、カジノの出口に向かいました。

外に出ると相変わらず小雨が降っていました。やっぱりツキに見放されているなと恨めしく空を見上げました。勝負に勝っていれば何の問題もなくタクシーで帰れたけど、現金を持ち合わせていない今の私は濡れながら歩いて帰るしかありません。最後の100HK$はタクシー代に残しておけばよかったなとちょっと後悔しました。待っていても止みそうにないので、フードを被ってトボトボと歩き始めました。歩くと結構濡れるし、おまけに冷たい。それに深夜の暗い道を一人で歩くのはかなり淋しいものがあります。最初のうちはカジノの興奮の余韻を感じつつ歩いていたのですが、段々と虚しくなってきました。冷たい雨に当たり、夢が覚めていく感じでした。そして興奮していた気分も落ち着いてきて、冷静に物事を考えるようになっていました。カジノか。それにしても凄いところだったな。香港での黄大仙での初詣の光景も凄かったけど、やっぱりカジノの熱気はそれ以上だったな。それにしても人々の顔が真剣だった事。欲の張り合いというか、意地の張り合いというか、中にはこの人大丈夫だろうかと心配してしまうような人もいました。そういう人たちを見ていると、カジノは勝ち逃げ、そして引き際が肝心だと言われるのも納得できます。そう考えると予め1万円という引き際を決めていて良かったかなと思えてきました。でも惜しいな・・・一時は2500HK$にまで増えたのに。高級ホテルで高級中華を食べるには十分な金額だったな。ホテルに残っている後輩にはなんて言おう。とにかく胸を張って帰ろうではないか。

宿に戻ると後輩は起きていました。カジノで起きた事を話すと、「何で2500HK$に増えたところでやめなかったのですか!」と口をとんがらせていました。まあそう言うなって。ちょっと熱くなりすぎただけなんだから。それにギャンブルで「あの時・・・」と言うのは負け犬の遠吠え以外何物でもありません。私としてはあの時勝負したかったから勝負したんだ。ちょっと熱くなって自分を見失っていたような気もするけど・・・、まあ結局のところ自分で下した決断だからそこまで後悔はしていないといった気持ちでした。後輩と話していると、なんか張り詰めていた気が清々としてきました。とりあえず風呂に入ろう。風呂に入らなければせっかく高いホテルに泊まった意味がない。疲れた体をバスタブに浸すと、なんとも気持ちいい。久しぶりの風呂だな。リラックスした気持ちで目をつむると、再びカジノの光景が浮かんできました。そうだよな。カジノはカジノだ。場には場特有の風が吹いているもので、離れたところにいてはその場の雰囲気なんて分かりっこない。勝負していないやつにはなんとも言われる筋合いはないではないか。今は冷静になって勝負をしないとなどと言っていても、一緒に行っていればきっと同じ事をしたに違いない。でも楽しかったな。わずか数回の勝負だったけど、天国も見たし地獄も見れたからよかったではないか。天国を見れない人もいるのだから・・・。

やれさっぱりした。風呂から出ると、気分も体もすっきりとしていました。終わった事をいつまでも考えていてもしょうがない。さて寝るか。ベッドに横になり、ボーと目蓋を閉じるものの、やっぱり浮かんでくるのはカジノの光景ばかりでした。う~眠れない。人々の欲のぶつかり合い。喜怒哀楽。なんて活気のあるところだったのだろう。あの雰囲気は魔性のものだ。考えると体がうずいてきて、どんどんと目が冴えてきました。参ったな。これでは寝れないではないか。マカオに滞在し続けてたら不眠症になりそうだ。こうなったら勝った事でも想像していよう。そのうち気分よく寝付けるかもしれない。あれこれと考えていると、負けが1万円で済んで良かったなと考えるのが妥当に思えてきました。別に金儲けをしに来たのではないし、あれだけ熱くなるような気分を味わえたんだからいいではないか。そう考えると自然と笑みが出てきます。勝負には負けたけど、カジノの誘惑には勝ったのではないか。勝負は最後に笑った者が勝ちとはいうけど、今の充実感でいえば勝った時のすがすがしさはないにしても、負けた時のどんよりとした気分でもないのだけは確かでした。そして眠る事を知らないカジノのことを考えていると、何時の間にか夢の世界に旅立っていました。

第8章 マカオでの大勝負  ー 完 ー

「第9章 別れと新たな旅立ち」に続く

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