風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

ぐうたら香港滞在記

~ 第6章 香港競馬な一日 ~

*** 第6章 香港競馬な一日の目次 ***

~~~ §1、いざ香港競馬へ ~~~

今日は香港に到着して、一番の寝坊をしてしまいました。朝食?を食べに行って、帰ってきた後輩と友人に起こされ、なんと起きたら昼の12時でした。なんともショック。ぐうたら度では、しょっぱなから遅刻してくる友人には負けると思っていたのに・・・。昨夜は溜まった日記を書いたり、ビールを飲んだりと寝るのが遅くなってしまったせいか。いやカメラをなくしたショックに違いない。それならばしょうがないな。うん。勝手に納得しておく事にしました。

さて、今日、日曜日の予定だけは日本を出るときから決めていました。それは香港で競馬をしに行く事でした。とはいえ、午前中の1レースからするつもりもなかったので、昼起きでも特に問題はありませんでした。でもあんまりのんびりとしていては楽しむレースが減ってしまいます。すぐに支度を始めました。ガイドブックで場所を確認したものの、一応おばさんに行き方を聞いておこう。その方が安心だ。それに今日の天気も気になるところ。廊下に出ると、バッタリ。どうもこのおばさんと私はよく鉢合わせる。相性がいいのだろうか。それはさておき、今日のおばさんは眠そうで、髪もぐちゃぐちゃ。私と一緒で今起きましたって感じでした。きっと友人たちが外出して戻ってきたときにチャイムで起こされたに違いない。ぐうたら度は私といい勝負かも。そう言えば昨夜、花火大会の後、夕食を食べたりとぶらぶらして宿に帰ると、宿のおじさんとおばさんと後二人でマージャンをやっていました。本場はどんなもんかと見せてもらったら、日本の雀牌の4倍はあろう牌でやっていました。点棒も使っておらず、チップでホイホイってな感じでした。なんか日本とは微妙にルールが違うみたい。やってみるかいと誘われたものの、せっかくのお楽しみのところを邪魔しては悪いし、勝って宿を追い出されたり、勝ち逃げはよくないとばかりに毎日付き合わされても困るから遠慮しておきました。「昨日は勝ったのですか?」と聞くと、よくぞ聞いてくれたとばかりに「500HK$勝った。」とうれしそうに返ってきました。という事はおじさんが負けたのかな・・・まあいいや。それよりも本題、本題。おばさんに場所と、行き方、そして今日の天気を聞いて部屋に戻りました。

まずは地下鉄に乗り、九龍塘まで行き、そこでKCRという近郊線に乗り換えました。ここからの車内は日本の競馬場を通る列車と同じで、新聞を持ったおじさんばかりでした。そして競馬開催日しか停まらない馬塲駅で降りて、競馬場に向かいました。ここからは新聞を持った多くの人の後についていくだけだったので、迷子になる心配は全くありませんでした。競馬場の入り口付近には競馬新聞などを売っている売店や露店も多く、そのうちの一軒で足を止めました。そうだ。日本の時のように新聞を買っておこう。後の二人は日本でも競馬はしなく、何となく面白そうだからとついて来たといった感じでしたが、私は勝負する気まんまんでした。その為にも新聞は必要だ。どれにしようかなと眺めると、英語と中国語(漢字)と両方の新聞が売っていました。どっちがいいんだ。あまり考える事無く、「馬」と書かれた中国語の方を購入しました。なんか日本の競馬新聞と雰囲気が似ていたからです。

これで準備万端。入場ゲートに向かい、入場料の10HK$を払いました。競馬場内は正月のせいかかなり混雑していました。周りの人々の顔立ちが日本人と変らないせいか、どうも日本の競馬場にいるような気になってしまいます。まずは馬場内へ。スタンドの造りなどは、どことなく東京競馬場に似ていて、電光掲示板の方は大井競馬場に似ている感じです。周りを見渡すと多くの香港人に混ざって、ちらほらと欧米人もいました。おっ、同じ外国人。香港人に負けないように頑張ろうぜ。と少し心強く感じました。

~~~ §2、連戦連敗 ~~~

競馬場で1
メインスタンド
競馬場で2
競馬場で

よしっ、今からなら3レースに間に合うぞ。早速競馬場に入る前に買った競馬新聞を開いてみました。漢字で書いてあれば何となく読めてしまうだろうと思っていたのだが、・・・さっぱり読めない。その原因は訳の分からない漢数字が並んでいる事でした。一体この数字の単位は何なんだ。ポンドなのかフィートなのか、それとも中国の重さの単位って・・・。大きな「馬」の漢字に引かれて、中国語の新聞を買ったのは間違いでした。無難に英字新聞を買えばよかったかな。新聞を開いてすぐに後悔しました。

3レースの締切りが迫っていました。適当でもいいから勝負しよう。既に私の血が騒いでいました。まずは馬券を買うにしても記入する為のマークシートが必要だ。急いでマークシートを取りに行くと、ビックリ仰天。なんと7種類もマークシートがあったからです。最初は英語用と中国語用かなと思ったのですが、どうやら全て違うもののようです。何でこんなにあるんだ。しかも英語表記のものが多い・・・いや小さいながら漢字でも書かれているぞ。でもこれでは何が書いてあるのか分からんではないか。宿に置いてきたポケット版英和辞典を持って来ればよかったと後悔。そもそも日本では2種類のマークシートしかないので、いきなり7種類ものマークシートを使って多彩に勝負できるはずがありません。さすがにこれにはお手上げ。とりあえず全部の種類のマークシートを取って、友人達のいる観客席に戻りました。

マークシート1
マークシート2
マークシート3
マークシート4
様々なマークシート馬券
マークシート5
マークシートの裏に印刷される馬券

さてどうしたものか。まずはどれがどういった種類の馬券を買えるのかを分析しなければなりません。幸いな事に分かりやすい漢字や英語で書いてあるものもあるので、幾つかのマークシートはすぐにその用途が分かりました。例えば「六合彩」「三重彩」「ALL UP」「SIX UP」などがそうであり、6レース全ての一着を当てるとか、3レース全ての一着を当てるとか、6着までの馬を当てるとかといったものであり、こういったものは宝くじ的な配当金になります。いきなりこういうのに挑戦するのは無謀というもの。まずは日本で一番買いなれている「馬連複式(1着と2着の馬を順不同で選ぶやつ)」の馬券を買うことにしました。しかし、これがなかなか曲者でした。なんとかこのマークシートだというところまでは分かったのですが、そのマークシートは単勝やらなんやらと沢山の種類の馬券を買えるマークシートのようで、馬連複式のマークの仕方がさっぱり分かりませんでした。馬連複式って中国語や英語でなんと言うのだろう。訳の分からない漢字と英単語が並んでいて、考えても分からない。締切時間も押しているし、こうなったら適当だ。最初だし、まずは一点買い。1着と2着に入りそうな馬を選んでマークシートに記入して窓口に向かいました。

締め切り間近とあって窓口は少し混んでいました。その中からすいていそうな列を捜して並びました。列はスムーズに流れ私の番に。自信なくマークシートを出すと、受け取ったおばちゃんはなんか言いながらすぐに突っ返してきました。何が違ったのだろう。聞こうにも中国語じゃ分からんしな。英語も・・・自信ない。それにすぐに後ろのおっさんが窓口にマークシートを出したので、すごすごと窓口を離れました。この馬券には自信あったのにな。もし当たっていたら悔しいな。そうだ。すぐに3重彩という馬券が頭にひらめきました。これは1~3着の馬を当てればいい馬券のはず。単勝ならそのまま1~3着を当てなければならないけど、複式なら順不同だ。さっき選んだ馬にもう一頭加えて三重彩の馬券で買う事にしました。馬番連勝よりも遥かに当たり難いけど、まあいいや。最初だし。時間がないので、さっと記入して窓口へ。何か言われたものの、うんうんと首を縦に振ったら一箇所訂正され、なんとか無事に購入できました。受付のおばさんはマークシートを機械に通し、出てきた馬券を手渡してくれました。これはまさか・・・。裏返してみると、やはり先ほど渡したマークシートでした。マークシートの裏がそのまま馬券になってしまうとは、なかなか効率がいいというか、環境にいいと言うか、慣れないと変な感じです。

スタンドに戻ると同時にゲートが開かれ出走。やれ走れといった感じの声援を受けて馬は疾走。遠くてよく見えないけど、だんだん声援が大きくなり、ゴール。あれ、何番が来た?というより、何番を買ったけな。全く知った馬の名前がないとこんな感じだったりします。でもゴール後はなんか場内の雰囲気がドヨドヨした感じでした。こういう雰囲気の時は本命が崩れて、いい配当がついたときだな。そういうことは経験で分かります。案の定、何の種類の馬券かよく分からなかったけど11万倍の配当が電光掲示板に表示されると、場内は再び騒然としていました。でも11万倍とは凄い。10HK$買っていたら110、000HK$。日本円で200万円になります。これだけゼロが並ぶと本当に宝くじ並の配当だし、確立も宝くじ並み。しかし初心者にとってはその数字はあまりにも魅力的でした。3レースの購入を見送った友人と後輩はこの結果にやる気が出たらしく、早速4Rを買うべく新聞を眺め始めました。

4レースからは友人と後輩が参加し始めました。しかし彼らの買い方は、馬を当てると言うよりは、運に任せて高配当といった感じで、当たれば100万円とまではいかないまでも、確実にうん十万コースでした。ある意味それはそれで正しい買い方でした。手堅く買おうにも新聞は何を書いてあるのか分からないし、香港でどの騎手が実力者なのかも分かりません。下手に馬の知識があるよりも、無の境地のビギナーズラックに期待した方が遙かに確率が良さそうな感じです。私の方はというと、馬券の買い方が分からないでずっと苦しんでいました。宝くじ的な配当の馬券よりもお手軽かつ、自分の眼力が試される馬連の複式を買いたいのだけど、マークの仕方がなかなか理解できません。窓口に行っても1回目は追い返され、2回目は何か怒鳴られ、めげずに3回目に行くと、やっと親切な窓口のお姉さんがマークの仕方を教えてくれました。なるほど。そうだったのか。日本の単純なマークシートに慣れていると、結構マークの仕方が複雑だと感じました。何はともあれ6レースからようやく馬連複式の馬券を買うことが出来たのですが、買うことが出来ても当たらなければしょうがありません。

競馬場で3
観戦中の様子

4、5、6レースとみんなで外しまくりました。7レースからは当たらないと後輩は休止。私と友人はめげずに勝負するもののまた外れ。当たらない・・・。いや当たりそうな気配が感じられない。こうなればもうやけくそだ。当たらなくても当然。記念馬券を兼ねて、私も友人にならって宝くじ馬券に挑戦し始めました。選ぶ馬も直感勝負。格好いい名前で決めていました。馬の名前も「本能」とか「着着先」とか漢字で書いてあるので面白い。「やっぱりここは”本能”だろう」、「いや”歓笑”がきそうだ」といった会話も香港ならでは。でもこれがそれなりに面白く、当たれば100万円だと思うと、応援にも熱が入ってきます。”本能”おまえが勝てば今日の夕食はいつもの大衆食堂ではなく、本格中華のフルコースだ。頑張れ。あっ、何出遅れてるの!あちゃ~だめだな・・・。と期待を込めてつつレースを観戦しましたが、世の中はそう甘くはありませんでした。

そして最終の10レース。最後のメインレースだけはしっかりとやろうと、緻密な予想を立て、厚みのあるボックス買いで勝負。これで当たらなければ・・・、今日は完敗だ。しかし真剣な予想と、真剣な応援にもかかわらず、またもやハズレ。結局終わってみれば、3人とも一度も当てる事ができませんでした。まあそう簡単に当たるとは思っていなかったけど、3人いるんだからせめて一回ぐらいは小さくてもいいからまぐれ当たりがあってもよかったのでは。正月なんだし・・・遥々日本から来たんだし・・・。がっかりでした。でも当たる事はなかったけど有意義な経験だった事は間違いありません。なぜなら地元の香港人に交じり、彼らと全く同じ事をしたのですから。おかげで今日ほど香港人に中国語で話しかけられた日はありませんでした。5日目にしてやっと私も香港人に似てきたという事なのだろうか。もしかしたら馬券が外れたときに、私も「アイヤー」などと叫んでいたのかもしれません。でも、「いや~楽しかった。有意義だった」と競馬場を去りながら友人達に熱く語る口調には、多分に負けた言い訳が込められていたはずです。

~~~ §3、惨敗会 ~~~

夜の繁華街
夜の繁華街

帰りは節約してKCRの駅から地下鉄に乗らず、歩いて帰ることにしました。「勝っていれば問題なくタクシーでしたね。」と後輩に突っ込まれても返す言葉がない。う~ん、負けた。でもやる前から勝つとも思っていなかったから、まあいいと言えばいいのだけど、やっぱり負けるという事が悔しい。このへんの割りきりがなかなか出来ないのが自他とも認める負けず嫌いな性格故の事に違いありません。トボトボと華やかなネオンの下を歩き続け、宿の近くまで来ると、最近行きつけの食堂に向かいました。ドカンと勝っていれば一流ホテルの一流レストランで一流の中華を食べる予定だったのに。まあ世の中はそんなに甘くはないということで、今夜も我々にふさわしい場での食事となりました。ただ私だけ昼食を食べていないので、今日の夕食はやけ食い。チャーハンに、チンジャオロースに春巻きも食ったれってなもんで、もう食えないというほど食べると、ようやく負けた事が過去の事となりました。

食堂を後にすると、昨夜ビールを飲み尽くしてしまったので、コンビニに行き、ビールとおつまみなどを買って宿に戻りました。宿のブザーを押すと、いつもどおりおばさんが出迎えてくれました。そしておばさんもそれなりにギャンブルが好きなようで、「どうだった?」とすぐに聞いてきました。そういえばこのおばさん昨夜マージャンで勝ったんだったよな。なんか目が輝いてるし・・・。なんか話し難いな。正直に「いや、駄目だったよ。」と言い、お決まりのように「でも、楽しんできたよ。」と付け加えておきました。あらそうだったの・・・と全然残念がっていないおばさんを後にして部屋に戻ると、テレビをつけて、残念会の開始。「あの時あれを買っていれば、200万円だぜ。」なんていうのは酔っ払いの戯言。でも本当に当たったら何に使おう。酔っ払いながらあれこれと香港での豪遊を想像してみるのも悪くありません。そのうちテレビのニュースで今日の競馬の事を報じ始めました。画面に映っているこの群衆の中に我々もいたんだよな。それにしても凄い数の人だ。画面に表示されている字幕によると、今日の入場者数は約9万5千人で、売上高は前年比34%増とか。ここ数年の経済成長による景気のいい香港を象徴しているようだ。もちろん私の投資した200HK$がその数字に貢献している事は言うまでもありません。

第6章 香港競馬な一日  ー 完 ー

「第7章 シンセンへの日帰り旅行」に続く

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<ぐうたら香港滞在記 第6章 香港競馬な一日 2000年1月初稿 - 2015年10月改訂>