風の足跡 ~風の旅人旅行記集~

~ 国内の旅やバイクツーリング日記 ~

房総半島最南端初日の出ツーリング

*** ページの目次 ***

~~~ §1、プロローグ ~~~

<2012年1月>

新年の初日の出ツーリングどうしようか。
そんな事を考える時期がやってきました。
今年は東日本大震災があり、その影響でほとんどバイクに乗っていなかったりします。

いや、本当のことをいうと、震災前の昨年から旅に対する情熱が薄まりつつありました。
そこに震災が起き、ガソリン不足や高騰、イベントなどの自粛や中止といった外的要因がからみ、更には生活の不安定な状況に精神的なストレスを感じ、色々と落ち着いた秋になっても積極的にツーリングに出かけることがありませんでした。

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震災前には観賞魚の飼育に凝り、それが旅への情熱を削った原因でした。
しかしそれも震災で水槽から水があふれるといった惨事を経験し、熱意を失いつつありました。
とくに省エネが叫ばれる昨今の状況では電気ヒーターを使用する熱帯魚飼育は後ろめたさも加わり、熱意が消えつつありました。
全てにおいて積極性が薄れていた一年でした。

でも正月ぐらいはバイクに乗ってツーリングに出かけよう。
一年の計は元旦にあり。
寒い中をツーリングに出かければ旅に対する情熱も戻ってくるかもしれない。
それに友人と一緒なら重い腰もあがるはず。
旅は道連れ、世は情け。友人を道連れにしてやろう。

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早速いつも一緒に行く友人に連絡してみると、
「今年は仕事が忙し過ぎて行けるかどうか・・・」
との頼りない返事。
その他の仲間もバイクショップのイベントに出かけるとか、家族サービスやら帰省するなどといい返事が返ってきませんでした。
今年は元旦が日曜日と重なり、例年よりも正月休みが少ない人が多く、初日の出ツーリングに行くには日程的にきついようでした。

う~、全滅だ。正月早々一人で出かけるのもな・・・、 面倒くさいな。
予定外の展開に意気消沈。どうしよう。
一人ならコタツに入ってテレビでも見ていたほうがいいかな。
暖かいし、のんびりできるし。
いやいや、それでは来年も今年と同じような一年になってしまう。

そうだ。中間を取って、熱帯魚屋は正月でも営業しているところが多いから、新年熱帯魚屋ツーリングを行おうかな。
福袋を買い求めるツーリングも正月らしくていいかも・・・などと思ったものの、熱帯魚の福袋っていらないものだったら困るし、それに今はそれほど欲しいものがないというのが現状です。
まして安いからと下手に買い物をして震災を機に減らした水槽が増えたりしたら大変。
それこそ旅から遠ざかってしまいます。

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やっぱり一年の計は元旦にあり。
ここは旅人として復活するためにも一人で初日の出を見に行くぐらいの強い気持ちが必要だ。
他人がどうとか、そんなことを気にせずにユーラシア大陸を単独で横断したときの気持ちを思い出すんだ。
歩けば必ず後ろに道ができている。
行くこと、行動することに意義があるのだ。

そう自分を奮い立たせ決行を決意しました。
目的地は前々から考えていた房総半島最南端の野島崎。
その理由は最南端という場所が、小細工なしに旅心を誘う場所だし、それと久しぶりに船旅をしたいなと思い、野島崎ならちょうど東京湾フェリーに乗る事ができるからです。

~~~ §2、野島崎での初日の出 ~~~

当日は3時出発・・・のはずが、少し寝坊して3時半の出発となりました。
普通に考えるならアクアラインを通って、高速で一気に館山までというのが時間的にも距離的にも肉体的にも楽なベストルートです。
しかしながら私のバイクにはETCというものが付いていません。
そのためにETCを利用した場合に比べて3倍以上もの料金を払わなければならないのです。

それが嫌だったらETCを付けろということになるのですが、バイクのETCはめちゃくちゃ高いのです。
普段バイクでは高速を利用することが少ないので、あまりつけるメリットがないのが実際です。
昨年は友人の余っている機械を借りて九十九里を訪れたのですが、一緒に行かないのに借りるのも色々と面倒です。
3倍の料金を払うのは納得がいかないので、アクアラインは却下。
昨年も夜中は道がすいていたことを考えれば、高速も却下。
延々と下道で向かうことにしました。

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ということで、まずは都内を横切って湾岸線へ。
途中六本木を通ったのですが、早朝だというのに恐ろしい人混みでビックリ。
ここは外国人が多いので変な盛り上がりをしている感じでした。

六本木から内堀通りへ、そして南下して湾岸道路へ。
今日は比較的温かい風が吹いているので、湾岸に出ても寒さを感じることはありませんでした。
ただ生暖かい風というか、なんかちょっと湿っぽい感じの風なのが嫌な感じ。
更には暗くてよくわからないけど、どうやら空には分厚い雲が掛かっている感じがします。

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木更津までは順調でした。
アクアラインを通ったらあっという間に着いたのにと思うと悔しいですが、しょうがありません。
そんなことを考えながら木更津インターを通り過ぎた直後、緊急事態が発生。
なんと雨が降ってきたのです。

ただそんなに強い雨ではなく、パラパラといった感じの小雨だったので、すぐに濡れるといった感じではありませんでした。
でも、このまま本降りになっては大変。
直前に確認した天気予報では晴れだったよな・・・。
降水確率も10%とかだったような・・・。
何で降ってくるんだ。
俺ってものすごく雨男だったのか。

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パラパラとした小雨で、 天気予報が晴れだったことを考えれば、きっと一時的なものに違いない。
本降りになりそうな気配がなかったので走り続けることにしました。
まあ大丈夫だろう。
そう信じて走り続けると雨は上がりました。危ない、危ない。

ハンドルにはハンドルカバーを取り付けて防水スプレーも塗ってあるので、手が冷たくなるようなことはなく、 体の方も何枚もジャケットを着ていたのでこの程度の雨では全く問題ありませんでした。
ただ天気予報を見て雨が降るとは思わなかったので、レインコートは用意していません。
もし本降りになったら・・・、どうしよう。
雨宿りするしかないな。
こんな寒い中で雨に降られたら初日の出どころではありません。

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しかしこの小雨は序章でしかありませんでした。
しばらく走るとまた小雨が降りだしてきました。
小雨が降るというのはさっきと一緒でしたが、違っていたのは道路が完全にウェットコンディションになっていたことです。
今はそんなに強く降っていないけど、さっきまでこのあたりは強い雨が降っていたんだなと考えるとちょっと顔が引きつってきます。

もう雨雲の本体は通り過ぎたんだよな・・・。
雲の谷間ですぐにドバッって降ってこないよな・・・。
空模様が心配です。

そういえば・・・・、 寝坊していなければもっと先を進んでいたのだから、ずぶ濡れになっていたのかもしれないな。
そう考えると寝坊してよかったと思えたりもします。
さすが俺。運がいい。
と内心で盛り上がるものの、内心ではいつ本格的に降り出すかわからない不安で一杯でした。

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今回はさっきよりも強い雨に降られたものの、すぐに止んだので助かりました。
また降るかも・・・と 不安になりながら走り続けると金谷のフェリー乗り場の案内板を発見。
この先を右折すればフェリー乗り場にたどり着けるぞ。
また雨が降るかもしれないし・・・、フェリーに乗って帰ろうかな。
きれいな初日の出は期待薄だし・・・、フェリーに乗りたいという目的は達成されるわけだし・・・。
ちょっと、いやかなり弱気の自分がいました。

ここまで来て目的を達成せずに帰るのも中途半端だな。
ここまで来た分の時間とガソリン代と・・・なんて考えてしまうのが私の悪い癖。
なかなかの貧乏性なのです。
もうちょっとではないか。頑張るんだ自分。
このまま帰ったら家でコタツに入ってテレビを見ていたほうが良かったことになってしまうぞ。
負けそうな誘惑に耐えて直進しました。

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その後雨が降ってくる事もなく、しばらくして道の駅きょなんに到着。
ここで小休止。
バイクから降りて服の確認をすると、若干一番上の上着が濡れている程度。
しみ込んでいないので体が冷たさを感じず、全く問題ない状態でした。
それに雨が降った後なので気温も高く、厚着をしている事から寒さも感じませんでした。

さてどうしよう。このまま進んでいいものか。
そう考えてしまったのは、なんか雨が降ってきそうな気配があったからです。
少し周囲が明るくなったので、雲の動きがよく見えるようになってきました。
これから向かう南側には黒い雨雲っぽい雲が掛かっているのが見えるのです。
それも速いスピードで流れていました。

不吉だ。実に不吉だ・・・・。
少し濡れる覚悟をしておいた方がいいかもしれない。
いや、どうせ初日の出は見れないのだからここで待機してようかな。
そうすれば濡れる心配はしないですむ。
ただせっかく来たので、そんなに濡れないのなら初日の出の見える場所に行っておきたい
どうしよう。。
時刻は6時過ぎ。あまり迷っていては日の出時間になってしまう。
進むなら急いだ方がいい。

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ちょっと迷ったものの、やっぱりここまで来たなら進むことにしました。
待機するという消極的な選択肢ではなく、挑戦して諦めるほうがいい。
それで雨に降られて進めなくなったのなら納得もできると言うものだ。
やばいかもしれないけど初日の出にあわせてこのまま南下することを決意しました。

しかしここからが地獄でした。
走り出してしばらくすると本降りの雨が降ってきたのです。
これはまずい。
なるべくカウルに伏せて濡れないように走るものの、いずれ雨がしみこんでくるに違いない。
やっぱり雨雲が取れるまで待機していた方が正しい選択肢だった。
どう見てもあれは雨雲だったもんな。
どうしよう。引き返した方がいいのか。
それとも進んだほうがいいのか。

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雨雲の状況がよくわからないので、どちらがより濡れない選択なのかわかりません。
戻っても濡れるなら進んだほうがいい。
それに周囲に雨宿りをする手頃な場所がないのです。
普通の民家に入っていくわけにもいかないし。
本当に田舎の道は何もない。

やるせない気持ちで走り続けると、道の駅とみうらの看板を発見。
そこまでがんばろう。
初日の出はもういい。
とりあえず雨をしのがなければ・・・。
いずれ服にしみ込んで体が濡れてしまったら凍えてしまう。

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道の駅に何とか辿り着き、建物の軒下にバイクごと雨宿りしました。
さすがにこれには参った。ビショビショだ。
ヘルメットやジャケットから水滴が滴り落ちてきます。
すぐにヘルメットを脱ぎ、上着を脱いで確認しました。

上着の方は、ジャケットを二枚重ねていたので、びしょびしょなのは一番外側の上着だけで済みました。
ズボンは・・・、カウル付きバイクなので普通に走っている分にはあまりズボンは濡れないものです。
それにウインドブレーカーと同じナイロンの丈夫なものを着ていたので、結構撥水してくれていました。
中に履いているシーパンが部分的に湿った程度です。

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唯一濡れているのを感じるのが靴の中だけでした。
ただ靴は走っているときはエンジンの横で熱風を浴びるので、水しぶきがあがるほど路面が濡れていなければそのうち乾くはず。
あまり濡れていないことに安堵しました。
それに上着を一枚脱いだ状態でも寒さを感じないぐらい温かいのも不幸中の幸いです。

さてどうしよう。
携帯で天気予報などを確認するもやはり晴れのマークが・・・。
元旦なので天気予報もお休みなのか。
こういうときはスマホがあれば、詳細な雨雲レーダーなどをすぐに調べられるんだけど、ETC同様に便利なものはあまり持っていないのです。
この雨が降っている状況ではどうにもならないな。初日の出は諦めよう。

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もう家に帰りたい・・・・。と思っても、雨が降っていては引き返す事もできません。
待機か。これならばコタツの中でぬくぬくと過ごしていたほうがよかった。
屁理屈をごねながら出発するからこういうことになるんだ。
なんだって晴れ予報で雨が降ってくるんだ。まったく。

こういうときは何かに当たりたくなるものです。
雨神大明神の友人が・・・、いや今日は来ていなかった。
低気圧の後輩が・・・、っていないし・・・。
ってことは結局のところ私が一番の雨男だったのか。
う~ん。納得いかないが、この状況から考えるにそれが正解っぽい。
などと考えていると雨が小降りとなり、空も明るくなってきました。

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そろそろ日の出時間が近いな。
南の方の空を見ると、かなり明るい。
ん、南の方は雲がないではないか。
野島崎のあたりは雨が降っていないという事か。
今からなら飛ばせば日の出時間にぎりぎり間に合うかも。

いや、どうせ日の出時間に太陽は見えないだろうから少々遅れてもかまわない。
とりあえず行こう。ここにいても仕方がない。
それに一度濡れたなら一緒だ。
パラパラと小雨が降る中出発しました。

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早朝の野島崎の写真
早朝の野島崎(日の出後)

予想通り走り出したらすぐに雨は上がり、頭上に雲はなくなりました。
これでもう安心。
そして快調に飛ばし、野島崎に到着したのは日の出予想時間の5分前でした。
岬付近はそれなりに車が多く停まっているものの、やはりあいにくと曇り空だし、先ほどまで雨が降っていた事もあって、そんなに混雑していませんでした。

後5分もないぞ・・・。
バイクを停めて急いで岬に向かって早歩きで進みました。
まあ見えないとわかっていてもやっぱり日の出時間にそこにいる事が重要といった感じでしょうか。
そういう私の気持ちを裏腹に、もう既に引き返してくる人達が多いこと・・・。
まあ人それぞれ。

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野島崎で日の出を待つ人々の写真
野島崎で日の出を待つ人々
出てこない太陽の写真
出てこない太陽

岬の先の方へ行くと、岩場で日の出を待つ多くの人がいました。
そして南東の地平線は・・・、絶望的なほど立派な雲に覆われていました。
でもこれは・・・、凄いかも。
ある意味とても雲が美しく、きれいな光景でもありました。
これなら日の出が見えなくてもまあいいかといった気にもなります。

日の出時間になってもまぶしい太陽が見えるはずもなく、10分たっても同じ事。
時々針の先ぐらいの光が雲の間から見えるものの、一向に太陽が見える気配がありませんでした。
こりゃ駄目だな。7時ぐらいになると帰る人も多くなりました。
しばらく場所を変えて写真を撮ったりしましたが、どんどんと人が帰っていき、岬には人がほとんどいなくなってしまいました。

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野島崎灯台の写真
野島崎灯台

初日の出の写真はやはり多くの人が日の出を待っているといった構図でなければ面白くありません。
そうでなければ普通の日の出と一緒です。
っていうのが私の些細なこだわりです。
人がいなくなってしまった以上ここにいても面白くない。
ということで、私も太陽が見える前にその場を離れ、灯台付近を散策しながらバイクのところへ戻りました。

野島崎からは館山方面へ戻るような形で進路をとりました。
最南端まで行ったのだからそのまま房総半島をぐるっと一周するという選択肢もあるけど、それは何度も行っている事。
それに昨年九十九里に初日の出を見に行っているので、今回は今までさりげなく通過していた館山の左下の州崎半島部を回ってみようと思い立ちました。

ということで館山方面に走り出したのですが、走り出すとすぐに後ろの方から日が差してきました。
ようやく雲から太陽がのぞいたといった感じです。
バックミラー越しですが、まぶしい太陽を拝み、色々なことがあったけどこれでようやく一年が開けたといった気分になりました。

~~~ §3、州崎半島一周 ~~~

安房神社拝殿の写真
安房神社拝殿
本殿などの建物の写真
本殿などの建物

最初の目的地は安房神社でした。
この付近は昔の安房国にあたり、ここで一番の格式、一之宮を誇っていたのがこの安房神社です。
とても古い歴史を持っていて、 なんでも今から2670年以上も前に創始されたとか。
しかも その創始に登場するのが、初代天皇である神武天皇だったりします。

簡単に書くと、 神武天皇は天富命に肥沃な土地の探索を求め、まずは阿波国(現徳島県)に上陸し、そこで麻や穀(カジ=紙などの原料)を植えるなどして開拓をしました。
その後さらなる肥沃な土地を求め、阿波国に住む忌部氏の一部を引き連れて海路で旅をし、房総半島南端であるこの地にたどり着き、この地を開拓したそうです。
この時に御自身の御先祖にあたる天太玉命と天比理刀咩命をお祭りしたというのが現在の安房神社の起源となっているそうです。

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なるほどそれで「阿波」「安房」が同じ「あわ」という読みなんだ。
房総半島、伊豆半島、紀伊半島は類似性が多いと言われているけど、四国もそうなんだなと、ちょっと勉強になりました。
でもちょっと離れすぎているような気が・・・。
まあ・・・、古い話なのでどうなのでしょう。

その安房神社に到着してみると、朝早いのにもかかわらずそれなりに多くの人がいました。
行列ができるほどでもないのが、この土地の人口の少なさを表しているような気もします。
神社を一回り散策してみましたが、2670年の歴史を感じるほどではなく、まあ普通の格式ある古い神社かなといった感想でした。

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安房神社を後にすると、いよいよ州崎半島へ。
最初のうちは平砂浦ということで、進行方向左手の海岸は九十九里のような長い砂浜が続きました。
ただ浜自体はひたすら砂防林が続いていたのであまり見えず、浜の反対側もゴルフ場などが続き、道の左右とも単調な感じで、あまり走っていて楽しい道ではありませんでした。

ゴルフ場や砂浜がなくなると、 その後は集落や岩場が続き、半島独特の岩の多い地形と変わって行きました。
まずは先端部の集落にある州崎神社へと思ったのですが、気がつかずに通過してしまい、先に州埼灯台へ向かいました。

州埼灯台の写真
州埼灯台

細い道を入っていくと灯台の入り口を発見。
バイクを停めて、階段を登っていくと白い灯台がありました。
この州埼灯台は大正8年に設置された白色塔型、コンクリート造りの灯台で、三浦半島の剣崎灯台と対をなして東京湾に出入りする船舶の重要な目印となっているそうです。
その対岸の三浦半島を眺めるものの、あいにくと雲が多い空模様なので霞んでなんとか見える程度。
剣崎灯台はどこだ?と探すものの、残念ながら見つけることができませんでした。

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州崎神社の写真
州崎神社
大漁旗の鳥居の写真
大漁旗の鳥居
お神酒の写真
お神酒

灯台から少し戻って州崎神社へ。
道沿いにありながら大きな看板もなく、ひっそりとした場所に神社がありました。
駐車場にバイクを停めようとて、神社の鳥居の前を通ると、驚愕。
な、な、なんじゃこれ!
奥にとんでもなく長い階段が見えました。
あれを昇らないと参拝できないのか・・・・。
やれやれと思いながらバイクを停めました。

バイクを降り、 鳥居をくぐって境内に入りました。
平地の部分には社務所などがあり、ちょうど建て替えが行われているところでした。ちょっと目を引いたのが大漁祈願を掲げた簡易的な鳥居が設置されている事。
こういうのは 漁村ならではといった感じでしょうか。

奥には仁王門があり、ここから長い階段が続いています。
この仁王門自体、仁王様もなかなか素晴らしいのですが、その素晴らしさよりも門のところへお酒が置いてあるのに目がいってしまいます。
旨そうだ・・・。
じゃなくて、正月ということでさりげなく祝い酒がご自由にどうぞといった感じで置いてあります。
なんとも地方らしいというか、のどかな感じがしていい。

せっかくだから一杯。
バイクだから駄目か。
いやバイクでなくても長い階段を登る前に飲みたくはないな。
少量でも立派に酔っぱらえるかも。
やっぱり地元の人は景気づけに飲んでから登るのだろうか。
漁師の人はたくましいからな・・・。

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長い階段の写真
長い階段
州崎神社拝殿の写真
州崎神社拝殿

なんて考えつつ、いざ階段へ。
階段が 目の前にそびえています。
なんか普通の階段よりも傾斜がきついのかな。
実際に歩いてみると、段差がそろっていないので歩きにくい事。
これって 地元の人の手作りなのかな。
そういった感じの階段でした。

やれしんどい。
息切れしながら登り切りました。
そして後ろを見ると、かなり登っただけあって何とも眺めがいい。
そして下を見ると、あまりの高さにめまいが・・・。
よく登ってきたな・・・・。 後で知るには147段あるとか。

神社の方はちょっと小さめの社殿でした。
拝殿で今日二度目のお参り。
次は何をお願いしようかな・・・。
ってそんないい加減な願い方では願いが叶うわけがありません。
でもこれだけ頑張って登ったんだから御利益もあるに違いない。
とまあいつも通り交通安全を祈願しました。

社の周囲を回ってみると、小さな社も幾つか建てられていました。
それよりも気になったのが、敷地内を一回りしてビックリ。
車で来れる道がないぞ。
って事は階段で資材を運んだのだろうか。
まあ最近は屋根にトロッコみたいな機械で資材を運び上げる事もできたりもしますが、その昔はやっぱりその苦労は大変だったに違いありません。

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安房国一之宮の扁額の写真
安房国一之宮の扁額

もう一つ気になる部分は、この州崎神社には先に訪れた安房神社と同様に安房国一之宮の額が掲げられている事です。
一の宮って普通一つだけだよな。
この一之宮としての歴史は安房神社よりも新しく、江戸時代の文化9年(1812年)にこの地を巡視した老中、松平定信公が、源頼朝公と洲崎神社との歴史的な関係に深く敬意を表し、「安房国一宮洲崎大明神」という扁額を奉納したことにより一之宮になったとか。
それで安房国のもう一つの一之宮と言われているようです。

ただ神社の歴史は安房神社と同じく、天富命が御祖母神天比理乃咩命の奉持された御神鏡を神霊として、洲辺の美多良洲山に祀られたことに始まるとか。
設置されている由緒書きに拠ると、鎌倉時代にこの地に逃がれた源頼朝が戦勝と源氏再興を祈念して神田を寄進したり、妻政子の安産を祈願したとか。
室町時代には江戸城を築いた太田道灌が江戸の鎮守として明神の分霊を勧請したとか。
戦国時代には房総里見氏も当社を尊崇して、七代義弘が神領五石を寄進したとか。
江戸幕府も朱印状を下したとか伝えられているといった様々な由緒が残っています。

また、神社の鎮座する御手洗山は洲崎神社自然林として県指定天然記念物となっています。
なんでも信仰の対象として長い間人の手が加えられなかったとか。
半島の先端部にありながらなかなか興味深い神社でした。

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矢尻の井戸の写真
矢尻の井戸
源頼朝公上陸地の碑の写真
源頼朝公上陸地の碑

州崎神社を後にすると、少し東にある矢尻の井戸へ。
ここは源頼朝ゆかりの地で、なんでも源頼朝が伊豆から安房へ逃れてきたときの上陸地がこの付近になるそうです。
上陸したものの飲み水がなく、これは困ったぞみんな干からびてしまう。
その時に頼朝が岩間に矢尻をえいやっ!と突き立てたら清水が湧いたとか。
それで矢尻の井戸なんだそうです。

道路沿いの公園のような広場にはちゃんと水が湧いている井戸があり、頼朝公上陸地の碑も建てられていました。
しかしながら現時点では実際に上陸地したのは鋸南町勝山地区の竜島という説の方が有力のようです。
じゃあこの井戸は・・・って事になってしまうのですが、この州崎の地は色々な伝説や頼朝にまつわる言い伝えがある場所なので、今後新しい物証でも出てきたら逆転勝利ということもあるかもしれません。
でも矢尻を突き立てただけで湧き水が出てくるっていうのは、ちょっとやり過ぎのような・・・。
実は頼朝は武将ではなく、仙人だったとか・・・・。

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海南刀切神社の岩と祠の写真
海南刀切神社の岩と祠
奉納されたアワビの貝殻の写真
奉納されたアワビの貝殻

矢尻の井戸からは海や漁村を見ながらしばらく東進。
そして半島の中程にある海南刀切神社を訪れました。
なんとなく名前に惹かれて寄ってみたのですが、竜の彫刻が立派な本殿の裏には巨大な岩があり、これがよくわからない形をしていました。
なんでも神様が浜から上陸したときに手斧で岩を切り開いて道をつくったという話や、紫ノ池に住む大蛇がわるさをするので、池から水を抜くために神様が鉈で岩を切ったなどといった話が残されているとか。
岩の前に小さな祠がいくつか設置され、アワビの貝殻が沢山奉納されていました。
今なお信仰の対象となっているようでした。

巨石伝説に興味ある身としてはなかなか興味深い神社と大岩だったのですが、単に海水に浸食されただけともいえなくもありません。
境内に掲げられた説明文を読むと、この神社の7月の祭礼で演じられる「かっこ舞」が有名で、市指定文化財にも指定されているようでした。
これは機会があれば見てみたい。

これで今回の州崎の観光はおしまい。
大ざっぱに回っただけでも多くの伝説があり、独特の文化がありと、小さな半島ながらなかなか興味深い旅でした。
また改めて祭礼の時に訪れたいと思いました。

~~~ §4、房総半島から三浦半島への船旅 ~~~

那古観音の写真
那古観音

州崎半島を出るとそのまま館山市内へ入り、比較的名が知れている那古観音へ立ち寄りました。
ここは名が知れているので多くの人で賑わっているのかなと思っていたのですが、散策中に2組とすれ違っただけでした。
まだ9時だしこんなものなのかな・・・。
なんか朝からあまり人に会っていない気がする・・・。
やっぱり半島の先端部分は 過疎化が深刻なのかな。

那古観音は以前にも訪れているので今回は再訪問でした。
前回訪れたときはちょうど観音堂を修復していてがっかりした思い出があります。
今回訪れてみると修復は終わっていて、建物がきれいになっていました。
ただ別の場所を工事していたので、またそれはそれでがっかりといった感じかもしれません。

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崖観音の写真
崖観音

次に大福寺崖観音へ。
ここも前に訪れたことがあったのですが、通り道だし、雰囲気が好きなので再訪問してみました。
こちらは先ほどよりも人がいるものの、やはり微妙な賑わいというべきでしょうか。

今日もまたよく階段を上るなと思いつつ、崖の中腹にある観音堂へ。
気温もだいぶん上がってきて、しかもいい運動をした後なので、観音堂のテラスに立つと気持ちのいいこと。
そして眺めもいいこと。ここからは館山市街が一望できます。
その風景を見ていると、もしここで津波が起こったら・・・と自然と考えてしまうのはやはり大震災の影響なのでしょう。
でもそうなったらどうしようもないよな。そうならないことを願うしかありません。

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天気も回復したし、せっかく房総半島の南部に来ているのだから色々と見て回りたい。
そう思う反面、正月だし、一人だし、雨にも降られたし、早めに帰ってゆっくりしたい。
といった気持ちの方が強く、ここからは一気にフェリー乗り場のある金谷へ向かいました。

フェリー乗り場に到着したの10時すぎ。
乗船券を買いに行くと、「フェリーの出発は10時20分で、バイクから先に乗せるからすぐに車列の一番前に行ってください。」とせかされました。
料金は1960円。ETCの割引きがないとアクアラインを通るよりもフェリーの方が安かったりします。

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フェリーに乗船の写真
フェリーに乗船

すぐにバイクのところへ戻って車列の前に行くと、
係りの人に「そのまま船に乗ってください。」と言われ、あたふたとした乗船しました。
フェリーにバイクを乗せるのは久しぶりだな。
係員に誘導され、一番奥の隅っこにバイクを停めると、係の人が手際よくバイクを固定していきました。

バイクを停めた後は眺めのいい上部甲板へ。
下を見るとちょうど車が次々と船に入っていくところでした。
辺りを見渡すと、すぐ近くに砲台山、そしてちょっと先に以前の初日の出ツーリングで訪れた鋸山がよく見えました。
あの時は足が棒のようになって大変だったな・・・。

でも大変だったけど、それ以上に友人達とワイワイ楽しくもあったな。
振り返ると、きつかった事もいい思い出となっているものです。
そう考えるとやっぱり一人のツーリングは寂しい。
感動や困難を分かち合える仲間がいるといないとではこうも違うもんなんだな。

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フェリーの甲板での写真
フェリーの甲板で

乗船する車の列がなくなり、しばらくすると船は出港しました。
少し風が冷たいけど海風が気持ちいい。
やっぱり船旅はいいな。
いつ以来だろう。
滅多に乗れないからこそ価値があるのかもしれない。
ちょっと贅沢な旅とでもいうのかな・・・。

そんなことを考えながら一人で悦に浸っていたら、いつの間にか甲板に出ている人は少なくなっていました。
出てきても写真を撮ったらそそくさと船室の方へ戻っていく人ばかり。
さすがに寒いよな。普通の人は。
でもバイクで走れるだけの厚着をしているので、少々の海風に吹かれても寒くなかったりします。
う~ん、仲間はずれというか、孤独だ。

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しばらく甲板で風景を見ながら船旅を満喫していました。
が、次第に飽きてきました。
よしっ、船の中を探検だ。
船室やデッキを見学したり、売店を訪れたりと船内を散策してみましたが、ゆっくりと落ち着ける場所は甲板だけで、再び甲板に戻ってしまいました。
途中で久里浜からのフェリーとすれ違い、そして久里浜にある石油タンクや巨大な煙突がどんどん大きくなっていくと船旅は終わり。
久里浜港にフェリーは接岸しました。

久里浜のフェリー乗り場での写真
久里浜のフェリー乗り場で

停船後はバイクのところへ戻り、出発の準備。
係の人が固定していたロープを外してくれ、車が全て出た後にフェリーから降りました。
そして記念撮影。

それにしてもバイクが汚れてしまったな・・・。
出発前はピカピカだったのに。
雨に降られたせいでカウルなどが泥だらけになっていました。
まあ勲章だと思えばいいか。
あの雨は・・・参ったな。でももう既にいい思い出となっていました。

これで今日のノルマは全て完了。さて帰るか。
三浦半島は何度も来ているし、つい1ヶ月ほど前にもコロッケ巡りの旅なんて事をやって一周しているので、そのまま帰路につきました。
途中、もしかしておいしかったコロッケ屋があいていないかな。
お土産に・・・なんて淡い期待をして店の前を通ってみましたが、まあ当然のようにシャッターが閉まっていました。

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今回のツーリングは行く行かないで迷い。
出発しても目的地に着く前に雨に降られたりと一人でのツーリングの割にはばたばたとした感じのツーリングとなってしまいました。
でもそういった雨のトラブルや心境の変化などは旅においてはいいスパイスとなるものです。
そして終わった後で乗り越えたとか、頑張ったといった充実感や満足感に変わるものなのです

そもそも根本的な事として出かけたおかげで有意義な時間を過ごせました。
房総半島の南部には面白い伝説が多くあり、変わった伝統芸能があるということを知ることができました。
そしてまた訪れようといった次につながるツーリングになったように感じます。

初日の出ツーリング。 さすがに一人だと寂しものがあります。
でも何もしなかったよりはずっとよかったと終えてから思いました。
そして来年行くとしたら友人の首に縄を付けてでも連れて行くぞと心に決めています。

房総半島最南端初日の出ツーリング  ー 完 ー

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<国内の旅やバイクツーリング日記 房総半島最南端初日の出ツーリング 2012年1月初稿 - 2015年10月改訂>